著作権分科会 私的録音録画小委員会(第15回)議事録・配付資料

1.日時

平成19年12月18日(火曜日)10時〜12時

2.場所

アルカディア市ヶ谷 「阿蘇」

3.出席者

(委員)

石井、井田、大寺、華頂、亀井、河村、河野、小六、椎名、津田、中山、野原、生野、松田の各委員

(文化庁)

吉田文化庁審議官、亀岡国際課長、川瀬著作物流通推進室長ほか

4.議事次第

  1. 制度のあり方について
  2. その他

5.資料

資料1
  私的録音録画の補償の必要性に関する考え方の変遷(PDF:96KB)
資料2
  著作権法第30条の適用範囲の見直しに関する論点の整理について
参考資料
  私的録音録画小委員会中間整理に関する関係団体等の意見2

6.議事内容

【中山主査】

 それでは、ただいまから文化審議会著作権分科会私的録音録画小委員会の第15回を開催いたします。本日はご多忙中ご出席いただきまして、まことにありがとうございます。
 議事に入ります前に、いつものことでございますけれども、本日の会議の公開につきましては、予定されている議事内容を参酌いたしますと特段非公開にするには及ばないと考えられますので、傍聴者の方々には既にご入場していただいておりますけれども、こういう処置でよろしゅうございましょうか。

(「異議なし」の声あり)

【中山主査】

 ありがとうございます。
 それでは、本日の議事は公開ということで、傍聴者の方々はそのまま傍聴をお願いいたします。
 それでは、議事に入ります。
 事務局から配付資料の確認をお願いいたします。

【木村課長補佐】

 恐れ入ります、それでは資料の確認をお願いいたします。本日配付しております議事次第、1枚物ですが、これの下半分に本日の配付資料を示させてもらっております。
 資料1ですが、「私的録音録画の補償の必要性に関する考え方の変遷」。資料2、「著作権法第30条の適用範囲の見直しに関する論点の整理について」。
 そして、参考資料といたしまして、「私的録音録画小委員会中間整理に関する関係団体等の意見2」でございます。実はこの参考資料についてでございますが、前回関係団体等の意見として参考資料を配付しておりますが、膨大な数の意見が提出されたこともあり、事務局の見落としによって掲載できなかったものもございます。それで、本日改めて追加分として配付させてもらっております。また、このほかのご意見等につきましても、後日文化庁のホームページで公開する予定でございます。
 以上、よろしくお願いいたします。

【中山主査】

 よろしいでしょうか。
 本日の議事は、制度のあり方についてでございますけれども、資料1、「私的録音録画の補償の必要性に関する考え方の変遷」及び資料2「著作権法第30条の適用範囲の見直しに関する論点の整理について」、それぞれ意見交換を行いたいと思います。
 まず資料1、「私的録音録画の補償の必要性に関する考え方の変遷」につきまして、事務局より説明をお願いいたします。

【川瀬室長】

 それでは、資料1をごらんいただけますでしょうか。前回11月28日の本小委員会の席で最後に事務局から、今まで点の議論をしていたのを少し線の議論をしたいということを言いました。本日は私的録音録画に関するいわゆる補償の必要性についての議論は別途改めて日を設定してするとしまして、その今までの補償金制度に関する考え方の変遷と、それから補償金制度を含めた将来における30条のあり方について資料を用意しましたので議論をしていただければと考えております。
 その変遷については1枚目のとおりでございますけれども、事務局で用意しましたこの資料の2枚目以降でございますけれども、それぞれの立場の人にとりまして、30条のあり方につきましては将来の理想像というふうには決して言えないかもしれませんけれども、今まで権利者、メーカー、消費者、それから学識経験者の方も加えまして議論をしてまいりましたわけで、それぞれのお立場のお考えというものがこの長年にわたる議論の中で整理されてきたわけでございまして。そういった意見を総合して考えると、関係者で合意できるぎりぎりの30条の将来像というのが本日資料でお配りしているものでございます。
 それでは、内容についてご説明をします。
 まず、1枚目の資料でございますけれども、これは今までの補償の必要性に関する考え方の変遷をあらわしたものでございまして、特に何か新しいものがあるわけではございません。改めてご説明しますと、1970年に現行著作権法が制定されました。そこで、30条に関しては無許諾無償の利用を認めたわけでございます。補償の必要性はないという前提に立ってでございます。92年に初めて我が国では補償金制度を導入したわけでございますけれども、そこで無許諾有償ということに変わるわけでございます。そこではそれ以前の15年の長きにわたる議論の中で補償の必要性ありという関係者のコンセンサスができたということは紛れもない事実でございます。
 99年に技術的保護手段の回避規制の導入がございまして、30条の範囲がより狭められたということでございます。その30条の1項2号は、技術的保護手段を回避して行う複製でございます。また、下の30条1項1号は、いわゆるダビング業者のところで行う複製でございます。
 それで、今回検討中の内容につきましては無許諾というところは残しつつも有償、つまり補償の必要性があるかないかによって有償であるかどうかというところが議論になっているわけでございます。
 さらにその下を見ていただくと、30条の縮小についてさらに2つの類型についても追加をしたいというふうに整理されているわけでございます。一番下のほうからいきますと、違法複製物や違法配信、ダウンロードについては通常の利用を妨げる利用ではないか。また、適法配信事業では契約で対応できる事業ではないかということです。
 それから、色塗りのところでございますけれども、ここでは大きく分けると2つの論点がありまして、下からいきますとタイムシフト・プレイスシフトのようなものの考え方をどうするのか。それは今回の中間整理でも整理がされておりまして。タイムシフト・プレイスシフトについては経済的不利益の差について見解の相違があるものの、全体としてはやはり補償の必要性があるのではないかと考えるのではないかというような整理もされているわけでございまして、これは今回白紙ベースということで議論をし続けてまいりましたけれども、92年の導入時にも同様の議論があり、そこで我が国としては相対的には補償の必要性があるというふうに位置づけられたものですから、92年と同様と考えられないかどうか。
 そうしますと、さらなる論点の一番上ですけれども、著作権保護技術の評価については、これは92年にはなかった新たな問題でございますので、その著作権保護技術の評価を踏まえた上で将来像を考えていくということになるのだと思います。
 別紙でございますけれども、20ばつばつ年としているのはなかなか数字が入りませんのでこういうふうになっておりますけれども、2枚目をごらんいただけますでしょうか。2枚目と3枚目は録音と録画に分けて整理をしておりますけれども、基本的には考え方としては同じ考え方が流れております。
 将来における私的録音について「娯楽目的に限定」というようにしておりますのは、調査研究目的等につきましてはこれはまた別の複雑な問題になると思われるので、補償金制度、特にやはり娯楽目的ということに限定して考えるとどうなるのかということで限定をつけさせていただきました。
 そうすると、著作権保護技術の発達・普及というのが問題なわけでございますけれども、そういうものを今までの議論を総合して考え、前提にしますと、私的録音に関しては30条の適用をなくせばどうなるんだろうか。もちろんそれに伴って補償金制度は廃止されるということでございます。著作権の保護技術が隅々までにわたりますと、こめじるしに書いてますように、原則として著作権保護技術の範囲内の私的録音につきましては権利者の許諾が推定されるということになると思います。
 これは、このお手元の中間整理の資料でございますけれども、113ページを開いていただけますでしょうか。113ページのその2でございますけれども、著作権保護技術と権利者の被る経済的不利益の関係ということでございまして、(2)に著作権法上の技術的保護手段における権利者の意思と30条の範囲内の録音録画との関係が整理されているわけでございます。
 1枚めくっていただきますと、権利者の意思に基づいて技術的保護手段がかかっているというふうに考えられるわけでございますけれども、「ただし」で、この権利者の意思はあくまで著作物の提供に当たり利用者が利用可能な範囲を技術的に限定することを意図したものであるので、その範囲における録音録画について無償利用を認める意思まで含まれるとは言えないのではないかというような整理がされております。これはもちろん30条があるということを前提にしての考え方の整理でございます。
 ただ、もし30条がなければ著作権保護技術を認める意思というのは、許諾の意思と同じのであろうということは言えるのではないかなと思うわけでございます。
 つまり、許諾が働くということであれば、次のこめじるしでございますけれども、権利者は一般に著作物等の提供者を通じて利用者から対価を徴収することができ、また権利者が利用者と直接契約を締結することも考えられるということで、これは有償にするか無償にするかというのは権利者に留保されると、つまり、契約に任されるということになるわけです。
 その次のこめじるしですけれども、そういうことになりますと著作権の保護技術の内容によっては私的録音に関する使用料も徴収しないという選択肢も当然権利者にあるわけでございます。したがって、こういうような30条が適用範囲だとされても著作権の保護技術によってその私的利用の複製について一定の管理ができることによって権利者側は補償金は廃止されるけれども使用料の徴収が可能だと、徴収するかどうかは別にして可能だという状況になります。
 メーカーは、これは現行で補償金制度協力義務者という形でございますが、実質的には使用料を負担しているわけですけれども、補償金は廃止されることになるわけです。
 それから、消費者については、著作権保護技術の範囲内または契約の範囲内の私的録音はできるわけでございますから、許諾済みの利用ということになるわけでございます。
 ただ、この中間整理でも整理されましたように、いわゆるプレイスシフトのための録音については、それは経済的不利益がないという考え方、またあるという考え方の立場の人にとってもその経済的不利益は低いんだろうというようなことでございますので、将来においてプレイスシフトのための録音については、その1枚目を見ていただくと、1970年当時の無許諾無償というものに戻って認めるということについては将来の課題として検討課題になるのではないかというふうに考えるわけでございます。
 1枚めくっていただきまして、私的録画でございますけれども、これは基本的には録音と前提条件、考え方は同じでございます。30条の適用範囲については30条の適用範囲を除外はしますけれども著作権保護技術の発達・普及によって今度は同様のことが可能ではないか。また、タイムシフトの録画については経済的不利益がない、または経済的には不利益があるという考え方についても経済的な不利益は低いというところで考え方が一致しますから、その部分だけ無許諾無償を認めるということは制度上将来の課題として検討対象になるんだというふうに思うわけでございます。
 したがって、先ほど言いましたように、関係者の意見を総合して、将来における私的録音録画というものを見すえた場合に、この別紙の2ページ、3ページのようなことがそのぎりぎりの合意できる将来像ではないかというふうに思うわけでございます。
 何度も言いますけれども、もちろんこれは理想像ではございませんので、例えば将来的に関係者が合意すれば補償金制度を存続させるということも否定されるものではございません。また、1970年当時に戻って無許諾無償の30条を再び実現させるということも、これも否定するものではないわけでございます。
 また、今ご説明しましたような考え方の変化の転機になるのが、配信事業につきましてはこういった考え方を踏まえて今回の制度改正によって見直しの提案、具体的には30条の適用を廃して契約に任せるべきではないかという提案がなされているわけでございます。また、パッケージソフトからの録音につきましては音楽CDから新たなメディアへの変換が1つのきっかけになるんだろうというふうに考えられます。
 また、放送の録画については、これはいろいろと複雑なことがございますけれども、現在、情報通信審議会の第4次中間答申の中でいわゆる「コピー10」というものが暫定措置として提案されているわけでございますけれども、この実施後のデジタル放送のあり方の見直しが1つの転機になると思えます。
 本日の議論におきましてそれぞれの立場により異論があるのは重々承知しておりますけれども、大局的な立場でお考えいただき、関係者の意見を総合して考えた将来の30条の姿について一定のコンセンサスが得られればというふうに思っております。
 なお、仮に一定のコンセンサスが得られたとすれば、補償金制度はあくまでも過渡的、暫定的な制度であるということでございますので、このことを踏まえまして改めて補償の必要性について考えていただき、また制度の具体的なあり方についても考えていただきたいというふうに思っております。
 特に、具体的に言いますと、地上波デジタル放送における補償の必要性につきましては本委員会でも意見の大きな隔たりがあるわけでございますけれども、コピー制限の緩和の経緯や無料放送の公共性等の性格というような特殊な要因もございますので、本日の議論を踏まえた上で30条の将来の姿を見つめた上でそれぞれの立場で改めてお考えを整理していただけたらというふうに考えております。
 以上でございます。

