【中山主査】 時間でございますので、ただいまから文化審議会著作権分科会「私的録音録画小委員会」の第7回を開催いたします。
本日は、ご多忙中ご参加賜りましてありがとうございます。議事に入ります前に、本日の会議の公開について決定をしたいと思います。いつものとおりですけれども、予定されている事業内容を参照いたしますと特段非公開とするには及ばないと考えられますので、既に傍聴者の方々には入場していただいておりますけれども、ご異議ございませんでしょうか。
(「異議なし」の声あり)
【中山主査】 ありがとうございます。それでは、傍聴者の方々にはそのまま傍聴をしていただきたいと思います。
それでは議事に入ります。まず事務局から配付資料の説明をお願いいたします。
【木村課長補佐】 それでは、おそれいります、本日の配付資料の確認をお願いします。議事次第1枚ものの中ほどに本日の配付資料を示させてもらっております。資料の1ですが、著作権法第30条の範囲外とすべき利用形態について(案)、次に資料の2、私的録音録画に関する補償措置の必要性について(案)でございます。そのほかに参考資料といたしまして、参考資料の1、2006年実態調査を踏まえた私的録音録画の実態の変化等について、そして最後に参考資料の2といたしまして私的録音録画小委員会(第6回)意見概要でございます。資料の配付漏れ等ございませんでしょうか。ありがとうございます。
【中山主査】 本日の議題は、前回に引き続きまして課題に関する検討を行いたいと思います。まず事務局より資料の説明をお願いいたします。
【川瀬室長】 それでは、資料のご説明をさせていただきます。資料1と資料2に従ってご説明をさせていただきます。今期の私的録音録画小委員会につきましては、論点整理をしまして、過去2回、議論を積み重ねてきたわけでございますけれども、今期の小委員会も本日と12月という予定をしておりますので、そろそろ今期のまとめをしたいと考えておりまして、そういう意味でこの資料1と資料2というものを作りました。
まず資料1でございますが、まず議論になっておりました著作権法30条の範囲外とすべき利用形態についてでございます。30条で私的録音録画を認められる範囲につきましては以下のような考え方で整理したいと考えるかどうかということでございます。
1はこれは基本的な考え方ですが、補償措置の必要性を考えるにあたりましては、30条で私的録音録画を認められている今の範囲を見直して、適用対象外とすべきものはそうした上で、改めて補償措置の必要性を考える、というような段取りでどうだろうかということでございます。
2としまして、見直してにあたっては、以下の3つの要件などを考慮した上で整理することでどうかということで、1つ目の要件は、いわゆるさまざまな環境で視聴するための媒体変換といいますか録音録画、これはプレイスシフトと言われていますけれども、また、放送時間とは別の時間に視聴するための録音録画、これはタイムシフトとよく言われていますが、そういった録音・録画によって音楽、映像等を楽しむという状況は長く定着している現象でして、これを制度改正により大きく変化をさせないということが1つの考慮事項だと考えてはどうかということです。
2つ目としましては、第30条は零細な利用であるとか閉鎖的な範囲で行われる行為であり、事実上権利者の権利行使ができないというようなことが、権利制限の大きな理由となっているわけですけれども、これを原則に戻すために相当の理由が必要だということです。
それから、3つ目としまして制度改正の結果、違法状況が放置されるおそれがないということを考慮するということです。
そういうことで前々回から議論をしてきました私的録音録画の行為を類型化して、私どもで表にしたりして議論をしていただいたわけですが、その録音録画行為ごとに整理すると次のようになると考えられるがどうか、ということです。
次に3として、制度改正は難しいのではないという事項でございます。ア・イ・ウです。他人から借りたCD、DVD等からの私的録音録画、これはDVDはコピー禁止、商業的なものはコピー禁止になっているものが多いのですが、いわゆるパッケージソフトという理解をしていただけるといいと思います。それからレンタル店から借りたCD、DVD等からの私的録音録画、それから放送からの私的録音録画ということでございまして。改正が難しいという理由につきましては、もともとそのパッケージが渡った所でコピーされる、すなわち、家庭内でコピーが行われるということですから、権利行使はなかなか難しいのではないかと思います。
それから、今までコピーが無許諾でできたわけですから、これは大きな秩序の変更がともなうわけでして、機器のメーカー、レンタル店、図書館、放送事業者等に対する法的措置のおそれもあるし、利用秩序が混乱するというようなことがあって、前回の資料でもありましたように、許諾システムの円滑な導入も困難ではないかということで、そういった秩序が乱れる可能性が多いと考えられます。それから、違法状態が放置される可能性も多いと考えられます。また、個々のコンテンツごとの複製禁止、これはどうしてもコピーをしてもらいたくないというものがあると思うのですが、それについては著作権保護技術の採用によりまして個別対応が可能ではないかと考えられます。
それから、制度改正はできるのではないかというものが、このアとイです。1つは違法複製物とか違法サイトからの私的録音録画でございます。理由としましては、確かに利用者に対する権利行使は事実上難しいのですが、ただ、ファイル交換の場合につきましては、ダウンロードされたものが同時にアップロードされるという場合には、実態把握については外部から可能だということです。
また、利用秩序の変更を伴うわけですが、違法複製物等からの録音録画は違法であるという秩序は利用者にとって受け入れやすいのではないかと思います。その下のポツのところを見てもらいますと、今回の私的録音録画実態調査においても80パーセント以上の人が自分で録音した音楽をホームページに掲載したり、ファイル交換ソフトで交換することについては、権利者の了解を得る必要がある行為と認識しておられます。ただ、利用者保護の立場に立てば、その違法複製物であるという事情を知らないでコピーしたような場合まで著作権侵害を問うのかという問題がございますので、その点は制度上の工夫が必要だと考えられます。
それから、利用者に対する権利行使は困難ですが、違法複製物等を減少させるためには、例えばファイル交換などのもとのサイトを減少させるためには、利用者の複製行為を減少させる必要があるということが1つの理由になるのではないか。それから著作権保護技術の及ばない海賊版の分野ですから、法的秩序の一律の変更もやむを得ないのではないかというように考えられます。
イですが、イは少しアとは違いまして、適法配信からの私的録音録画です。これは著作権保護技術と配信契約により利用者の把握とか複製の制限というのは容易であることを踏まえるとこのような考えが出てくるんではないかと思います。
なおコンテンツホルダーであるレコード製作者とか映画製作者については、私は複製までも契約によって対価を徴収する、つまりオーバーライド契約も可能だと思いますが、それ以外の権利者の権利行使については、私的複製が適法だと、なかなか契約はしにくいと考えられます。特に著作権の管理団体が集中管理しているような場合には、基本的にはオーバーライド契約はできないと考えられますので、30条の範囲外になれば権利行使も容易であろうと考えられます。
それから、利用者とネットで接続されており、著作物等の録音録画ごとに利用料を支払うことも可能であるということもあります。利用ごとに対価を払うのが一番公平なわけでして、そういう意味ではこのネット配信の分野がモデルケースにはなると思います。
それから、一般に配信から利用者の録音録画までがビジネスモデルでありまして、「二重取り」の疑念がなくなるという効果があるということもあります。これは前期の法制問題小委員会からの疑問点でありました二重取りの議論でございますが、特に配信の場合についてそういった疑念が出されていたわけですが、そこのところの疑念がなくなるという効果があると考えています。
それから、利用者は現状と同様に適法に録音録画することが可能だということで、違法状況の放置の可能性が低いのではないかと思っております。
これが資料1の説明でして、続きまして資料2を説明したいと思います。資料2は、参考資料1というものが添付資料でございますけれども、これを見ながら特に1のところについてはご説明をしたいと思います。
私的録音録画につきましては、次のような理由、すなわち1・2・3ですが、1は私的録音録画の実態に対する評価、1枚めくっていただきまして2は契約に基づくいわゆる「使用料の二重取り」に対する評価、3が著作権保護技術とその範囲内の複製についての評価、この3点を総合的に勘案しますと、仮に著作権法30条の範囲に一定の限定、これは先ほど資料1で説明しました部分について30条の適用をなくするということですが、限定を加えたとしても、具体的な形はともかくとして、何らかの権利者に対する補償措置が必要だと考えるがどうかということです。
まず、その理由の1ですが、私的録音録画の実態に対する評価、これは参考資料と突き合わせて説明したいと思います。まず総合的な評価ですけれども、今回の実態調査及び今までの実態調査の結果等から以下の事実、ということで(1)、(2)ですけれども、これはまた後でご説明します。平成4年度の補償金導入時と比べて「複製の総体」が減少しているとは考えられず、デジタル録音録画の特性を考えるとむしろ増加傾向であると推定されるがどうかということです。デジタル録音録画の特性というのは、特に小さな機械で大量のコピーができるというデジタル複製の特性です。
まず録音について、実態調査等で分析してみました。まず録音ですが、録音実態はアナログ録音からデジタル録音へ着実に転換が進んでいるということでして、これが参考資料の1の(1)です。文章の右側に数字がございます。これが参考資料の項目に対応しております。
2ページをあけていただきますと、これがアナログ録音からデジタル録音の変換に関する資料でして、まず としましてデジタル録音経験の変化でして、母数はいずれも調査対象者でございます。2006年の場合には、デジタル機器の保有者に質問を聞いておりますので、保有率を掛け合わせて分母補正しました。その変化を見ていただきますと、これは着実に転換が進んでいるのがわかります。特に2005年と2006年の調査では大きな違いがある。2006年の調査が、いわゆる携帯用録音機器の急速な普及に伴って緊急的に調査したわけですが、やはり小型のポータブルオーディオが大きな影響を与えているのではないかと思います。
参考資料の3ページでございますが、これはデジタル録音のよい点ということで、先ほど言いましたように軽い、小さい、扱いやすい、音質が劣化しない、曲の並べ換えや消去が自由だからというようなデジタル録音のよい点が挙げられております。
それから、利用者1人が行う録音頻度とか録音量はパソコンや一体型の携帯型録音機器の普及に伴い増加している、ということがうかがわれます。
参考資料の4ページの(2)を見ていただきますと、これが利用者1人あたりのデジタル録音頻度の変化でして、母数はデジタル録音経験者でございます。その2006、2005、2001、1997年の下にありますそのパーセンテージが、(1)の の資料に対応した数字でして、調査対象者のうちのデジタル録音経験者の数字でございます。したがって、例えば1997年ですと97年時点でデジタル経験をした8パーセントの人に聞いた数字の内訳が表になっていると、こういう見方です。これによって録音頻度も上がっていると思われます。
それから5ページの(3)を見ていただきますと、これはデジタル録音量の変化でして、1人あたりのデジタル録音の年間平均回数を比較してみたのですが、2005年と2006年の間に点線を引いておりますのは、これは単純比較できないということで点線を引いております。といいますのは、2007年から2005年の調査に関してはパソコン、ポータブルオーディオは含んでおりません。また2006年についてはこれはパソコンとポータブルオーディオを含んで調査をしておりますので。単純比較はできませんけれども、それにしても平均回数が増えているという実態が見られます。
