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参考資料1

私的録音録画に関する制度設計について

1 前提条件の整理

(1) 第30条の範囲の縮小

 私的録音録画に関するいくつかの行為類型のうち、
   違法複製物・違法サイトからの録音録画
 適法配信・有料放送からの録音録画
については、第30条の適用範囲から除外することとするが、それ以外のものについては従来どおりの適用範囲内とすることでどうか。

(2) 著作権保護技術と補償の必要性との関係

 著作権保護技術と私的録音録画補償金制度は保護技術の内容によっては併存可能と考えられるが、次のような状況に至った場合には、補償の必要性がなくなり、補償金制度は不要となると考えられないか。

   著作権保護技術の効果により私的録音録画の総体が減少し、一定の水準を下回ったとき(→私的録音録画が著作権保護技術によって厳しく制限されれば、権利者の不利益も少なくなるため)

 著作権保護技術の内容について権利者の選択肢が広がり、コンテンツごとに関係権利者の総意として権利者側が選択権を行使できるようになり、そのような実態が普及したとき(→権利者がその意思に基づき私的録音録画をコントロールできる場合には、その結果として生じた録音録画は権利者にとって不利益を生じさせないため)

 著作権保護技術と契約の組み合わせにより、利用者の便を損なうことなく個別徴収が可能となり、そのような実態が普及したとき(→録音録画の対価を確保できる状況となるため)

2 仮に補償の必要性があるとした場合の私的録音録画補償金制度の基本的なあり方

(1) 制度設計の大枠

 補償の必要性があるとの前提に立って、補償金制度のあり方を考えれば、これまでの本委員会の議論から、次の2つの方法が考えられるがどうか。

   録音録画機器・記録媒体の提供という行為に着目した制度設計
 現行の補償金制度はこのタイプ。我が国も含めた補償金制度を採用している国の全てが採用しているタイプ

 現行制度を改善して対応するためには、対象機器・記録媒体の範囲及び決定方法、支払い義務者、補償金額の決定方法等をどうするか幅広い議論が必要

 録音源・録画源の提供という行為に着目した制度設計
 世界に例を見ない初めての試み

 アに比べて制度設計がはるかに単純

(2) 録音録画機器・記録媒体の提供という行為に着目した制度設計について

1  対象機器・記録媒体の範囲について

 現行制度について
資料2参照

 現行制度の対象機器・記録媒体と機器の分類

  分離型機器 一体型機器
機器 記録媒体
専用機器 まる まる HDD搭載コンポ
HDDビデオレコーダー
ポータブルオーディオ
レコーダ
汎用機器
(録音録画が主たる用途)
ポータブルオーディオ
レコーダ(SDメモリ付き)
  ポータブルオーディオ
レコーダ
汎用機器(録音録画が主
たる用途でない)
パソコン   パソコン

(注)
まる  現行制度が対象としている機器・記録媒体(資料2参照)
無印−
  現行制度の対象ではないが、検討対象とする可能性がある機器の例
記録媒体については、私的録音録画が主たる用途かそうでないかで分けられないので記載していない

 改善すべき課題と対応策

(ア)  対象機器について
 現行制度は、私的録音録画に専ら使用され、かつ記録媒体を内蔵しない機器(分離型専用機器)を想定して制度設計を行っている。

 現在は、
a  録音録画機能以外の機能(再生機能は除く)を併せ持つ機器(汎用機器)
b  記録媒体を内蔵した一体型の機器
が主流となりつつあり、この傾向は、ここ数年のうちにより顕著となっている。

 このようにIT技術の急速な発達に伴い一体型機器や汎用機器を用いて行う録音録画が増加していることを考えれば、これを対象にしないことは、負担の公平性の観点から問題があるところから、対象機器の範囲を見直す必要があると考えるがどうか。

 専用機器については、記録媒体を内蔵した機器(一体型専用機器)であっても、私的録音録画に専ら使用される専用機器であることに違いはないことから、対象にすることについて課題は少ないと考えられるがどうか。

 汎用機器については、
a  ポータブル・オーディオ・レコーダ(iPod、ウォークマン等)に代表されるように、汎用機能を有するが消費者の主たる用途は私的録音録画であるもの と、
b  通常のパソコンのように、消費者の主たる用途が私的録音録画であるとはいえないもの
に分類されると考えられる。

 aの場合、例えば専用機器であるポータブル・オーディオ・レコーダと汎用機器ではあるが主たる用途は録音録画であるものとの取り扱いを異なるものとすることは、負担の公平性から問題があることから、これを対象にすることが適切であると考えるがどうか。

 bの場合、機器の購入者が私的録音録画に供する可能性がかなり低いものもあると考えられることから、補償金の対象とするかどうかは、この論点をどのように整理するかを改めて検討・整理する必要があると考えるがどうか。