【中山主査】

 それでは、ただいまご説明いただきました資料1につきまして意見交換を行いたいと思います。ご意見あるいはご質問ありましたらお願いいたします。
 知的財産戦略本部のほうの推進計画によると、制度の廃止も含めて抜本的な見直しについて考えるというふうになっておりますので、20ばつばつ年、いつかわかりませんけれども、一応こういうことを示しておく必要はあろうかと思いますけれども。何かこの点についてご意見ございましたら。
 どうぞ、井田委員。

【井田委員】

 ありがとうございます。この別紙のほうで将来におけるという中で著作権保護技術の発達・普及を前提にというふうにあるんですけれども、私どもの意見書の中でも言わせていただいているのですが、契約等のほかの手段があるかどうかという観点で見てはどうかという意見を出させていただいています。著作権保護技術の発達・普及を前提というのに限らず、必ずしも技術の存在を前提にする必要はなくて、契約等のほかの手段があるかどうかという観点でこの中身を見るというのも必要ではないかなというふうに考えています。

【中山主査】

 恐らく入っていると思います。つまり、契約は技術的保護手段がなければ契約できない、だれでも使われたのではら契約できないので、入っていると思うんですけれども。そこは室長、いかがですか。

【川瀬室長】

 主査のご指摘のとおりでございまして、著作権の保護技術というのもが発達・普及することによって、それに伴って契約対応も変わっていくのだと思います。したがって、その契約の内容を担保するのが著作権の保護技術だとすれば、そこは表裏一体の関係だと思っております。
 ただ、可能性としては著作権の保護技術なしに契約だけでそういうものが変えられないのかというのは、それは多分あるんだとは思いますけれども、ただそういった私的領域における複製をコントロールするためには著作権保護技術と契約というのがこれからは不可分の関係になって発達していくと思います。だから、そういうものを踏まえた上でこういう表現にしているわけでございます。

【中山主査】

 ではもうちょっと契約のことも書いておいたらどうでしょうか。技術と契約というのはやはり今後一番大事な問題になってきますので。

【川瀬室長】

 もちろんこれは概略図なので論点を簡略化するために図示しておりますけれども、仮に報告書という形でまとめる際には中間整理と同様に委員のご意見を踏まえた上で整理をさせていただきたいと思っておりますので。今のご意見は十分承知しているつもりでございます。

【中山主査】

 井田委員、それでよろしいですか。
 亀井委員、どうぞ。

【亀井委員】

 ありがとうございます。
 その関係で、資料1の2007(検討中)という中の、適法配信事業、契約で対応可能と書いてあります。今のお話は恐らく、これは適法配信事業だから30条から抜けるのではなくて、契約で対応可能だから抜けるというふうな表現であるというふうに理解しますと、今のお話はこの契約で対応という部分がモデルによってその上へ上がるといいましょうか、この図の青い部分にまで入っていく可能性があるというふうに理解できるのではないかというふうに思います。

【中山主査】

 どうぞ、室長。

【川瀬室長】

 亀井委員のおっしゃるとおり、先ほど私が言いましたように著作権保護技術が契約対応も変えてまいりますから、私的領域の契約についても一方で技術的保護手段でその利用内容を担保しながら契約するということになっていくわけでございます。
 それで、資料2のところでまたご説明するつもりですけれども、そういう方向性が示されればそういう方向に向かって1つの考え方を整理できるのではないかと思います。ただ、契約で対応可能といいましてもこれはやはりやみくもに著作権の制限規定を外すということではなくて、一般の消費者が利用に困難をきたさないような環境づくりとかそういったものが必要でございますので、その辺は条件整備が整えばということになるんだろうというふうに思います。

【中山主査】

 どうぞ、大寺委員。

【大寺委員】

 川瀬室長にちょっとご質問なんですが。これまでこの場の議論で配信利用ということを所与のものとしてきたんですが、これがもし著作権法改正となると条文、定義の整理ということになろうと思うんですけれども、現在の配信事業の外縁といいますか、それはどんなふうにイメージされているんでしょうか。今の契約とかどういうキーワードで定義をされるんでしょうか。それをお聞きしたいんですが。

【川瀬室長】

 審議会のほうで一応の方向性を示していただければ実際に具体的にどうするかというのは政府で法案を検討するときに検討するわけでございますけれども、軸になるのはやはり有料配信事業ということでございます。有料ということであれば基本的には配信事業者と利用者の間の契約というものが当然行われるわけですから、その契約の中で現状においてもさまざまな条件があるわけでございまして、ただ、それを軸にしまして、例えば無料だけれども広告モデルみたいなものもございますし、さまざまなバリエーションがございますので、その部分についてはさまざまな業界に混乱が生じないのかどうかというようなことも踏まえながら整理をしていきたいというふうに思っております。

【中山主査】

 よろしいですか。
 華頂委員、どうぞ。

【華頂委員】

 3ページの録画のところなんですけれども。毎度毎度こだわるようですが。タイムシフトの視聴について権利制限を認めることは要検討と書いてあるんですが。仮にこの図の世界になったときに、タイムシフトの定義は厳格にしていただくになることになると思うんです。今日見れなかったものを録画して翌日見る。その後それを保存して来年見る、再来年見る。要するにそれはタイムシフトではなくてエンドレスシフトですから、そういう保存視聴までタイムシフトと言われたのでは映画製作者としては非常に困るということを申し上げておきます。

【川瀬室長】

 もちろんそれは将来制度設計をする場合の課題ということで受け止めております。なお、例えば契約モデルで解決をするということになれば、本当に無許諾無償の部分について法律で決める必要があるのかどうかというその必要性のところから議論をする必要があると思いますけれども。そういうものも含めて要検討ということでございまして。
 基本的には30条という私的領域の中の世界でございますので、基本的には消費者の、利用者の方々が不自由なく契約モデルに移行するような条件整備をどういうふうに整えるかということがポイントになってくるというふうに思っております。

【中山主査】

 ほかに。どうぞ、野原委員。

【野原委員】

 今ご説明いただいた資料1は、すばらしいと思います。それは何故かというと、先日出版された中山先生の著作権法を拝見させていただいて勉強させていただいておりますが、その中にも書いてありますけれども。デジタル化、ネット化などが進んで技術面やビジネス面、利用実態などいろいろな点で著作権をめぐる環境は大きく変化しています。今まさに過渡期にあるわけで、著作権の定義やあり方の見直しからやっていかないといけないと書いておられて、そのとおりだと思います。
 そういう変革期であるにもかかわらず、また抜本的に再検討するという位置づけの委員会であるにもかかわらず、この委員会での検討は抜本的とは言いがたく、直近の課題・対策についてのみ、しかも現時点での関係者だけが集まって議論しているという状況で、残念だと思っています。そういう中にあって、今回の資料は2007年現時点の施策だけではなく、少し先の目指す姿をその方向性として示すというスタンスを取っているので、その点で有意義ですばらしいと思います。
 その内容も基本的な方向性としては私はいいなというふうに思っておりまして、その点でもぜひしっかり書いていただきたいと思っています。
 ただ、望むらくは、「20ばつばつ年」ということでは2099年まであるわけで、そんなに先ではと感じますので、大体どれぐらいを目指すのかというような時間的めどが少し書けないだろうか。あるいは、どうやって実現していくのかという具体的な進め方やステップを示唆するコメントを付与できないか。もう一歩突っ込んで議論し書き込んでいけるといいと思います。
 以上です。

【中山主査】

 室長のコメントをいただけますでしょうか。

【川瀬室長】

 今野原委員のおっしゃったように、先ほども私のほうからお答えしましたように、報告書を書く段階でいろいろなご意見を踏まえてというふうに考えております。ただ、私がご説明のときにも言いましたように、もう一度改めて申し上げますけれども、今回は将来の理想像というのを描くということではありません。それぞれのお立場のお考えがあるんだと思いますけれども、ただ、そういう意味で今回はそれぞれのご意見を踏まえた上でぎりぎりコンセンサスができる最低限といいますか、大局的な立場に立った考え方として、1つ将来のところに仮り置きをすると。したがって、私が言いましたように、将来の状況の変化によって関係者が今一度合同して補償金制度を残すという例えばコンセンサスがあれば、それはそれでいいんだと思いますし、また、昭和45年の姿のほうがいいんだということのコンセンサスができればそういう選択肢ももちろんあるんだと思います。ただ、この2年余り議論をしてまいりまして、今直ちにそういうコンセンサスができるとも思いませんので、そういうことであればそれぞれの立場の方々のお考えを踏まえるとこういう姿かなというふうに思います。
 それから、そういう方向でとりあえずは考えていけばどうかと。特に配信事業などが一方の考え方が将来像を踏まえた上での第一歩の考え方だと。それ以外の利用についてはさまざまな環境整備も必要でしょうから、そういうものを考慮しながら考えていくということだというふうに思っております。

【中山主査】

 野原委員のおっしゃることももっともなのですけれども、なかなか技術の動向が定まらないという点もあるし、恐らくこれ私的録音録画だけではなくて、デジタル化、インターネット化すべてに関係してくるので、先のほうで大改革になると思います。なかなかばつばつ年がいつかというのはちょっと難しいんじゃないかという気もいたします。
 では、津田委員。

