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補償金制度導入の経緯 |
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カナダ著作権法では、私的録音補償金制度が導入されるまで、調査研究目的での複製を認めるフェアディーリングの規定しかなく、私的使用目的であっても権利者の許諾を得ずに複製する行為は全て権利侵害とされていた。1990年半ばになって、技術の発達による私的複製の増加と権利者の経済的利益の損失について音楽業界から圧力が強くなったため、政府による検討が行われた結果、私的複製を認める代わりに補償金を権利者に支払うこととする私的録音補償金制度が導入され、1998年3月19日に施行された。
なお、制度導入時から現在にいたるまで、映像関係業界から私的録画補償金制度導入を望む声がほとんどないため、現在でも私的録画補償金制度は設けられていない。 |
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制度の概要 |
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私的使用のために、音楽の著作物、実演、レコードを聴覚的記録媒体に複製する行為は、記録媒体がアナログかデジタルかを問わず、権利侵害にならないこととされており、権利者は、聴覚的記録媒体の製造業者及び輸入業者から補償金を受ける権利を有している。 |
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対象製品の記録媒体と補償金額の決定方法 |
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補償金対象製品 |
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アナログオーディオカセット、Minidisc、CD−R Audio、CD−RW Audio、CD−R、CD−RW。 |
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補償金対象製品と補償金額の決定方法 |
ア |
徴収団体であるCanadian Private Copying Collective(CPCC)が補償金の対象製品と料金表案を独立行政審判所であるカナダ著作権委員会に提案。 |
イ |
同委員会は、CPCCから提案のあった料金表案を公告し、異議申し立てを受け付ける。 |
ウ |
異議申し立てがあれば、同委員会はヒアリングを行い、必要に応じて料金表案を修正し、補償金額を決定。なお、同委員会の決定は、カナダ連邦控訴裁判所による司法審査が行われる。 |
(参考) |
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2003年、同委員会は、iPodなどのメモリー内蔵型オーディオレコーダーに課金する決定をしたが、カナダ連邦控訴裁判所が同委員会の決定を否定。 |
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支払義務者 |
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補償金の支払義務者は、聴覚的記録媒体の製造業者または輸入業者とされている。 |
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返還請求制度 |
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補償金の返還請求制度の規定はないが、製造業者等が知覚障害者を代表する団体に記録媒体を販売する際は、補償金が免除される。 |
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共通目的事業 |
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私的録音補償金制度創設時、関係者に関心がなく同意が得られなかったため、共通目的事業への支出は採用されていない。 |
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補償金の分配 |
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CPCCが収受した補償金は、カナダ著作権委員会が決定した分配率に基づき、分配されている。
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○ |
2000年の分配率 |
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著作者団体75パーセント、実演家団体13.7パーセント、レコード製作者団体11.3パーセント |
○ |
2001年〜2004年の分配率 |
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著作者団体66パーセント、実演家団体18.9パーセント、レコード製作者団体15.1パーセント |
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2005年の徴収額総額 |
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35,075カナダドル |
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補償金とDRMとの関係 |
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補償金とDRMとの関係について、カナダ政府として確定した見解は持っておらず、現在、最良の選択肢を検討しているところである。なお、権利者側の意見も統一されていないようである。 |