次の6ページを開いていただきますと、これはMD、CD-R、それからポータブルオーディオといいますデジタル録音媒体の録音曲数保存データ数でございます。これもここに書いていますように単純に比較できないのは、MDとCD-R/RWにつきましては最近1年間の録音曲数ということで、ポータブルオーディオについては現有の録音保存データということですが、ポータブルオーディオが普及しはじめてからがそんなに長くないわけですから、ある程度比較になると思います。この資料からも、ポータブルオーディオの保存量がすごく多いということがうかがえると思います。
本文に戻っていただきまして、録音源としては配信からの録音は少なくパッケージソフトからの録音が多くを占めるということでございまして、これは参考資料の1の(4)、7ページですが、調査の上から3つ目までがパッケージソフトからのコピーで、次にインターネットによる有料音楽配信が書かれています。ただ、ネットによる有料配信についてはこれから増加してくると思われます。
それから録音理由ですが、これも正規品の代替とかプレイスシフト、自己編集等がほとんどでありますから、同一コンテンツから多数の複製物を作成するという実態は少ないというのがうかがえます。これが参考資料の(5)、8ページでございまして、まず、だれのために録音したかといいますと、自分のためというのがはるかに多いわけでして、家族のため、その他というのが6.2パーセントです。それから、何のために録音したかというと、正規品の代替とかプレイスシフトとか自己編集というものがほとんどで、家族や友人、知人に頼まれてというのが15.8パーセントということです。
次の9ページを見ていただきますと、これは参考でございますが、ポータブル携帯オーディオの保有による影響というものが今回調査されまして、そこにいわゆる既存のレンタル、購入、音楽配信に対する影響というものが出ておりましたので、参考でつけさせていただきました。
それから、録画ですが、録画は録音の場合に比べてデジタル機器の普及が遅れています。今後普及は進むと考えられますけれども遅れているということで、これは参考資料の大きな2の録画の(1)を見ていただけますか。10ページでございます。ここにありますように、左側の数字がパソコンを除くデジタル録画機器の保有率が23.9パーセント、パソコンを含んだデジタル録画機器の保有率が27.0パーセントということで、下の参考にありますようにデジタル録音機器の保有状況とは、はるかに数字が違うということでございますけれども、これから伸びてくると思います。
本文に戻りまして、今回の実態調査からデジタル録画機器を購入している者の頻度は1998年のアナログ録画の調査と比べて顕著に多いことがわかります。これが参考資料の(2)、11ページですが、 で見ていただきますと、これもデジタル録画とアナログ録画ですから単純には比較できないので一応参考としていますが、比較をしてみますと、録画頻度はやはりデジタルになって非常に多くなったということです。
それから本文に戻りまして、またデジタル機器にかえて録画が増えたとする人が多い。これが参考資料の12ページの でございまして、これも調査結果が出ておりまして、増えたとする人が減ったとする人よりも圧倒的に多いということがわかります。
本文に戻りまして、デジタル機器の普及とともに1人あたりの録画頻度や録画量は高くなると予想されるということで、これが資料の 、13ページでございますが、その増加した理由を聞きますと、まず1番目が媒体の交換が不要でたくさん録画ができるとか、設定が簡単だとか、画質がきれいだというようなことが理由になっていますから、録画頻度だとか録画量は高くなってくると予想されていると思います。
次に録画理由はタイムシフトが多く、同一コンテンツから多数の複製物を作成する実態は少ないのではないかということで、これが資料の14ページです。これはデジタル録画機器でテレビ番組を録画する理由とその経験率でございますが、上位7項目のうちの6項目がタイムシフトではないかという結果が出ております。これが実態面でございます。
次に本文を1枚めくっていただきまして2でございますけれども、これも前回ご議論をしていただいたところでございますが、いわゆる契約に基づく「二重取り」の問題でございます。販売、レンタル、配信、放送等の録音録画の直前の著作物の利用の対価に、いわゆる複製の対価も含まれているのではないかという疑念、問題点が指摘されているわけですが、これにつきましても前回もお話ししましたように、契約の実態を見ますと、明示的に録音録画の対価が含まれているということは言えないと考えられます。なお、配信事業の場合には、配信契約の中で配信の対価の中に私的録音録画の対価が含まれていないということを明示している契約も、大手の幾つかの配信事業者に見られるところですが、利用者の録音録画も含めてビジネスモデルとしているという配信事業の性格から、あいまいさが残るということだと思います。
3でございますが、著作権保護技術とその範囲内の私的録音録画でございますけれども。著作権保護技術の導入につきましては、下記(1)のとおり幾つかのケースが考えられるわけです。これも前回整理しましたけれども、(1)を見ていただきますと、権利者団体との協議により著作権保護技術が採択されているとか、コンテンツの提供者が一方的に採用しているとか、機器メーカーが一方的に採用しているというような幾つかのケースが分けられるのですが、いずれにしても当該技術を導入したシステムを承知した上で、コンテンツを提供しているという場合には、権利者は、当該保護技術の範囲内の録音録画を許容していると考えられると思います。
この場合、コンテンツホルダーである権利者、例えばレコード製作者とか映画製作者のように、自分の意思によってコンテンツを提供している場合には、これは当たり前の話ですが権利者の意思は明確でありますが、それ以外の権利者、そこのコンテンツの部品として使われているような権利者についてもどうかということになります。私的録音録画について権利制限がかかっている以上、積極的ではないのでしょうけれども、前回の議論がありましたように、消極的ではあるけれども許容していると言わざるを得ない、というふうに考えられますがどうでしょうかということでございます。
次に、それでは著作権保護技術の範囲内の録音録画を関係権利者は許容したとして、補償の必要性までを否定した、と考えるかどうかということでございますけれども、これは下記の(2)の の場合を除き、下記(2)の の理由から当該許容と補償措置は併存できないとか、併存させるべきではないとまでは言えない、と考えられますがどうでしょうかということです。それでは、下記の(2)の 、(2)の の件ですけれども、これは1枚めくっていただきまして、まず は「複製禁止」を選択した場合には、これは補償措置というのはあり得ないわけでございまして、補償の必要性は権利者みずからが否定したということが書いていますけれども、これは当たり前の話だと思います。
それから、(1)の一連の場合においても、次の理由から、一般的に言えば、権利者の補償の措置までを否定したとは言えないと考えられるかどうかということです。まず理由が2つございまして、アは私的録音録画によって著作物を楽しむ、利用するという社会現象は、消費者の権利とまでは言えないと思うのですが、これは確立された社会慣行でして、映画ソフトの録画等のように特別な理由がある場合を除きまして、権利者側もそれを禁止するというような措置をとってないところから、補償措置を前提にこのような社会現象を認めるという選択肢はあるのではないかと思っております。
イですが、著作権保護技術の性格についてはいろいろな議論がありましたが、録音録画の禁止の場合を除きまして、私的録音録画を制限するというよりも、一般的な利用者にとって必要な私的録音録画を認めつつ、高品質の複製物が私的領域以外に流出するのを抑制するという意味が強いと考えられますので、その点からも著作権保護技術と補償措置は矛盾しないと考えられると思います。
以上の点から、著作権保護技術の範囲内の複製であっても補償措置が併存できないとか、併存さすべきでないというような考え方はとらなくてもいいのではないかと考えています。以上、大きな1・2・3を総合的に勘案すると、やはり何らかの補償措置が必要なのではないかと整理をしたいと思いますが、いかがでしょうかということです。以上です。
【中山主査】 課題についての検討を事務局にまとめていただいたわけでございますけれども、今日はこの資料1と2についての皆様のご意見をちょうだいしたいと思います。今日の議題はこれだけなのですけれども、この点について何かご意見、ご質問ございましたらお願いいたます。どうぞ、松田委員。
【松田】 議論の皮切りで、最初の資料1について質問させていただきます。大きい2の 、30条は云々と。零細な利用と権利行使が難しいという、これが理由にありますよと。その後なのですが、「これを原則に戻すための相当な理由がある」と書かれているのですが、これを原則に戻すためというのは、こういうふうに理解したらよろしいでしょうか。30条をこの2つの理由、これが原則であって、戻すためには相当の理由があると読んでいいわけでしょうか。ということになりますと、30条を何らかの形で戻すということになりますよね。現行の30条の規定をこの2つの理由から戻すといいますか、このニュアンスですと30条の範囲を縮小するかのように読めますが、そういうことではないのかどうかですね。
【川瀬室長】 これは標題にもありますように、ある形態の利用について原則に戻すということは許諾が必要だということにするわけでして、30条全体をどうするかというのではなくて、一部の形態について原則戻すと。一たん権利制限をかけたわけですから、それをもとに原則に戻すのは、相当の理由が必要だと思います。だから、事情の変化とか新しい技術の普及とか、その理由はきちっと整理しないとだめということです。
【松田】 わかりました。そうすると、これを原則に戻すというのはこの2つの理由がありますが、これ以外のところはちゃんと許諾が必要だということに戻さなければいけないよねと、こういうことですね。
そこで、それについては私賛成ですが、この資料1全体で実は前回まで私がかなり発言をさせていただきました。その1つのところは、他人から借りたCDやDVD、特にCD、これらを次から次へと貸していって、借りた人が私的領域における録音だから許されるのだというのは、限界があるのではないかという発言をいたしました。それを30条、多分30条の1号2号並びの30条を適用しない場合の例として、条項として入れるべきだと私の意見だとなってしまうわけですが。他人から借りて、また借りて、そして私的領域ならいいということはどうでしょうかと、こういう発言をいたしました。それに対しては、それもやはり権利行使をして個人あてに禁止を求めるということはなかなか難しいという発言がありました。私もそれはそう思います。
それに対しては、それでも著作権法というのは、違法ですよということを利用者にアナウンスをすることの効果、これは否定できないのではないかと私は考えております。これを議論の中では行為規範性という言葉で言いましたけれども、その重要な点も私はあるのではないかと思います。資料1はその議論が少なくとも全部削られているように思いまして、果たして著作権法の30条を考える場合に、行為規範性、個人に向けた一応著作権法の考え方として、ここまでは適法ですけどここからは違法だよというアナウンス効果は必要ないのかということも、この利用形態についてのまず基本的な考え方として私は入れてもらいたいと考えております。それが1点です。