【津田委員】

 今の野原委員のお話を受けてという形になると思うんですが、この委員会で何回か前に中山主査がおっしゃったように、どうしても現状の今の私的録音録画補償金制度というのが中二階的なところである、そういう制度である。今日配られたこの資料1というのがそのまま20ばつばつ年というのを向かうところが多分二階であるとは思うんですが。ただやはりその二階に向かうという方向がやはりDRM契約で解決するというのが資料1の基本的な方向だと思うんですけれども。
 恐らく私的複製という問題をどう解決するのかということを考えたときに、こういう1つDRMや契約で解決していくというのがもちろん1つの手段としてあって、もしくはやはり補償金で今までのように解決するのかという、その二者択一だと思っているんですよ。そのDRM、契約というのも進めて、さらに補償金も拡大してというそういう選択はないと思っていて、どちらか一方の話だろうというのがこの話の基本的なところにあると思うんですが。
 ただ結局、じゃあこの資料1でまとめられている方向のDRM、契約で解決する方向に向かうという方向が果たして本当にできるのかなというのが根本的な疑問としてあって、やはりそのDRMですべて解決、補償金なしという世界になるのかなというのが現状を見ているとかなりやはり疑問に思わざるを得ないと。どうしてもDRM技術というのが破られてしまって、それに対して権利者側なり機器メーカーが対応してという、今はいたちごっこ状態になってますよね。あれだけ強固なDRM、デジタル放送は破られないといわれたのが、今はフーリオという機器が出てきて実質的にコピーワンスをも動かせるような機械というのが市場に出回りつつあったりとか、あとは音楽CDであれば音楽CDにDIMをかけようというコピーコントロールCD、もしくはネットでオンラインで認証を行ってポータブルプレーヤーに対してコピーの回数を制限するDRMで解決するというレベルゲートCDといったものも出てましたけれども、これもやはり実質的に市場からなくなってしまって撤退したという状況になっていて。
 そういったDRMがどうしてもいたちごっこになるという現状ももちろん環境的要因としてありますし、その先に考えなきゃいけない話としては、すべてのコンテンツがオンライン前提にならないというのは僕は当分本当にこないと思うんですよね。どうしてもレガシーなコンテンツビジネス、コンテンツビジネスを考えるときにレガシーなパッケージというのは残るわけで、レガシーな機器も残ると。そういう状況でオンライン前提の世界になればそれは、オンラインがほとんど前提のコンテンツビジネスになれば一回ユーザーが私的複製するたびに10円徴収しましょうみたいなそういう仕組みができればもしかしたら全部契約ベースになるかもしれないんですけれども。現実ユーザーが私的コピーしたときに10円取るみたいな仕組みというのは存在しないわけですよね。まだ小額決済すらほとんどまとまってない状況で。
 逆に、僕はそういうものが本当に現実にできるのかというのが現時点でかなり疑問がありますし、逆にそういったものがきちんと完成しました、ほとんどの人がコンテンツはオンラインで楽しめますと、そういう世界になった時点で逆にDRM契約ベースで補償金なしという制度をそのときに改めて考えたほうがいいんじゃないのかなというのがあって僕が思うところで。
 先ほど野原委員から期限決めて、20ばつばつ年のある程度目標的なものがあったほうがいいんじゃないかというお話ありましたけれども、やはりかなりレガシーな機器ってすごく寿命が長くて、この現行著作権法が制定された1970年代の終わりぐらいにVHSというビデオが出てきて、今はまだVHSって残ってますよね。まだ当分少なくともあと数年はもつだろうと。2011年に放送はアナログは廃止してデジタルに移行するといってもやはりそのDRMを外すような機械も出てきてという状況ですから。
 そういう意味でもやはり契約ベース、DRMベースでコントロールできる世界というのは当分来るのはかなり先なんじゃないかなというのがありますし。音楽CDについていっても、1980年代の初頭に出たものが今だに現役できちんとこうやって売られているという状況があるわけですよね。
 結局そういう状況があるときに果たしてこの資料1の20ばつばつ年の二階に向かっていく方向かCD契約、DRM契約ベースオンリーというそういう選択肢でいくのが正しいのかという根本的な疑問が僕はちょっとあって。
 それで結局何が言いたいのかというと、補償金制度というのをその枠で考えたときに、もし二階に目指してもなかなか行けない、本当に数十年、これ本当に2090年とかそれぐらいまでかかるかもしれないという状況になったときに、であれば、僕はだから全体的なバランスで見たときに今の現状の中二階である補償金制度というのは問題はありつつも、いろいろな改善すべき問題はありつつもそれなりにやはりバランスはとれている制度だとは思っているんですよ。
 結局この委員会という自体がもうあとほとんど残りも少ない、どっちにしろ時間がないという部分があったときに、現に目指すべき二階の方向性というのは僕は結構定まってないと思っていまして、だったらやはり、前にも申し上げましたけれども、現状維持でいいんじゃないかと、とりあえず、そういう結論というのもちょっと検討していただけるとありがたいなと思います。
 以上です。

【川瀬室長】

 津田委員の意見は私どもよく理解はできます。ただ、今それぞれの立場の人がそれぞれの立場を主張し始めると今まで十分議論してきましたんですけれども、この2年余り議論をして、そこのところがかみ合わないというところでございますので。ここはやはりそれぞれの立場があろうかと思いますけれども、1つの仮り置きというような形でございますけれども、私どもが提案したような考え方を1つ置きつつ考えていくと。
 その間いろいろな情勢の変化その他がございますから、これが先ほどから何度も説明しますように理想だというふうには多分この委員会では言えないと思いますので、その状況の変化によってまた1つ先の目標が変わるということもあり得るかもしれませんけれども、とりあえずこの小委員会としてはこういうような1つの考え方を将来に見すえた上で、そこに向かっていろいろな環境整備を整えていくと。その間の暫定措置として補償金制度をどうするのかというものを、これは本日の議題ではございませんので改めてもう一度議論していただければというふうに思っております。

【中山主査】

 繰り返しになりますけれども、補償金制度の廃止も含めて抜本的な改革をするというのが至上命題になっております。なかなか大山鳴動してネズミ一匹というわけにもいかないと。かといって今すぐ抜本的な解決もできない。それで20ばつばつ年の一応の姿を示さなきゃいけないのですけれども。20ばつばつ年になったときにこの文書が拘束力を持つということもないわけですので、大きな問題はないように思えます大方の賛同の得られるあたりでいこうかと、これでどうかと、そういう文書だと思っております。
 それでは、椎名委員、どうぞ。

【椎名委員】

 長い間の議論から先に進むという意味ではこういう整理しかないのではないかなというふうに思っています。今津田さんのおっしゃったことともかかわるんですが、20ばつばつ年と書くということは、要するに仮り置きをした目標値に対して、それに到達しなければならない時間を置くわけではない、例えば到達しなければならない時間を置くとすれば2050年を目処にとかという書き方になるんだと思うんですが、やはりそれを書かないことによって、例えばDRMが今後どういうものが出てきてどういう契約システムが出てくるかわかりませんが、その補償金制度とDRMの択一という意味で、どちらが世の中にとってよりリーズナブルで賢い選択なのかというのも絶えず選択し得る余地を残してこのまま進んでいくということで考えればよろしいのではないかと思います。
 基本的に補償金がなくなることというのは、30条1項がなくなること、このことをきちっと踏まえておく必要があると思うんですね。権利者が言うのも何なんですが。やはり音楽文化、映像文化の中での30条の役割といったものを踏まえながら、補償金の廃止もしくはDRMの活用ということを考えていった上で、何を選択することが一番いいのかというのは絶えずどの時点でも選択できる形で進行していくのが望ましいと思います。

【中山主査】

 ありがとうございます。
 ほかに。どうぞ、石井委員。

【石井委員】

 私も基本的には今の時点でこのまとめ方というのはこれでよろしいのではないか、大変上手にまとめていただいたのではないかと思っています。その上で一言意見を言わせていただきますと、特に放送の場合、放送法で、公共の福祉のためですとか民主主義の発達のためにですとか、そういうことが最大の目的になっているわけです。そうしますと、今後DRMですとかあるいは契約というものをどう考えていったらいいのか、そういうことも放送の目的からあわせて考えていかなければならないかと思います。
 一方で、放送をやっていくためにはいろいろな、特にプロの関係の方々、出演者の方ですとかにはやはりそれなりの経済的なものは必要なわけですから、そういうところのバランスというか配慮というのは今後とも検討が必要になっていくのではないかなと、そういうふうに考えております。
 以上、意見です。

【中山主査】

 ありがとうございます。
 では、ほかに。河村委員。

【河村委員】

 今日出てきました案の中で、録音に関しては30条の適用除外とするとか、録画に関しては30条の適用除外とするというふうに書かれているんですけれども、右下のプレイスシフトのための録音ですとかタイムシフトのための録音のところにこめじるしがついていて、このあたりがグレイなのかなと感じております。これは30条が残っていて、その中にプレイスシフトやタイムシフトが入るという意味でございますか。

【川瀬室長】

 すみません、ご説明不足でございまして、この意味というのは現行法の30条は基本的には廃止をしますけれども、そのタイムシフトのための録音やプレイスシフトのための録音については別途といいますか、別途無許諾無償のエリアを残すという意味でございます。
 言い換えるなら、タイムシフト、プレイスシフトについて無許諾無償の複製以外は30条を縮小するといいますかそういう言い方も可能だと思いますけれども、その部分については将来の検討課題だろうということです。
 といいますのは、この場でもタイムシフト、プレイスシフトに関しては経済的不利益はないんだという意見、また経済的不利益があるという意見でも不利益の程度は非常に低いのではないかというところで意見がありますので、その消費者の利用というものの便益というのを考えてその部分を残すかどうかについては1つの考え方があるんだろうというふうに思っているわけでございます。

【河村委員】

 わかったような、わからないようなことでございまして。なぜ一回30条をなくさなきゃいけないのか。ここに書かれているような、30条から抜いていかれるものもあるけれども、残ったタイムシフト、プレイスシフトは今の30条のままで、そこに入っているということでもいいんじゃないかと思います。なくすべきは、補償金の規定のある第2項ということになるのかもしれません。
 といいますのは、皆さんが、たとえば椎名さんなどがおっしゃる補償金がなくなるということは30条がなくなることだという考え方を、消費者は受け入れることができません。その、何か交換条件みたいなものではない未来を描くというのが私がずっと考えていたことなんですね、実は。
 それで、いつも何かそもそも論のところでぶつかってきたのですが、あまり残された回数がないようなので、消費者として一番現実的な形、もちろん権利者の方とは相容れないかもしれませんけれども、私が描く将来像というものを申し上げたいと思います。契約とDRMによっていろいろな回数の制限と共に課金することができるというのも選ぶことができ、一方で、例えばCDであればクリエータの方がもうそれでいいんだというふうにして納得づくの上でDRMのかかっていないものを出した上で、30条の中で自由にできる、補償金なしでできるというものです。それはクリエータの方が、ユーザーの私的な範囲で、もともと私的な範囲という話なんですから、私的な範囲においては自由にしてよいと認めるということです。でも、それが嫌だというクリエータの方は複製が何回かしかできないCDを出せばよろしいですし、コピーのできないCDを出すことを選択することもできる。それは録画も同じでございます。そういう考え方が一番いいと思っていました。
 それで、もう1つ先に進めますけれども、これまで補償金が全く今なしでという言い方をするとそこから先に一歩も進めなかったわけですけれども、じゃあ仮に、私初めて申し上げますけれども、仮に補償金があるとした場合の話をいたします。いつも私がとても抵抗を感じてましたのは、津田さんがときどきおっしゃることにも関連するんですけれども、補償金があることによって自由に複製ができるのだったらある程度補償金を払うほうが選択肢としてはよいというふうな考え方についてです。私が一番そこで引っかかるのは、現状のままでその考え方をとった場合、録画で例をとれば一番わかりやすいと思いますけれども。デジタルになって地デジになってコピーワンスになったときも、コピーワンスになるという非常に厳しい複製制限を消費者は押し付けられた上で、それでも補償金は必要だというわけです。つまり回数はどんどん権利者の自由に狭めていくことができて、残った少ない録画の自由さにも、録画ができる以上は、録音できる以上は補償金が必要だと言われる。それはもう消費者にとっては、百歩譲ってですよ、コピーフリーでしたらある程度の補償金ということにも根拠がないことなないと私は思います。しかし、コピーワンスであろうと何だろうと私的にできる限りは補償金が必要だと言われるのであれば、そこをどんどん突きつめていくとCDだって一回しかコピーできないけれども、そこにはまだ私的な録音ができるじゃないかと言われ、補償金をとられるということを意味しているわけですね。私はそういう将来が消費者にとって幸せだとは思えないんです。クリエータの方にとっても幸せだとはとても思えないわけですね。
 ですから、主婦連合会のパブコメにも書いたんですけれども、DRMが私的録音や録画の世界を埋め尽くす日を待って補償金がなくなるという、そういう将来を描くということ自体が私は余り幸せなことだと思っていまっせん。その辺は多分津田さんとは一致していると思うんですけれども。そこに30条があって、私的に録音録画ができて、それはクリエータの方もそれを無許諾無償として納得しているというようなそういう世界。それが嫌な方はほかに選択肢があるという世界があればいいなと思っております。
 その損得については、いつも経済的不利益があるないとぶつかりますけれども、そのとき初めてクリエータの方は真剣にどちらが得かを考えることになるだろうと思います。例えばテレビからの録画に補償金がなかったら、映画業界の方は、私たちは地上波には映画を流さないんだとおっしゃるかもしれませんが、本当に補償金がない世界になったときに地上波に流すほうが得か流さないほうが得かを真剣にお考えになる日が来るんじゃないかと思っているんです。でも、現実にはそうではなくて、一回でもできたら補償金だと。そういうことを押し付けられる以上は、補償金と、狭まっていく私的録音録画を同時に受け入れていく世界を描くことになるので納得できませんでした。
 それからもう1つ、録画のことについてはまた別の機会にテーマがありますでしょうか、将来像についてではなく。