(イ)  対象記録媒体について
 現行制度は、録音録画専用の記録媒体を想定した制度設計がされているが、例えば、現状においても、録音用CD−Rは、政令指定の対象になっていない汎用機器(例えば、パソコン)でも使えることなどの制度上の問題が生じている。
 これは、記録媒体も汎用化の傾向にあることから生じる制度的課題だと考えられるが、対象記録媒体の範囲を見直す必要があると考えるがどうか。

2  対象機器・記録媒体の決定方法について

 現行制度
資料2参照

 現行制度(政令指定方式)の問題点
 専用機器については、現行の政令指定方式の継続又は改善で対応可能と考えられるが、汎用機器については、それが録音録画に用いられるかどうかは、使用されている技術の特定だけではなく、その機器の用途等の要素も考慮して、判断されるべきものであるので、専用機器・専用記録媒体を前提として技術方式により対象を特定する現在の方式では対応が難しい。

 新たな対象の追加に迅速に対応できない。

 消費者からみて決定プロセスの透明性が必ずしも確保されていない。

 技術を指定する現行制度は消費者には理解しづらく、制度への理解を妨げる 一因にもなっている。

 改善すべき課題と対応策
 仮に汎用機器・記録媒体も対象範囲に加えるとすると現行の政令指定方式では対応できないと考えられ、他の問題点も考慮すると、新たな決定方式を考える必要があると考えるがどうか。

 例えば、次のような方法により、弾力的に、また迅速かつ透明性ある決定方式にすることは考えられるか。なお、他に適切な方法はあるのか。

 政令で定める基準に照らして、公的な「評価機関」の審議を経て、文化庁が定める
(説明)
  政令で一般的な基準(例えば、技術、用途)を定め、具体的な対象については評価機関で議論されることとなるため、汎用機器についても利用実態を考慮して判断できる。

公的な評価機関は、例えば権利者、製造業者、消費者、学識経験者で構成され、そこで対象範囲が議論され、透明性が確保された決定プロセスにより審議する。

政令指定よりも迅速に対応できる。

3  補償金の支払い義務者

 現行制度
資料2参照

 現行制度の問題点
 現行制度は、利用者が機器等の購入時に一括して補償金を支払うという特例方式で実際は補償金が支払われているが、これは、機器等を購入した人のほとんどは私的録音録画を行うということを前提にしており、いわば専用機器・専用記録媒体による録音録画を念頭に置いた制度設計と考えられる。

 しかしながら、次のような場合には、現行制度では対応できないと考えられる。
仮に汎用機器等を対象とした場合、個々の利用者の録音録画行為に着目する現在の方式では、専用機器等の場合に比べて、機器等を購入したが著作物等の録音録画を一切しない人の割合が増えることになることから、返還制度の問題点(返還額が少額すぎて実効性のある制度とするのが困難。立証責任は利用者にあること等)がより拡大することになる。

第30条の見直しにより、仮に違法サイト等からの録音録画や適法配信からの録音録画が第30条の範囲外になったとすると、著作物等の録音録画を一切しない人に加えて、第30条の対象外になった録音録画しかしない人も返還の対象にせざるを得ず返還制度の問題点がより拡大することになる。

 また、著作権保護技術の強弱やある特定の機器等が私的録音録画に供される割合などを補償金に反映しようとした場合、支払い義務者が利用者では反映しにくいと考えられる。

 改善すべき課題と対応策
 現行制度は、専用機器・専用記録媒体を前提にした制度であるところから、負担の公平性等の点から、仮に汎用機器等を対象にする場合、イの問題点から現行制度のように利用者が支払い義務者では対応できないと考えられるがどうか。

 仮に見直すとした場合、選択可能な制度は、我が国以外の国で採用されている製造業者及び輸入業者が支払い義務者になることが適切と考えられるがどうか。

 なお、製造業者等の支払い義務者とすることの考え方を整理すると次のようになるが、これについて問題はあるか。

録音録画機器等の提供があることから私的録音録画が行われるとの因果関係がある。

著作権法の原則では、利用者が補償金を支払うのが基本であるが、個々の利用者から補償金を徴収するのは事実上困難であり、現行制度においても実質的には製造業者等が補償金を支払っている。

今回の制度見直しにより、負担の公平性等の点から汎用機器も対象にせざるを得ないとすれば、返還制度に関する問題点等が拡大するなど現行制度の考え方では対応できないところから、第30条の存在により利益を得ており、現行制度においても実質的に補償金を支払っている製造業者等に著作権保護のために協力を求めることが適切と考えられる。

