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第1   国語力を身に付けるための国語教育の在り方

1   国語教育についての基本的な認識

<国語教育は社会全体の課題>
   国語教育に関し,特に重要な役割を担うのは学校教育であるが,その中でも小学校段階における国語教育は極めて重要である。しかし,言葉にかかわる国語教育の問題は学校教育だけに限定できるものではない。家庭や地域社会における言語環境が,子供たちの国語力に大きな影響を及ぼしていることに配慮し,学校教育,家庭教育,社会教育などを通じて,国語教育を社会全体の課題としてとらえていく必要がある。

<言葉への信頼を育てることが大切>
   国語教育の在り方を考える場合の根本的な問題として,日本人の多くが言葉の力を信じていないという指摘がある。言葉によって物事が変わり,また,変えていくことができるという言葉への信頼を学校教育の中だけでなく,社会全体で教えていくことが大切である。このような言葉に対する信頼がないと,国語教育そのものが成立しにくくなるだけでなく,日本の社会そのものが危うくなるおそれもある。
   言葉への信頼については,コミュニケーションを通して形成されていく面もあり,家庭や学校などで十分なコミュニケーションが行われることが望ましい。特に,学校教育においては,人間関係形成の能力としての「話す」「聞く」「話し合う」の力を確実に育成することが求められる。

<情緒力・論理的思考力・語彙力の育成を>
   今後の国際化社会の中では,論理的思考力(考える力)が重要であり,自分の考えや意見を論理的に述べて問題を解決していく力が求められる。しかし,論理的な思考を適切に展開していくときに,その基盤として大きくかかわるのは,その人の情緒力であると考えられる。したがって,論理的思考力を育成するだけでは十分でなく,情緒力の育成も同時に考えていくことが必要である。
   これに加えて,漢字・漢語を含め国語の語句・語彙力の育成が重要である。人間の思考は言葉を用いる以上,その人間の所有する語彙の範囲を超えられるものではない。情緒力と論理的思考力を根底で支えるのが語彙力である。

<「自ら本に手を伸ばす子供」を育てる>
   国語教育の中で,「自ら本に手を伸ばす子供」を育てることを考える必要がある。読書は,国語力を形成している「考える力」「感じる力」「想像する力」「表す力」や「国語の知識」のいずれにもかかわり,これらの力を育てる上で中核となるものである。特に,すべての活動の基盤ともなる「教養・価値観・感性等」を生涯を通じて身に付けていくために極めて重要なものである。
   また,「自ら本に手を伸ばす」習慣が身に付いた子供たちが親になった時,初めて自分の子供にきちんとした国語の教育ができるようになる。そういう長い目で国語教育をとらえていくことが大切である。

<発達段階に応じた国語教育を>
   その上で,国語力の効果的・効率的な向上を目指すためには,一人の人間がどのように発達していくのかという観点から,各発達段階でどのような国語教育を行うべきかを考えていく必要がある。学校段階に余りこだわることなく,子供の発達段階を踏まえて,情緒力や論理的思考力などを育てていくためには,どのような国語教育が必要なのかを具体的に考えていくことが求められる。
   その際に,国語の運用能力にかかわる部分は,基本的に双方向の交流としてのコミュニケーションを通じてしか育たないという視点も大切である。また,コミュニケーション能力は社会生活を送っていく上で欠かせないものであるだけでなく,最近の脳科学の研究成果によれば,コミュニケーションを行う際に活性化する脳の場所は国語力とかかわる部分でもあることが判明している。このことから,コミュニケーション能力を鍛えることで,国語力を支える脳の部分も鍛えられることになると考えられる。

