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第2   国語力を身に付けるための読書活動の在り方

1   読書活動についての基本的な認識
(1)読書の重要性
   読書は,人類が獲得した文化である。読書により我々は,楽しく,知識が付き,ものを考えることができる。また,あらゆる分野が用意され,簡単に享受でき,しかもそれほど費用が掛からないという特色を有する。読書習慣を身に付けることは,国語力を向上させるばかりでなく,一生の財産として生きる力ともなり,楽しみの基ともなるものである。
   読書の習慣を幼いころから身に付けることが大切であるが,ここでいう読書とは,文学作品を読むことに限らず,自然科学・社会科学関係の本や新聞・雑誌を読んだり,何かを調べるために関係する本を読んだりすることなども含めたものである。
   国語力との関係でも,既に述べたように,読書は,国語力を構成している「考える力」「感じる力」「想像する力」「表す力」「国語の知識等」のいずれにもかかわり,これらの力を育てる上で中核となるものである。特に,すべての活動の基盤ともなる「教養・価値観・感性等」を生涯を通じて身に付けていくために極めて重要なものである。
   昨今「読書離れ」が叫ばれて久しいが,これからの時代を考えるとき,読書の重要性が増すことはあっても減ることはない。情報化社会の進展は,自分でものを考えずに断片的な情報を受け取るだけの受け身の姿勢を人々にもたらしやすい。自分でものを考える必要があるからこそ,読書が一層必要になるのであり,「自ら本に手を伸ばす子供を育てる」ことが切実に求められているのである。文化庁の「国語に関する世論調査」によれば,読書の重要性や意義については,国民の間でも十分認識されていると考えられる。

(2)読書活動の現状と課題
   毎日新聞社・社団法人全国学校図書館協議会の「学校読書調査」によれば,小学校から高等学校までの児童生徒の9割前後が「本を読むことは大切である」と認識している。それにもかかわらず,5月の1か月間に1冊も本を読まなかった児童生徒の割合は,小学校から中学校,高等学校と進むにつれて高くなる。また,文化庁の「国語に関する世論調査」では,子供ばかりでなく全年代にわたって,ある程度の割合で「全く本を読まない」人が存在するという結果が出ている。このことは,子供のみならず,大人にも「読書離れ」の傾向が認められることを示している。
   こうした現状の中でも,特に小学校,中学校,高等学校と進むほど「読む本の冊数」が減るという状況は,国語力の育成という観点から,見過ごすことができない問題である。このことは,学校教育において読書が十分に位置付けられていないことや受験などのために子供たちに読書のための余裕が十分にないこと,大人の「読書離れ」によって,身近な大人が読書をする姿を見ることが少ないことなどに起因するものと考えられる。

(3)現在取り組まれている国や地方公共団体等の施策・取組
   平成13年12月に「子どもの読書活動の推進に関する法律」が公布・施行された。この法律は,子供の読書活動の推進に関し,その基本理念を定め,国及び地方公共団体の責務等を明らかにするとともに,施策の総合的かつ計画的な推進を図るものである。また,平成14年8月には「子どもの読書活動の推進に関する基本的な計画」が閣議決定された。この計画は,すべての子供があらゆる機会とあらゆる場所において,自主的に読書活動を行うことができるよう,積極的にそのための「環境の整備」を推進することを基本理念として,施策の総合的かつ計画的な推進を図るために定められたものである。今後は,この計画に基づいた読書活動の推進が待たれるところである。
   しかしながら,「学校図書館図書標準(注)」の通知が平成5年に出て,学校図書館図書整備5か年計画によって地方交付税措置が講じられていながら,いまだに図書標準を満たしている学校が3割程度にとどまっているというように,計画はあっても現実がそうなっていないことが大きな問題である。
   一方,地方においても,それぞれの地域の実情を踏まえて,読書活動推進のために積極的に様々な取組を行っているところがある。さらに,国の「子どもの読書活動の推進に関する基本的な計画」に続き,地方公共団体でも推進計画を策定中であり,策定された推進計画に基づいて着実に取り組まれることが強く望まれる。
   ただし,地方公共団体の取組については団体ごとの格差が大きい。例えば,学校図書館についても,司書教諭を任命することに加え,司書教諭の授業時間数削減のために非常勤講師を雇用しているところもあれば,そのような配慮がなされていないところもある。また,住民からの図書の寄附を募るという取組を進めているところもあれば,教員と図書委員の生徒が一体となって活動しているところなどもある。このような団体の取組においては,首長や校長等のリーダーの意識に影響されるところが大きい。
   なお,民間においても,子供を対象とするものばかりでなく,大人を対象としたものなど様々な取組が進められている。しかし,取組についての情報を交換し,共有化する場がなく,個別の取組にとどまっているという状況にある。

