資料1

わが国におけるアーカイブ事業について

平成19年11月26日
社団法人日本図書館協会
常世田 良

 従来は各分野の現行法に従い図書館、視聴覚センター、文書館、博物館、美術館、地方自治体などが印刷媒体、音声映像媒体、一次資料、現物などの収集、保存、提供を実施。収集の対象は、非公開のものや灰色文献などかならずしも著作物とはいえないものも含み、人類の諸活動の全領域におよぶ。諸外国と比較した場合、フェアユースや公衆送信など情報の提供に関して課題が存在する。また最近では科学技術情報、特許情報、医療薬学健康情報、法律情報、経済情報、各種統計などいわゆる「文化」の範囲を超えて、国民の生命、財産、社会のあり方に関わる分野も対象となりつつある。
 現在直面しつつあり、さらに近い将来大きな課題となることが予想されるデジタルアーカイブについては、デジタル技術の進展、データの保存容量の増大、処理速度・送信速度の向上、諸コストの低廉化などにより収集、保存、提供が容易になることから、相互にデータをやり取りし国民の利用の利便性を向上させること(すでに諸外国においては、図書館や博物館などを横断的に組織化する試みが実施されている)が可能となり、各機関の機能が拡大されるがその半面、機能分化があいまいになる可能性が存在する。その際注目すべきは、諸外国においては社会における情報の流通を経済発展、貿易等の国際競争向上など国力増強ばかりでなく国家の安全保障の問題として捉え、社会政策的な観点から諸制度の整備を行っていることである。
 また技術的、コスト的に個人や小規模の機関でも「アーカイビング」が可能となることから、何らかの機関、施設が専ら行う業務ではなく、誰でもがに実施可能となることを想定したうえで、社会政策的にどのような制度設計を行えるかを検討すべきである。

■ 実施主体

■ 対象となる資料

 印刷物媒体、音声媒体、映像媒体、一次資料、実物、メモなど

■ 対象となる行為

 収集、閲覧、上映、実演、貸与、媒体変換、複製、公衆送信、二次利用(資料の一部を用いた目録の作成など)
 加工、翻案、著作物作成など

■ 社会政策上の課題

○将来作成されるもの(媒体変換されるものを含む)

 当初からデジタルデータとして収集可能とするシステム(制度)
 社会政策的に一定の制度(補償金等)の下に自由に媒体変換、収集、公衆送信を可能とする