<発達段階に応じた国語教育の具体的な展開>
   発達段階に応じた国語教育を考えていくためには,次のような脳科学の知見を参考にすることも有効であろう。
   すなわち,生後から3歳にかけては前頭前野の神経細胞に急激な成長が見られるが,その後大きな変化が見られなくなる。前頭前野に再び大きな変化が表れるのは,小学校高学年から中学にかけてである。この時期には,論理的思考力・表現力(表す力)にかかわる前頭前野に血流・代謝の大きな変化が起こり,成人と同じような脳の使い方をするようになる。論理的思考力・表現力の教育・指導は,上述の前頭前野の発達段階を踏まえて,「3歳までの乳幼児期」「3歳〜11・12歳(小学校高学年くらい)まで」「13歳(中学生)以上」と3段階に分けて考えることができる。
   一方,「国語力を構成する能力等」の中で「国語の知識」の一つとして位置付けられている語彙の力は側頭葉と関係している。側頭葉は前頭前野と違って,早くから大人と同じような働きをするようになるので,語彙力の教育・指導は子供の時から大人になるまで,直線的に同じ調子で行ってもよいと考えられる。なお,「聞く力」についても,側頭葉が関係しているので,語彙力と同じように早い時期から育てていくことが可能である。
   以上のような基本認識に立って,「3歳までの乳幼児期」「3歳〜11・12歳(小学校高学年くらい)まで」「13歳(中学生)以上」と3段階に分けて,それぞれの段階において「重点を置くべき国語教育の内容」を「イメージ図」とともに大まかに示せば,次のようになろう。

   (1) 3歳までの乳幼児期   【コミュニケーション重視期】
   生後から3歳にかけて,前頭前野の神経細胞は急激に成長する。乳幼児の脳の発達に最も重要なのは,親子のコミュニケーションである。「話す・聞く」を中心とした親子のコミュニケーションを通じて,家庭の中で言葉を育てることが重要である。乳幼児は親とのコミュニケーションによって語句・語彙力を身に付けることができる。
   また,親が子供に心を開くことで,まず,子供の感性・情緒を育てながら,言葉を発達させていくことが重要である。子供の言葉を育て,豊かな感性をはぐくむことのできる「コミュニケーションの在り方」を親をはじめ子育てにかかわる人たちに広く情報提供していくことも大切である。

(2) 3歳〜11・12歳(小学校高学年くらい)まで   【基礎作り期】
   この時期には,前頭前野の神経細胞には大きな変化は起こらないが,語彙力など言葉の知識をつかさどる側頭葉や頭頂葉などの神経細胞は成長を続ける。
   幼児期では,「読み聞かせ」や可能であれば読書により言葉の数を増やし,さらに「言葉と社会や事物との関係」を習得するために,家庭や地域で多くの様々な経験を積ませることを意識すべきである。これにより,情緒力や想像力も身に付けることができる。
   小学校では,「話す・聞く」に加えて「読む・書く」の「繰り返し練習」により,国語力の基礎となる知識を確実に身に付けさせることが重要である。特に,「読み」の学習を先行させることで,言葉の知識(特に「語彙力」)を増やすことに重点を置くべきである。

(3) 13歳(中学生)以上   【発展期】
   個人差はあるが思春期を迎えたころから,前頭前野の神経細胞は再び急激な成長を始める。これにより,それまでに培ってきた国語力の基礎を用いて,自らの経験など様々な情報を複合して,論理的な思考を本格的に展開することが可能となる。
   国語科の学習においては当然のことであるが,様々な社会体験,社会科や理科の学習などを通して,論理的思考力の育成に努めることが重要である。
   また,脳の「情報処理能力」が飛躍的に伸びる時期であるので,多くの読書体験により,情緒力・想像力・論理的思考力・語彙力の総合的な発達を促すべきである。

(4) 発達段階に応じた「国語教育における重点の置き方」のイメージ図

発達段階に応じた「国語教育における重点の置き方」のイメージ図
   ※    表現力(表す力)は左図の「情緒力・想像力」「論理的思考力」「語彙力」のすべてに関連するので,図から外してある。


2   学校における国語教育

(1)基本的な考え方
<国語教育を中核に据えた学校教育を>

   学校教育においては,国語科はもとより,各教科その他の教育活動全体の中で,適切かつ効果的な国語の教育が行われる必要がある。すなわち,国語の教育を学校教育の中核に据えて,全教育課程を編成することが重要であると考えられる。その際には,国語科で行うべきことと他教科で行うべきこととを相互の関連を踏まえて整理していくこと,学習の進度についても様々な子供たちが存在しているという現実を踏まえること,学習の目的を明確にした上で子供たちの意欲を喚起させるような在り方を考えることが必要である。
   また,小学校,中学校,高等学校の各段階において,国語教育の重要性はそれぞれ異なるが,発達段階から考えて,小学校段階は国語力の向上に特に重要な時期である。
   この時期には<発達段階に応じた国語教育の具体的な展開>で述べたように,「読む・書く」の「繰り返し練習」により,国語の知識を確実に身に付けさせ,あらゆる知的活動の基盤となる国語力の基礎をしっかりと築くことが何よりも大切である。そのためには,今後,小学校における「国語科の授業の在り方」を見直した上で,現行の授業時間を大幅に増やすといった考え方も必要であろう。