(注)    「学校図書館図書標準」とは,公立の義務教育諸学校において,学校図書館の図書の整備を図る際の目標として,文部省(平成5年当時)が定めた学校種・学校規模別の蔵書冊数である。


2   学校における読書活動推進の具体的な取組

   学校における読書活動については,何よりも小学校,中学校,高等学校と進むにつれて本を読まなくなる状況を改めるべきである。学校教育の中で読書の習慣を身に付けさせることは極めて大事なことであるが,読書の習慣を身に付けるまでには,苦しい期間を経験する子供たちも存在しよう。学校教育の中で読書活動を推進していくには,読書の楽しさを教えるとともに,そのような苦しさを乗り越えさせるための配慮も大切である。
   具体的に,学校における読書活動の推進のためには,以下に述べる「学校図書館の計画的な整備」「学校教育における「読書」の位置付け」「望ましい「読書指導」の在り方」「子供たちが読む本の質的・量的な充実」の四つの観点が重要である。

(1)学校図書館の計画的な整備
<学校図書館図書標準を確実に達成する>

   学校図書館図書標準が平成5年に定められて既に10年が経過している。この間,平成5年度に「学校図書館図書整備5か年計画」が策定され,地方交付税措置が講じられるようになった。さらに,平成14年度からは新たな「5か年計画」によって毎年130億円という地方交付税措置が講じられている。それにもかかわらず,既に述べたように文部科学省の調査によれば,その達成率は3割台にすぎないというのが実情である。まず,この学校図書館図書標準を確実に達成することが何よりも大切なことである。
   本が十分にない学校図書館では子供たちの声にこたえられず,読書活動を推進する上での基盤そのものに大きな問題があることになる。総合的な学習の時間を有効に活用していくためにも,学校図書館の図書の充実が求められる。

<学校図書館における「図書の整備」を進める>
   学校図書館の図書の利用が増えないのは,「これを読みなさい」という発想での蔵書構成になっていて,子供たちが本当に「読みたい本」を提供できていないことにもその一因があると考えられる。「良い本」「良くない本」という教職員の判断だけではなく,保護者や子供たちの意向も十分に取り入れることのできるような図書の選定方法を検討することも必要であろう。
   学校図書館の「図書の整備」については,学校図書館図書標準の達成率に大きな格差があるという現実を問題点として直視し,それぞれの地方公共団体が責任を持って達成していく必要がある。国においても必要な指導・助言を行っていくことを考えるべきである。
   そのためにも,学校の自己点検や評価項目の一つに,学校図書館の「図書の整備状況」等を盛り込むなど,学校や地域で図書が適切に整備されているかどうかを保護者の協力を得て明らかにし,評価していく必要がある。さらに,保護者の読書に対する意識を改革することによって,読書活動に対する学校の取組をより積極的な方向に変えていくこともできると考えられる。
   保護者の意識改革のためには,青少年への有害な「図書,放送番組,インターネット等」の問題に積極的に取り組んでいる「社団法人日本PTA全国協議会」などに協力を求めることも必要であろう。

<学校図書館に「人がいる」ことが大切>
   子供たちの読書活動を盛んにするためには,図書の充実だけでなく,気軽に相談でき,子供の視線で面白さや教養的な雰囲気を感じさせることのできる,魅力的で優秀な人材が必要である。だれもいない学校図書館では子供たちは進んで本に近づこうとはしない。
   それだけに,学校図書館に常に人がいる体制を作ることが大切であり,そのような体制ができれば,休み時間でも子供たちは今以上に図書館に足を運ぶようになると思われる。良い指導者がいれば読書活動は進んでいくはずであり,子供たちを指導できる人が図書館にいることが極めて大切である。保護者をはじめとする「地域のボランティア」の力なども借りて,読書に関して,子供たちの話し相手,相談相手になるような人が常にいる体制が必要である。また,平成15年度から12学級以上のすべての小学校,中学校,高等学校に司書教諭が配置されたが,その司書教諭がもっと自由に活動できる時間を作るなどの環境整備も必要であろう。