4  補償金の額の決定方法

 現行制度
資料2参照

 現行制度の問題点
 現行制度における補償金の決定手続きに大きな問題点はないと思われるが、次のような点で改善の余地があると考えられる。

(ア)  著作権保護技術の導入により、録音録画の回数等が制限された商品が流通したり、録音録画制限が可能な機器等が販売されている実態がある。著作権保護技術の仕様や仕組みによっては、通常の場合より録音録画が抑制される可能性があるが、そのような仕組みの導入が補償金額の決定にどう与えるかについて考え方が実務上も制度上も整理されていない。

(イ)  補償金の額は、認可申請前に関係者が協議し、合意又はほぼ合意された金額が申請される実態にあるが、決定方法の透明性にやや欠ける面がある。

 対応策
 欧米(例えば、独、スペイン、米国)では、法令で補償金額を決めている例も見られるが、機器等の発展にあわせた柔軟な補償金体系等の構築が困難であり、関係者の協議方式に変更される傾向にあるところから、関係者の協議方式が前提となっている現行制度は原則として維持することでよいか。

 補償金の決定プロセスの透明化を図るために、例えば現行制度で定められた文化審議会著作権分科会使用料部会(学識経験者のみで構成)の意見を聞くことに代えて、学識経験者と利害関係者で構成された機関(例えば、前述の「評価機関」)の意見を聞くことなど、別の手続きに変更をすることはどうか。

 著作権保護技術の影響を補償金額に反映させるよう、その旨の根拠規定を定めることではどうか。

5  補償金管理協会

 現行制度
資料2参照

 現行制度の問題点
 現行制度は、録音と録画を完全にわけて制度設計をしているが、最近では同一機器において録音と録画ができる機器も販売されていることから、同じ機器等に対し2つの団体から別々に補償金を請求する可能性が生じている。

 補償金管理協会の事業の一つとして共通目的事業があるが、現行制度では、それぞれの協会が(現実には両協会で調整しているとはいえ)独自に事業を実施している。

 対応策
 同一機器等に対する2つの補償金管理協会からの別々の請求の回避、共通目的事業の合理的・効率的実施、管理経費の削減等を考えると、補償金管理協会は1つにすればいいと考えるがどうか。

6  共通目的事業のあり方

 現行制度
資料2参照

 現行制度の問題点
 「共通目的事業の内容が十分知られていない。また、権利者のみならず、広く社会全体が利益を受けるような事業への支出も見られる」(文化審議会著作権分科会報告H18.1)の指摘がある。

 対応策
 補償金を個々の権利者へ厳密な配分を行うことには限界があるので、権利者全体の利益に資するような共通目的事業を廃止する必要はないと考えるがどうか。

 ただし、事業内容の検証等を実施した上で、共通目的事業への支出割合を必要に応じ見直すことが必要と考えるがどうか。

 また、事業の透明性を確保するため、事業内容の公開を義務付ける等の措置が必要と考えるがどうか。

7  補償金制度の広報のあり方
 現行制度では、補償金管理協会に補償金制度の広報義務はないが、広く消費者に補償金制度の仕組みや意義を啓発普及することは必要なことであるので、補償金管理協会に補償金制度の広報義務を課すことでどうか。

8  その他
 その他改善すべき課題やその対応策はあるか。

(3) 録音源・録画源の提供という行為に着目した制度設計

 現行制度とは全く異なる制度であることから、最初に制度の概要を示した上で、制度上の課題や対応策について整理する。

1 制度の概要

 補償金の支払い義務者について
 支払い義務者は、録音源・録画源の提供者

 提供者の範囲については、直接消費者に録音源・録画源を提供している者ということであれば、例えば、CD等の販売事業者、レンタル事業者(図書館等を含む)、配信事業者、放送事業者、中古販売業者、消費者(友人等に提供)等が考えられるが、間接的に提供しているということであれば、例えば音楽CDの場合であればその製造業者、放送の場合であれば番組供給者なども考えられる。

 補償金額の徴収及び決定方法について
 権利者が録音源・録画源の提供者と録音録画、貸与、公衆送信、送信可能化等の契約をする際に録音録画使用料等に補償金分を上乗せし請求することが最も一般的と考える。

 補償金の額については、録音録画等に関する権利が管理事業者により管理されている場合は、当該管理事業者と録音源・録画源提供者との交渉により決定され、個別処理の場合は当事者同士の交渉で決まることとなると考えられる。

