3. |
我が国の「顔」となる芸術文化を創造する |
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(1)世界に誇れる芸術文化の創造活動への重点支援 |
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芸術は,文化の深さと豊かさを端的に表すものであり,特に,世界に誇るべき芸術文化は,我が国の「顔」となるものです。 |
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そのため,我が国の芸術文化水準の向上の直接的な牽引力となる芸術文化団体の活動に対して,伝統芸能も含め,国として重点的に支援を行い,世界に誇れる芸術文化の創造活動を推進していく必要があります。 |
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また,こうした取組と併せて,我が国の文化の頂点を高めていくためには,これらの周辺を支える基盤となる創造活動が幅広く行われることが重要であり,こうした活動に対して継続して支援を行う必要があります。 |
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(2)世界の芸術家等が集う環境づくり |
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我が国の芸術文化水準の向上を図るためには,世界の優れた芸術家や芸術文化団体と交流し,刺激を受け,国際的評価の中で切磋琢磨していくことが極めて重要です。このため,世界的な芸術家や芸術文化団体の参加を得て,我が国において国際的な芸術フェスティバルを開催することや,海外で行われる世界的なフェスティバルへの参加,海外との共同制作などを積極的に支援する必要があります。 |
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(3)世界に通じる芸術家の育成 |
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国際的に活躍する芸術家が登場することは,人々に夢と希望を与えます。世界に通じる芸術家の育成を図るため,若手の芸術家等の国内研修や海外留学を充実することや,世界的な芸術家等による指導の機会を設ける必要があります。あわせて,国内において優秀な指導者を育てることも重要です。 |
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また,実力がありながら発表の機会に恵まれない若手の芸術家に対して,公立文化会館などにおいて発表の機会を数多く提供していくことも必要です。 |
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さらに,優れた芸術家は,本人の才能とともに,才能を発揮させる優れた環境によって育ちます。音楽や舞踊など,早い段階からの教育や訓練が求められる分野においては,優れた才能を発掘し,能力を引き出すため,教育機関の整備や教育上の特別の配慮などを含めて,教育システムの検討が求められます。 |
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(4)メディア芸術の振興 |
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マルチメディアの進展の中で,アニメーションやコンピュータグラフィックスなどのメディア芸術は,我が国が世界に誇れる文化であり,今後の芸術文化全体の活性化を促す牽引力として,一層の振興を図る必要があります。 |
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また,身近な娯楽として生活の中に定着するとともに,総合芸術として重要な位置を占める映画について,フランスやイギリスなどの諸外国における支援の状況なども参考にしながら,製作や上映への支援などを積極的に行う必要があります。 |
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4. |
文化遺産を保存し,積極的に活用する |
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(1)文化財の積極的な公開・活用の促進 |
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文化財は,我が国の歴史における様々な時代背景の中で,人間生活とのかかわりにおいて生み出され,現在まで守り伝えられてきた国民の財産です。また,我が国の歴史,文化等を正しく理解するために欠くことのできないものであり,将来の文化の向上・発展の基礎を成すものです。多様な文化財をその特性に応じて適切に保存し,次世代に継承するとともに,その積極的な公開・活用を図っていくことは極めて重要です。 |
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とりわけ,現在の人々が文化財への理解と愛情を深め,関心を持つようにするため,保存とのバランスに配慮しながら,文化財の性質に応じた多様な公開・活用を積極的に進めることが必要です。 |
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そのためには,公開に当たって,必要な解説を加えるなどの配慮をきめ細かく行うとともに,国においては,地方公共団体等の先進的な取組の紹介や優れた取組の顕彰や,望ましい公開・活用の在り方を示すためのパイロット事業などを行うことが必要です。 |
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また,文化財の公開・活用を行う手段としてバーチャル・リアリティー(コンピュータなどで人工的に作られる仮想環境の中に自分がいるような擬似的体験が得られる技術)を用いたり,文化財に関する情報をデジタル・アーカイブ化し,インターネット等を用いて人々の利用に供するなど,情報通信技術(IT)や様々な映像等を積極的に活用した,多様な手法による公開・活用の工夫が求められます。 |
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(2)総合的な視野に立った文化遺産の保存・活用 |
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今日,有形・無形を問わず,歴史的な価値を有する文化的な所産を,広い意味での文化遺産として保存・活用する必要性が高まっています。例えば,文化財の周辺等を含めた総合的な環境や,棚田・里山のような文化的景観,近代工業製品,研究の成果物等の産業的又は学術的な遺産や近代の生活用具等の民俗文化財への対応などが,新たな課題となっています。 |
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これらについては,文化財保護法の改正や運用の工夫に加え,文化財保護法とは異なる新たな枠組みなども視野に入れた総合的な検討が必要です。 |
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(3)人々の主体的な参加による文化遺産の保存・活用 |
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文化遺産の保存・活用を推進するに当たっては,人々が主体的に文化財の保存・活用の活動に積極的に参加できる環境を作ることが重要です。このため,地域において生涯を通じて文化遺産に親しむ機会を提供したり,全国キャンペーンやシンポジウムなど,人々の文化遺産への理解と愛情を深めるための取組を推進することが必要です。 |
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また,文化遺産を支えるNPO,NGO等の活動を活性化し,人々の参加を促していくことも大切であり,こうした活動に対する支援についての検討が求められます。 |
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日本文化を総合的・計画的に世界へ発信する |
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(1)国際文化交流マスタープランの策定 |
