(1)
- ダウンロードしたファイルが違法なものであるかどうかは、ダウンロードした後でなければ厳密には分からない。ファイル名や説明等から判断できない場合もある。
- ダウンロードした後であっても、それが違法なものであるかどうかを区別するのは難しい場合がある。個人が趣味で作成したものと、レコード会社が製品として作成したものをはっきり区別する方法がない。有名な作品であっても、複製が認められている場合がある。
- ユーザーがダウンロードした時点で違法サイトと承知していたかどうかを判定するのは難しい。「後で知りました」という言い逃れが通用するなら、ずるい者に効果はなく、正直者に不便を強いるだけである。
- 管理されたサイトにのみ適法マークを与え、それ以外をすべて違法であるかのように扱うのはあまりに乱暴である。自作の曲をブログで発表する等の自由な活動は、すべて「潜在的に違法である可能性がある」とみなされてしまう。
- 曖昧な違法性の定義によって、一般のユーザーは常に「犯罪を犯す」リスクにさらされることになる。このリスクを避けるためには、合法であることが確認できる映像や音楽以外へのアクセスを自粛しなければならず、文化的活動の機会が著しく損なわれる可能性がある。一方、そこまで厳密に考えないユーザーが「犯罪を犯しているかも知れない」状況が常態化すれば、法律遵守の意識に悪い影響を与えるのは必至である。
以上の理由より、違法なファイルの「ダウンロード」を「犯罪」とする法律には反対します。
著作権の保護は、違法な「配信」の取り締まりを強化することによって行っていただきたいと思います。
(2)
本意見書では、「文化審議会著作権分科会法制問題小委員会中間まとめ」のPDFファイル77頁、第7節・その他検討事項で述べられている、「私的使用目的の複製の見直し」に対して意見を行う。
特に、「著作権分科会 私的録音録画小委員会(第13回)議事録・配付資料」(https://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/bunka/gijiroku...の私的録音録画小委員会中間整理(案)分割版2の56頁から58頁にわたって記されている、「2 第30条の適用範囲から除外するのが適当と考えられる利用形態」について言及する。
- 意見
本意見書は、私的録音録画小委員会中間整理(案)分割版2(以下、中間整理案)の57頁中段で述べられている、「適法・違法の区別も難しい多様な情報が流通しているインターネットの状況を考えれば、ダウンロードまで違法とするのは行き過ぎであり、利用者保護の観点から反対」(一部省略、原文ママ)という意見に賛成するものである。
- 理由
まずはじめに、ダウンロードの違法化案に反対する第一の理由を述べる。
中間整理案では、違法サイトからの楽曲や動画のダウンロードを違法化する案が提案されている。
しかしながら、先に引用したように現在のインターネットは、適法・違法の区別も難しい多様な情報が流通している。
従って、いたずらにダウンロードを違法化してしまっては、違法サイトへのアクセスへの減少を起こすばかりか、適法サイトへのアクセスをも減少させてしまう可能性がある。
著作権法の目的は、違法サイトの目的ではなく、著作者等の権利の保護を図り、文化の発展に寄与することが目的である。
しかしながら、適法サイトへのアクセスも減少してしまいかねない本案は、明らかに著作権法の目的と反している。
次に本案に反対する理由は、本案の有効性の不透明さである。
本案に則って、著作権者が情を知って違法にダウンロードしたものを親告することを想定した場合、どのように情を知って違法にダウンロードしたことを発見するのかが言及されていない。
そもそも、どのように「情を知って」行為を行ったことを知るのか分からない上、あるユーザーがどのサイトにアクセスしたかという情報は、「通信の秘密の保護」により守られており、知るすべがない。
「情を知って」という一文は、解釈の仕方によってはどのようにも解釈でき、日本国民全員が犯罪者となってしまう危険性をはらんでいる。
また、違法ダウンロード者の発見などという行為は、国家による情報統制・監視を助長するものであり、危惧を覚える。
最後に、技術的側面について述べる。
現在のWeb技術は、あるページを閲覧すると同時に、クライアントにデータが保存されるようになっている。
これは、YouTube等のストリーミング配信においても例外なく、Webでストリーミングを用いて受信することはすなわち、ダウンロードを行っているのと同義である。
すなわち、Webを用いてストリーミングを行うと言うことは、ダウンロードしながら再生しているに過ぎず、ダウンロードのみを対象とするという本案は現実に即していないと言わざるをえない。
ストリーミング再生中には一次保存されるが、その一次保存データは簡単に二次保存可能であるし、一次保存データを永続的に保存すれば、もはやそれは二次保存データと変わりない。
一次保存データの保存期間に上限を設けようにも、ハードディスクなどを取り替えたり、PCを起動しなかった場合、その一次保存データは半永久に残る場合もあるため、現実的でない。
また、「情を知って保存期間の延長をした場合」という一文をもうけても、先に述べたように、日本国民全員が犯罪者となってしまう危険性をはらんでしまう。
