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2.重要文化財(美術工芸品)

絵画の部

13、重要美術品から重要文化財へ)

   けんぽんちゃくしょくしらやまさんじゃしんぞう    
 1  絹本著色白山三社神像 1幅

  大きさ 縦  79.4センチメートル、横  42.5センチメートル
  所有者 宗教法人白山比び神社   石川県石川郡鶴来町三宮町ニ105-1

     中世の白山信仰を背景とし、白山七社のうち本宮・金釼宮(きんけんぐう)・三宮(さんのみや)の三社のみを三尊形式に表している。本宮と三宮は女神、金釼宮は男神とし、各神の上方にはその本地(ほんじ)と考えられていた仏教のほとけを示す梵字を書いている。制作期は鎌倉時代に遡ると思われるが、白山神を描いた遺品として最も古く、かつ優れた遺品である。(鎌倉時代)


   けんぽんちゃくしょくしゅんおくみょうはぞう    じさん    
 2  絹本著色春屋妙葩像     自賛がある     1幅

  大きさ 縦  110.8センチメートル、横  59.9センチメートル
  所有者 宗教法人慈照寺   京都府京都市左京区銀閣寺町2

     春屋妙葩(1311〜88年)は夢窓疎石(むそうそせき)の甥であり、法嗣(はっす)でもある。足利義満(よしみつ)より初代の天下僧録司(ろくじ)に任じられ、五山十刹(ごさんじゅっせつ)以下の官寺を統率した。本図は自賛(自ら書いた詩)を持つ寿像(生前の肖像)であり、相国寺住持であった1386から87年に制作された。丁寧かつ的確に表現され、保存状態も良好な優品である。(南北朝時代)


   しほんぼくがにっしんじょまず    かつしかほくさいひつ    
 3  紙本墨画日新除魔図     かつ飾北斎筆     219枚

  所有者 坂本安子   京都府京都市左京区修学院開根坊町8-2

     かつ飾北斎(1760〜1849年)が晩年に毎朝日課として描き続けた獅子の図を、北斎88歳の際にまとめて知人に与えたものが散逸を免れ、一括されたままで今日に伝えられた貴重な肉筆画である。簡略な墨画の集成であるが、注文による制作とは性格を異にし、版画では窺えない、肉筆ならではの即興性に満ちた、生き生きした運筆と、北斎の卓抜な構想力、日ごとの着想の変化が手にとるようにわかる。北斎その人の息づかいが伝わる珍しい作例である。(江戸時代)


49、未指定から重要文化財へ)

  さんゆうていえんちょうぞう    かぶらききよかたひつ
 鏑木清方筆
 けんぽんちゃくしょく
 絹本著色
   
 4  三遊亭円朝像    1幅

  大きさ 縦  138.5センチメートル、横  76.0センチメートル
  所有者 独立行政法人国立近代美術館(東京国立近代美術館保管)

     鏑木清方(1878〜1972年)は東京に生まれ、若くから新聞等の挿絵を描きながら、人物画を主とした本格的な日本画を制作した。特に美人画家として上村松園(うえむらしょうえん)と並び称され、明治期の風俗を情緒豊かに表現した。本図は不世出の落語家で、『牡丹燈籠』等の怪談作者としても著名な円朝を回想して描いたものであるが、写生を重視した清方らしい、鋭い人間観照が評価される。(昭和5年作)


   けんぽんちゃくしょくまつにからどりず    さたけしょざんひつ    
 5  絹本著色松に唐鳥図     佐竹曙山筆    1幅

         
  大きさ 縦  173.0センチメートル、横  58.0センチメートル
  所有者 庄司千代松   秋田県北秋田郡森吉町阿仁前田字八幡森106

     秋田藩第八代藩主であり、秋田蘭画の主導者であった佐竹義敦(さたけよしあつ)(号曙山、1748〜85年)の代表作であり、また彼の蘭画作例のなかでも最大の大作である。近景に異国の鳥を配した松樹を近接拡大する大胆で迫力のある構図は主君の着想にふさわしく、写生的な鳥と舶載銅版画(はくさいどうはんが)に学んだ遠景を取り合わせた構成は秋田蘭画の特質をよく示している。初めての洋画論を著した曙山らしく陰影法と彩色による遠近法を駆使する。新しい表現に取り組む意気込みと曙山ならではの気宇の大きさが学んだばかりの技法の未熟さを補い、清潔な美しさと高い画品を有する優品である。(江戸時代) 


   てんぴょうのおもかげ  ふじしまたけじひつ
 藤島武二筆
 油絵 麻布

   
 6  天平の面影    1面

  大きさ 縦  197.5センチメートル、横  94.0センチメートル
  所有者 財団法人石橋財団   東京都港区麻布永坂町1

     藤島武二(1867〜1943年)は明治から昭和にかけて活躍した洋画家で、黒田清輝(くろだせいき) らの結成した白馬会(はくばかい) の主力画家として活躍した。写実的な外光描写から出発したが、1902年作の本図から浪漫的な内容と装飾性を志向するようになり、単純で雄大な独自の画風を築くにいたった。本図は青木繁(あおきしげる) など同時代の画家に大きな影響を与え、明治時代の浪漫主義を代表する作といわれる。(明治35年作)

   けんぽんちゃくしょくしゅうなんざんまんだらず    
 7  絹本著色終南山曼荼羅図    1幅

  大きさ 縦  117.0センチメートル、横  55.8センチメートル
  所有者 宗教法人松尾寺  京都府舞鶴市大字松尾532

     北極星や北斗七星などの星を人間の寿命や運命と深い関わりがあるものと考える中国道教の信仰はわが国に伝えられて密教にも採り入れられ、北斗法などの修法が産み出されたが、その本尊として星曼荼羅(ほしまんだら)が制作された。本図は星曼荼羅の一種ではあるが、中国古来の終南山にまつわる伝説を主題とする珍しい遺品で、鎌倉時代前期に遡る優れた作品である。(鎌倉時代)

   しんこう  せきねしょうじひつ
 関根正二筆   一九一八年
 油絵   麻布

   
 8  信仰の悲しみ    1面

  大きさ 縦  73.0センチメートル、横  100.0センチメートル
  所有者 財団法人大原美術館   岡山県倉敷市中央1-1-15

     関根正二(1899〜1919年)はほとんど独学で油絵を描き、大正四年から二科展に出品、特に本図を含む3点が第五回二科展で樗牛賞(ちぎゅうしょう)を受賞し脚光を浴びたが、翌年惜しくも病死した。熱っぽい色調と画面に横溢する宗教的な気分は独特であり、高い表現性を備えている。個性的な画家を輩出した大正期洋画を代表する一作である。(大正7年作)

         かぞく  こいでならしげひつ
 小出楢重筆   一九一九年
 油絵   麻布

   
 9  Nの家族    1面

  大きさ 縦  78.0センチメートル、横  90.5センチメートル
  所有者 財団法人大原美術館   岡山県倉敷市中央1-1-15

     小出楢重(1887〜1931年)は緊密かつ大胆な画面構成と独特の色調を持つ画風で知られ、静物画や人物画、とくに裸婦を主題とする作品で名高い。本図は第六回二科展に出品し樗牛賞を受けた出世作であるが、謹厳な写実と綿密に組み立てられた構図法により、借り物ではない日本洋画を構築しようとする、当時の洋画界の動向を示す完成度高い優品である。(大正8年作)




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