ここからサイトの主なメニューです
資料7

−DRMテクノロジーの検証という観点だけで答えが導き出せるのか?−

2006年6月28日
私的録音録画小委員会
華頂 尚隆

音楽・権利者にとっての複製環境は変化していない
 
DRMが活躍する音楽配信メディア市場はパッケージ市場の10パーセントにも満たない。
  例えばiTunesのユーザーにしても、手元には今まで買い集めた音楽CDが山ほどあり、iTunesのミュージックストアの販売リストにない楽曲はパッケージで購入し、iTunesのライブラリに固定した上で、私的複製利用している。パッケージからの楽曲と配信で入手した楽曲が混在している状態である。

ipod型の複製機器の出荷台数はオーディオプレイヤー市場の64パーセントを占めている。
  音楽を聴くデバイスが単純に音楽CDやMDからipod型のハードディスク内蔵型・携帯用音楽再生機器に移行しているトレンド現象といえる。

上記のギャップを踏まえた上で、本小委の論点をipod型のハードディスク内蔵型・携帯用音楽再生機器を政令指定するか否かの当初の具体論に差し戻すべきではないかと考える。

映像・ユーザーの複製環境は劇的に変化している
 
映画館のスクリーンを高性能な複製機器で盗み撮りする行為が多発している。
  映画製作者(コンテンツホルダー)が劇場上映を行っている最中、複製物によるビジネスを開始するはるか前に、スクリーンの直撮りとはいえ、まるでDVDを購入するがごとく映画本篇を劣化しないデジタルデータでまるごと持ち出す行為が、現行法上では私的複製という名目で適法となっている。

現行著作権法(30条)はドッグイヤーで進化し続けるデジタル時代に対応できているのか。
  昔であれば、映画館の観客にはこのようなクオリティの高い高度な複製行為は不可能だったはずだが、現在では、高性能な録音録画機器を容易に入手することができるため、誰でも簡単に公開間もない映画本篇をまるごと適法に手に入れ、海賊行為をしないまでも、家族や友達に鑑賞させたり、DVDにコピーしてコレクションする等、その利用が自由にできる。

DVDのリッピングにおいても著作権法と補償金制度は深く関係している。
  市販のDVD映像ソフトの多くに採用されているデジタルコピー防止機構・CSSは、著作権法上で技術的保護手段と規定されていないため、スクランブル解除ソフトにより自由に複製されている。

上記のように私的複製には様々な形態があり、DRMの未来像を検証するのと平行して、30条と補償金制度の関係を吟味し議論することも重要であると考える。

私的複製の環境下において、本当に権利者と利用者のバランスがとれているのかの疑問が払拭されない限り、補償金制度の見直し(撤廃)は時期尚早と考える。


ページの先頭へ   文部科学省ホームページのトップへ