 補償金管理協会・共通目的事業等について
 通常の許諾に伴う著作権・著作隣接権の使用料に上乗せして補償金を徴収するため、補償金徴収代行機関である補償金管理協会は必要ではなく、また補償金は録音録画等の使用料に上乗せされて個々の権利者に分配されるので、共通目的事業も必要でなくなる。

2 制度上の課題と対応策

 考え方
 録音録画源が提供されるから私的録音録画が行われること等から、私的録音録画と録音源・録画源の提供との因果関係がある。

 録音源・録画源の提供者は、第30条により無許諾で録音録画されうることを承知の上で、録音源・録画源を提供しており、権利者が録音源・録画源の提供者との契約で私的録音録画の補償金相当額を徴収できないということであれば、法制度により、合法的に補償金を請求できるようにする必要がある。

 改善点と問題点
 補償金管理協会を経由して補償金を徴収する必要がなくなり、補償金額を特別に決める必要はなくなるし、共通目的事業も必要なくなるので、制度としては非常に単純なものとなる可能性がある。

 録音源・録画源が提供されるから録音録画ができるという因果関係はあると考えるが、私的録音録画問題の本質は、便利な録音録画機器等が広く普及したことが原因ではなく、録音録画ができる商品等を提供したから録音録画が広まったのだということになり、私的録音録画問題の本質を根本から見直す必要が生じる。

 CD購入者や放送の視聴者の中には録音録画機器を所有していない者も多いが、このような消費者からも事実上補償金を徴収することになること、また対象機器の決定の論点は解消されるが、私的録音録画の可能性を一切無視して補償金を徴収することになることなど、制度の不合理さが目立つ制度にならざるをえない。

 レンタルCDについては私的録音につながる可能性が比較的高い分野とは考えられるが、図書館での貸与や友人への貸与などの類型とのバランスを考えると、レンタル事業者のみ特別扱いするのは問題が多い。

 レコード製作者、映画製作者等については、同時に製造・販売事業者等である場合が多く、制度設計によっては、自分が自分に補償金を請求することになる。

(参考)著作権審議会第10小委員会報告書(抜粋)
 著作物等の放送、商業用レコードの貸与又は販売などによって、ユーザーの私的録音・録画の目的となる素材を提供する者(放送局やレコードレンタル業者、レコード会社等)も、放送使用料、レンタル使用料、録音使用料等への報酬の上乗せという方法で協力すべきであるとする「源泉払い」(ペイ・アット・ソース)とも言われる考え方もある。
 この考え方は、ユーザーが私的録音・録画を行うためには、機器又は機材の入手だけでは足らず、録音・録画の目的となる素材の入手も必要であり、権利者の報酬取得の実現について協力すべき者を判断する場合には、それら素材の提供者も考慮すべきであるというものである。この「源泉払い」の考え方は、1988年にヨーロッパ共同体(EC)委員会が作成した著作権に関するグリーン・ペーパーにおいても紹介されている。
 しかし、これについては、次のような問題点が指摘されており、この考え方は採用すべきでないとする意見が大勢であった。
1) 著作権法の基本的な考え方は、著作物等の利用態様に応じて、複製権や放送権などの支分権を行使し、権利者の利益確保を図るということであり、その考え方からは、ユーザーの私的録音・録画に利用される可能性はあるとしても、ユーザーの私的録音・録画とは区別される別途の利用者であり、その利用について別途権利処理を行っている放送局等が協力を行うという源泉払いの考え方は、関係者の理解を得にくいものである。
2) また、これら放送局等の協力による徴収方法は、ひいては、料金転嫁等により録音・録画機器又は機材を有せず、私的録音・録画の可能性のない公衆に対しても広く報酬支払義務が課されることになり、公平性、妥当性の面からも問題が大きい。特に、視聴者から視聴料を徴収していない民間放送局の場合は、全く対応しがたい。したがって、これらの者にも協力を行わせるのは難しいと考えられる。
3) 放送局やレコード会社は、素材の提供を行いつつ、一面では、権利者の性格も併せ持っており、このような両面性を持っている者に協力を行わせるのは難しいと考えられる。

3 私的録音録画補償金制度以外の方法について

 補償金制度を廃止し、無許諾・無償の利用が可能になるように一旦第30条を改正した上で、契約ベースの対応として、権利者が録音録画、貸与、公衆送信、送信可能化等の契約をする際に、事実上補償金を含めた使用料で許諾するという方法も考えられなくはないが、制度上根拠のない補償金の支払いに製造・提供事業者又は消費者の理解が得られるとは思えず、実現性がないと考えるがどうか。


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