【川瀬室長】

 補償の必要性はまた。

【河村委員】

 ありますか。では、そのときに申し上げます。

【川瀬室長】

 私は河村委員の意見も意見としては尊重したいというふうに思います。DRMにつきましてはこれはやはり市場が決めるんだと思います。まさしく消費者の方々が受け入れる著作権保護技術がないとこれは市場に流通しないと思うのです。例えば一番最近の事例ですとCCCD、コピーコントロールCDということでパソコンでコピーができないようなCDも一旦出回りましたけれども、そういったものも多分市場が受け入れなかったからもう廃止されたということでございますので、著作権の保護技術については市場との関係でリーズナブルなその保護技術が流通するんだというふうに思います。
 その保護技術の中で保護技術のあり方によっては今委員がおっしゃったように、自由にコピーしてもらってもいいという人もいるし、そうでないという人もいるから、そういうようなことによって例えば著作権の保護技術が仕分けをされるということもあり得ると思います。
 また、補償金のようなどんぶり勘定の制度が問題だということでございますので、そこは契約ベースでやればいいと。ただ、契約ベースでやるといっても1970年のような無許諾無償の世界に一旦戻した上で契約でやれというのはなかなか難しゅうございますので、そうすると30条というものがその契約ベースでやれるということであれば30条を撤廃した上で契約ベースでやり、権利者もさまざまなお考えの方がおられますから、その考え方を踏まえた上で契約をすればいいと。
 したがって私どものこの資料にこめじるしがありましたように、使用料を取らないという選択肢も当然あり得るわけでございます。自由にコピーしていただきたいという、これは権利者の選択に任されるわけでございます。
 したがって、一方的に消費者が不自由なといいますかというような世界になるというふうには私どもは思っておりません。例えばそういう世界になって何か余計な手間をかけてやるようなシステムというものは、これは市場が受け入れないと思うわけでございます。
 30条があるから補償金制度があって、補償金制度についてそういうようなお考えが出てくるわけでしょうけれども、そこのところは委員がおっしゃるような、必ずしも消費者がそういう場合に不自由な世界になるというふうには思っておりませんで、1つの新しい秩序を描けるのではないかなというふうに思っております。
 何度も申し上げますけれども、その過程の中でいろいろな議論がこれから将来にわたって起こると思いますので、それはそれによって著作権保護技術の発達の状況、それから国民の意識の変化、それから関係者の意識の変化等によって別の選択肢をその時点で行うということも、これも全然問題ないというふうに思っております。

【中山主査】

 ほかに。どうぞ、亀井委員。

【亀井委員】

 今日お出しいただいているこの資料は立場のいろいろな違いをある意味1つ1つの言葉をどう読むかというところがこれからのことだということで、そういうものを包摂した非常に合理的な案だというふうに存じます。
 先ほどのばつばつをいくつと読むかということもそうですが、この将来像ということで別紙1、別紙2にあるものが、これがすべて満足するとばつばつ年が来るということなんだろうと思いますが、1つ1つ見るとこれは順次そういう状況が達成されていくんだろうなという理解いたします。配信事業者のところというのは今回の改正でここが抜けるというふうに仮に読むということであれば、これは順次達成されていくものだろうと、そういうつもりで拝見するということだと思います。
 それから、技術的保護、あえてDRMとは申しませんが、技術的保護か補償金かというような選択肢という中で、メーカーの立場といたしましては、これはやはりイノベーションを生むという意味では補償金ではない世界へやはり順次移行していくというのが筋ではないか。そのほうがより世界のためには得るべきものが大きいのではないかというふうに思います。

【中山主査】

 ほかによろしいですか。どうぞ、生野委員。

【生野委員】

 音楽配信の世界でDRMフリーという形が出てきて、じゃあこのままDRMフリーで一直線にいくかというと、非常にまだ見えない状況でして、それぞれのレコード会社が試行錯誤している状況だと思います。そういったトライアルの中でユーザーに支持されて権利がきちっと確保されるのがどういうものなのかというのは、これは市場の評価で決まってくることだと思います。
 パッケージに関しましてはCDが発売されてから25年、これまでのパッケージの歴史からすると、アナログレコード、それからカセット・テープは約30年でほとんど寿命が尽きているわけなんですが、CDに関しては30年近くになってもまだメインストリームのパッケージになっている。では、これがいつ次世代パッケージに切り替わるかというと、これも全くわからない。まさに現状は配信にしてもパッケージにしても中二階の状況だと思います。
 こういう状況において、この20ばつばつ年に仮にこうなったら制度としてはこうなるということを示していただいたのは、現在の対応をどうするのかということを検討するのに対して非常に意義のあることだと考えます。
 以上です。

【中山主査】

 技術も変わるしビジネスモデルも変わるし、それによって人の意識も変わると思いますので、このばつばつ年につきましてはこのぐらいでよろしいでしょうか。次の議題も用意されておりますので。
 この点何か特に。よろしいですね。
 それでは次の議題に移りたいと思います。資料2、「著作権法第30条の適用範囲の見直しに関する論点の整理について」、事務局から説明をお願いいたします。

【川瀬室長】

 はい。資料2は今整理した資料1も踏まえまして、本日は30条の適用範囲の見直しに関する論点について少し議論を整理し、今までの意見書も踏まえた上で整理をしたいというふうに思っております。
 まず最初に、違法複製物や違法配信からの録音録画の取り扱いでございます。これはお手元の中間整理でいいますと104ページから105ページにその記述があるわけでございます。中身についてはご承知のとおりでございますので、105ページの上を見ていただきますと。違法録音録画物や違法サイトからの私的録音録画につきましてはその104ページの理由から30条の適用除外することが適当であるとする意見が大勢であったということでございます。
 それから、その下のところを見ていただきますと、これに対してということで、海賊版の作成や著作物等の送信可能化、または自動公衆送信の違法性を追求すれば十分であり、適法、違法の区別も難しい多様な情報が流通しているインターネットの状況等を考えれば、ダウンロードまで違法とすることは行き過ぎであり反対であるという意見もあったところでございます。
 それから、それを踏まえてさまざまな方からご意見も頂戴をしているわけでございます。その意見書の意見も踏まえ、まず中間整理の内容も踏まえまして、(1)でございますけれども、これは改正の必要性について、やはり事務局で整理しますに、これらの利用については一般に通常の流通を妨げる利用であり、国際条約、先進諸国の動向等から勘案すれば30条の適用除外を対象外とする方向で対応すべきと考えられるが、どうかということでございます。
 これは先ほどご議論いただきました30条のあり方について将来像も見すえた観点からの考え方も含まれるわけでございます。
 また、机上に配付しておりますファイルがございますけれども、そこに14回のところに関係団体の意見がございます。その中で、8ページからでございますけれども。ここに違法録音録画物や違法サイト等の私的録音録画の意見がございます。その中で権利者団体の方についてはほとんどすべての団体から適用除外に賛成ということになっております。それが8ページ、9ページあたりでございます。それから、10ページにいきますと、中ほどぐらいから反対ないしは慎重という意見があるわけでございます。また、12ページにいきますと違法サイト、適法サイトの区別、それから技術的論点、送信可能化権による対応について個別に意見を整理しております。14ページ、15ページも架空請求の恐れ、それから30条の適用範囲の除外とする範囲についてと、このようなさまざまな意見が出ております。
 そういうことを総合しましても、やはり30条の適用除外とする方向で対応すべきと考えるがどうかというのが第一の整理の要点でございます。
 また、2としまして、ファイル交換ソフトによる違法配信からの録音録画につきましては、違法な送信可能化や自動公衆送信を行うものを特定することが困難な場合がありまして、送信可能化権や公衆送信権では十分対応できないということです。したがって、送信可能化、公衆送信、それからダウンロードという両面から抑制する必要があるんだろうかというふうに考えられないかどうかという論点があるのではないかというふうに思います。
 それから、(2)の利用者保護でございますけれども、これは先ほど言いましたように、権利者団体等からは賛成という意見が多数寄せられていますけれども、特に一般の個人の方々から30条の縮小については慎重ないしは反対の意見が出ているわけでございます。
 例えばその意見書の10ページを開いていただきますと、例えばダウンロードしたファイルが違法なものであるかどうかはダウンロードした後でなければ厳密にはわからないとか、ダウンロードした後であってもそれが違法なものであるかどうかを区別するのは難しいとか、ユーザーがダウンロードした時点で違法サイトと承知していたかどうか特定するのは難しいとか、さまざまな意見が出ているわけでございます。
 したがって、ここから読み取れるのは、やはり利用者が知らず知らずのうちに法律違反を犯しているというようなことになるような問題があるのではないかと。また、それをダウンロードするときにそういう判断ができないのではないかというような危惧があるというふうに考えられるわけでございます。
 したがって、1で法律の改正の必要性はあるのだとは思いますけれども、利用者保護についてはやはり意見書を踏まえれば、特に厳密に注意したその法の執行、運用というものが必要になるのではないかというふうに考えられるわけです。
 例えばですけれども、次の措置ということで、アでございます。仮に法改正された場合における法改正内容等の周知徹底ということで、新たなその30条に関する内容について政府ないしは権利者側がさまざまなチャネルを通じて一般の方々に周知を徹底し、法律の中身が変わったということを周知徹底をするということです。
 それから、イでございますけれども、イは例えば権利者側のホームページやそれから広報活動を通じて、例えば特にこれは着うたの違法サイトのような場合に該当するのではないかと思いますけれども、権利者が許諾したコンテンツを扱うサイト等に関する情報の提供。例えばこういうところであれば適法にやっておりますのでというような案内。これは反対にいうと、違法サイトを網羅するということはなかなか難しゅうございますので、適法サイトについての情報を提供すると。
 それから、警告とか執行方法の手順に関する周知、そういった中で例えば詐欺的行為の防止ということで、例えばいきなりお金をここの口座に振り込めというようなことはないですとか、そういったものもあわせて周知をして、その執行手続の明確化をはかると。
 また、そういう相談窓口の設置というふうなことなど、執行に当たっては十分権利者側が配慮するというようなことが必要ではないかと思います。ウにつきましては中間整理の中でも推進を求めていますように、適法マークの推進ということがあるように思います。
 そういった執行上の問題について十分消費者の疑念を解消するような措置をやるというようなことをあわせて求めるということでどうだろうかということでございます。
 なお書きについては、これは確認的な意味でございますけれども、民事訴訟するかどうかというようなある委員のご質問にその可能性はないとは言えないというようなやりとりがあったように私記憶しておりますけれども、仮に訴訟を提起するというような場合におきましても、一般に立証責任は権利者側にありますので、いきなり訴訟ということはないわけでございまして、実務上は権利者は利用者に警告をした上で法的措置を行うということになりますので、利用者が例えばうっかりミスとか間違いでやっていればそういったものがくるときにやめれば問題なくなるわけですから、利用者が著しく不安定な立場に置かれ、保護に欠けるということにはならないのではないでしょうかということでございます。
 また、そのことについては法律においても現在の中間整理の提言ですと、例えば違法複製物等からの録音録画であることを知って行う場合に限定をするということになっておりますので、法律的にも担保できるというふうに考えられるけれどもどうかということです。この辺は報告書の段階で明記するということになろうかと思います。
 また、(3)と(4)は、これはこの小委員会で結論を出すというものではございますけれども、ストリーミングに伴うキャッシュの問題について個人の意見を中心にさまざまな問題提起がされておりますので、そこら辺は著作権分科会報告書における一時的固定に関する議論の内容等を踏まえた上で必要に応じ、紛れがあるのであれば制度改正で対応するということでどうかということでございます。
 また、適用対象外の範囲の問題につきましては、これは一応中間整理では録音録画に限定をして考えるということになっておりました。ただ、この問題につきましてはソフト関係の団体、それからその会社、それからまた経団連の委員会等からも再考を促す問題提起が行われておりますので、コンピュータソフトについてはダウンロード被害が大きいというふうに言われておりますので、それが資料等で明らかになれば、30条の適用対象外にすべきであるというような意見も1つ理由があるのではないかというふうに思いますので、これについてどう考えるのかということです。
 これについては多分私的領域の複製一般につきましては法制問題小委員会でも検討するということになっておりますから、仮に問題提起ということであればその本小委員会から法制問題小委員会に問題提起をするという形になるというふうに思われます。
 それから、2の適法配信事業から入手した著作物等の録音物・録画物からの私的録音録画でございます。これも添付資料の意見書のつづりを見てもらいますと、16ページから17、それから18ページにかけてでございまして。これに対しては、適法配信事業については権利者団体の中で賛成の意見もございますけれども、いくつかの権利者団体から慎重な意見、反対ということではないんでしょうけれども、慎重な検討を望むという意見が出ております。
 また、原則賛成としつつも有料放送やCDレンタルのようなものにも検討の対象としてさらに検討すべきであるという意見も出ているところでございます。
 これも今資料1で議論いただきました考え方から前提にしますと、配信事業に限らず契約で対応できる利用形態については契約に委ね、将来に向かって諸条件が整った利用形態については30条は縮小するという方向で考えるということでよいだろうかということ。
 それから、(2)につきましてはレンタル店から借りた音楽CDの録音とか、有料放送を受信して録画については、これは中間整理のまとめの段階でも相当議論がされたところでございます。ただ、契約環境が整っていない等の問題がございますので、今直ちに30条の適用除外するということは困難だというふうに考えられますので、将来の課題とすることでどうかということでございます。
 ただ、これは1との関連がございますので、将来の方向性というものは30条は縮小という方向ですから、それを踏まえた上で現状においてはやはり契約環境が整っていない等の問題で難しいのではないかという位置づけになるということでございます。
 以上でございます。