<「聞く」「話す」「読む」「書く」を組み合わせた指導を>
   日常の言語生活においては,「聞く」「話す」「読む」「書く」というそれぞれの言語活動が複雑に組み合わされて用いられているのが普通である。国語教育においても,この点を考慮して,「聞く」「話す」「読む」「書く」という言語活動を有機的に組み合わせて指導していくという観点が大切である。その際,既に述べたように,国語力の中核である「考える力」「感じる力」「想像する力」「表す力」の四つの力が具体的な言語活動として発現したものが,「聞く」「話す」「読む」「書く」という行為であることを踏まえて,「聞く」「話す」「読む」「書く」の力を伸ばすためには,国語力の中核である「考える力」などの四つの能力を伸ばすことが必要であるという認識に立つことが重要である。

(2)国語科教育の在り方
<国語科教育で育てる大切な能力>

   学校における国語科教育では,「情緒力」「論理的思考力」「思考そのものを支えていく語彙力」の育成を重視していくことが必要である。
   情緒力を身に付けるためには,小学校段階から「読む」ことを重視し,国語科の授業の中で,文学作品を中心とした「読む」ことの授業を意図的・継続的に組み立てていくことが大切である。
   また,論理的思考力の育成は,国語科が大きな役割を担うべきである。日常生活の論理は言葉の論理でもあるので,言語を通して身に付けるのが最も効果的であると考えられるからである。具体的には,文章を書くことの指導や自分の考えや意見を述べる機会を多く設けることなどにより,論理的思考力を高めていくことが必要である。
   さらに,思考そのものを支える語彙力を身に付けるためには漢字の重要性を見直した上で,漢字の指導に力を入れていくという観点が大切である。
   上記の三つの能力の育成に当たっては,国語嫌いの子供を増やさないような指導方法を一層工夫改善していくことが特に重要である。

<教科内容をより明確にする>
   国語科教育の大きな目標の一つは,情緒力と論理的思考力の育成にある。したがって,現行の国語科教育でも,小学校段階から情緒力を育てるだけでなく,説明文を学びながら論理的思考力を培い,中学校・高等学校段階でも,情緒力と論理的思考力とを共に育成している。<発達段階に応じた国語教育の具体的な展開>で述べた「国語教育における重点の置き方」を踏まえて,この情緒力と論理的思考力をこれまで以上に確実に育成することが望まれる。
   そのためには,国語科の授業時間を増やすとともに,「文学」(あるいは「読書」)では読みを深める,「言語」では「書く」と「聞く・話す」を取り上げるというように,教科内容を情緒力の育成を中心とした「文学」と論理的思考力などの国語の運用能力の育成を中心とした「言語」という2分野に整理していくことも考えられる。

<指導の重点は「読む・書く」にある>
   小学校段階では,「聞く」「話す」「読む」「書く」のうち,「読む」「書く」が確実に身に付くようにしていくことが大切である。これは,いわゆる「読み・書き」の徹底を図ることが重要であること,情緒力を身に付けるには「読む」ことが基本になること,論理的思考力の育成は「書く」ことが中心になると考えられることによる。今以上に,「読む・書く」の定着を図ることが重要である。
   さらに,「書く」ことは,考えを整理し,考えることそのものの鍛錬にもなる。したがって,まとまった話をするためにも書くことは大切である。また,「聞く」「話す」「読む」と「書く」を組み合わせて指導していくという観点も重視すべきである。最近の子供たちは一般に「書く」ことを嫌う傾向にあるが,これは何をどのように書いたらよいかが十分に指導されていないことに加えて,忍耐強く一つのことに取り組もうとする力が不足している面もあろう。この点に対する配慮も大切である。