それから、今言いました、他人から借りてさらに借りてという私的録音の問題ですが、これは無視できない量になっているのではないかということもお話し申し上げました。実はこの実態の調査というのは、前にも大体同じような調査がやられておりますので、見方は大体わかっているつもりでございますが。例えば4ページを見ていただきたいのですが、これは10年前から比べますと、1人あたりのデジタル録音の頻度というのは実は利用者がデジタル録音するよという母数は、8パーセントから88パーセントに上がっているわけですよね。そのうちでコピーをする人の割合で、なおかつ、その期間的な頻度が横軸になっているわけであります。これを見ますと、まず圧倒的に人口あたりのデジタル録音をする頻度というのは高くなっている。近年を見ても5年間で3倍になっている。10年を見る必要はないのかもしれませんが、5年間で3倍になっている。たしか6年間の間にCDの売り上げは2分の1になっているというようなデータもありましたけれども、約ですが。これは、こういうことから影響を受けているのではないかと思うわけです。
さらに7ページを見てもらいたいのですが、なおかつ、今言ったコピーがどこからの音源かということでありますと、7ページに書かれているわけですが、この割合は実は多分そんなに変わっていないだろうと私は思います。知人、友人から借りたCDというのは、大体いつも圧倒的上位3位に入っているわけです。ところが購入したCD、レンタルCD、インターネット有料音楽配信からの複製でありますと、実はこれどこかでお金は払っているわけです。そのコピーがあるかどうかについては、特にレンタル等については問題があるかもしれませんがどこかでお金を払っている。ところが、この友人、知人というのは全く無料の貸し借りで転々していくというルートなのであります。私はこれを無視すべきではないと思っているわけです。
さらに8ページを見ていただきますと、ここに自分のために録音したというのが圧倒的に多いわけですが、そうするとこれは他人のために複製したというより多いから、借りてきたものについては、他人のためなのかということになりますと、それはそうではないわけであります。借りた人でも自分のためにコピーすれば、この92.2パーセントのデータになってあらわれているわけであります。その右の録音の理由を見てみましても、友人、知人に頼まれてというのは非常に小さくはなっておりますけれども、これは友人、知人に頼まれてCDを持っている人がコピーした場合のデータでありまして、それ以外のところは借りて自分でコピーする場合のほうは、むしろ49.7パーセントとか46.9パーセントのこの理由のほうに私はなるのではないかと思うわけであります。
今言ったような理由から、私は今でも他人から借りて私的録音をすること自体は何らかの制限を明確にすべきだという意見を持っております。一応発言しておきます。
【中山主査】 ただいまの意見に関連して何かありましたら。椎名委員。
【椎名】 その点なのですが、今回の補償金制度の見直しの検討というのは、全体的なデジタル録音の実態に対して、制度がそれを必ずしも捕捉できていないというところから始まっているということについては、意見は分かれないと思います。
そこで、例えば他人から借りたCDからの私的録音を、30条の1項の範囲から外したときに、制度に対してどういう意味を持つのか。他人から借りたCDをコピーする部分を制度から外して、そこから生じる経済的被害を埋める部分は一体松田先生はどういうふうに考えておられるのか。そういった実態を捕捉できない、あるいは課金もできないから制度というのを考えるわけですよね。松田先生のおっしゃるようにそれを外したときに制度はどう考えていくべきなのだとお考えなのでしょうか。
【中山主査】 借りたCDのコピーについては何も払っていないとおっしゃいますけれども、一応補償金は払っているのですね。ただパソコンとかiPod等については払ってないのですけれども、一応補償金としては払っています。それを30条から外してしまうと補償金は取れないくなるし、かつ実効性があるかというのがこれは椎名さんの質問だと思うのですが、その点はいかがでしょうか。
【松田】 補償金でリカバリーされる金額と、それから他人から借りてコピーをしてはいけないよというアナウンス効果によって、それが自制されることによって、市販のレコード、CDが市場として復活するというのをどっちが大きいかということを考えれば、私は後者のほうが圧倒的に大きいのではないかと考えているわけです。
【中山主査】 この点については統計がないのでわからないけれども、私の感覚だと相変わらず他人から借りてコピーをするというふうになるのではないかと。結局は法が弛緩して著作権なんか守らなくてもいいやという雰囲気ができるのではないかという気もするのですけれども、その点について何かご意見ございましたら。どうぞ、大渕委員。
【大渕】 この点も今まで何度も申し上げたので繰り返しはしませんけれども、先ほど違法だというアナウンス効果と言われたのですが、やはり法というものはそれが守られなければ規範として意味がなくなって、著作権法制だけではなく法制度全般に対する信頼も失われてしまうということになりかねないので、アナウンス効果さえあれば実際エンフォースできなくてもよいという状態は非常に好ましくないのではないかと思います。
また、先ほどのような他人のCDを借りてコピーするというもの等を法30条1項の対象から外しますと、差止・損害賠償、さらには理論的には刑罰の制裁にもさらされるおそれがあること自体も、やはり無視できないのではないかと思っております。
【中山主査】 その点についてほかに何かご意見は。どうぞ、亀井委員。
【亀井】 その点といいましょうか、今まさにご議論されているところで、この資料からスポッと抜けているところが、どうあるべきかという議論を今多分されているのだと思いますが、この資料のまとめ方ですと視点があって即制度改正の困難性というところに1つ飛んでしまっているように思います。したがって、今はまさにここで今議論されているような点を論点としては挙げていただきたいと思いますし、視点として松田委員がおっしゃったように行為規範性といいましょうか、国民から見てわかりやすいという視点というのがやはりあるべきだと思います。私個人といたしましては松田委員のご意見に賛成です。
【中山主査】 ほかに何かご意見は。はい、どうぞ、生野委員。
【生野】 アナウンス効果というのは私はあると思います。特に日本国民は基本的に、他と比べたらということで言えば、遵法精神の高い国民であると思いますし、今後その啓発活動等を進めていけば、私は有効であると思います。
それから、事務局に確認したいのですが、見直しにあたっての の30条のそもそもの趣旨なのですが、権利制限の大きな理由となっているのが、事実上権利行使ができないことという書かれ方をしているのですが、本当にそうなのでしょうか。1つの要素としては実効性の問題はあるかと思うのですが、基本的には零細な利用であるから権利者の正当な利益を不当に害するものでないという、これが前提だと思うのですが。実効性がないからどんなに家庭内で被害が生じてもそれはしょうがないのだと、そういう理屈ではないと思います。「実効性」というのは、幾つかある要素の中の1つではないかと考えます。
それと のところにプレイスシフトやタイムシフトのことで書かれているのですが、タイムシフトはわかるとしても、他人から借りてきたCDあるいはレンタルで借りてきたCDからのコピーに関して、これはプレイスシフトと言うのでしょうか。基本的にはプレイスシフトといった場合、自分が購入したCDを車で聴くためにMDに落とす、あるいは持ち歩きのためにiPodなどのプレイヤーに落とすというところではすんなりと受け入れられるのですが、そういった事項が何ら権限を有しない、あるいは一過性の利用権限しか有しないものをコピーすること、これはプレイスシフトと言うのでしょうか。この文章は何かすんなりと読めない気がします。
それと  とありますが、私的複製はやはり著作物の通常の利用を妨げず、かつ、権利者の正当な利益を不当に害しないという、この大前提があっての話だと思いますので、 から までに加えてそれを入れないとバランスを失するのではないかと考えます。以上です。
【中山主査】 ほかにこの点につきまして何か。どうぞ。
【河野】 30条のところの話について意見を述べさせていただきたいと思います。30条の範囲外とすべき利用形態は何かということでペーパーは立てられていますけれども、そもそもその範囲に入るとか入らないとかいう話をする前に、今の議論を聞いていてもそうですが、30条の位置づけを再確認することと、その位置づけがそのままでいいのかということを、見直す必要があるのかないのかということを、きちんと議論する必要があるのではないかと思います。
まず2の のところで、プレイスシフトやタイムシフトという状況が長く定着している現象であるというふうに整理をされていますが、これはたまたま実態としてそういうことができるということであって、決して法的に担保されている状況ではないと認識をしています。すなわち、もともと30条というのは自由かつ無償、ということで立法趣旨だったと理解していますが、それが平成4年の補償金制度の導入というときに、自由かつ一部有償ということになりました。平成11年に技術的保護手段の回避規制の議論があったときに、その状況が一変しているというのが認識です。
すなわち、今まで自由とされていた秩序を見直して、著作権者等の意志がかからしめられている技術を活用すれば、その自由という領域が理論的にはゼロになることがあり得るということを30条の2のところ、技術的保護手段の回避規制のところではっきりと法律がうたっているという状況があります。なので、ここの で書かれていることは、たまたま実態として今はそうかもしれないけれども法的には全く担保されていない。タイムシフトのためであればいい、プレイスシフトのためであればいいというふうには決してなっていない秩序であると理解をします。これをこのまま市場に任せていていいのかどうかということが、おそらくその本質的な問題として議論されるべき問題の1点目ではないかと思います。
次に のところですけれども、先ほど生野委員のご指摘にもありましたが、30条の権利制限の趣旨ということが、ここでさらっとこれが理由ですというふうに説明をされています。先般、いつごろだったでしょうか、少し前の新聞記事で読んだ記憶があるのですが、零細で閉鎖的で、かつ権利行使ができないから、30条はそういうお目こぼし的な条項なのでしょうか、というような問いかけがある記事を読んだ記憶があるのですが、そこのところについてもう一回考えてみる必要があるのではないかと考えます。
先ほど申し上げましたように、技術的保護手段がかかっていれば、理論的にはユーザーができる私的複製はゼロになるという30条の現況を、権利の保護と公正な利用という観点に立ったときに、もう少し積極的なアプローチで眺めてみる必要はないか、新しい知を創造するために、ある一定範囲で自由利用が認められるべきかどうかというような議論が、国民全体の議論として問題提起されてもいいのではないかと思います。
例えば、昨今フランスでの著作権法改正がありましたけれども、その条項の中にはプライベートコピー条項をきちんと機能させるためにある種オーソリティーを設置して、そこがジャッジをしていくというようなことが盛り込まれていると聞いています。そのような視点が、技術を使って利用をコントロールしていくという世界的な大きな潮流がある中で、日本国の著作権法においてどのように考えられるのかといった議論が必要ではないかと考えます。以上です。
【中山主査】 ほかにこの問題につきまして議論がございましたら。それでは華頂委員、次に大渕委員、お願いします。
【華頂】 すみません、議論の話の腰を折るようで申しわけないのですが、資料1の3の 、制度改正は困難の後、イがありますが、DVDは複製を禁止していますので、このアとイからDVDを削除していただきたいということと、2の 、プレイスシフトの中の括弧内の録音録画ですが、これも録画をカットしていただきたいと考えます。以上です。
【中山主査】 では、大渕委員お願いします。