(2)学校教育における「読書」の位置付け
<すべての教科で「読書活動」に取り組む>

   現在,読書活動については,一般に「国語科」の中で行われるものと認識されている。しかし,「読書離れ」が盛んに言われる現在の状況と,読書の重要性を考えた場合,読書活動は,一教科の中だけで取り組むものではなく,すべての教科にわたって全校を挙げて取り組むものとして明確に位置付けられるべきである。その意味では,学習指導要領などとの関係についても再検討することが必要なのではないかと考えられる。
   さらに,小学校,中学校,高等学校の発達段階,学校段階に応じて,読書する力の内実と目指すところを明らかにしていくことを考えていく必要もあろう。その際に,国語科で取り組む読書活動と,他教科で取り組む読書活動との関係についても十分考慮されることが望まれる。

<「読書指導」の充実を考える>
   中学生や高校生の「読書離れ」の背景には,彼らに一般向けの本を読むことのできる力が十分身に付いていないこともあるのではないか。読書という活動の特質から,自主性・自発性の尊重が重要ではあるが,学校教育の中で適切に指導することは必要である。
   小学校入学前に読書への関心が十分に培われていない児童が存在することも考えると,読書習慣を身に付けさせるためには,小学校段階からの継続した読書指導が大切である。
   また,「総合的な学習の時間」で「読書活動」を取り入れたり,教員が常に付いた形での「朝の10分間読書」を行えるように工夫したり,「読書の時間」を学校教育の中に設定したりすることなども検討する必要があろう。
   さらに,高校入試や大学入試などにおいても,読書してきたことが何らかの形で評価されるようなことが望まれる。

(3)望ましい「読書指導」の在り方
<子供たちの「読書意欲」を高める>

   前出の「学校読書調査」によれば,学校や家庭で「本をすすめたり,本の話をしたり,読んでくれる人がいる」と回答した児童・生徒の割合は,小学校から,中学校,高等学校へと進むにつれて下がる。また,「何を読んだらよいか分からない」児童・生徒が多いことも同調査で指摘されているが,このような実態を踏まえて,学校では,個々の子供たちの状況に応じたきめ細かな読書指導を行っていくべきである。
   読書については,「本を読むこと自体が楽しい」という読み方を学校教育の中で教える必要があり,これまでの教育では,読むことの楽しさを教えることに失敗しているのではないかとも考えられる。さらに,学校教育の中で,なぜ読む必要があるのか,なぜ読んだ方が「生きる力」になるのかなどについて考えさせることも大切である。
   読書指導においては,子供と本との橋渡しをする教員の役割が極めて大切であり,教員の読書指導の質が問われることになる。読書指導における教員の姿勢は重要で,「本を読まない教員は求められていない」と言うこともできる。実際,子供たちの読書意欲を高めるために,本の楽しさについて常に語り掛けたり,読書通信等を活用して,教員が自ら読んだ本の紹介や子供たちに勧めたい本の一覧を発信したりするなど,様々な取組も行われている。しかし,すべての教員が積極的に取り組んでいるわけではない。
   教員自身が本を読んでいることが求められるのは当然であり,教員が自らの読書経験を踏まえながら,個々の子供たちの置かれている状況やそれぞれの考え方・感受性等にきめ細かく配慮した読書指導を適切に行うことが求められる。例えば,読書感想文を書くこと自体は子供たちの国語力を向上させる有効な方策の一つであるが,一律に,読書感想文を強制するなど子供たちに過度の負担を感じさせてしまうような指導では,子供たちが物語の中に入り込めず,読書を楽しむことができない。常に子供たちの状況を的確に把握し,意欲を出させるための取組が必要である。

