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制度の概要 |
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フランス著作権法では、私的複製を排他的権利の例外として認め、レコードおよびビデオグラムに固定された著作物の著作者、実演家、レコード・ビデオグラムの製作者は私的複製に対する報酬請求権を有することとされている。 |
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対象品目 |
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フランスでは、アナログかデジタルかを問わず、記録媒体のみが報酬の対象とされている(機器から取り外し可能な媒体だけでなく、機器に内蔵された媒体も含まれる。)。 |
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対象品目と報酬額の決定方法 |
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報酬の対象とされる記録媒体、報酬の料率、支払い方法は、国の代表を委員長とし、報酬請求権団体代表(2分の1)、記録媒体の製造業者または輸入業者団体代表(4分の1)、消費者団体代表(4分の1)で構成される私的複製委員会において多数決により決定される。可否同数の場合は委員長が決定する。
報酬の額は、記録媒体の種類及びその記録可能時間に応じて決定される。
※2006年8月3日に、EU理事会指令の国内法化を意図した2006年法が公布され、報酬の額に技術的保護手段の使用の程度及びその影響を考慮に入れるべきことなどが新たに規定された。 |
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iPod、PC、ハードディスク、フラッシュメモリの取扱い |
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iPodは、2002年7月4日の決定で支払いが義務づけられた。外付けのハードディスクおよびフラッシュメモリは現在私的複製委員会で対象とするか否か検討中。PC内蔵のハードディスクは対象外。 |
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支払義務者 |
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記録媒体の製造業者・輸入業者に報酬の支払義務が課せられるが、報酬は媒体の価格に上乗せされているため、実際には消費者が報酬を支払っていることになる。 |
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徴収・分配 |
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報酬の徴収と分配は徴収分配協会(民事法人)が行う。分配率は、私的録音の場合は、著作者2分の1、実演家4分の1、製作者4分の1。私的録画の場合は、著作者、実演家、製作者間で等分する。 |
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返還制度 |
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報酬の支払いが免除される場合を限定列挙。 |
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文化目的事業 |
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報酬の25パーセントは徴収分配協会によって、創作援助活動、生の興行の普及および芸術家の育成活動等の文化目的事業(ex.フェスティバル、巡業、興行、国際コンクール、奨学金の支給に対する支援活動)に使用される。 |
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2006年法のポイント |
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【改正の際の優先事項】
2006年法を制定するにあたり、私的複製の例外、報酬請求権制度、DRMとの関係について様々な議論がなされ、その結果、以下の2点が優先事項とされた。
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消費者の中に根付いている私的複製の例外を守ること |
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創作活動に対する正当な報酬を認めるため、私的複製に対する報酬を守ること |
【改正法のポイント】
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私的複製の例外を維持
(ただし、スリー・ステップ・テストの要件を追加規定) |
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報酬請求権制度を維持
(ただし、報酬の額に技術的保護手段の使用の程度およびそれらの影響を考慮に入れること、二重課金があってはならないことを新たに規定) |
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私的複製の例外の利益を保証するための規定を新たに導入
(私的複製の例外の利益と技術的保護手段との関係を調整するため、独立行政機関である技術的手段規制局を設置)
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制度改正にあたって、製造業者や輸入業者は、DRM 契約によって報酬を支払うことが可能との考えから、報酬請求権制度の維持に反対したが、技術的保護手段の信頼性は十分ではないことは明かであると考えられ、報酬請求権制度は維持された。
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※ |
スリー・ステップ・テストの要件を遵守するために必要な場合は、技術的保護手段を使用して、あらゆる複製を妨げることも認められることが、憲法院の決定で確認されている。 |
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