【中山主査】

 ありがとうございました。
 それでは、意見交換に移りたいと思いますけれども、ご意見あるいはご質問ございましたらお願いします。
 どうぞ、松田委員。

【松田委員】

 事務局の説明に少し補足させていただきたいと思いますけれども。資料2の整理についての、1ページでございますが。利用者が違法サイト等ということを知らないで執行されてしまうのは確かに不安定でありますので、それは私もちゃんとしなければいけないなと思ってはおります。
 ここには知って行う場合に限定することとしているというふうにしておりますので、恐らくこれで事務局が説明するところの利用者の保護といいますか安定性は確保できるのではないかなというふうに思っております。
 ただ、記載の仕方としては30条の例外規定の形をとったら立証責任は全部権利者側にあるというわけでは私はないと思いますので、この立法の仕方については今の点を踏まえて検討すべきだろうというふうには思っております。

【中山主査】

 利用者保護の一番上にくるのは、言葉は故意となるのか、情を知ってとなるのかは別として、主観的要件を課すという点だと思います。恐らくその点が一番のポイントで、なおの部分の括弧書きのところが本当は一番上にくるのがいいのではないでしょうかね。

【松田委員】

 そう、これが一番良いと思います。

【中山主査】

 ほかに何かございましたら。どうぞ、津田委員。

【津田委員】

 (2)の利用者保護については今までさんざん僕もここで話してきたことだと思うので、ここはもう僕はいいです、言うことはないです。ただ、逆に最後に近くなってきたので、(1)の改正の必要性というところの議論を最後にさせていただきたいなと思うのが。1のほうで国際条約、先進諸国の動向などを勘案すればというところがあるんですけれども。この国際的潮流というのが結構僕は危険なキーワードかなと思ってまして。それは当然日本とアメリカとヨーロッパ、国によって違法コピーされている状況とか法制もそうでしょうし、技術的保護手段というのも全く違うわけですよね。本当に先ほどの河村委員のお話とこれはほとんどかぶってくる世界の話なんですけれども。結局まずテレビ放送というのを考えたときに、世界中で放送にこれだけ厳しい録画制限、コピーワンス、ダビング10ということも含めて公共放送から普通の地上波までかけているというのはもう日本だけですよね。日本以外の国では基本的には放送の録画、コピーというのが自由にできるようになっている。しかし補償金というのも取るというのが今の日本の状況で。
 ある意味そこは技術的保護手段というところで非常に欧米と比べて日本は保護されているわけですね、テレビというところに関していえば。だけれども、国際的潮流にあわせろというようなところがあるのは、それはやはり僕はもともと前提条件が違うと思います。
 またもう1個、きのうの権利者団体さんたちの記者会見なんかでも出た話だとは思うんですけれども、欧州ではきちんと補償金の金額が多くて、あっち並みにしなければいけないんじゃないかなという議論もあったかと思うんですけれども。それはまたその経済的な話でいえば、ヨーロッパというのは大きなPCメーカーですとか家電メーカーというのも日本と比べるとそんなに多くないわけですよね。もちろんないことはないですけれども、アメリカとか日本と比べるとそういった大きなメーカーがないというときに、ある種私的録音録画補償金みたいなものがヨーロッパ、EU諸国にとっては外資から金を還流させてくる、そういう外資規制というふうに使われているとそういう背景事情もあるわけですよね。そういうときに単純にその対象がヨーロッパでどんどん拡大されて補償金増えてるんじゃないのかなというのだけを取り上げて国際的潮流としてみなすというのはちょっとおかしいんじゃないのかなというのはあると思います。
 実際にアメリカというのは非常にアップルが今成功してますし、家電メーカーの力というのも非常に強いですから、そこがじゃあ今補償金の対象を拡大しましょうかというふうな動きにはやはりなってないわけで、やはりその辺のバランスによって著作権の保護法制とかものというのは決まっていくんだと思っています。
 そういうときに一概に当然日本とヨーロッパでは違法ダウンロードのP2Pのトラフィックとかの割合どうかというのも全く違いますし、そういうときを考えたときに、やはり改正の必要性というのを考えたときに十分国際的にどうなのかというのはやはり考えなければいけないというところもあると思います。
 もう1つ、2番のところにもあると思いますけれども、結局経済的不利益がどれだけあるのかというところに戻ってきてしまうんですけれども。違法サイトからの録音に関していえば、今着うたフルというものに対して違法着うたというのが非常に大きくなっていて、それが経済的に不利益を存在しているということはありつつも、今じゃあ現実に日本レコード協会さんが公開している数字を見れば、今年の上半期の有料音楽配信で着うたフルというのは前年比の2倍ぐらいに伸びているわけですよね。経済的には非常に成長しているというところがありますし。
 もっといえば、技術的にはもう今NTTドコモもauもソフトバンクの携帯も最新の携帯だとパソコンと接続してCDからリッピングした楽曲というのはiPodみたいに携帯に転送してウォークマン、MP3プレーヤーのように使うことができるわけですよね。
 そういう状況があって、日本にはレンタルCDという特殊なサービスもありますから、レンタルで借りてくれば300円ぐらいで安価な形で違法ではない、非常に安い形での合法着うたという環境が、着信音には設定できないにしてもそういうものができるというところもありますし。非常にそういう意味で経済的不利益というのも、実際に市場として伸びているときに、これがじゃあダウンロードの30条から外すことによって今2倍しか伸びてないものが5倍になります、10倍になりますなんていうのはそれはそんなことないでしょうというのが僕の感覚ですし。
 僕はやはり本当に改めて言うまでもないですけれども、そもそものこの改正の必要性というのを僕は感じていません。先ほど生野さんのほうもおっしゃっていたDRMフリーという配信が今欧米中心に始まっていて、レコード会社というのも新たなビジネスモデルを模索して試行錯誤している段階、それは僕もそのとおりだろうと思います。
 それで、生野さんがおっしゃったことのすごいポイントは、非常に市場の評価が決めることだろう、これが本当に多分僕はポイントだと思っていて。やはりこういった30条の適用範囲の見直しということが著作権法を強化して保護していきましょう、コピーして規制していきましょうというような流れがどんどんこの形で強化していったら、僕本当に消費者は音楽もう買わないわ、テレビ見ないわ、映画も見ないわという方向にいってしまうと思いますよ。それは本当にこの前のパブリックコメントの結果が、数字だけがすべてとは言わないでしょうけれども、少なくともともあれだけこの委員会に対して送ってきた人がいるというのはそれなりに僕は重く受け止めてほしいと思うし、逆に本当にこのままこういった形で著作権法を強化していって、保護を強化していって消費者が音楽買わなくなっていいんですか、映画見なくなっていいんですか、テレビ見なくなっていいですかというのを僕本当に最後に権利者の方々に問いたいなと思います。
 以上です。

【中山主査】

 どうぞ、華頂委員。

【華頂委員】

 津田委員のほうから今違法流通に関する被害額みたいなことを言及されたんですけれども。映画の場合は2005年に日本での海賊版の被害額をアメリカのリサーチ会社が算出しまして、それが800億円ですね。邦画が400億、洋画が400億、約半分ずつ、そういう数字を出しました。今は動画共有サイトなんかもあるので、もう少し増えていると思いますけれども。
 一般的に映画の違法流通がどんなふうに行われるかというと、大体ネットなんですね。最初にファイル交換ソフトに乗りまして、それをいち早くダウンロードする人間が何人もいて、その中のある者は違法にDVDを作成してどこかで売る。それから、動画共有サイトにすぐにアップする者がいたり、そういうのをリサーチしていると、動画共有サイトではそれを今ダウンロードできますから、映画がアップされると賞賛の嵐ですね。こんなクオリティの高い貴重な作品をよくぞアップしてくれた、ありがとう、そういうふうな賞賛の嵐。
 これ一見するとネズミ小僧を賞賛する市井の人々みたいな感じなんですが、冷静に考えてみると、権利者は悪徳商人でも悪代官でも何でもなくて、善良なクリエータなんですよ。非常に困っている。
 津田委員は30条の適用範囲の見直しを一貫して反対されていますけれども、そんな映画の800億ぐらい関係ないだろうとおっしゃるのか何かわかりませんが、もしもこの30条の範囲の見直しをしなくていいというならば、今言ったような映画の現実、これに適切に対処する方法を教えてほしいんですけれども。