【大渕】 資料1の2の のところに、法30条1項の趣旨について説明されているのですが、私は前々から法30条1項の趣旨はこれだけではないのではないかと思っております。つまり、零細な利用であることと事実上権利の行使ができないことという2点はまさしくそうなのですが、それだけではなく、権利行使を私的領域にまで行っていった場合の弊害といいますか、私的領域に過度に法的干渉が入り込まないという観点からは、私的領域に踏み込んで権利行使を行っていくと個人のプライバシー等の私的な部分に介入していくことになりますので、一定範囲ではこのような私的領域には法を介入させないという趣旨も重要ではないかと思っております。この点は、事実上権利行使ができないという趣旨の中の一部だということで理解されているのかもしれないのですが、事実上権利行使ができないということと、権利行使を認めると個人の私的領域に介入することとなりかねないという点は、やはり別のことではないかと思います。
それからもう1点申し上げたいのは、著作権については、要するに権利者と利用者の利益をどのように調和させていくかというトータル的な話になりますが、この権利者と利用者の利益の調整に関しては、もちろん、法30条1項に入れるかどうかだけではなくて、もっとほかの点も総合的に考えていくべきであって、利益調整の方法論としては、権利者の利益が一定の範囲で侵害されているから法30条1項の適用範囲を狭めるというのが唯一の方法論ではないと思います。他の可能性についても総合的に考えて、どれが最終的には一番バランスがとれて、権利者、利用者の双方にとって、より好ましいかという観点から、もう少し総合的に考慮すべき点ではないかと思っております。
【中山主査】 そうですね、確かに法は家庭に不入という法格言もあるし、プライバシーの問題もあるし、それにプラスしてトランザクションコストの問題もあるだろうと。もしこれを外した場合には、権利者と交渉しなければいけないのですけれども、その交渉には莫大な費用がかかったらできないとか、ここに書いてあること以外にもいろいろな理由はあろうかと思います。小六委員、どうぞ。
【小六】 たまたま同じことを申し上げようと思いまして、大渕委員と中山主査の意見に全く賛成でございまして。また、この間からずっと話をしてきまして、私たちも権利者であると同時に利用者であって、あまりたくさんの細かい締めつけなどしないで、なるべく緩やかにして、文化的なものを重要視しながら利用していくというほうがいいのではないかという意見を申し上げたつもりでございます。そういうことを前提に私たちの意見とさせていただきます。
【中山主査】 ほかにこの問題についてご意見ございましたら。生野委員、どうぞ。
【生野】 私的録音ですべての音楽の需要を満たすという考え方はいかがなものでしょうか。それに代わる手段が提供されているかどうかということもやはり検討のポイントであって、以前にもお話しいたしましたが、パッケージの他、音楽配信等の多様な流通でユーザーに音楽のコンテンツが提供されている。そういった中でこの私的、家庭内においてのコピーはどの程度許容されるのかと、そういう視点が必要なのではないでしょうか。すべてここで需要が満たされるべきというのはいかがなものかなと思います。
あと、実効性の問題、家庭内はなかなか難しいねというのは確かにわかるのですが、逆にお聞きしたいのは、ベルヌ条約9条2項をはるかに超えた複製がされても、それはしょうがないねということで解決されるべきなのか、その辺りをお聞きしたいのですが。
【中山主査】 どうぞ、川瀬室長。
【川瀬室長】 制度設計する場合には、30条を超えて原則に戻して許諾がいるということにすることや、補償措置でバランスをとるということや、無償の利用を認めるというようにいろいろな手段があると思います。したがって、多分今の補償金制度というのは、ベルヌ条約の9条2項で権利者の利益を害しているという状況があるけれども、それを許諾権、つまり原則に戻すのではなくて、そこは補償金で調整しようということなので、補償措置の問題と30条の範囲から外す問題は全く事柄が違うと思います。ただ、そこは確かに生野委員がおっしゃるように、その評価をどうするかというのはまさしくこの場で議論されるところだと思うのですが、今どういう被害状況にあるのかということによっては、全面的に外した方がいいというようなこともあると思います。
ただ、先ほどから議論がありますが、現実問題としては私ども事務局としてこういう資料を作ったのは、今までの2回の議論を総合していろいろと要件を抽出して栓はしたわけですが。現実問題として松田委員などの意見もよくわかりますが、友達から借りてきたもののコピーを許諾が必要なとことにできるかどうか。つまり、長い間私的録音録画で音楽を楽しむ、ないしは映像を楽しむということが行われていたわけですから、それを全く原則に戻してしまおうとする場合には、やはりいろいろな仕組みとか、例えば実効性を担保する制度とか、そういったものをどうするのか合わせて考える必要があるし、法制度を考える場合にはその規範を単に180度転換すればいいということではない、と私どもとしては今までの議論の中から認識をしてこのような考え方に整理したわけです。
それと、今回私どもが整理しましたのは、何らかの補償措置は必要だろうということですが、具体的な制度設計をどうするか、だれがどういう補償をして具体的にどうするのかというのは、次期の審議会における議論でもう少し具体化をしていただこうと思っております。
【中山主査】 これ、仮に30条を外す場合、補償金がなくなって、かつ多分実効性もないでしょうからお金も取れないとなると、実際は権利者に入るお金は減るのではないかと思うのですが、30条から外すという条文を作ることは簡単ですけれども、その後どうするかということは、生野委員、何かアイデアはあるわけでしょうか。
【生野】 先ほども申しましたけれども、立法のアナウンス効果によって、従来と比較して相当量の私的複製の減少が見込まれ、また、、それを担保するための啓発活動ですとか、今後の技術的保護手段の普及、促進による効果も考えられます。私はトータルでは、今よりも当然権利者の利益がきちっと保証されて、かつ、利用者の利便性をそう損なわない形での運用はできると考えております。
【中山主査】 30条から外すということだけでよろしいと、こういうことですか。
【生野】 ええ。30条から外した上で、例えばレンタルの問題は、今後どうシステムを作っていくかみたいなところの話もあるでしょうし。
【中山主査】 システムというのは?
【生野】 制度改正が困難という例でレンタル店からの私的録音録画が整理されております。先ほど川瀬室長から権利者の正当な利益を不当に害しないための手当てが補償金制度という説明がありました。確かに今の補償金制度はそういう趣旨で作られたと思うのですが、通常の利用を妨げるレベルのものについては補償金制度がどこまで有効なのか、という議論があると思います。
レンタル店を例にとれば、昨年1年間のレンタル店へのCDの出荷枚数は、アルバムで約1,000万枚でした。この1,000万枚流通したものがどの程度貸し出されているか。今の使用料の基準となった1枚当たりの回転数が15.4という数字がありまして、これを掛け合わせると1億5,400万回貸し出されたこととなります。当然借りたら複製するでしょうから、友達の分のコピーも中にはあるでしょうから、アルバムに換算すると2億枚前後のコピーがなされているのかなと。この数字というのは昨年の市販CDの生産実績が2億3,700万枚で、ほとんどイコールの数字なのです。これが本当に補償金でリカバーできるのかどうなのか。やはり通常の利用を妨げるものに関しては救済できない。こういったものに対してどうするのかというのをきちっと議論していただかないと、単に実効性の問題でこれは我慢しろという話も相当乱暴な議論で、しっかり議論していただきたいと、そういうふうに思います。
【中山主査】 小六委員、どうぞ。次に松田委員お願いします。
【小六】 法律のことはちょっと僕よくわからないのですが、もともとその30条の中で零細な利用であって、なおかつ権利侵害が起きているということですね。ですから、零細以上のものは、基本的にはそこはここから外の話だと考えます。そうしますと、私たちは前にも申し上げましたが、決して保護技術をないがしろにするわけではなくて、協力体制で我々の権利をきちっと守っていければいいと。つまり、零細以上のものを、何とか今のこの案にあるような制度設計の中でうまく保護技術を利用して食い止めつつ、なおかつ自由に、というようなことは考えられないものなのでしょうか。もし保護技術がこれから進展していけば、完璧にプロテクトすることもできるだろうけれども、自由度を持ったプロテクトというのを考えていただければ、その生野委員の問題もある程度解決できるのではないかと思うのですが、いかがでしょうか。
【中山主査】 配信などはおそらくその1つだろうとは思いますね。ただ、日本は貸しレコードがありますから、配信で試聴して貸しレコードで借りてコピーしたほうが安いですから、なかなか難しいのですけれども、松田委員どうぞ。
【松田】 私の意見に対しては、やっぱり立法した後のエンフォースメントの問題ですねというご指摘を受けているわけですね。私もそれが全然問題がないとは思っておりません。そのとおりです。しかしながら、こういうことは可能でしょう。例えば今著作権法の教科書を見て他人から借りて、他人から借りてそれをコピーするのは私的の利用の目的であれば全部適法なんですよという解説書は実はないんです。私は本を読んでみました。そういうふうにはっきり書いてあるものはないんです。やっぱりそれは正直言ってこの条文からいったら現行法にそれは書けないですよね、解説としては。
しかし、今度、それは他人から借りて友人から借りてコピーを転々することはお控えくださいということを、CDそれ自体に書けるようになるのではないでしょうか。そうしたときの効果はすごく大きいのではないでしょうか。それから、明確に解説書にはそういうふうに書けるということになれば、やっぱり徐々に遵法精神の高い日本においては浸透していくのではないでしょうか。その効果は補償金よりも私は大きいだろうと思っています。もしそれがエンフォースメントとしては十分でない、法的体系としてはぐあいが悪いというところになるのであれば、今言いましたように2億3,700万と、それから推定される私的領域での2億枚、これは友人だけではありませんけれども、この市場を考えましたら補償金制度というのはえらい高いものにならざるを得なくなるのではないでしょう。その点を考えてどちらかを選ばなければならないのではないかと私は思っております。
【中山主査】 津田委員どうぞ。
【津田】 幾つかあって、その松田委員の話と生野委員の話にかかわるのですが、最初のこの実態調査のところでまずちょっと押さえておきたいのが、このアナログ録音からデジタル録音が増えたというところで、2006年からやはり急速に増えているというのは、僕はもう単純にウェブ調査が含まれたというのが非常に大きいのかなという。要するにウェブ調査に応えられるだけのリテラシーがある人という時点で、パソコンで音楽とかそういったものの録音をするというのが、当然それだけの能力がある人ですから、その人たちがその2006年で含まれたときに割合が急速に高くなるというのは、まず偏りとして現象としては存在するだろうから、そこはちょっと若干でも差し引かなければいけないだろうなというのがまず1点あります。
もう1個、やはり松田委員のお話でもあった友人からの私的複製、レンタルからのコピーが2億枚換算になっていったときに、それがCDの売り上げを1998年から大体半分ぐらいにしたんじゃないかというお話なんですけれども。それはあくまで僕は1つの要因ではあっても、それがメインの大きな要因だったかというと僕は違うと思って、やはりCDが何でそれだけ減ったのかというのは複合的な要因で下がったというのは間違いない事実だと思っていまして。
例えばDVDなどはわかりやすい例で、DVDというのは1999年の段階でまだそんなに普及してなかったのですけれども、DVDソフトが302億円ぐらいの市場だったのです。それが2005年、去年では3,477億円まで増えていて、すごい乱暴な議論をしてしまえば、例えば99年の時点ではDVDを買う人はほとんどいなかったのが、2005年の時点では3,000億市場ができて、要するにそれというのは音楽とDVD映画というのは両方とも趣味趣向の娯楽の世界の話ですから、単純に音楽を買わなくなった人がDVDに移っただけではないかという、そういう議論もできるだろうし、あとは携帯電話というものが1999年からiモードが登場して、非常に携帯電話に対してお金を払う消費者が増えたというのも、CD離れが起きた1つの原因の要素ではあるだろうというのがまず考えられます。
