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第2:文化多様性を保護,促進するための我が国の取組み
1.
今後の我が国の文化政策の基本的方向
日本文化の特質は,文化多様性の確保に向けた大きな可能性を秘めている。日本社会は,古来より多種多様な外来文化を受容しつつ独自な文化様式を形成してきた。圧倒的な権威や排他的な価値が中心に存在しない,いわば「中空構造」ともいえる,人々の柔軟な意識構造に支えられた日本社会は,多様な文化をバランスよく包み込む,いわば文化の多様性空間として機能してきた。
また80年代以降には,地方の時代,文化の時代が叫ばれるようになり,文化に個性化の方向が強く求められるようになった。こうした動きの中で、文化において中央と地方とを優劣の尺度で評価することの弊害が認識されるようになり,国内における文化多様性の重要性への理解が深まりつつある。
こうした日本文化の特質や最近の状況を踏まえ,文化芸術の振興における国の役割については,多様な文化芸術の保護及び発展を図るとともに,すべての国民がその居住する地域にかかわらず,等しく,文化芸術を鑑賞し,これに参加し,又はこれを創造することができる環境の整備を図ることを基本とすべきである。また,今後世界が共存していくためには,文化交流を通じて各国の民族が互いの文化を尊重していくことが重要であり,国においても日本の様々な文化芸術を広く世界に発信し,文化芸術に係る国際的な交流の推進を図ることが必要である。
諸外国との文化交流を図りつつ形成されてきた我が国の文化について再確認することは,他の文化に対する寛容や尊重の気持ちを育むことになる。子どもたちが学校や地域で地域特有の文化からはじまって世界の他地域の様々な文化に及ぶ幅広い文化に触れ,文化芸術への関心を高めることが重要である。また,それは,我が国の文化が国際的に多様な刺激を受けて,新たな創造を加えつつ発展していく上で重要であるのみならず,国際社会における我が国の文化的地位を確かなものとし,世界の文化の発展に寄与するものである。
今後の我が国の文化政策においては,他文化の受容も心がけつつ,国際的評価に値する独自の文化を創造することが必要である。日本は,まさに魅力ある文化を持つ国として,国際文化交流を通じて文化面での国際的な貢献を積極的に展開することが重要である。
2.
分野別の我が国の取組み
文化多様性を保護,促進する観点から,特定の領域だけでなく,文化的,社会的な実情も踏まえ,生活文化やアニメーション,ポップミュージックなど幅広い分野を支援していくことが重要である。こうした幅広い文化の分野に対して我が国がどのような支援を行うかについては,文化の分野を分類した上で,有限な人的資源,物的資源をどのように配分するのか,また国が支援するものと民間の自由な取組みに委ねるものを考慮しながら慎重に検討することが必要である。
国は,文化芸術振興基本法に規定する多様な文化芸術に対して効果的な支援を行っていく必要があり,以下
文化遺産,
オペラ,オーケストラその他の舞台芸術等,
メディア芸術 の分野ごとに検討する。
〔
文化の分類ごとの国の支援の在り方〕
文化遺産
有形の文化遺産はもとより,伝統芸能や無形の民俗文化財などの無形の文化遺産については,国家的な財産として将来の世代にこれらを残していくように十分な保護及び継承のための措置を講じることが必要である。
我が国は,古くから、地域の風土と歴史性を重視する意識を持ち,大正8年から,風景に込められた文化的価値を保存するために,名勝等を保護する制度を設けていた。
我が国は,さらに,各国に先駆けて無形文化遺産をも対象とする文化財保護法を昭和25年に整備した。文化財保護法は,制定以後,時代の変化や社会の要請に応じて,歴史的集落・町並みの保護制度の追加など逐次改正を重ね,文化財保護対象の拡大や保護手法の改善を行い,文化的価値のある有形物にとどまらず,有形物の生成,存続を支える技術,風俗及び慣習にまで,保護対象を広げ,価値ある文化遺産の保護を図ってきている。また,本年5月には,文化財保護法を改正し,棚田や里山のような風土に関する保護制度について,従来の名勝等に加えて,地域の歴史や風土との関わりの中で育まれてきた景観(文化的景観)を文化財として位置付け,その保護制度を創設したところであり,文化財を単体として点的に捉えるだけでなく,その周辺環境を含めて面的に把握する施策を一層推進しているものとして高く評価できる。
また,国際的には平成4年に世界の文化遺産等の保護の分野における国際協力に寄与する見地から世界遺産条約を締結し,世界遺産の保護に努めている。昨年10月のユネスコ総会では無形文化遺産の保護に関する我が国の経験を活かし,無形文化遺産の保護に関する条約の採択のために積極的な働きかけを行った。この条約の発効後,より具体的な無形文化遺産の保護の取組みについて議論されることとなるが,我が国としてもこれまでの我が国の知見を活かし,積極的に貢献していくべきである。
そのためにも,関係省庁が連携しながら日本国内での人材育成や文化遺産に関する情報発信などを充実することが必要である。
オペラ,オーケストラその他の舞台芸術等
オペラ,オーケストラその他の舞台芸術等については,我が国は,平成2年に芸術文化振興基金を設立するとともに,平成8年からは従来の助成措置を抜本的に拡充したアーツプランによる支援を行ってきたところである。このような,世界各国で共通の表現形式で発展してきている分野の舞台芸術等は,グローバル化の進展により,国際的な相互理解を一層深める役割を担えるものとしてその可能性が期待されるが,一方で,今後各国間での摩擦が多くなることも予想される。また,自由無差別の原則が導入されると,国際競争の激化等から国内における活動が衰退する恐れもある。
そのような事態を回避するためには,これら芸術性の高い文化活動については,国際的な評価を重視しながら,他方で人材育成や幅広い分野の文化活動を普及していく観点から多面的な評価がなされる環境の整備にこころがけることが重要である。
また,舞台芸術の分野では最近アジアへの関心が高まっているが,欧米にはないアジアの文化を日本が積極的に広く発信していくことが期待される。
メディア芸術
映画,音楽,アニメ,コミック,ゲームソフト等のメディア芸術については,国としても,海外映画祭への出品経費の支援,発表の機会の確保,創造活動の役立つ情報・素材の提供,税制面からの優遇措置等の各種支援を行っている。
これらのメディア芸術は,国外でも高い評価を受けているが,海外発信等の観点からは現状は必ずしも十分とは言えない。このため,本年5月に成立した「コンテンツの創造,保護,及び活用の促進に関する法律」や,政府が策定した「知的財産推進計画2004」を踏まえ,コンテンツの創造や,流通,普及を一層推進するため,国が適切な支援を行うことが必要である。
具体的には,日本の文化的,社会的実情に合った独自の評価軸を確立するとともに,メディア芸術の優れた創り手の創作企画に関する積極的な支援や,優れたアニメーションやデジタルアート等の新しいメディア芸術について顕彰を行って人材を育成することが重要である。また,これらのメディア芸術の創造に不可欠な研究開発や,失敗しても再起しやすい環境を整備して,若い才能を活かすシステムを構築することも大切である。
さらに,国際文化交流の推進の観点からは,
アジア諸国における海賊版対策の強化,
海外でのメディア芸術祭の開催や海外の映画祭等への参加支援,
中国や韓国をはじめとするアジア諸国とのメディア芸術の分野における人材育成の協力,共同制作の促進などを通じて,我が国のメディア芸術の海外発信を支援することが必要である。こうした取組みにより,世界中の人々が「楽しい文化を創造する日本の魅力」を発見し,我が国がメディア芸術の本場として何度でも訪れてみたい国として憧れを持たれるような存在になることを目指すべきである。
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