【津田委員】

 そもそも800億の被害額というところで、じゃあ無料で見れるという。やはり無料で見れるからこそ見ているというユーザーはかなり大半だと思うんですよ、僕は。じゃあそういうユーザーがネットに上がってこなくなったら映画館に足を運ぶかDVDを購入するかといったら多分購入しないだろうなというのは僕の感覚としてはまずある。
 今華頂委員がおっしゃったみたいに、ではどういう対策をすればいいのかといったときに僕は逆に聞きたいのが、僕は利用者保護の話になってしまいますけれども、ダウンロード違法化になりました、30条が変わってダウンロード違法化が実現したというときに、ある種啓蒙効果以外に、具体的にでは僕が何かしらの違法なコンテンツ、映画をダウンロードしているということをどうやって証明するんだというのはものすごくつきまとう話ですよね。あいつは怪しそうだから家宅捜索して見てやれみたいなことというのは実際にできるわけないわけですし。どうやってそれを証明して、警告を行うにしても。アップロードというのはちゃんとアップロードしたときにきちんとISPのほうにログが残りますからダウンロードに比べれば全然特定も簡単ですし、僕はそっちのほうを規制できる方法があるのであればそっちをやればいいと思っているという話を僕は何度かしていると思うんですが。
 逆にやはり本当に利用規範としてのダウンロード違法化、これは落とすことは違法になるんですよということの効果は僕はゼロではないと思います。それは当然日本人多分ある程度やはり真面目な人、ユーザーが多いですから、それは恐らく効果あると思いますけれども、とはいってもやはりそれだけじゃない副作用というのも多分あるだろうということは僕も何度か指摘しているつもりですし、それ以外多分パブリックコメントでもかなりいろいろな観点から来ていると思うので。僕はそのバランスを考えて、もちろん800億の損失を映画業界が被っている、じゃあ800億円の損失を対処するのであればそれは対処すればいいと思うんですよ。それは対処する方法とかツールというのは僕は送信可能化権であったり、もしかしたらプロバイダ責任制限法かもしれないし、そういう方向でバランスをとりながら考えてやっていくということが多分必要だと思っています。

【中山主査】

 この点について。どうぞ、椎名委員。

【椎名委員】

 ヨーロッパの事例、津田さんがおっしゃったのでちょっと僕のほうから意見を言いたいんですが。ヨーロッパで行われている私的複製に関する補償金制度という規模は必ずしも適正だと思っているわけではなくて、確かに津田さんがおっしゃるとおり、EUのナショナリズムを背景に持ってでき上がっているようなところもあります。実際それに近い、先ほどおっしゃった外資を獲得する手段みたいな形での制度をとっている国もありますけれども、大半の国はやはりそのお金をメーカーが負担をし、権利者に払っているという事実はあるということで参考として挙げたまでであって、必ずしもそれが理想であるということで挙げたわけではありません。
 それから、国際潮流の話ですね、国際条約、先進諸国の動向等ということで地上波テレビの話を挙げられたんですけれども。やはりテレビ放送ということに関してやはり例えばアメリカと日本でかなりビジネスモデルが違う、番組調達の方法も違うというようなところが総務省の委員会で検討された結果導入された経緯があるんですね。その違法複製物または違法配信からの録音録画といった場合に、やはりどういうコンテンツがあがっているかという内容には違いがあるかもしれませんけれども、インターネットと向き合う上でのある種の行為規範という意味でいうと、これはある種横並びの話もあってもいいんではないかなというふうに思いました。

【中山主査】

 生野委員、どうぞ。

【生野委員】

 フィジカルな海賊版に関しての問題というと必ず中国の例が出るわけなんですが、ネット上の違法流通に関しましては日本も同じような状況になりつつあるということはこれまでの報告で申し上げたとおりです。このままいくと、レコード業界の関係者はビジネスが立ち行かなくなると思っています。背筋が寒くなるような状況に今いたっていると思います。
 先ほど津田委員のほうからいろいろ権利強化していくとユーザーがコンテンツをもう買わない、アクセスしないような状況になるというお話があったわけですが、違法に配信されたものをただで入手できなくなるから、ユーザーがコンテンツにアクセスしなくなるというのは私は全くあり得ないと思ってます。
 それと、先進諸国との関係でいえば、まさに日本がリーダーシップをとって模倣品・海賊版拡散防止条約を提唱し、今動いているという中で、海賊版対策については先進諸国共通のテーマとしてしっかり取り組んでいかねばならない事項であって、ほかの制度の違いとは同一に議論できるようなことではないと思います。
 それと、利用者保護、善意者の保護に関しましてはこれは本当に重要な事項であって、しっかりやっていかなきゃいけない、この(2)のアからウまでに書かれていますが、こういった啓発活動ですとか運用上の工夫、エンフォースメント、適法マークの推進、それとここには書かれておりませんが、技術的な対応といったさまざまな取り組みによって実効性が確保でき、かつ善意者の保護ができるような形に努める必要があると、これはきっちりやっていこうと考えています。
 以上です。

【中山主査】

 どうぞ、津田委員。

【津田委員】

 別に僕は誤解されるとまたあれなので一応言っておきますけれども、別に違法ダウンロードさせろというふうにそういう主張をしているのではなくて、あくまでこういう象徴的な話で、こういった小委員会で進められているような権利者団体の方々のこういう保護強化というものの流れというのを僕は全体としてそれが進めばと言ったわけで。ダウンロード違法化というのはあくまで端的な話であり、別にこれだけに限った話じゃなく、いろいろな著作権法改正というのはここまで進んできたり、あとコピー水準、この法制とは違うコピーワンスにしてもそうでしょうし、コピーコントロールCDなんかもそうでしょうけれども、そういったもののいわゆる著作権のある種の囲い込みがどんどん進んでいけば結果としてそれは消費者の不買につながっていきますよということを述べたまでなんで、そこだけ誤解ないように。

【中山主査】

 華頂委員。

【華頂委員】

 先ほどから出ていますが、こんなことをやっても売上にはつながらないんじゃないか、アクセスしないんじゃないか、パッケージが売れないんじゃないかとおっしゃいますけれども、海賊版、映画に限らずどんなものでも一番適切に駆逐する方法は、正規品を同じような流通経路で出し続けることなんですね。ユーザーがいて、海賊版があって正規品があって、値段に少ししか違いがなければ正規品を買います、必ず、間違いなく、普通の人は。そうやって正規品を流通させることが海賊版対策の王道なんですけれども、このネットだけはこれがなかなかできないんですね。どうやって正規品を流通させるか、もうマーケットが違いますからね、そもそも。路上で売るというのは海賊版も売ってますし小売店に行けば正規品も売ってるという状況なんですけれども。ネットの裏側の世界はダークサイド、全く別世界ですから、そこに正規品なんか流れないわけですよ。ですからそういうこともできない。どうしたらいいんだという率直な権利者の気持ちです。

【中山主査】

 小六委員、どうぞ。

【小六委員】

 著作権保護強化という話が出ますとついやはり話をしたくなりまして、著作者の大もとである我々、大もとの権利者からの立場ですと、現在、著作権の保護はどのくらいきちっとなされているかといいますと、それが心もとないという意識が逆にあります。むしろこれをきちっとしていただくことでやっと現権利者が生き延びていけるようだと思うからこそいろいろな話をしているわけでございまして、いつも文化文化と言って怒られますけれども、文化に対する一般の方々の意識というものが今別の方向に向いている。我々は余り権利を主張しすぎるとそのことが逆の面に出てくるという意見もございますけれども、やはり権利者は今まで言わなさすぎたのではないかと逆に思っておりまして、我々の権利を守ることがやはり全体の世界に貢献するというふうな考えをやはりもっておりますので、そのことはぜひ認識の中に置いていただきたい。
 ただ、余りにも現権利者の本来の全体に占める割合といいますかね、少ないんですね、我々の権利の位置というのは。知的財産権はまた別にいろいろあるでしょうけれども、著作権というものはやはり小さいんですよ。逆にいうと保護していただかなければならない部分もあると思います。一般的な見方は、ある一部の現象を見てきちんと保護されているではないかとおっしゃる。しかし、我々もすごく一般だということなんですね。その見方がいろいろな話をする上で前提条件としてはちょっと底上げされた形の上から話をされているようなところがあると思う。私たちは決して保護されすぎているとは思わないし、もっと逆に保護をしていただきたいと思っています。
 しかしながら、それに甘んじてスポイルされて何かが起きるということは僕はないと思っておりますので、そのことだけははっきり申し上げたいと思います。

【中山主査】

 では、津田委員。

【津田委員】

 華頂委員の海賊版対策には正規品を流通させることが一番の対策、僕も全くそのとおりだと思います。それでインターネットにはその対策が通用しない。多分今はまだ確かにインターネット出てきてまだ10年ぐらいでそういう部分というのもあると思いますけれども、映画の話でいえば、少なくともアメリカでは今アイチューンズストアというのが映画の配信始めて、まだまだ当然DVDとかハリウッドの大きな市場規模に比べればまだ小さいかもしれないでしょうけれども、ただやはりアップルのアイチューンズストアの映画販売はそれなりに数字を上げている、新しい映画の合法的な適合配信ビジネスというのが立ち上がりつつあると。ただ、日本ではまだほとんどそういうものがない状況ですが。
 とはいっても、例えば映画ではないアニメみたいなある種の特殊なジャンルでいえば、きちんと有料ベースの合法のアニメの配信ビジネスというのできちんと利益をあげている業者さんというのも登場してきていますから、やはりそれは多分これからどんどんそういう適法なものを流すことによってある程度は僕は対策もできるでしょうと。別にそれだけだとは思わないですけれども、いろいろなものを両輪でやっていかなきゃいけないとは思いますけれども。
 ただそのときに思うのが、やはり消費者としては結局そういったネットで映画なりほかのテレビ番組、音楽もそうでしょうけれども、そういうものがきちんと安価できちんとカタログがそろっていて、かつ利用しやすいものであれば、セキュリティの危険もないんだったらそれは多分多くの消費者は正規品買うと思いますよ。それは間違いない事実で。
 では今それに対して権利者の方々が、この流通ビジネスを運営されている方々が十分に今やってらっしゃるのかなというのは、少なくとも僕は日本においてはかなり不十分だと思っています。カタログも少なければ利用もしづらい、DRMもガチガチでというところで、それが消費者が選ばないというところもあって。
 僕がさっきから言ってるのは、結局そういう、まさに華頂さんがおっしゃったような海賊版対策には正規品を流通させるというようなそういうことをやってないように見えて、でも守ってくれ守ってくれという。やはりやることもやらないで強化だけしてくれというように消費者からは見えている、僕自身もそういうふうにちょっと見ているところもありますし、多分多くの消費者は見ていると思います。そこがやはり溝を生むんだということを言いたいので、それは覚えておいていただければと思います。

【中山主査】

 野原委員。

【野原委員】

 皆さんの議論で同意するところもあり、ちょっと違うかなと思うところもありで伺っていたんですが、1つ触れておくべきだと思うことがあります。先ほども言いましたように、今の著作権法のあり方は変化すべきとき、過渡期なんだと。そうすると、過渡期で最適ではない法体制のもとでいろいろな新しいビジネスが生まれるわけで、イノベーションの観点から考えると、新しいビジネスが出現するときというのは違法かもしれないということもあると思うんですね。悪意を持った事業者ではなくて、新しい環境に変わっていくときに今の法体制では違法になってしまうかもしれないけれども、その試みが将来の新しいビジネスを生むかもしれないと考えると、先ほどから市場が決めるという話が出ていますが、市場が古い法体制でがんじがらめになっていたのでは新しいビジネスが生まれてこなくて、新しい世界への移行がスムーズにいかないということもあるかと思います。
 今回提案されている違法の複製物の私的録音録画を第30条からはずすという話で、それに反対はしませんけれども。そういう施策の変更を行き過ぎさせては非常に固い法制度になってしまうと思います。やはりイノベーションの観点を考え、現時点が法体制として過渡期であるということを踏まえて、ある程度自由度のある法体系にしておくべきではないかと思います。
 そして、市場が決めるというのは消費者が選ぶか選ばないかということが1つありますけれども、もう1つ重要な観点は、関連の事業者や著作権者たちが契約関係をはじめビジネスのやり方というか互いの関係を変えながら、新しい世界へ移行するということも重要だと思います。なので、著作権者の方々がもっと保護されたいというのもわからなくはない。今の状況が適性かどうかをきちんと見ていく必要があると思っていますが、それを法で保護するということではなくて、契約関係の中で関係する事業者に対してきちんと主張していくことがまず重要ではないかと思います。なので、市場が決めるということは消費者が選ぶ選ばないということと、互いの関係事業者の契約関係をだんだんと適正化していくということとの両方だということを踏まえておくべきではないかと思います。
 あともう1点。委員会メンバーや委員会の進め方の問題ですが、その時点での関係者だけで議論しているのは問題ではないかと。直接被害を被るかもしれない人たちが集まってきて議論するために、とても近視眼的な議論が多い。もう少し客観的な議論ができるように、検討の仕方も考えていただけるといいなと思います。