あとは音楽業界で言えば、音楽業界がメインにターゲッティングしているのはやはり10代の若者とか20代前半の、やっぱり若い人に向けて売っているというのがメインターゲットですね、音楽業界の。そのメインターゲットが単純に僕らは1973年ぐらいがピークで、そこからどんどん10代の人口というのが減少していますから、とにかくCDが下がった要因というのはいろいろなことが考えられるだろうと。消費者の可処分所得はそれほど変わってないですから、そうすると娯楽にかけられる金額というのは一定ですし、その中でCDというのはDVDですとかゲームですとか携帯電話とか新しく登場した娯楽に対して、そういったものと一緒に戦っていかなければいけないというときに、相対的に音楽の地位が低くなったことや、もちろん当然増えた私的複製のもう1つの要因としてはあるでしょうけれども、何か1つの原因でCDの売り上げが下がったということではなくて、あくまで複合的な要因でCDの売り上げが下がったのではないかというのは、僕は事実として踏まえておかなければいけないのではないのかなというのは1点あります。
その上で、資料1の 、制度改正は可能で、このアというところで私的複製、違法サイトからの私的録音録画を違法な扱いにしたときに、今ずっとされている議論の実効性という問題も当然あるでしょうし、あともう1個懸念されるだろうなと僕が思うのが、こういった著作物というのは絶版とか廃盤の問題があって、そうしたときにと私的複製が条文でだめになったとなるときに、例えば研究の用途とかで昔の著作物、本とかCDを研究の用途で入手しようと思ってもなかなか入手できないといったときに、そのときにどうするかというと、今だったら現実だったら持っている人からそこの該当部分だけコピーしてもらって研究したりですとか、楽しむなら楽しむという目的でやられている人も多いかもしれませんけれど。
僕はそういったところで、本来ならそのときに権利者に連絡をつけて許諾ができればいいのでしょうが、そういった廃盤とか絶版みたいなコンテンツというのは権利者がもう不明で連絡がつかないケースとかもあったときに、そういったところに一切その救済の手段がないというのはちょっと問題があるのかなという。何かある種そこのところを若干でもいいですからあいまいにしておくところで、ある種のフェアユースだと思うのですけれども、そういった廃盤、絶版みたいなコンテンツへのアクセス性というのは、こういった議論をするときにちょっと考えておくべきなのではないかなと思います。
【中山主査】 森田委員お願いします。
【森田】 今日のペーパーは、今期の取りまとめに向けてというお話でしたので、その取りまとめの仕方について申し述べたいと思います。今までのご意見をお伺いしていますと、「2 見直しにあたっては」として から まで並んでいますけれども、そこに行く前にそもそも30条の趣旨目的をどう考えるかという、あるべき理念のレベルの整理をした上で、そのような趣旨目的が実効性のある形で実現できるのかという議論に進むべきであると思いますが、理念のレベルの話と実効性の確保の議論がここでは両者まぜこぜになっているように思われますので、そこのあたりをもう少し整理をして議論をしたほうがよいのではないかと思います。
この観点からしますと、 のほうでも「事実上権利者の権利行使ができないこと」というのが入っていますし、 のほうも「違法状態が放置されるような状態にならないこと」というのが入っていて、これはいずれも実効性の議論であるとするとダブルカウントのように見えますけれども、 と はちょっと趣旨も違うのではないかと思います。今後の取りまとめとしては、せっかく時間をかけて議論をしたわけですから、この際、30条の趣旨目的というのをどういうものであるかという点について、先ほどフェアユースという側面もあるのではないかというご指摘もありましたが、そこら辺りの整理をしていただきたいと思います。
この点は、別の問題にも関係してきます。例えば、契約で30条をオーバーライドできるかということについて、私的複製をゼロにすることが契約でできるというご指摘がありましたけれども、法制小委員会のほうの報告書ではそのようには書いてなくて、ユーザーの利用を不当に阻害しないという条件がつけられていて、契約で定めれば何でもできるかというと、それはできないということが指摘されているわけです。それでは、どういう場合にオーバーライドできないのか、どういう場合には私的複製として守らなければいけないものがあるのかということは、30条の趣旨目的をどのように考えるかという点に関わっており、この点についてこの委員会ではっきりさせておかないと他の議論にも影響するところが多いと思います。この に書かれている「私的録音録画により音楽、映像等を楽しむという状況」というのはそのような実態があるという議論ですが、もう少し理念のレベルで、30条の趣旨目的からして、ユーザーサイドから見てこのような私的複製は最低限保障してほしいというものがあるのであれば、それをここにまとめておくべきではないかと思います。以上が1点です。
また、今申し上げたことにも関係しますけれども、3の のア・イ・ウと並んでいて、他人から借りたCD、DVDとレンタル店から借りたCD、DVDというのが並んでいますが、これは実効性という観点からすると並ぶのでしょうけれども、本来の趣旨目的という観点からすれば、少し性格の違うものが並んでいるようで気持ちの悪いところでありますので、先に申し上げた点を整理すれば、この辺りももう少し変わってくるのではないかと思います。
それから次に、実効性の議論ですが、3の ではその実効性の議論を重視していますけれども、これに対し、2ページ目の では、例えば、違法複製物、違法サイトからの私的録音録画については、「利用者に対する権利行使は事実上困難」として実効性がないことを認めつつも理念を重視して、こういうものは違法であることをこの際明記すべきであるとされておりますので、このペーパーも実効性一辺倒だけではないと思います。そうしますと、どういう場合には実効性というのを重視するのか、どういう場合には実効性よりも理念を重視すべきなのか、というメタのレベルでの議論が、このペーパーの前提としても実はあるのだと思いますが、そこが明示的に書かれていないのでややわかりにくくなっているように思います。
また、実効性の点で、先ほどからのなされた議論をどのように受け止めればよいのかということでありますけれども、例えば、他人から借りたCDやDVDを外すということの意味については、一方で、これらを違法とすることにはアナウンス効果があって、そのことによって得られるものも大きいのだから、全体として権利者にとってもメリットが大きいかどうかで判断するという議論と、他方で、実際上は権利者にとってはマイナスかもしれないけれども、理念を重視して違法であることを明確にするという議論と双方がありえて、この2つはタイプの違う議論でありますけれども、先ほどから出されていた意見というのはいずれも、これらを私的複製の範囲から外しても全体として見れば権利者にとってプラスになるのであれば外すのがよいという議論であると私は理解しました。そうだとしますと、実際これを外した場合に全体として権利者にとってプラスのほうが大きいのかどうかというのは、将来の予測といいますか事実の問題でありますから、事実のレベルでの議論を詰めていけばコンセンサスは得られるのではないかと思います。
なお、この小委員会の審議の初期の段階で確認したことですけれども、ここでの選択肢としては、30条から外せば補償金の措置の範囲外であるという論理的な関係は崩さないという前提で議論するということであったかと思います。この問題は全く白紙から考えますと、ある私的複製は違法であるが、それによって権利者にとって不利益が生じている場合にはそれに対する何らかの補償措置を講ずるという制度設計もありうると思いますが、ここではそのような選択肢は想定しないという前提であると理解してよろしいかと思います。そのような前提に立ちますと、実効性を勘案したときには、外したほうが全体としてプラスになるのか、それとも外さないで補償金を取ったほうが得策なのかという二者択一になりますので、そのメリット・デメリットを考えていくという議論にならざるをえないのではないかと思います。以上です。
【中山主査】 では、椎名委員に次にお願いします。
【椎名】 津田委員のご指摘で気がついたのですが、制度改正が困難とされている「他人から借りたCD、DVDからの私的録音録画」という部分は、どちらかといえば権利者から歓迎できない部分の話としての意味合いで書かれているわけですが、例えば今おっしゃった、絶版になったCDを借りてきて必要な部分を資料としてコピーする、なんていうのもこの部分に含められるわけですよね。だから、経済的被害がある云々の側面プラス、文化の流通を促すというようなポジティブな意味合いもひょっとしたらここにあるのかなとあらためて思ったので、それだけ。
【中山主査】 大渕委員、どうぞ。
【大渕】 先ほど申し上げたことの繰り返しに一部なりますが、要するにこの法30条1項だけを取り上げるのではなく、全体として権利者と利用者との関係をどう調整していくかという観点からすると、このような権利制限だけをみても仕方がなくて、支分権なども総合的に考えた上でどこまで支分権を及ぼさせてそこで一部制限をかけるか、あるいはこの法30条の関係ですと先ほど中山主査も言われていたような補償金の関係というものもトータルに考えざるを得ないわけであります。また、先ほど申し上げましたとおり、権利行使に伴うマイナス面、私的領域にどこまで法が介入するかというところも関係してきますので、このようなマイナス面も十分に考慮に入れる必要があると思います。そして、先ほど方法論について申し上げましたが、権利者の利益に対する被害というのをどのようにしてまかなっていくかという制度の組み方については、法30条1項から外して違法化するという方法だけでなくて、補償金でまかなう方法などほかにもあり得るので、これらの点も含めてトータルに考え、最終的にどちらのほうが権利者、利用者にとってプラスが多いか、ないしはマイナスが少ないかというような総合的な判断になってくると思います。
それからもう1点申し上げますと、先ほどのアナウンス効果については、そのような効果があるとすると遵法精神が高い人はそれに従ってきちんとやるのでしょうが、遵法精神が高くない人はいくらアナウンスしてもやらないことになるのではないかと思います。法の場合には、遵法精神が高い人だろうが低い人だろうが最後は民事なり刑事できちんとエンフォースできるということで成り立っている訳でありますが、この最後の点が結局は成り立たないとすると、正直者がばかを見るというと表現がよくないですが、遵法精神が低い人は守らなくても放置されて遵法精神の高い人との間でバランスを失することにもなりかねません。
このような状態が果たして良いのか、それとも法規範としてきちんとエンフォースできるようなものに絞って違法化する方がいいかといった点も、結局は最終的には100パーセント完全な制度というのはあり得ないので、トータルとして考えてどっちのほうがよいか、ないしはもっと現実的に言えばより悪くないかという観点から、総合的に見ていく必要があるのではないかと思われます。
【中山主査】 ありがとうございます。井田委員どうぞ。
【井田】 見直しにあたってのということで言いますと、やっぱり今こういうふうにやっていても非常にわかりにくいですね。だから、ユーザーから見てわかりやすいというのが第一義だというふうに考えています。
それで、1ページ目の制度改正は困難ということで書いてありますが、いきなり下にあるような理由で困難と言い切っておられるのですけれども。基本的にはある程度自由に複製ができる環境といいますか、もちろん金額的な被害が大きいとかそういうのは問題ですけれども、私的複製という部分でいいますと、ある程度自由な複製ができる環境を残すというのは、ユーザーから見ると望まれているのだろうなと思うのです。そういう中で補償金という制度でカバーするというだけではなくて、いろいろな方策があるのではないのかなと。そういうことを議論してユーザーにとっても、権利者にとってもいいものを考えていったらいいのではないかなと考えています。
