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資料8

意見書

私的録音録画小委員会
主査 中山 信弘 様

2007年6月22日
社団法人日本芸能実演家団体協議会
実演家著作隣接権センター・CPRA
運営委員 椎名 和夫

 2007年6月15日開催の私的録音録画小委員会配付資料1について以下のとおり意見を申し述べます。

1. 前提条件の整理

(1) 第30条の範囲の縮小について

 条件付で30条の範囲を縮小することに賛成いたします。

 まずアについては、30条の範囲からはずす以上、違法複製物や違法サイトからの録音録画を防止するための施策が別なスキームで実行される必要があると考えています。そのための努力は、権利者のみならず、関係当事者すべてが一定の責任を負って行なう必要があると考えております。

 イについては、従来、補償金制度の存在を前提として、複製の対価については明示的に言及されず行われてきたものですが、今後は複製の対価を含んで徴収し、それを権利者に分配することが可能であることから、30条の範囲から除外する可能性が指摘されているものです。よって、そのための関係当事者間の合意がきちんと形成された場合に、30条の範囲から除外することが可能になると考えております。

(2) 著作権保護技術と補償の必要性との関係

 アとウの場合について、すなわち著作権保護技術により複製の総体が一定の水準を下回ったり、複製の対価に関する個別徴収が可能となったりした場合には、補償の必要性が消滅するものと考えますが、補償の必要性がなくなるイの場合というものが、具体的に想定できません。現状、関係権利者の総意として選択権を行使して、その意志に基づいて録音録画をコントロールできるような保護技術は存在していませんし、また実現する予定もありません。もしこの表現を残した場合、これが意味する「状態」について、いたずらに誤解や曲解を生じかねない危険性があります。

 また30条の範囲の縮小のイにも関連する部分ですが、適法配信ビジネスモデルの黎明期にあって、配信のプラットフォームからユーザー端末やソフトウエアに至るまで独占的に保有する事業者により、その優越的な立場から画一的な料金や保護レベルを権利者が求められ、権利者がそれに同意せざるを得ないような場合についても、「権利者の意思によるコントロール」と解された場合には、権利者の不利益は解消せず、またその事業者が独占的に上げる利益も調整されないままになってしまいます。
 以上の懸念等により、イについては削除するべきと考えます。

2. 仮に補償の必要性があるとした場合の私的録音録画補償金制度の基本的なあり方

(1) 制度設計の大枠

 制度設計の大枠としては、制度が調整するべき利害関係を考えた場合に、アの「録音録画機器・記録媒体の提供という行為に着目した制度設計」以外の方法を採用することは考えられません。

(2) 録音録画機器・記録媒体の提供という行為に着目した制度設計について

1  対象機器・記録媒体の範囲について

 対象機器・記録媒体の範囲については負担の公平性の観点から、私的録音録画に供されている機器・記録媒体すべてを対象とするべきであると考えます。その場合、私的録音録画に関与する割合に応じて補償金の額を決定する必要が生じますが、その点については、補償金の額の決定方法のところで述べます。

 またパソコンについては改めて論点の整理検討が必要だとする場合も、私的録音への関与度が高く、すでに他の国々でも対象となっているデータ用CD−R/RWについては、最低限制度の対象に加える必要があると考えます。

2  対象機器・記録媒体の決定方法について

 対象となる機器・記録媒体の決定については、対象機器・記録媒体の範囲が「私的録音録画に供される機器・記録媒体等」と法に明記されることにより「決定」というプロセスは省略されるものと考えます。またパソコン等、一部の機器や記録媒体等が継続検討となった場合には、評価機関において按分、算出する補償金の額をゼロとするなどの方法で調整してゆくことが考えられます。

3  補償金の支払い義務者

 補償金の支払い義務者については、私的録音録画により利益を得るもの、すなわち利用者および製造業者等とすることが適当であると考えますが、返還制度の問題等、事務局が指摘した点を考慮した場合、製造事業者等とすることがもっとも現実的であると考えます。

4  補償金の額の決定方法

 補償金の額の決定方法については、機器等の私的録音録画への関与割合や、今後の保護技術の影響等を勘案して決定する必要があると考えます。またその場合、現在のように機器等の価格によって変動する「定率制」ではなく、私的録音録画に100パーセント利用される場合の「定額」を定め、関与割合や保護技術の影響等に着目して、補償金の額が按分、算出される形が望ましく、その計算プロセスについては法に明記する必要があると考えます。

 また、関与割合や保護技術の影響等は変遷するものであり、具体的な金額の按分、算出については、評価機関に委ねるという方式に賛成いたします。

5  補償金管理協会

 録音と録画の補償金管理協会が統合されることは、現実的な選択であると考えます。

6  共通目的事業のあり方

 共通目的事業については、制度が包括的なものとならざるを得ない以上、間接的な分配として存続する必要があると考えますが、それに加えて、社会全体が利益を得るような使途について、今後さらに充実させてゆく必要があると考えます。

7  補償金制度の広報のあり方

 補償金制度に関する周知徹底が重要であることは議論の余地がないと考えますが、仮に製造業者等が支払い義務者になった場合、製造業者等の負担により利用者は無償の複製が可能となります。特にこの点については、利用者に対して十分な広報を行う必要があると考えています。

8  その他
 なし

(3) 録音源・録画源の提供という行為に着目した制度設計

 録音源、録画源の提供という行為に着目した制度設計は、製造業者等の利益を調整する機能を持たないことから、制度の持つべき機能としては不十分であり、反対します。
以上


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