【中山主査】

 生野委員、どうぞ。

【生野委員】

 日本の音楽配信が世界に比較しておくれているというか、後ろ向きだというようなイメージで受け取られるとまずいのでお話しておきます。日本は世界第2位の音楽市場、マーケットを持っておりまして、全世界におけるパッケージの売上シェアよりも音楽配信の売上シェアのほうが高いんですね。そういった面から音楽配信に関しては非常に積極的にやっていると、ビジネスを行っているということが言えると思います。
 ただ、その中身についてはモバイル向けが圧倒的で、PC向けの配信に関してはまだ全体の約10パーセントです。これは日本ではモバイル文化と言われるぐらいまでのモバイルに対するユーザーの支持、決済手段の簡便さですとか、セキュリティ面での安心感などから、モバイルのほうに向かっているというところはあるんですが、決して音楽配信に関して日本のレコード会社などが後ろ向きだということはない、実績で示しているということをお伝えしたいと思います。
 以上です。

【中山主査】

 どうぞ、華頂委員。

【華頂委員】

 津田委員にもう1つ質問なんですけれども。最近何日か前にフィルタリングソフトをキャリアが採用するみたいな記事が載ってたんですけれども、これはある種ユーザーを規制する方策だと思うんですけれども。それと同じような考え方、これもできませんかね。
 要するにユーザーを規制するという意味では同じなので、今議論されている30条の適用範囲の見直しをして、第一歩を進もうじゃないかというような考えになりませんか。

【津田委員】

 すみません、僕ちょっとその詳細を存じ上げないんですけれども。フィルタリングのソフトじゃなくて、フィルタリングを携帯サイトにかけようという話ですか。
 それと同じということはこれ。

【華頂委員】

 考え方。

【津田委員】

 でも、別にそれがまだ議論の俎上に乗った段階ですよね。
 逆に僕は、例えば、全然また違う観点の話になるかもしれないんですけれども、もしかしたらフィルタリングというのは法だけではなくて、それこそ技術でフィルタリングというのもできるという部分あると思うんですよね。だから、もしかしたらそういったISPとかの協力も得つつ、じゃあこれは別にわざわざ法制しなくてもみんなのガイドラインをつくるなり、権利者とインターネット業界がガイドラインつくってこういうものはフィルターしていきましょうみたいなそういう別に法制以外の対処の仕方というのもあると思うんですけれども。何かそういうところも含めて僕は多分総合的に議論しなきゃいけないのかなというふうに思います。それが回答になるかわかりませんけれども。
 以上です。

【中山主査】

 どうぞ、室長。

【川瀬室長】

 この1の改正の必要性につきましては私どももいろいろな諸般の事情を考慮すればやはり法改正はやむを得ないのではないかなと考えております。
 今この議論の冒頭で津田委員がおっしゃいましたように、必ずしも先進諸国がどうだからということではございませんで、やはり客観的な資料として違法着うたサイトからのダウンロード、それからファイル交換によるダウンロード、これは資料的にも適法事業を凌駕するような複製物が行われているという事実、これについては今津田委員からのご指摘のように、それが正規品にどういう影響を与えたかという評価は人によってまちまちかもしれませんけれども、そういう事実があるということ。それそのものはいずれの段階においても権利者に対価の支払がないといういわゆるフリーライダーの典型でございます。
 また、一般消費者の考え方ですけれども、例えばこの中間整理の70ページにありますように、ファイル交換ソフトの利用をやめた理由という中で、一番大きいのがやはりセキュリティウイルスなどが心配というものが全体で46パーセントの人がそういう考え方をお持ちですけれども。他方、26.4パーセントの方は著作権侵害などの問題があると。これは大ざっぱな書き方ですのでどの段階でどうだというのがあるとは思いますけれども、我が国、日本の国民の意識としてこういう考え方もあるということでございますので、そういうことを総合的に勘案すればやはり30条の改正についてはやむを得ないのではないかなというふうに思います。
 また、野原委員のご指摘もございますけれども、例えば投稿サイトなんかでも違法を承知の上でやっておりますけれども、投稿サイトをやめさせるというような方向ではなくて、許諾を出して適正な形にして存続させるという方向でルールづくりが進んでいるというような新聞報道もございますし、必ずしもこういったものについて一定の進展があれば、例えば許諾を得てそういうことも認めるという方向に進んでいく可能性もあるというふうには思っておりますので。そういうことを考えるとやはり意見としてはこういう意見になるのかなというふうな私どもとしては感想を持っている次第でございます。

【中山主査】

 ほかに。どうぞ。

【河村委員】

 この違法複製物の問題については私ずっと意見を申し上げてこなかったんですけれども、今日の議論を聞いていまして私が消費者として気になるところは、まず1点はやはりパブリックコメントの結果ということですね。圧倒的な多数に人たちの意見がそれに反対していると、それがテンプレートを使ったものであるとかそういうことがあったとしても、それだけの意思を持って意見が集まったという事実をそんなに簡単に、それはそれとしてというふうにはならないのではないか、ということです。その内容についての意見とは別に、一般的に意見募集ということに関して、もちろん多数決をするものではないというものもわかっておりますが、その人たちへの説明をきちんとできる結論であるべきだというふうに思いますし、その数についても重く受け止めるべきだと思います。
 それからもう1つは、先ほど、画像のいいものがアップされたとき、拍手喝采をもって受け入れられたというお話がありましたが、一番権利者の方に損害を与えているのは、どう考えても最初にそのサイトにアップロードした人なのではないかと思います。そこからダウンロードして、またほかのサイトにアップした人が非常に損害を与えていると思います。あるいは、それをまた海賊版にして売った人が非常に損害を与えていると思います。
 そういうことを考えると、ただダウンロードして持っただけの人というよりは、アップロードしたり売ったりしたということの行為こそが損害を与えているというふうに思います。だから、30条の範囲の見直しについてどう思うかと、正直に申し上げて本当にどちらの意見にもわかるところがあったりしますので苦しいんですが、先ほど津田委員がそのことを取り締まれば損害がなくなるのかとおっしゃったことには私も同意見でございます。損害を与えているのはアップロードした人、海賊版をつくった人、売った人だと思っています。そこのところをもっと真剣に取り締まるべきなのではないかなと思います。
 あと、小六委員のおっしゃいます著作権の保護とか著作権者の保護ということですけれども、保護をされて黙って座っていると利益を生むということはもちろんなくて、保護というのは利益を生むものではないと思いますので、ビジネスをして、競争して戦わなくてはお金というのは権利者の方に入っていかないと思うんですね。ただただ厚く保護されていれば、細々と補償金が入ってくるとかそういうことでは、小六さんのような大物ではないクリエータの方たちは、食べていくことなど決してできないわけですし。ビジネスにおいて戦っていくということが大切で、それがこのような制度によって何かそこのところがうやむやになっているような気が私はしております。

【中山主査】

 華頂委員、どうぞ。

【華頂委員】

 一言だけ。違法アップローダーとビジネス上の競争をしたくもないんですが。

【河村委員】

 アップロードを取り締まるべきだと申し上げているわけです。

【中山主査】

 生野委員。

【生野委員】

 アップロードとダウンロードというのは表裏一体のもので、これを切り離して議論はできない、両方押さえないと実効性に欠けると思います。アップロードに関しての対策はそれぞれの業界の団体でこれはきちっとやっていると思います。レコード業界におきましてはファイル交換の違法ユーザーに関してこれまで警告メッセージを1,200万通以上出して、悪質なユーザーに関しては損害賠償請求などを行っています。モバイルの違法ユーザーに関しましても、約半年ぐらい前に4名を刑事告訴し、その4名が逮捕されたという報道がありましたけれども、そういった対策も行っています。
 レコード会社個々においてはモバイル向け違法サイトにおけるアップロードに関して削除要請を行い、昨年来10数万件を削除したり、それから啓発活動に関しても何年来やっているということで、これはこれで終わることなく引き続きやっていかなきゃいけないんですけれども、その上でダウンロードの規制も必要だと、そういう趣旨でお話ししているつもりです。

【中山主査】

 どうぞ、椎名委員。

【椎名委員】

 権利者が補償金をあてにして細々と暮らしていくことを願っているととれるような発言は侮辱です。

【中山主査】

 どうぞ、室長。

【川瀬室長】

 河村委員のご意見はもっともだというふうに思っております。違法ダウンロードの問題につきましては反対ないしは慎重な意見が多数出ているということは、私ども十分踏まえて今回の整理をしたつもりでございます。ただ、一方で別のお考えがあるということでございまして、またその反対、慎重の意見というのは当然その理由があるわけでございまして、私どももその理由の中身について慎重に精査をしております。したがって、それぞれの疑念、疑問、そういったものに応えるために利用者保護ということで、これは法律を改正するだけじゃなくて私ども文化庁、政府といいますか政府も、それから権利者側にも汗をかいてもらって、できるだけそういった紛れがないように、不安がないようにしていきたいというふうに考えておりまして。
 特に利用者保護の点につきましてはその運用上の問題については中間整理でも言及されてなかったんですけれども、このア、イ、ウだけが適当かどうかというのは問題があろうかと思いますけれども、できるだけその運用の問題については権利者側にも配慮していただいて、大きな混乱のないようにしたいというふうに思っております。

【中山主査】

 どうぞ、小六委員。

【小六委員】

 違法配信、違法複製物の問題は我々もやはりすごく考えまして、私たちの権利者の中にもこれは利用者の立場からすると我々も利用者ですので、どういうふうにしたらいいかという議論がございました。もちろん私たち自身は著作権に関して、ビジネスが我々の著作権を支えてくれているということは重々承知しておりまして、それなしでは我々自体の存在はないとよく認識しております。ですから、違法配信に対してもどちらの立場から考えるかということは非常に重要でございまして、もしビジネス的に有利になるならばこれも許容範囲の中に入るじゃないかという意見もありました。それから、野原さんが先ほどおっしゃいましたように、いろいろな事態が起きたときに、現在は違法かもしれないけれども、先には違法じゃなくなるシステムが生まれるかもしれない、そういうことももちろん考えました。
 しかし、やはり大もとの著作権、我々を保護していただける著作権ですね、これはやはり理念があると思うんですね。そういうことをいろいろ考えた結果、やはり現在いろいろな不都合があろうともやはり違法は違法であるということをまず最初にとらえて、それからそれを適用するときにどう考えるかというのはこれからの問題であるし。それから、技術的な取り扱いですね、これがやはりきちっとならなければ道義にいかないというふうに思います。
 ですから、それは手を携えてまず基本論を決めて、それからこの新しい行為ですね、これに対する対処の仕方を一緒に考えていきたい。しかしながら、現在のところ我々の権利制限を含めて、その縮小ということに考えれば、これはこのようにするしかないかというふうに考えます。