以上の理由により、本意見書では、ダウンロードの違法化に反対することを表明する。
(3)
法改正の前に、現行の法で取り締まれる点について現行でもできることを行わず、いたずらに法で縛ることは、利用者の立場として看過できない。ダウンロードまで違法とすることには反対である。
「情を知って」という例えを用いているが、違法サイトと適法サイトを見分ける方法に確実なものが存在しないため、その判断は非常に曖昧にならざるを得ず、厳密な適用は非常に難しいと考える。
また、運用上の工夫を施すにしても、違法サイト側に偽装されてしまえば、一般利用者には識別が困難であり、結果として、一般利用者が適法サイト、違法サイトのチェックを行う新たな負担を強いられることとなる。
上記のような負担を強いることは、インターネット利用を萎縮させる懸念があり、利用者保護の観点からも有益ではないと考える。
(4)
●105ページの「
第30条の適用範囲から除外する場合の条件」の項目について
反対。現在の著作権制度では、パロディなどで他の著作物を原作として利用していたら違法だと判断されることが多く、原作を批判するものなどは、許諾もまず得られない。それらをアップロードする側は常にリスクを覚悟しているが、ダウンロードする人まで過大なリスクを負わされるというのは、批評精神を著作権で封じ込めようという思想統制だと思う。
●104ページの「
第30条の適用範囲からの除外」の項目について
反対。この違法化案が通ったら、書籍業界でもダウンロード違法化の対象とするよう求めていくと言われているし、そうなると現在の日本文化の大きな部分を占めるパロディ文化が殺されることになる。それらのパロディが原作品の利益を損なっているわけでもないのに違法化されるというのはおかしい。
●104ページの「第30条の適用範囲からの除外」の項目について
反対。ストリーミングとダウンロードは技術上、大差がないのに、法律的に違うものとして扱うと、技術的な選択の幅を狭めてしまう。そうすると、Webサービスの可能性が意味もなく狭くなってしまい、日本のIT開発が諸外国と比べて衰退することになりかねない。
●105ページの「
第30条の適用範囲から除外する場合の条件」の項目について
反対。「適法マーク」が無ければ違法サイトとしてダウンロードが違法化されるというのはおかしい。逆に、違法サイトとされないのなら、合法マークには競争を阻害する目的しかないし、その差別的取扱は独占禁止法違反とされるべき。
●105ページの「
第30条の適用範囲から除外する場合の条件」の項目について
反対。「適法マーク」は、実際にはYouTubeやニコニコ動画といったユーザー主導のサービスや、そんなものを簡単に設置されるはずもないアマチュア作者のサイトを、「適法市場」から排除するために、既存レーベルなど既得権者がコンテンツ人気誘導の主導権を回復することを目論んだ、公正な競争に反するものではないか。
●104ページの「第30条の適用範囲からの除外」の項目について
反対。インターネットというものはそもそもグローバルなものであり、日本の法律で違法なことが海外で違法とは限らないし、その逆もありうる。海外サイトが正しく日本の著作権法に基づいて適法マークを付ける期待は薄く、またそもそも海外サイトを「適法市場」から不当に締め出す事にもつながる。
●104ページの「
第30条の適用範囲からの除外」の項目について
反対。ダウンロードが違法化されたら、動画・音楽投稿Webサイトはユーザーが違法ダウンロードしないよう、アップロードに気を遣わされるようになり、その結果、著作権者が自らアップロードしている場合のような、間違ったクレームにも対応してしまって削除される事故が、頻発するようになる。弱小の著作権者に不当なリスクを負わせる改正案であり、賛同できない。
●105ページの「
第30条の適用範囲から除外する場合の条件」の項目について
反対。違法ダウンロードサイトという考え方は不明確であるだけでなく、われわれ国民の良識にそぐわない違法判断を裁判所が下す場合もある。MYUTA事件判決には多くの批判が巻き起こったが、MYUTAのようなサイトを使用したユーザーも、ダウンロード違法化が成立したら違法だということになってしまい、国民の規範意識に反するだけでなく、Webサービス開発を不当に萎縮することにもなる。
●103ページの「第30条の適用範囲から除外することが適当と考えられる利用形態」の項目について
反対。ダウンロード違法化の議論には、その前提として、違法にアップロードされたコンテンツというものが存在しているはずだが、これは送信可能化権で規制できるはず。権利者がこれまで違法アップローダに対して十分な法的対策を取っていないのが悪い。さまざまな問題をかかえこむことになるダウンロード違法化の導入はかえって有害だ。
●105ページの「
第30条の適用範囲から除外する場合の条件」の項目について
反対。一般ネットワーカーは、違法性の有無にかかわらず、ダウンロードしたコンテンツを有していた場合に、弁護士と称する人が訴訟すると脅してきても、抵抗できるほどの法的知識は無く、本当は違法ではないのに不安になり、「和解金」を出してしまうおそれがある。これは詐欺師を後押しする法改正案だ。