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資料6

「私的録音録画に関する制度設計について」に関する意見

2007年6月21日
慶應義塾大学教授
小泉 直樹

1.  前提条件の整理
(1) 30条の範囲の縮小
(意見)アについては、基本的に無断配信の取り締まりによって対処するのが筋であり、川下のユ−ザ−の私的行為に対して−たとえ複製者に侵害物であることについての悪意を要求したとしても−規制を被せる根拠、実効性は疑わしい。イについては、あえて明文の規定を設けて除外する実益は乏しい。したがって、いずれの提案も支持できない。
かわりに、個々の事情に応じたより柔軟な判断が可能となるよう、同条1項に、「ただし、著作物の通常の利用を妨げるものであってはならず、かつ、著作者の正当な利益を不当に害するものであってはならない」旨の但し書きを追加することを検討すべきである。
(2) 保護技術と補償の必要性
(意見)ウのみに賛成する。アについて。保護技術による個別課金システムが多くのユ−ザ−によって受け入れられることにより、「(課金され有償の)私的録音録画の総体」がむしろ増加し、その分、「著作権者の利益(確保の機会)の総体」も増大し、その結果、補償金は不要となる、ということも想定しうるのであって、「私的録音の総体」が減少した場合に(のみ)補償金が不要となる、というアの前提自体に疑問がある。イについて。「関係権利者の総意」があっても、ユ−ザ−の支持が得られなければ市場において保護技術をかけることができないことは、CCCDの導入をめぐる顛末から明らかであり、権利者の意思のみに、補償金の要否を依らしめることは適切でない。権利者の総意が形成されただけでは、補償を打ち切ると判断するには早計といえる。イにも賛成できない。

2.  基本的なあり方
(1) 制度設計の大枠
(意見)
われわれに残された時間はわずかであり、検討の対象はアにしぼるべきである。
(2) 1ウ(ア)対象機器について
(意見)
「負担の公平性」という用語が頻繁に用いられているが、平成18年1月の「著作権分科会報告書」第2節 3 検討結果 (2) 補償金制度を巡る問題点 として指摘された諸点、すなわち、支払い済み補償金の返還制度、「二重徴収」問題、共通目的事業、のいずれについても、これまでの検討において、補償金制度を新たな対象に「公平に」及ぼすべきであると結論できるだけの、具体的改善案は関係者から示されていない。われわれに与えられた課題は制度の「廃止や骨組みの見直し」「抜本的な検討」であり、まずは現行制度の存置の必要性自体から、慎重に議論すべきであろう。
4補償金の額の決定方法
ウ 対応策
(意見)
三番目の○「保護技術の影響を補償金額に反映させるよう、その旨の根拠規定を定め」ことに賛成する。
(意見)
いわゆる「二重徴収」をしてはならないことについても、根拠規定を置くことを検討すべきである(以上につき、『私的録音・録画と著作権の関する海外調査報告(2)』36頁[フランス法 311の4条3項1,2文]が参考になる)。
平成18年11月15日第七回小委員会配付資料2の2頁には、「二重取り」の有無について、「曖昧さが残る」例が散見されると指摘されている。この点を明確にしておくことが、補償金の存置の一つの前提となるのではないか。

以上


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