【中山主査】

 どうぞ、津田委員。

【津田委員】

 一応僕本業がIT音楽ジャーナリストといって、大体99年とか2000年ぐらいからインターネットとかデジタルテクノロジーとコンテンツビジネスというのがどういうふうになってきたのかというのを割と取材して見てきたんですけれども、僕自身は外国に住んだこととかないですけれども、当然インターネットで向こうの状況を見たりとか、現地に住んでいる人からいろいろ話を聞いたりみたいなことをやっていて、それでずっとITコンテンツビジネスというのを見てきた僕の、これは本当に率直な感想として、日本ってこんなにコンテンツに対してきちんと真面目にお金を払っている国ないと思いますよ。すごくユーザーが真面目にきちんといろいろな音楽であれ、テレビであれ、映画であれ、いろいろなものに対して非常に僕は真面目に規範をもってほかの国に比べれば間違いなくお金を払っているし、いろいろなもののコンテンツビジネスの市場が非常に世界的に見ても大きいというふうに思っています。僕はこれはある程度いろいろなもの、データとかつき合わせてみればそれはもうわかる部分もあるでしょうし、僕自身の感覚としても間違いなく世界でもこんなに真面目にコンテンツにお金を払っている国民はいないというふうに僕の感覚では思っています。
 それで僕が言いたいのは、多少のコピーとかされたっていいじゃないですか。もうちょっとこれだけ真面目に従順にコンテンツにお金払っている国民なんだから、もうちょっとユーザーとか消費者を信頼してくださいよ権利者さんという、もう本当に僕そういう感じなんですけれども。どうですかね。

【中山主査】

 では、どうぞ、華頂委員。

【華頂委員】

 津田さんのおっしゃることよくわかるんですけれども。確かに日本の国民は非常に真面目で規律があると思うんですが。それがインターネットのインフラが整っていくことによって崩れ始めているからこういう議論しているんじゃないかなと思うんですけれども。

【津田委員】

 逆に、インターネットでそういういろいろなものを崩しつつある中でもきちんとそういういろいろなものがまだ日本はすごくまだ踏みとどまっている部分というのはあると僕は思うんですよ。逆にそういう踏みとどまれている現状があるからこそ新たなビジネスモデルを模索するチャンスにもなると思っていて。それは法規制だけじゃなくてやはりビジネスモデルというのをちゃんとユーザーと権利者が合意した上で新しいものを、もちろん市場の論理も含めて前に進んでいきましょうということをつくっていく環境づくりが必要だと僕は思っていて。
 ちょっとそれがだから今この私的録音録画小委員会でそういう議論になっているかというとなってないのかなという印象を受けてしまうので。それがずっとここのところ言っている溝ということにつながるということです。

【中山主査】

 どうぞ。

【河村委員】

 お時間がないところすみません。先ほどの椎名委員の発言なんですけれども、もしも侮辱されたというふうにとられたのであれば心から謝罪いたします。私は補償金で細々と食べていけばいいというふうに権利者の方が考えていると本当に思っているなんていうことは全くありません。もしもそういう言葉だったとしたらそれは私の心からの皮肉を込めた言葉であって、そういう認識を私が持っているわけではありません。侮辱だと感じられたのであれば謝罪いたします。
 ただ、どうしてそのような皮肉が出てきたのかということを申し上げるならば、権利者の方が保護されるべき権利があるなら、その範囲で何らかの保護がなされることはいいと思いますが、一方で消費者の権利も保護されるべきだということです。今までの議論がともすれば、疑わしきは権利者の利益にという感じに流れていく。何か説明できないときには「中二階だから」とか「ラフジャスティスだから」とか、疑わしきは権利者の利益へと流れていく方向の中で、やはり今、政府の方針なんかを見ていても、消費者保護というのは非常に大きな課題になっています。著作権だから、文化と関係あるからといって消費者というものがないがしろにされていいということは全くなくて、そこに公正さとか透明性というのがとても求められている。文化という言葉を使って疑わしきは権利者の利益とするばかりでなく、やはり文化庁としても消費者に対するフェアという視点を取り入れて施策をお考えいただけたらいいなというふうに思っております。

【中山主査】

 わかりました。ラフジャスティスというのはラフでもいいという意味ではなくて、ほかにうまい方法がないのでラフでもやむを得ないという意味であり、より良い方法があればもちろんそちらに移行するという含意です。つまりラフジャスティスというのはラフでいいという意味じゃないのですね、
 どうぞ、亀井委員。

【亀井委員】

 今のご議論に水を差すわけではないんですが、ちょっと違う観点といいましょうか違うことを発言させていただきたいと思います。
 最近権利者団体の方々から審議会の議場の外でJEITAに対して幾つかご質問をいただいております。もちろんこの審議会に関係をすることでございますので、時間が押してせまって恐縮ですが、一言発言をさせていただきたいと思います。
 JEITAといたしましては審議会で検討している問題はその問題を取り扱う審議会で基本的に議論すべきであるということを考えておりますので、この場でご質問を受ければ審議会にかかわる問題についてJEITAとしての意見を、これまで申し上げたことの繰り返しになりますけれども申し上げるというところでございますが、本日もそういうご質問をいただくような流れではございませんでしたので、あえて、ご質問いただいてませんけれども関係することとして述べさせていただくということでございます。
 とりわけ問題になっておりますのは、総務省の審議会で検討された地上デジタル放送と補償金の関係でございますけれども、JEITAの立場は保護手段としてEPNを、というような主張をしているときから、技術的保護手段を付されているのであるから補償金は不要であるというような意見を申し上げてきておりまして、そのことは今日に至るまで寸毫も変わらずきています。先日のパブコメ募集に対する意見書でも詳細にその点書いてありますので、ぜひ権利者の皆様には熟読いただいて、さらにご不明の点があればぜひこの議論の場でそれを出していただいて、さらに議論を深める。とりわけ今日の資料1ということで方向についての議論がなされておりますので、その中であとは各論として議論されていくことだろうというふうに考えております。
 本委員会の直接的なイシューではございませんけれども、かかわりがありますのであわせて述べさせていただきますと。そのダビング10というものについて総務省の第4次答申で提案されたことにつきまして、JEITAはそれを支持をしているわけでございまして、実際にもう機器の設計に入って宣伝を始めていらっしゃる社もあるということですし、ダビング10という呼称を提案したのもJEITAでございます。したがって、JEITAがその提案を無意味にするというようなことはさらさらあり得ないということでございます。
 今論点となっておりますのは、総務省の答申で「クリエーターが適正な対価を得られる環境」というふうに書かれていることについての解釈の相違だというふうに考えております。補償金によって実現するというふうに答申に書かれているわけではございませんので、JEITAは補償金によらずともそのような環境はつくることはできるというふうに考えているということであります。
 このことはダビング10をサポートするということと何ら矛盾していないというわけでございまして、このような考え方については何度も繰り返し申し上げてきたわけですが、ご理解をいただけないということは残念としか言いようがありません。
 JEITAの立場は、数年前の、2年半ぐらい前でしょうか、法制問題小委員会のヒアリングのときから一貫しておりますけれども、コンテンツ産業をいかに大きく豊かにしつつ消費者に受け入れられる市場をつくる、それによってみんながハッピーになるという視点でものを申し上げているというつもりでございます。
 先ほどもありましたが、イノベーションを生まないような補償金ということは、あくまで中二階で、これからどんどん発展に向けて動いていくだろうと。
 それから、本日は点から線というご提案でございましたけれども、もっと線から面という議論が本当はあるべきだというふうに思います。先ほどの資料1の中で出てくる当事者の方々、権利者というふうにひとくくりになっておりますけれども、分解してみますといろいろなお立場が多分あるのではないかと思います。そういう方たちも含めて、これはやはり契約での解決であるとか、どうしたらクリエータに適正に対価が回るかということをみんなで考えていくべきだろうと。
 今議論がありませんでしたが、資料2の2の(2)の、今は契約環境は整っていないから将来の課題と書かれてありますが、将来というのは明日から始まるわけで、何もしないでいれば何も起きないまま時が経っていくということだと思います。これは絶対に遠い将来ではなくて明日から考え始めるべきことだろうというふうに考えます。
 今申し上げましたことはJEITAの担当者としての私の意見ということではなくて、JEITAの会長、専務理事以下共通の意見でございます。取材で私の言葉遣いが非常に不適切だというふうにご批判もあるようでございますので、それは私自身の不徳のいたすところですので謝罪申し上げるとして、この審議会の場でぜひ議論を深めていきたいというのがJEITAの立場でございます。
 申しわけございません、お時間いただきました。

【中山主査】

 ありがとうございました。
 もう時間を過ぎておりますけれども。特に一般人のダウンロードの問題ですが、ここは著作権の審議の場ですから著作権しか見ておりませんけれども、知的財産一般に関係しておりまして、例えばニセブランド、これを外国から買ってもってきた場合どうかとか、それを日本で使っている場合どうかとか、一般人を知的財産とどう絡ませるかというのは非常に大きな問題です。したがって、これは非常に大きな問題ですが、それは置かれているその問題ごとに解決していくしかないと思います。
 一番大事なのはやはり利用者の保護であり、不意打ちをくらうということがないという配慮が必要でしょう。情を知ってとか故意という要件が入るので、それは恐らく一番大きな利用者保護になるでしょうし、実際の訴訟を考えてみますと、警告をするといったって警告するときはダウンロードは終わっていますから、合法なダウンロードは警告で違法になることはないわけですね。ずっと継続的にやっているような人に対しては警告の意味があるかもしれませんけれども。そうなると余り訴訟としてどれぐらい使えるかという問題の疑問はあるのですけれども、先ほどどなたかおっしゃいましたけれども、違法にすることによる国民の意識の変化は期待できるかもしれませんし。
 恐らく一番大きな問題は、You Tubeのような投稿サイト等、あれいくら違法な投稿を削ったってまずなくならでしょう、絶対不可能なんですけれども、ああいうものを合法のほうに取り込んでいくかという場合、ダウンロードを違法としておくことは意味があるのかなとか。そういう広い意味はあろうかと思いますけれども。恐らく個々の国民がこれでひどい目に遭うということは多分ないだろうと思います。刑事罰もついておりません。アップした人には刑事罰が科せられますがダウンロードには刑事罰がついておりませんので、まあこれに関しては一般のユーザーはそれほどひどい目には遭わないだろうという感じはしております。
 今日はいろいろご意見頂戴いたしましたので、また事務局のほうでこれをまとめてペーパーにしていただければと思います。
 そういうところでよろしいでしょうか。
 それでは、特に最後何かご意見ございましたら。よろしいでしょうか。
 ちょっと時間超過いたしましたけれども、本日はこれぐらいにしたいと思います。
 最後に、事務局から事務的な連絡事項がございましたらお願いいたします。

【川瀬室長】

 今後の審議の日程でございますけれども、次回は12月27日木曜日、10時から12時まで三田共用会議所での開催を予定しております。また、来年1月でございますけれども、17日木曜日の10時から12時、それから23日の水曜日の10時から12時を予定をしております。
 なお、本日資料1につきましてさまざまな意見が出ましたけれども、一定の方向性、考え方の整理ができたというふうに事務局としては考えております。それにつきまして改めて委員の方にご検討依頼をしたいというふうに思っております。ただ、またそのご検討の時間的な問題もございましょうから、場合によっては27日の委員会につきましては中止ということもあり得るということを踏まえていただきたいと思います。
 以上でございます。

【中山主査】

 それでは、本日はこれをもちまして文化審議会著作権分科会の第15回私的録音録画小委員会を終了といたします。
 ありがとうございました。

午後0時12分閉会

(文化庁長官官房著作権課著作物流通推進室)