そういう中で、ここに制度改正は困難ということで3つ挙げておられて、だから私的複製に残すべきだということですが、ちょっと私は法律的に詳しいわけではないのでこれも聞きたいのですが、私的複製ではなくて許諾複製という可能性はないのでしょうかということですね。
例えばイのレンタル店から借りた複製物というものは、この前はこれはもう解決済みのような話で説明がありましたけれども、本当のところレンタル業者の方と権利者との間でどういうふうになっているのか、レンタル業者の方の話はまだ聞いたことがないんですね。例えばそういう方の話も伺って実態はどうなのかと。それによってはその契約によって金額的なものが補償されて、私的複製ではなくて許諾複製ということもあり得るでしょうし。それから、例えばウの放送に関するところでも、放送というふうに漠っと全部つかまえていますけれども、例えば有料放送とかビデオ・オン・デマンドなどは、その後に出てきます適法配信などと同じような見方もできるのではないかなと。そういう十分な議論ができないままで、いきなり困難と一括して処理されているということを感じまして、これはもう少し議論が必要ではないかなと考えています。
【中山主査】 ありがとうございました。ほかに何かございませんでしょうか。
先ほどの津田委員の絶版・廃盤になったものの処理ですけれども、これは仮に30条から外したとしても、例えば現在の図書館での複製も、雑誌については一定期間過ぎたものは、つまりもう売っていないものは図書館で全部のコピーしてもいいという条文がありますので、絶版だけならば立法的には措置は可能だと思います、仮に30条から外した場合ですね。
それから、森田委員の許諾権とした場合には補償制度を前提としないのかという話ですけれども、これ、なかなか現在のシステムをすぐ改めるのは難しいけれども、例えば隣接権などでしたら補償金というシステムを作ったとしても、別に問題ないと思うのですが、ただ、今すぐ可能かどうかというのはなかなか難しいと思いますが。
【森田】 先ほど、理念としては違法としたい、しかし、補償金は取りたいというのは、このうちどちらかを選ばなくてはいけないのでどちらにしますかという形で議論をしているのですけれども、それは両方ともできますよ、つまり、違法であっても何らかの補償措置を講ずることは可能であるということであれば、二者択一の議論は解消しますので、その可能性は考えなくてよいのですかというのが私の指摘したかった点であります。しかし、そのような制度設計は実際上難しい、そのような議論は初期の段階から選択肢の外に置きますよということでしたから、まとめとしてはそうなると思うのですけれども、それは本当に両立しないものなのか、つまり、行為規範としては違法であるとしておいて、しかし他方で実際上は実効性がなく違法行為が広く行われている場合には制度としてその補償措置を考える、という制度設計は白紙で考える場合にはあり得る選択肢だと思ったものですから。
【中山主査】 ほかに何かこの問題についてご意見ございましたら。
【森田】 別の点でよろしいでしょうか。この資料1の2ページの のイの「適法配信からの私的録音録画」というのは、これは「制度改正可能」ということですので、30条から除くというご提案になっているかと思いますけれども、30条から除くということは補償金の対象外とするという趣旨で理解してよろしいでしょうか。
そうしますと、それを前提に考えた場合に、資料2の方で「使用料の二重取り」の問題が出てきますけれども、この適法配信の場合に複製をするというのは、これは30条では許容されていない行為であって、契約で許諾されているという理解になるわけですね。そうしますと、資料2では「明示的に複製の対価が含まれているとは言えないと考えられる」とありますが、契約で許諾されているけれども、複製の対価が含まれていないということが実際にありうるのかという疑問が生じてきます。複製の対価が含まれていないというのは、契約で許諾しているわけですから、ただで使っていい、つまり対価の支払を要せずに許諾だけしているということにならないのかということです。この点は、適法配信からの複製が30条の範囲外であるか否かによって変わってきますので、適法配信は補償金の対象外とすることが、資料2のペーパーのほうでは前提になっているのか、なってないのかが必ずしもよくわからないところであります。あとのペーパーでも適法配信は補償金の対象外という前提で考えておられるという理解でよろしいでしょうか。
【川瀬室長】 これは前回も私どものほうで資料も出しましたように、配信事業者の公開されている契約書をレコード協会に調査していただいたところ、明示的に配信料の対価に私的録音録画といいますか、ダウンロードした音楽の私的コピーの分は含まれてないという契約書が、これは大手の契約書でございます。また別な配信業者については、その点については何も言ってないというものもあります。ですから私どもとしては、契約書を見る限りにおいては、明示的に、配信料といいますのは相手方のパソコンに1回ダウンロードするだけで、それ以外は補償金でと、確かにそういうように書いているものもありますし、そうでないものもあると承知しているところです。
ですから、私どもとしては、明示的に、契約書で除外しているところもあるし、そうでないところもあるので、契約書を見る限り、一応は二重取りはないし、現行制度を前提にして考えられますが、曖昧だという点もあると思います。
したがって、その点も二重取りの点については曖昧な部分もあるわけですから、配信事業でダウンロードしたものからの私的複製について30条の範囲の外へ外せば、そこは少なくとも配信事業のビジネスモデルの中の話なので、許諾権が働くことにしてしまっても、特にそれによって消費者が不利益を被ることもないので問題ないのではないかなということです。
【中山主査】 森田委員。
【森田】 現在補償の対象であるという前提でなされている契約と、その前提を変えて適法配信は補償の対象から除くとした場合になされる契約とは、おのずと異なってくるのではないでしょうか。補償の対象外であるという前提で考える場合には、対価が含まれないという契約をしていて、複製は許諾しているわけですね。30条では許諾されてないわけですから契約で許諾していると考えざるをえません。そうすると、契約に対価が含まれないということは要するに対価を取らないというというのが契約の趣旨であると今後は理解すべきだということになります。補償措置を講ずべきかどうかというのは、これからどうなるかという議論をしていて、そのときの議論の前提というのが資料1の案というのが前提となっているのか、なっていないのかによってこの点は変わってくると思うのです。資料の1と2はひとまとまりのものとしてご説明がありましたので、資料2は資料1が前提になっていると考えると、資料2では適法配信は全部除いた上で補償措置が必要かどうか、あるいは使用料の二重取りの議論がどうなるかということを議論していくということになるのだと思います。
しかし、その点が少し曖昧であって、例えば1の実態の評価のところにも、配信が伸びているというデータが含まれていて、デジタル録音が増えている、というふうにおっしゃいましたけれども、これについても、このデジタル録音には今後は補償の対象外になるものが含まれているとしますと、デジタル録音全体が伸びても補償の対象となるデジタル録音が伸びているということにはならない。両者は直ちにはイコールでないわけですね。ですから、資料2というのは、現行制度を前提とした議論であるのか、資料1で検討した新しい30条のもとでの議論であるのかというのがちょっとうまく整合されていないのではないかという気がしたものですから、その点をお聞きしたわけであります。
【川瀬室長】 意図としては、森田委員のおっしゃったとおりでございます。もちろん30条の外に外すかどうかについてはこの場でのご議論の結果ですけれども、資料1と2との関係は間接的にいいますか、まさしく森田委員の発言どおりでして、資料2の冒頭に書いていましたように、私も事務局の認識としては配信についてはこれから伸びていくと思いますが、そこについて30条の外にしたとしても、やはりパッケージソフトからの複製というのが残っていて、それについて30条の中にとどめているということであれば、パッケージソフトからの複製という実態を捉えただけでも様々な実態調査の結果から、コピーの質または量、頻度、その他を考えても補償する必要はないという状況とはいえないのではないかという考えです。
【華頂】 二重取りのところについてちょっと素朴な疑問がありまして、私もiPodを使っているのですが、iTunesストアから配信で楽曲を買ったり、それから自分の手持ちのCDをiTunesを使ってハードディスクに固定して、それをiPodに同期させて聞いているわけですけれども、要するにCDからの音源と配信からの音源と混在しているわけですね。それを聞いて楽しんでいるのですけれども。
仮にiPodに補償金が課金されていたとしたら、ユーザーとしてはその「二重取り」というような議論が出てくると、その2つの音源から一方では配信は二重取りだということになっている。CDはそうじゃない。それが混在しているということになるので、これはどういうふうに理解したらいいのかなということと、私の私見としては、配信というのはパッケージの流通ビジネスの代替だと思うんですね。パッケージはこれから淘汰されて配信に進んでいくと思うのですが、ですから配信もパッケージと同じビジネスモデルの進化型だと思うのですけれども。以上です。
【中山主査】 大渕委員。
【大渕】 適法配信からの私的録音録画という2ページの一番下のところですが、この趣旨だけ確認したいと思います。これは要するに、適法配信を受けて、それを私的に録音録画する場合には、それが私的範囲でなされる場合であっても、法30条1項の対象から外して、そうなると許諾を得ない限りは適法に複製ができないと、そういうことになるわけですか。
多分そのような趣旨だと思うのですけれども、そうなると、最初の配信契約において、ダウンロード自体に加えて複製も明確に許諾されているというようになっていれば、それは包括的な許諾ということとなり、30条の対象外とされても、それはそれで問題ないと思うのですが、そうではなくて、先ほど言われたような複製についての許諾があいまいであって、複製の許諾をしていないかわからないような契約が仮にあるとすると、その場合には、ダウンロードについては許諾されているけれども、それを私的に複製することについては、加えてその複製についての許諾を得ない限りは適法にできないということになるのでしょうか。それとも実際上は今言ったような契約はなくて、すべて包括的に、今までは法30条1項でできるとされていた範囲についても最初から契約で許諾されることになるから、そこは理論上は問題になっても実際上はあまり考える必要はないということになるのでしょうか。この点を整理したいのですが。
【川瀬室長】 現在そういうようなことが可能になったのは、やはり著作権保護技術と契約というものが組み合わせたビジネスモデルが新しくできたということだと思います。従いまして、今は確かに契約書はいろいろなパターンがありますが、仮にダウンロードしたものからコピーすることが30条の外になった場合には、配信のビジネスモデルというのが単にダウンロードしただけではなくて、そこから何回かコピーを可能だということを含めたのがビジネスモデルですから、当然契約書が変わって、3回までであったら許諾し、料金はもう配信料金に含まれていますという内容になるのだと思います。
それから突き詰めていけば、もう契約をしてクレジット番号も向こうに登録しているわけですから、1回ごとに幾らということにしましょうということで、まさしくコンテンツのコピーごとに幾らという、そういうビジネスモデルも可能でしょうから、そこは無理なく新しい秩序に変えていけるのだと思っています。