<演劇などを取り入れた授業を>
   演劇を国語科の授業に取り入れると,「聞く」「話す」「読む」「書く」のすべてが有機的につながる授業が可能となる。言葉が使えるということは,「聞く」「話す」「読む」「書く」が有機的につながるということでもある。このことを実現するためには,文学作品として習うだけでは不十分で,歌にして歌うとか,脚本化して演じるということが大切である。これらは小学校段階においても重要である。
   言葉の美しさを再発見するという視点を大切にして,国語科の授業の中で,暗唱し,身体で表現することのすばらしさを体験させる必要もあろう。

<音読・暗唱と古典の重視>
   音読によって,国語力や独創力とかかわる脳の場所が特に活性化するという脳科学の知見もあることから,積極的に音読を取り入れていくことが大切である。また,音読することによって,漢字の読みを覚えたり,文章の内容を確実に理解したりできる。
   さらに,音読や暗唱を重視して,それにふさわしい文章を小学校段階から積極的に入れていくことを考えるべきである。特に日本の文化として,これまで大切にされ継承されてきた古典については,日本語の美しい表現やリズムを身に付ける上でも音読や暗唱にふさわしいものであり,情緒力を身に付け,豊かな人間性を形成する上でも重要なものである。現在以上に,古典に触れることのできるような授業の在り方が望まれる。

<漢字指導の在り方を考える>
   常用漢字の大体が読めるようになれば,本を読むことに対する抵抗もかなり小さくなると考えられる。国語科の授業時間を増やして,小学校の6年生までに常用漢字の大体が読めるように,現在の「漢字学習の在り方」について検討することも考えたらどうか。
   なお,読める漢字を増やすには,教科書に出てくる「心ぱい」「せい長」「こっ折」などといったいわゆる交ぜ書き表記を,振り仮名を活用して「心配(しんぱい)」「成長(せいちょう)」「骨折(こっせつ)」と表記し,早い段階から漢字表記のまま子供たちの目に触れさせていく配慮も大切であろう。

(3)国語科と他教科との関係
<国語科以外の教科でも国語力の育成を>

   国語力の育成を直接担うのは国語科の役割である。したがって,国語科で国語力の基礎を確実に身に付けさせて,他教科でも応用できるようにすることが大切である。しかし,国語力は,算数でも理科でもすべての教科の中で養われるものであり,国語科の枠を超えて国語力の育成を考えることが必要である。例えば,社会科や理科でレポートを書いたり,調べたことを発表したりすることは国語力の育成に大切なことである。
   さらに,学校教育の全体を通じて,言語環境を整え,あいさつや敬意表現など「生活に密着した言葉」を身に付けさせることにも配慮すべきである。

<「他教科との連携」と「教員の国語力向上」>
   「話す」「聞く」の指導については,国語科だけでなく,すべての教科で一層意識的に行っていくことが大切である。そうすることで,国語科は「聞く」「話す」「読む」「書く」のバランスに配慮しつつも,「読む」「書く」に重点を置くことができ,現在以上に,効果的・効率的な教育を行うことができると考えられる。
   「書く」ことについては,「書く」ことの基本を身に付けさせるとともに,自己表現としての「書く」や論理的思考力を育成する「書く」は国語科を中心に行い,実生活における「書く」は,他教科などで行うという考え方を採ることが大切である。その上で,どの教科でもメモやノートを取ることをこれまで以上に指導していく必要がある。「聞く力」を身に付けるためには「話す」ことを前提として「聞く」ことが有効であるが,そのときに必要となるのも的確にメモを取る力である。
   総合的な学習の時間は,国語科との関係を踏まえることも重要であり,教科の学習内容との関連を大切にしながら,子供たちに知的刺激を与えることが必要である。
   また,子供たちの国語力を向上させるためには国語科の教員だけでなく,すべての教員が自らの国語力を高める必要があり,国語力に着目した現職教員の研修等の一層の充実を図ることが大切である。このことは,各大学における教員養成や地方公共団体等における教員採用の段階においても十分に配慮されることが望まれる。