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我が国の国際文化交流はこれまで少数の労力による文化の発信に頼り過ぎていたため,分野的な偏りがあったり,継続性に欠ける嫌いがあったりしました。その結果,ややもすれば諸外国においては,日本文化の部分的かつ表層的な理解にとどまり,その魅力が十分に伝わってきたとは言えません。 |
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このため,関係省庁間のみならず,官民の連携・協力の下,伝統文化から現代文化に至るまで,我が国の文化を総合的かつ計画的に発信していく必要があります。国においては,国全体として国際文化交流を進める上での基本的な方針や具体的な方策等についての国際文化交流マスタープランを策定し,積極的な施策の展開を図っていくことが必要です。その際,既に海外でも知名度の高い伝統芸能に限らず,現代の若者文化などの新しい文化にも配慮し,多角的に日本文化を紹介していくことが求められます。 |
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また,海外からの多様な要請を踏まえながら,様々な国際交流事業を機動的に推進していく必要があります。このため,事業の選定方法についての工夫などが求められます。 |
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さらに,政府開発援助(ODA)の見直しに当たっても,ソフト・ハード面のバランスに配慮しつつ,文化面での国際交流・国際貢献のために,一層の活用が求められます。 |
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(2)芸術文化の国際交流の推進 |
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我が国が世界の文化の創造に貢献するとともに,芸術創造活動の水準の向上に資するため,芸術家や芸術団体の相互交流,美術や映画分野における国際交流などを推進する必要があります。 |
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また,地域において国内外の芸術家が一定期間滞在して創作活動等を行う取組など,地域レベルでの国際文化交流を活発化することがあわせて求められます。 |
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(3)文化財を通じた国際交流・国際協力の推進 |
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文化財は,一国だけのものではなく,人類共通の財産として守り,伝えていくべきものです。 |
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世界的な文化遺産の保存修復協力について,我が国はこれまでの経験や技術を生かしながら,積極的な役割を果たしていくことが求められており,専門家の派遣,研修生の受入れなどによる人材育成や,共同研究などを,二国間,または,国際機関を通じて,より積極的に展開していくことが必要です。 |
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また,日本古美術品の海外展等を通じて,我が国の文化財に関する情報発信に努めていくとともに,保存・活用の取組についても,海外に向けた積極的な情報発信を行っていくことが必要です。 |
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文化財を通じた国際交流・国際協力に当たっては,国が中心となって大学,文化財研究所,美術館・博物館等の文化財に関する専門機関や,民間の活動,地方公共団体との連携を図りながら推進することが求められます。 |
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(4)国際文化交流のためのネットワークの形成 |
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文化の多様性を維持し,なおかつ,国境や民族を超えた普遍的な価値観を見出していくためには,文化に関する国際的な人的ネットワークの形成が重要です。このため,外国政府や国際機関のみならず,芸術家・芸術文化団体なども含めた国際的な相互交流や意見交換の場として,例えば世界経済フォーラム(ダボス会議)の文化版である国際文化フォーラムを日本において開催することも,一つの方策として考えられます。 |
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また,国家間の持続的な文化交流を進めていく上においては,国立美術館・博物館,文化財研究所,国立劇場等を文化交流の国内の拠点と定め,相手国の対応機関との継続的な交流を進めていくことが重要であり,専門家の交流や各種事業の共同実施などに必要な措置を講じる必要があります。その際,それらの拠点と公立または民間の機関が連携協力することによって面的な広がりと重層的な厚みを持った事業を展開していくことも大切であり,この点も踏まえて,これらの拠点の機能を強化することが求められます。 |
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(5)外国人に対する日本語教育の推進 |
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国際社会において日本や日本文化に対する理解を促進するため,日本語の国際的な広がりは重要です。このため,関係機関が連携を図りながら,インターネット等の情報通信技術(IT)の活用などにより,国内外における日本語教育を積極的に支援することが必要です。 |
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また,我が国の優れた科学技術や映像文化への欲求の高まりの中で,海外における日本語学習者が増加しています。日本語教育がより効果的に実施できるように日本語教師を養成・研修し,学習需要に応じて機動的に派遣する方策を,関係機関が連携しながら充実することも必要です。 |
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さらに,国内に居住する外国人に対して,日本文化の理解や日常生活でのコミュニケーションに必要とされる日本語能力を習得できるよう,国,地方公共団体,日本語教育機関,日本語教育の専門家,地域住民などが総合的に連携協力してきめ細かな学習支援体制を確立することが求められます。 |
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同時に,海外の図書館や資料センターにおける日本語の図書や資料の充実を図ることや,優れた我が国の文学作品等を各国語に翻訳することは,日本語の普及に資するとともに,世界の文化を豊かにすることにつながるものであり,こうした取組を支援する必要があります。 |
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おわりに |
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先般,芸術文化関係者等の念願であった「文化芸術振興基本法」が成立し,施行されました。今後の文化振興の礎となると言える法律が成立したことは,我が国にとって大変意義深いものです。この法律においては,政府として文化芸術の振興に関する施策を総合的に推進するための基本方針を策定し,これに基づき施策を展開していくこととされています。基本方針の策定に当たっては,この「中間まとめ」の提言が反映されることを期待します。 |
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今後,「中間まとめ」に対して幅広く国民の意見を伺いながら,更に議論を深め,答申をまとめていく考えですが,国民各位,企業,民間の団体,地方公共団体,国等の関係機関におかれては,「中間まとめ」に提言した事項について理解いただき,積極的な取組をされることを強く望みます。 |
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