<家庭と連携した「読書指導」を考える>
   教員が子供の読書状況を正確に把握した「きめ細かい読書指導」を行い,さらに,学校と家庭との意思疎通を図る工夫が必要である。学校と家庭との連携は大切であり,子供の励みにもなる。現在でも,学校により,教員によっては,子供たちへの読書指導に加えて,連絡帳などを利用することで,保護者との意思疎通を図るための取組が進められている。
   このような学校と保護者との意思疎通を図るための取組は,読書活動に限らず推進していくべきものと考えられるが,特に読書については,保護者とともに教員の読書に対する意識改革につながり効果的である。具体的には,家庭との連絡帳等に「読書の欄」を設け,学校での状況を家庭に伝え,読書活動を奨励することも一つの方策として考えられる。
   また,学校における子供たちの状況を学期ごとに家庭に知らせる,いわゆる通知表の所見欄などに,子供の読書活動を励ます意味で,その子の読書状況を記述するといったことも考えられよう。
   いずれにしても,それぞれの学校や教員の判断に基づき,子供たちの置かれている状況を踏まえて,積極的に取り組むべき課題であると考えられる。

(4)子供たちが読む本の質的・量的な充実
<教科書などの内容を見直す>

   現在,学習指導要領に合わせて,教科書に盛り込まれる教材やその内容も精選されてきている。しかし,学校教育で使われている現行の教科書等が子供たちの読みたいという気持ちに十分こたえているのか,また,教科書等に現在収録されている分量・内容で,一般向けの本が読めるようになるのかといった問題点が指摘されている。その意味で,教科書に掲載する教材の数を増やすことや,文学作品に限らず,広い分野から一般向けの本格的な内容のものを中学生のころから読ませていくことなども検討する必要があろう。
   教科書等で触れた文章をきっかけにして,子供たちが自ら「新たな本」を手に取るようになることもある。教科書等に載せる文章については,新しいものを必要以上に追い掛けることなく,評価の定まった名作のたぐいも大いに利用されてよいであろう。振り仮名を振れば小学生でも読めるので,著名な作家や著述家の文章に早い時期から慣れさせることも重要である。
   さらに,授業の中で「比べ読み」や「ブックトーク」(あるテーマの下に何冊かの本を関連させながら,その内容を紹介する方法)などの読書活動を取り入れると,子供たちが本を好きになることもある。子供たちが「自ら本を手に取る気持ち」になるようにするための工夫や,高度な内容の本であっても,読むことができたという自信を持たせるための工夫なども含めて,教科書等の内容については,もう一度見直す必要があるのではないかと考えられる。

<関係団体との連携・協力を進める>
   高校生向けの本の出版が1年間に150点ほどという現実があり,中学校,高等学校と進むにつれて本を読まなくなる背景には,そもそも読む本がないという面もあると考えられる。また,「易しく書かれた古典」のように,本格的な作品への橋渡しとなる入門書がそれぞれの段階に応じて作られていないのも実態である。関連して言えば,一般向けの本に積極的に振り仮名を活用することで,漢字への抵抗感をなくし,中学生や高校生にも読みやすくする配慮を出版関係者に求めることも考えられよう。
   しかしながら,中学生や高校生の読む本がないことについては,出版社の問題だけでなく,書き手の問題もある。子供たちの能力に合わせることのできる文筆力を持つ書き手が出てくるためには,本を読む中学生や高校生が少しでも増えて,需要が生まれる必要がある。そうすれば,出版社も関心を持ち,書き手ももっと出てくるものと考えられる。
   また,中学生や高校生が積極的に読書活動に取り組むきっかけとなるように,例えば,著名な作家や有名人に読書経験を書いてもらい公表するなど,読書活動の推進運動を展開していくために,関係団体との連携・協力の下,出版社や作家・著述家などの関係者への働き掛けも進めていくべきであろう。


3   家庭や社会における読書活動推進の具体的な取組

   国民の読書活動を考えるとき,子供の時期の読書指導は特に大切であり,その後の人生を左右するものであると言っても過言ではない。この時期に,読書の喜びを知り,好奇心を満たす手段を身に付けることが大切である。
   子供が自ら読みたいという方向に向かうような工夫,すなわち,「自ら本に手を伸ばす子供を育てる」工夫が必要である。子供の自主性や自発性は大切であり,十分尊重すべきであるが,このことは大人による教育的配慮や適切な指導までも否定するものではない。
   また,読書指導を行う上で,学校の役割は大きいが,学校だけでなく,家庭や地域全体で取り組んでいくことが重要である。具体的に,家庭や社会における読書活動の推進のためには,以下に述べる「家庭や地域社会における読書活動の支援」「読書環境にかかわる情報の公開」の二つの観点が重要である。