また、確かに今の契約を見ると、30条が権利制限規定だということを前提にした契約書もあるし、そこのところは何となくあいまいになっているものもありますが、それは法規範が変われば契約書が一斉に変わって、当然のことながら著作権保護技術が担保利用者の複製についてあなたはこの範囲まではれだけできますよということになると思います。著作権保護技術で契約の内容を担保しつつ、例えば大渕先生がおっしゃいましたように、ダウンロードだけで1回もコピーできないということであれば、それは契約書と技術的保護手段で担保できますから、利用者側と配信業者の間で混乱は起こらないと思うので、30条から外しても問題ないのではないかという考えなのです。
【大渕】 確認だけなのですが、法30条の適用範囲外となれば、原則は許諾を得なければいけないのだから、例えば契約で3回までは複製できるというように、要するに契約で処理して、当事者の納得の上で許諾の範囲が一定の範囲に決まれば、それを支えるために技術的保護手段があるのでしょうが、許諾の範囲内であれば、適法にできるし、その範囲を超えた部分は許諾がないので違法だという整理になるということでしょうか。
【中山主査】 今は、一方では30条があって補償金制度もあり、他方では3回までコピーできるとか5回までできるというビジネススキームがあって、そういう混乱した状態だから多分契約書もあいまいであったり、混乱があったりということだと思うのですけれども、まさに今、川瀬さんがおっしゃったように、仮に30条から外せばすっきりした契約になるでしょうと、こういう話ですね。では、椎名委員、次に森委員にお願いします。
【椎名】 今の問題に関連してなのですが、ビジネスモデルによるのでしょうけれども、今現状、例えば7回とか5回とか3回とかある中で、今度例えばCDを焼きますよね。そこで焼かれたCDが親になって、さらに複製ができるようなケースというのは、CDパッケージからの複製と同じような状況がそこに生まれるわけですよね。そうなると、現状さまざまなビジネスモデルがある中で、その30条1項から外す範囲の有料配信というのは何回までなのだ、というふうなある程度のガイドラインを示さないと、いろいろなモデルがある中で例えば事実上無制限に近いコピーを許しているようなモデルまで含めてしまうのか、ということがあるのではないかと思うのですが。
【川瀬室長】 具体的な制度設計というのはまた別途考える必要があると思いますが、一般論として言えば、ダウンロードしたものからご本人が複製をされるまではビジネスモデルの範囲でしょうが、それを孫コピー、曾孫コピーするというところは、そのビジネスモデルには多分入らないと思います。
先ほど言いましたように、例えばコピーしたものの再コピーについては、例えば私的使用の複製ということで何らかの補償措置の世界に移行するのか、それとも著作権保護技術を使って、その本人がコピーしたものからの孫コピーをできなくするのかというのは、権利者の選択に委ねられると思います。ですから、もし配信サービスの中で、お客が例えば3回までコピーをされて、その複製物が友達に渡って再コピーされるということであれば、それは適法複製物の複製ですから、友達から借りたCDの複製と同じになるわけです。そのときには、仮に補償金制度というのが存在するとすれば、そこに移行する。ただ、その選択肢は権利者が選べるということになるのだと思います。
【中山主査】 それでは、森委員どうぞ。
【森】 民放連の森でございます。2点述べさせていただきます。1点目はどなたか言いましたように30条の定義といいましょうか、範囲をどういうふうに考えるべきなのかという点でありますが、一応今の皆さんの議論からいうと、30条の範囲はいわゆる補償金の対象制度の範疇のものという定義で1つの考え方がありますが。その場合、今議論がございましたように、補償金をもらうのと契約によって支払うのと、二重取り云々という話がありますが、私個人的には両方あっていいと思いますし、両方ある人が払うということもあってもいいのではないかと。要するに制度として考え方としてものが違うのだから、両方払うという考え方を導入してもいいのではないかと。一方で払えば一方は払わないということではなくて、そういうふうに考えたら整理がしやすいのではないかというのが1点であります。
それから、時間の関係でこの資料2にもちょっと触れさせていただきたいのでありますが、そこまで行ってよろしゅうございましょうか。2ページ目のところに著作権保護技術とその範囲内の私的録画という3のところの中に、最初の丸のところで3行目あたりから、「権利者は当該保護技術の範囲内の録音録画を許容していると考えられるかどうか」という表現がありますが、私どもにRNPについては許容している、していないという権利でRNPをかけているつもりは全然ありません。もとよりそういう権利は行使してはいけないということで30条で決めているわけですから、一応ここは我々は消極的ではあるが許容しているというような表現もありますけれども、その許容している、していないということでは、この制度を導入しているわけではないのだという前提で整理されるべきではないかと思います。いわゆる権利者の不当な利益を害さないための特別な措置である、という範囲内の行為だと整理が行われるべきだと思っております。以上であります。
【中山主査】 ほかにご意見ございましたら。どうぞ小泉委員。
【小泉】 資料2の最後のページの3ページの(2)で、補償措置の必要性というところがあるのですけれども。これは前からのつながりで言いますと、著作権保護技術の範囲内について複製を許容した場合であっても、なおその補償措置が必要だという流れだと思うのですが。私はまだその補償というものが必要かどうかについて白紙なのですが、それはさておき、このペーパーの3ページの(2)の のところのアとイの理由づけというのがもう一つ得心がいかないといいましょうか、つながりがわからないので質問になるのかもしれませんが。
と申しますのは、このアで書かれた内容というのは、読みますと権利者側の方がその措置をとっていないから、あるいはとらないという選択肢はあり得るというふうに書いてあるんですが、これはどういうことを想定されているのか。つまりCDのようにコピーのプロテクトというものがかかっていない場合であるならば、これはそもそも著作権保護技術がかかってないということですから、補償が先ほどのiPodの例を出されましたけれども、CDからコピーされる場合について、今後もその措置を残すかどうかという話なので、ある意味当然というのでしょうか、減額になるかもしれませんが当然なのではないかという気がしまして、保護技術がかかっている中について、補償を残すという理由づけになっているのかなという気がします。
イは非常に難解でちょっとよくわからないのですけれども、これだけを読んだだけでは保護技術の中について許諾しつつ、なお補償を残すということの正当化としてちょっと弱いのではないかというか、趣旨をご説明いただきたいと思います。そもそもなのですけれども、この補償の必要性について、権利者が何か選択権があるような書きぶりになっていますけれども、そこに非常に私は違和感を覚えるわけで、政策的にその補償というのは与えるものであるので、補償の必要性を放棄するとか否定するという言いぶりは非常におかしいのではないかという気はしております。以上です。
【川瀬室長】 この文章の表現がもし不適当でしたら、それは直させていただきます。ただ、考え方ですが、まず先生ご質問の最後のところのアですが、アといいますのは、もし考え方が間違っていればご指摘いただきたいのですが、著作権保護技術とその範囲内の複製の問題についてはいろいろな方がいろいろなところでご議論をされています。極端な言い方をされる方は、その3回までのコピーにオーケーしたんだから、もうそれでいいではないか、一切補償などは必要ないよと主張されると。私的録音録画問題というのは自分の意思にかかわりなくコピーされることが原因であるので、権利者が3回までオーケーとしたのであれば補償措置はいらないのではないかということです。
一方で、これはこの場でも出ていますけれども、権利者側のご意見としては、コピーをして音楽等を楽しむというようなことは1つの社会現象であるので、それを禁止するというのではなくて、ある一定のコピーはやはり認めざるを得ない。しかし、先ほどから言っていますように、「複製の総体」としてはやはり大きなコピーが行われていることは間違いないのですから、補償措置を前提にして許諾を許容するのだという考え方が、一方であると思います。
そういう議論をよく考えてみますと、その権利者が例えば3回まで、5回まで、10回までというコピーを認めるその動機づけとしては、必ずしも無償でいいということではないのだろうと思われます。したがって、ここで書いていますのは、2枚目の3の丸2つ目の補償措置が、例えば併存できないとか、併存さすべきではないとまでは言えないのではないかというところでして。ちょっと後ろ向きの表現なのですが、言いたいことは、つまり著作権保護技術というものの性格、仕組み、今の著作権制度における位置づけというものから考えて、その著作権保護技術についてその範囲内の複製であれば補償金は制度として併存できないということではないのではないだろうかと。また、その政策として併存させるべきでないということも言えないのであろうかと。だからどうするというところはまだ言ってないのですが、考えられるのではないか。先ほど私が例で言いました技術範囲内だから無償が当然だろうという議論は、そこまでは行かないのではないかというのがアの趣旨です。
それから、イにつきましては、これは著作権の保護技術というものが一体どういうものかということで今までいろいろな議論もございましたし、この委員会の外でもいろいろな議論がされていますが、基本的には例えばDVDなどの場合はちょっと別の理由でコピー禁止になっていますが、音楽の場合に限定すると、例えば3回とか5回とか7回とかということになっていますが、各種の調査から、結局ほとんどの人は、例えば自分のためとか、タイムシフトもそうですしプレイスシフトもそうなんですが、1つのコンテンツに対して1回とか2回とか、せいぜい3回ぐらいまでがコピーの対象だということです。
そういう中で著作権保護技術を見ていますと、その禁止もそれはありますけれども、例えば3回までとか5回までというのが多いわけですが、それではなぜそのような決め方をしているのかというと、それは消費者が必要なコピーを認めつつ、かつ高品質、これは華頂委員などからも意見が出ていますが、音源とか録画源と同じ品質のものができるわけですから、つまり高品質のコピーができますから、それが例えば私的領域の外に出るということを制限する役目を果たしているのではないかということが私どもの認識なのです。ということであれば、先ほどのアとの関連もありますけれども、例えば3回までというコピー制限をしているからといって、それも補償措置が併存すべきではない、とまでは言えないのではないかということです。
【小泉】 それで大分わかってきたのですけれども、そうしますと先ほどの森田委員の質問とも関連すると思うのですが、アについては今の配信のような場合も想定されていて、仮に例えば適法配信が30条の対象外になって契約で動くようになったとしても、それについて何かアで補償するというようなご趣旨でしょうか。私はまだ誤解しているでしょうか。
【川瀬室長】 これは私が何度も申し上げておりますように、森田委員のおっしゃるように白紙ベースの制度設計ではいろいろと方策はあると思いますが、今の制度の場合には著作権の制限規定の対象外であれば原則に戻って許諾がいるということになり、許諾の条件として対価の支払いを求めるかどうかは、権利者と利用者の契約に委ねるということになります。
今までいろいろとご意見が出たのですが、確かに原則に戻すというのは大事なことだと思うのです。長い間、私はコピーにより著作物を楽しむということが行われてきて社会現象であることは間違いないし、一方で私的録音録画問題が大きな問題であるということは、これは皆さんの共通の理解だと思います。