3   家庭や社会における国語教育

(1)基本的な考え方
<生涯学習的な観点を大切にする>

   国語力を効果的・効率的に向上させるためには,学校教育だけでなく,家庭や社会における国語教育が重要である。特に,家庭や社会の国語教育においては,言語環境としてのマスコミの影響を考慮する必要がある。
   また,国語力の向上は,生涯にわたって追求される課題である。したがって,各人が情緒力や論理的思考力など国語力の向上に対して,自覚的に継続して取り組んでいくような社会的な雰囲気を醸成していくことも極めて大切なことである。

<コミュニケーションを重視する>
   家庭や地域においては,まずコミュニケーションを増やす努力が大切である。そのことが,子供たちの国語力を育てることに直結すると考えられる。最近では,テレビやビデオを積極的に用いて,子供たちの国語力を育てようとする例も増えているようであるが,何よりも「コミュニケーションの重要性」を考えるべきである。
   これは,<発達段階に応じた国語教育の具体的な展開>にあるように,親子のコミュニケーションが乳幼児の脳の発達に最も重要であり,子供の言葉を育てることになるからである。したがって,家庭においては子供が言葉を覚えコミュニケーション能力を獲得していく上で,子供にとって何でも話せる対象である両親との関係が重要である。子供の言葉を大切にし,子供の言葉が人間関係の裏付けを持てるように配慮する必要がある。家庭においては親子のコミュニケーションを通して,子供の感性・情緒を育てることが大切であるが,一方で,子供が言葉を学ぶための大切な機能を「社会全体で担っていく」という考え方も必要である。
   地域社会の中で,子供たちの国語力を育てることが少なくなってきているが,これは,地域社会におけるコミュニケーションが少なくなっているということであり,この問題の深刻さについても考える必要がある。国語が文化の基盤であることを踏まえ,地域のだれもが子供たちとのコミュニケーションを通じて「国語力を育てる責任を有している」という意識を喚起していくことも大切である。

(2)家庭や地域における取組等
<家庭で言葉を育てる>

   家庭における本の「読み聞かせ」や「お話」などは,子供の言葉を育てることに結び付く極めて大事なものである。国語教育の第一歩は,乳幼児期における親の言葉掛けであり,家庭内のコミュニケーションである。子供にとって読書が可能になれば,読書により言葉の数を増やすことができるが,更に大切なことは家庭や地域で様々な経験を積ませることで,言葉と社会や事物との関係を習得できるように配慮することである。
   また,家庭内のコミュニケーションを確保するためには,家庭において「テレビを消す時間」を作ることも効果的である。さらに,若い親が子供の言葉の発達に関心がない,あるいは関心があったとしても,仕事を持っているためにうまくできないという問題に対しては,施策の面で若い親を助けていくような取組を考えていく必要もあろう。

<地域社会を大事にする>
   地域社会との交流を進め,「家庭や学校」と「地域社会」との双方向の活動を大切にしていくことが,子供たちの国語力を付けることにもつながっていくものと考えられる。
   具体的には,地域社会の中で,例えば,高齢者と幼児が一緒に行う音読会のような催しを積極的に実施していくことも有効である。また,地方公共団体等が支援して,地域の人たちが「読み聞かせ」をするといった活動を強化していくことも大切であるが,その場合には,言葉の専門家などによる指導・助言が受けられるような仕組みを併せて考えていくことも重要である。

<マスコミの影響力を活用する>
   子供たちの国語力に対しては,言語環境としてのマスコミの影響が特に大きい。このことを念頭に置いて,国語力育成の問題を検討する必要がある。現実を見ると,テレビなどのメディアが普及し,読書をしなくても生活できるようになっている。このような状況にどう歯止めを掛けるかが大切であるが,逆に,国語力向上の上でマスコミの影響力を積極的に活用していくという観点も大切である。
   例えば,古典に出てくるような言葉であっても,提供の仕方によっては子供たちに相当浸透していくはずである。また,テレビを用いて正しい日本語を普及していく取組なども有効である。具体的には,民放やNHKなどで言葉遣いに関する15秒のスポットを流すようなことも考えられる。
   さらに,国語力の向上に貢献していると判断される番組やマスコミの取組等を紹介し,表彰することなども有効な方策の一つと考えられよう。いずれにしても,テレビなどマスコミの影響の大きさについて十分に考慮していくことが大切である。

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