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資料7

私的録音録画により権利者が被る不利益と著作権保護技術の関係について

1. 平成4年の私的録音録画制度導入時の認識

 「これらの実態を踏まえれば、私的録音・録画は、総体として、その量的な側面からも、質的な側面からも、立法当時予定していたような実態を超えて著作者等の利益を害している状態に至っているということができ、さらに今後のデジタル化の進展によっては、著作物等の「通常の利用」にも影響を与えうるような状況も予想されうるところである。このようなことから、現行法立法当時には予測できなかった不利益から著作者等の利益を保護する必要が生じていると考える。」(第10小委員会(私的録音・録画関係)報告書より抜粋)

2. 不利益に関する考え方の整理

(1) ベルヌ条約9条2項との関係について(資料3参照)

 仮に、私的録音録画が、著作物の通常の利用を妨げていることが明らかな場合(例えば、私的録音録画の影響とCD販売や配信事業の不振の因果関係が立証されたとき)は、補償措置が必要かどうかではなく、該当行為は30条の範囲外にしなければならないと考えられるが、どうか。

 仮に、私的録音録画が、著作物の通常の利用は妨げないが、権利者の正当な利益を不当に害していることが明らかな場合も、基本的には、該当行為については、30条の範囲外にする必要があるものの、補償措置によって調整することは可能と考えられるが、どうか。

(2) 権利者が被る不利益について

 私的使用のための複製は、権利者の「私益」と利用者の「私益」との調整の結果であり、他の権利制限規定のように、私益と公益の調整の結果ではないところから、仮に権利者が不利益を被っているとすれば、権利者の受忍限度は、他の制限規定のそれと比べて低いものと考えられるが、どうか。

 権利者が不利益を被っているといえるためには、何らかの経済的損失が必要と考えるが、その場合における経済的損失とは何か。例えば、私的録音録画が通常の利用に影響を与えているとすれば経済的損失があるといえるが、それだけか。例えば、私的録音録画が権利者の許諾を必要とする利用であったならば、権利者が得られたであろう経済的利益はどう考えるのか。

 昭和45年の現行法制定時、権利制限をした理由の一つに、私的録音録画は「零細な利用である」と位置づけられたことがあるが、現状において個々の家庭内における録音録画だけをとらえて見た場合は、権利者が被る不利益は受忍限度を超えているといえるか。また、我が国における私的録音録画の全体の量と質(複製の総体)を見た場合はどうか。

 個々の行為類型(資料2参照)ごとに権利者が被る不利益の違いはあると考えられるが、不利益の濃淡は別として、どの行為類型についても権利者に対し不利益を与えているといえるか。

(3) 著作権保護技術

 平成4年の私的録音録画補償金制度の導入以降の新たな要因として、著作権保護技術の普及がある。前期の小委員会での議論から、著作権保護技術と補償措置は併存可能と考えられるが、仮に現状において補償措置が必要だとして、著作権保護技術の内容とその効果によっては、権利者が被る不利益が一定程度解消でき、補償措置の必要性がなくなる場合があると考えるが、どうか。例えば、次のような場合は補償措置の必要性はなくなると考えられるか。

1 著作権保護技術の効果により私的録音録画の総体が減少し、一定の水準を下回ったとき(→私的録音録画が著作権保護技術によって厳しく制限されれば、権利者の不利益も少なくなるため)

2 著作権保護技術と契約の組み合わせにより、利用者の便を損なうことなく個別徴収が可能となり、そのような実態が普及したとき(→録音録画の対価を確保できる状況となるため)

3 著作権保護技術の内容について権利者の選択肢が広がり、コンテンツごとに関係権利者の総意として権利者側が選択権を行使できるようになり、そのような実態が普及したとき(→権利者がその意思に基づき私的録音録画をコントロールできる場合には、その結果として生じた録音録画は権利者にとって不利益を生じさせないため)


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