したがって、一方でコピーをして音楽を楽しむという社会現象があり、それから一方で権利者に被害を与えているという状況があったとしても、例えば配信の場合については法律のルールを原則に戻しても、消費者の利益を損なわずに、消費者は今までどおりコピーができるということになると思います。しかし、他人から借りてきたものからのコピーやレンタル屋さんで借りてきたものからのコピーというのは、例えばレコード業界では一たんレコードを借りてきたら、インターネットでにキーを取りにいって、そのキーに基づいてコピーをするというようなこともお考えになっているように聞いていますが、まさしく中山先生がおっしゃったように、そういった処理のことを考えて消費者にそこまで負担させるのかという問題もあります。例えば私で言えば、クレジットの番号などをネットで打ち込むのは非常に躊躇するのですが、そういう負担まで強いるのかどうかというような問題もあって、現実的に考えれば私が説明したようなことになるのではないかなというのが事務局としての認識です。
【中山主査】 ほかに。どうぞ、森委員。
【森】 今の3の補償措置の必要性というところは、先ほどの議論を前提にすると配信は除いて、それ以外で著作権保護技術がある場合どうなるかということなのですけれども、ここは前回も申し上げましたが、そういう制度を残すかどうかということだけを論じていて、仮に残すとした場合に、その後具体的な補償措置の内容はどうなるのかというのはこの次の議論としてあって。
先ほど配信からのとCDからのが入っているという場合には、記憶容量にしたがって補償金の額を定めることは多分不合理で、どういう音源からのものが、つまり私的補償の対象となる利用のされ方というのは、当該機器のうちのどのくらいの割合を占めているかといったようなことを考慮の上で、具体的な補償金の内容の制度を決めなくてはいけないというようになっていくと思いますけれども。その点の絡みで先ほど契約で3回の複製までオーケーですというのはそこまで対価に含まれていますという意志で提供することも、そういう契約を結ぶこともできると。それから、それが含まれなくて補償金で対応しますと。契約として見た場合には両方あるわけですけれども、ここで言う補償措置の場合にはそういう契約内容によって前者の場合は補償は取らない、後者だけ補償をするということなのか、制度として作ってしまったら契約の内容如何にかかわらず、このタイプのものはすべて一律に補償金を分配しますということになるのかという点がその次の問題で。そこがこのペーパーには入っていないものですからわかりにくいのですけれども。
もし仮に後者だとすると、契約内容はどう決めていても、補償金の扱いとしてはこういう契約としてすべて理解しますと。契約で3回の複製まで対価に含まれているというその提供者に対しても補償金を分配するのであれば、補償金の分配の前提としては含まれていないという前提で考えていくことになりますので、補償の内容がどうなるのかという議論が、この先どうなっているか見えてこないと本当はわかりにくいのだと思いますけれども。このペーパーはそこに立ち入らずに、補償を制度として残す必要があるかないかというところだけ立てているものですから、そこで切ってしまうのがいいのかどうかという議論の立て方の問題にもかかわりますけれども、そこがどういう見通しなのかというのを少しお伺いできればと思います。
【川瀬室長】 すみません、個人の意見でもよろしいでしょうか。今、森委員がおっしゃいましたけれども、やっぱり二重取りの議論というのは私は大きいと思っています。仮に補償金制度が一方であり、かつ、一方で例えばレンタル屋さんから借りてきたCDの複製について別途私的契約で複製について対価を得られるような契約がされるという状況になった場合には、補償金制度の存続そのものに影響があるのだと思います。
つまり、契約によって権利者が利益を得られるという状況になったわけですから、さきほど私が言いました配信と同じように、消費者にそれほど負担をかけずに、かつ、きちっと契約ができるということであれば、補償金制度というのはその存続の価値が問われるという状況になってくると思います。
したがって、その制度上オーバーライド契約はだめだとは書けませんが、想定されるイメージとしてはある部分については補償金で対応するし、ある部分については契約で対処をするというルールが仮に続くのであれば、二重取りの議論等も踏まえ細かい制度設計が必要だと思います。仮にですが、制度を考える場合には、当然そこはクリアしなければならない問題だと考えています。
【中山主査】 時間も迫ってまいりましたが、大事な問題ですので、他に御意見があれば。河野委員。
【河野】 補償の必要性について議論が行っておりますが、その補償というのが一体どういうものなのかというところの確認をさせていただきたいと思います。
第10小委員会の報告書などを拝見しておりますと、補償措置というのは権利制限の代償である、という整理がされているというふうに認識をしています。すなわち私的領域で行われる複製1つ1つについての、ざっくりとしたロイヤリティーの支払いではなくて、権利制限の代償として補償措置があるのだという認識です。そうだとすると、一定の範囲について利用を認めるべきだというお話が先ほどから、いろいろ出ておりますけれども、権利を制限する、保護技術をかけてはいけないというケースが法律ではっきりとあれば、それはある種の強制許諾ということになりますでしょうから、そこについては権利が制限されている、すなわち補償が必要と考えられるかもしれない範囲という整理ができるのではないかというふうに考えます。
ただ、今のところは、技術的保護手段を採用していて、かつ、その範囲内で行われる複製についてどうかというところの議論が主でございますから、そうすると技術的保護手段というのは、権利者等の意志にかからしめられて採用されているということになりますので、その範囲でできる複製というのは、やはりその権利を制限されているものではないのではないかというふうに考えています。
なので、話の順番としては、まず補償措置というのが1個でも私的領域で複製物ができたら、それに対して対価を支払わなければいけないもので、それが毎回のトランザクションが大変だからざっくり払うというタイプのものなのか、それとも第10小委で整理をされているように権利制限の代償措置として存在しているものなのか、というところを今一度確認をさせていただきたいと思います。もし第10小委の整理のとおり後者であるのだとしたら、まずはその保護技術をかけてはいけない範囲があるのだとすれば、一定の利用を認めなければいけない範囲があるのだとすれば、それはどういうケースなのかということをここで議論させていただいて、その上でそのケースについて、それが有償であるべきなのか無償でもよいのかということを議論する。という順序でお話をしていただくことをお願いいたします。
【中山主査】 先ほどから議論の出ている、やはり30条の整理ということも重要だと思いますので、その点も事務局によろしくお願いいたします。今の河野委員の意見も含めて、いろいろ30条の趣旨について議論が出ていますので、整理をお願いしたいと思います。他に御意見があれば。どうぞ、生野委員。
【生野】 資料2の3ページの補償措置の必要性のところで、 のアのところで2行目の最後に「映像ソフトの録画等のように特別な理由がある場合を除き…」とあります。この表現に関しての確認なのですが、DVDに関しては技術があって、それが導入されている、CDについてはなかなか導入が難しいという技術の裏付けの問題だと思うんですね。だから、この「特別な理由がある場合を除き…」というのは表現としてどうなのかなというのと、それからイの著作権保護技術の目的について、3行目に高品質の複製物が私的領域以外に流れることを抑える」と書かれております。これは特にパッケージだけを考えてということなのかもしれないのですが、配信に関しては、それ以外にも、対価を支払ってコンテンツ享受を実現する手段という意味があるので、これだけだとパッケージだけの保護技術の目的というような形で読めてしまうのですが、そういう意味で書かれているのでしょうか。
【中山主査】 では、その点、事務局から。
【川瀬室長】 前者の特別な理由といいますのは、これはよく知られていますように、映像の場合にはコピーをして視聴するというよりも、1回映像を楽しめばそれでもう用が済むといいますか、基本的には1回見ればそれでいいという特性があります。
音楽の場合には何回も繰り返して聞くし、場所を変えたり、メディアを変換して聞くというような特性があって、従って、映像の場合には特にコピーをしなくてもパッケージソフトを視聴すれば、例えばレンタル屋さんで借りてきたものを見れば、それだけで足りるということです。
それから、後者の点ですけれども、結局ここには何も書いていませんけれども、問題はやっぱりパッケージのソフトからのコピーなのだというふうになってくると思います。現実的にはやはりパッケージ、特に今のCDというメディアが1つの問題であり、資料1においてもCDは原則コピー自由と書いていますが、仮に配信を30条の外に出すとすれば、どうしてもパッケージソフトからのコピーに帰着するのではないかと私は思っています。
【石井】 今の3ページの のイのところですが、これは民放さん、NHKのいわゆる伝統的な放送のうちのデジタル放送にも当てはまることではないかと思っております。放送でありますし、デジタル録画機器でテレビ番組を利用する主な理由というところにありますように、ある程度の視聴者の方の利便性といいますか、30条の範囲内での利便性と、これはやはり認めなければならない。ところが、特に最近ハイビジョンですとか高音質になってきまして、そういうものがそのまま流出していいのかというところがありまして、やむなくこれ、一定の著作権保護技術をかけているわけです。
ところが、それはやはり30条の補償措置というものを前提にしているわけでして、先ほど森委員がおっしゃったように、その範囲での複製を許容しているとか許諾しているとか、そういうものではないと、あくまでもその補償措置を前提として、こういう保護技術をかけているんだと、そういう実態もあることもご理解いただけたらと思います。
【中山主査】 ほかにはよろしゅうございましょうか。どうぞ、亀井委員。
【亀井】 資料2のほうは、おそらく資料1が前提になってご議論されるということだと思いますので、あまり細部にはコメントを差し控えますけれども。「複製の総体」という冒頭にある考え方の中で、放送のタイムシフトであるとか、自分が買ったCDを車で聞くためにシフトするとかいうものも含めて、そういうものを個々で見ると必ずしも本当にベルヌのスリーステップテストを満足しないものかというと、そこは少し疑問があるのではないかと。そうだとすると複製の総体が仮に増えているということがあったことをもって補償措置がいる、いらないという議論にどう結びつくのかというあたりのところもきちっと整理をしていただく必要があるのではないかと考えます。
【中山主査】 ありがとうございます。ほかによろしゅうございますでしょうか。重要な問題で議論も伯仲していて本当はもっとおっしゃりたいこともあるのではないかと思いますけれども、時間でございますので今日のところはこのくらいにしたいと思います。では、事務局のほうは次回までに今日の議論を整理をしていただきたいと思います。次回の小委員会の内容を含めまして、事務局から説明がございましたらお願いいたします。
【事務局】 本日は長時間ありがとうございました。次回は12月20日の水曜日でございますけれども、10時から12時までの開催を予定しております。場所につきましては、決定次第ご連絡をいたします。議事につきましては、本日の引き続きの議論ということで、また私どものほうで主査からの資料提供の要求もございますので、そういうものも整えまして、特にまだ資料2のほうには少し入ったばかりになっていますので、今度はその資料2のほうを中心にご議論をやっていただきたいと思っております。以上でございます。
【中山主査】 では、もしできたらなるべく早めに皆さんに添付ファイルでも結構ですから送っていただければと思います。
それでは、これをもちまして文化審議会著作権分科会(第7回)私的録音録画小委員会を終了いたします。本日は長時間ありがとうございました。 |