(1)家庭や地域社会における読書活動の支援
<子供への「読み聞かせ」を重視する>

   本を読むようにするための「最初の入り口」は聞かせることにあり,「読み聞かせ」を重視すべきである。特に,小学校入学前の乳幼児期は,言葉に対する信頼感を育て,言葉を通じての「人間関係形成能力」の基礎を培う上で極めて重要な時期である。この時期に,家庭や地域で絵本等の読み聞かせなどを積極的に行うことが望まれる。
   具体的な取組としては,これから子供が生まれる両親に読み聞かせの楽しさを感じさせるため,母親だけでなく,父親も参加できるような場を設定することや,保育所や幼稚園などの社会的な場における啓発や講習を推進していくこと,読み聞かせの楽しさを保護者に指導できる人材,言葉を軸にした文化活動のリーダーなどの人材の養成や研修を進めていくことなどが考えられる。

<情報交換や情報の共有化を図ることが大切>
   現在,乳幼児への読み聞かせは,各家庭で取り組まれているだけでなく,各種サークルや公共図書館等で読み聞かせ運動として進められている。しかし,それらの具体的なやり方は,なかなかほかに伝わらず,ほかでどうやっているのかを参考にしたいという要望もかなりある。
   また,乳幼児に本を贈る「ブックスタート運動」も地方公共団体や民間団体によって進められつつある。一方,国においても,「子どもゆめ基金」などにより,読み聞かせ運動を行う団体等への助成なども進められている。
   今後,このような取組をより一層進めるとともに,情報交換の場の整備など,地方公共団体やボランティア活動を行う団体が動きやすくなるように,また,このような取組がより発展するにはどうすればよいかといった面から検討すべきであろう。その意味で,読み聞かせボランティア等の相互の情報交換や情報の共有化を図るために,文化庁等のホームページを利用した魅力ある仕組みを考えることも必要である。

<社会教育の観点が必要>
   現在の学校生活は忙しく,子供たちの活動も多様化しており,学校教育の中だけで読書活動を推進していくことには限界がある。そのため,学校週5日制を活用して,社会教育の面から,土曜日を読書活動の推進に積極的に利用することも考えられる。地方公共団体によっては,既に,社会教育の面から積極的に取り組んで,一定の効果をあげている事例もある。単に本を読むように勧めるだけでなく,他の要素も加えて,興味を持って「自ら本を読みたい」という気持ちにさせる機会や行事を工夫することは大切なことである。このような取組が既に行われ,一定の成果をあげていることを踏まえると,今後は学校教育の中だけで読書活動を推進するのではなく,社会教育の観点が必要になると予想される。
   また,「学校や図書館」と「地域」とが結び付いた活動の場作りが重要であり,さらに学校図書館と公立図書館との連携など,それぞれの機関が有機的に連携・協力できるような取組を進めていくことが必要である。

(2)読書環境にかかわる情報の公開
<情報を公開することが大切>

   学校図書館については,既に述べたように,学校図書館図書標準が定められて図書整備のための地方交付税措置が講じられているが,現在の達成率は3割台でしかない。
   さらに,一般の公立図書館についても,図書の整備は進みつつあるが,まだ,かなりの町村では進んでおらず,その蔵書も地域住民の要求に十分にこたえられるほどには整っていないところがあるという状況である。地域ごとの図書館整備への取組については大きな格差が認められるが,なかなかその現状が住民に伝わっていない状況にある。
   以上のことから,国や地方公共団体が読書環境の整備の現状を知らせるために,データを整備し,積極的に情報を公開することが求められる。

<数値目標を示すことが重要>
   地方公共団体では,現在「子ども読書活動推進計画」を策定しているところであり,学校図書館や公共図書館の整備や連携,図書館を核にした読書活動の推進などが盛り込まれている。各団体が責任を持って策定した計画を実行に移していくことが望まれるが,策定する計画においては,抽象的な目標ではなく,数値目標を示して住民や保護者等の評価を受けることが望ましい。
   このような点を踏まえると,地方公共団体で,具体的な目標を伴った推進計画を策定するとともに,その計画を中心として読書環境の整備に向けて,具体的にどのように取り組んでいるかについての情報を明らかにしていくことが求められる。情報が公開されることによって,住民や保護者等が,地方公共団体の取組に対し,関心を高め,評価し,働き掛けていくことになり,首長や校長などリーダーの「読書に対する意識」を高めることにもつながっていくものである。

 

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