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資料3

各国の主な文化政策について

フランス
文化政策の特徴
 フランスでは、フランス革命以前の比較的早い時期から国家権力がパリに一極集中してきた。革命後も、比較的最近まで地域における独自性は政府に対する反乱的行動であるとさえ考えられてきた。

 文化政策においては、特にパリの文化的地位が国際的に高いことから、文化機関・施設が集中し、国家予算の大部分がパリに投下される傾向にある。

 さらに中央においては、国家予算をどのように使うかは文化省における決定に依存するなど、文化大臣に権力が集中しており、近年、地方分権の動きが進んでいるものの、依然として中央の果たす役割は大きい。

伝統文化
文化財の保護
文化財の保護の歴史は、1830年頃の歴史的建造物監察総監が文化財管理の任にあたったことからはじまる。1887年に歴史的建造物保護に関する法律が制定され、その後保護の対象は、天然記念物、史跡、自然にも拡大されている。しかし、文化政策における文化財保護の比重は軽く、1988年になってようやく貴重な芸術的文化財の修復が政策の対象となった。

「文化」の再定義
 1980年代の「文化」の再定義により、以前まで財政支援の対象でなかったサーカスや、服飾、人形劇といった分野も対象となった。また、田舎の建物(水車、農家、村の教会など)も記念建造物としての修復が行われるようになった。

フランス語の普及
 フランス外務省はフランス語の使用の普及を実施。

現代芸術文化
パフォーミングアーツの創造支援
 1980年代の「文化」の再定義により、現代ダンス、サーカス、大道芸などの新しい分野の芸術にも支援が行われる。

芸術団体、芸術家等に対する支援、芸術家の養成・研修
 創造に対する支援、作家に対する支援、現代美術のネットワークつくり、パブリックアートなどへの支援を実施。
 また、芸術教育のため、国家教育省との共同計画も推進。

現代音楽の芸術祭の開催
 「音楽の祭典」「ブールジュの春(シャンソンの祭典)」「トランスミュージック」などの音楽祭を開催し、メディアから必ずしも注目されないグループを送り出すことを支援。

文化産業
CNC(国立映像センター)を中心とした映画振興政策
映画製作に関する各種補助金制度
映画投資への優遇税制措置

仏映画の国際展開
CNCによる海外への販売を目的とした出版・宣伝への支援
CNCによる国際流通・外国への販促に対する補助
文化・通信省の外郭団体「ユニフランス」による仏映画の海外プロモーション
カンヌ映画祭など国際的に知名度の高い映画祭、見本市への国の支援

外国映画の数量規制
1946年にアメリカとの間で協定が結ばれ(Bium=Byrnes協定)、外国映画の放映時間を制限。

テレビ局の番組編成に関する放送義務規制
欧州製映画:60%
フランス語の長編映画:40%の放送義務

文化関係税制
芸術文化団体:フランスの芸術文化団体の多くは1901年法によって設立された協会であり、また近年は企業が出資した財団も増えている。これらを一括して非営利団体として税の優遇策がとられている。
 非営利団体は、非営利である限り商業税(付加価値税、法人税、職業税)が免除。
 また、営利法人から非営利団体に対する寄付は、所得税から控除可能。

個人の芸術家:オリジナル作品の作者で、独立自営、商業的な芸術活動をしていない造形芸術家には、税制上の優遇措置がある。

博物館・美術館:公法上の団体と民法上の団体があり、民法上の団体は、芸術文化団体と同様の税の優遇策がとられる。
 公共企業体が運営する博物館・美術館でも、その公的な性格から、入場料、補助金の免税等幅広く免税措置が適用される。

その他:文化振興のための寄付を促進するために、税制上の特例を設けている。また、付加価値税に関しても、美術品・収集品・骨董品の輸入や非営利団体が主催する映画・演劇などには軽減税率が適用される。

イギリス
文化政策の特徴
 イギリスの芸術活動は王侯貴族の庇護と豊かな市民層による自立的で自主的な支援という2面性をもった歴史がある。
それは現在でも残っており、文化行政において芸術の自由と独立を保つための「アームズ・レングスの原則」と呼ばれる芸術が行政と一定の距離を保ち、援助を受けながらしかも表現の自由と独立性を維持する施策をとっている。

 文化を所管する国の機関は、文化・メディア・スポーツ省(DCMS)であり、文化の活動を通じてすべての国民に生活内容の質の向上の機会を与えることを目的としている。そのため、同省の任務は、不必要な規制や発展を拒む障害物を排除し、効率の良い競争市場を育み、国の内外で高く評価される文化、メディアの振興に努めることにあるとされている。

 国は美術館、劇団、交響楽団等に巨額な支援を行っているものの、DCMSが行うのではなく、アーツカウンシルという専門家集団による公的機関を通じて助成が実施されている。また、国立の博物館、美術館の費用も約50%が国の助成で賄われ、残りは自力で資金調達が行われている。

伝統文化
文化財の保護・ 活用についてDCMSはイングリッシュ・ヘリテージや国民遺産基金等と連携しつつ各種の施策を展開。
DCMSの文化財保護、活用施策
国民遺産基金への助成…国の財産として重要であり、国民の利益にかかわる土地、建物、美術品、その他形あるものの購入、管理、維持に対し経済的支援を行う。
王室関連文化財の保護・維持管理
歴史的公園維持管理と活用
アーツカウンシルへの助成…文化財の保護とその活用を実施するイングランド、スコットランド、ウェールズ、北アイルランドの各アーツカウンシルへの助成。
ナショナルトラストとの提携…英国内最大規模の環境保護団体であるナショナルトラストは、歴史的建造物、庭園、自然環境などを保管。国は、経済援助は限られた分野しか行わないものの、ナショナルトラスト法を制定し、目的を「美しい、あるいは歴史的に重要な土地、建物を国民のために永久に保存する。」と明記され、ナショナルトラストは一定目的の財産管理という要素をもった特殊法人として活躍することを法的に保証。

イングリッシュ・ヘリテージによる活動
 イングランドの歴史的文化財の保護、国民の理解と活用を促進するために設立。DCMSの補助金を得て、民間が所有する歴史的文化財の保存への資金援助、公的管理下にある歴史的文化財の保存を行うほか、DCMSに対する専門的な助言を行う。

現代芸術文化
優れた芸術活動に対する支援
民間芸術団体、芸術家に対し、アーツカウンシルによる助成、宝くじ基金からの助成などを実施。
際立った業績を残した芸術家に対する叙勲

芸術家の養成・研修
国から助成を受けた民間や公的機関が実施

文化産業
DCMSの下、クリエイティブ産業(映画、音楽、ゲーム、広告、テレビ、建築、美術、ファッション、デザイン等)の分野ごとに専門グループを設立し、ターゲット市場を定めた検討を行い、戦略的な輸出振興が図られる。

フィルムカウンシルを中心とした映画振興
新作発掘を目指した資金援助、人材育成

テレビ放送規制
EU規制に基づき、放送時間の50%以上は、EU諸国で作成された作品を放映しなければならない。

映画をテレビで放送する場合の自主規制
地上波放送の全映画放送時間の86%(海外映画14%のクォータ)の自主規制があるが、現在、どの程度厳格に運用されているか不明。

文化関係税制
 イギリスにはチャリティ(慈善事業)の古い伝統があり、現在では「Charity Act 1960」により、国立美術館等の公益団体(チャリティ)と規定された組織はさまざまな優遇措置がとられ、具体的には、個人、企業、その他の団体からの寄付には免税措置を受けることができる。

芸術文化団体:芸術文化団体ということで、優遇措置をとられることはないが、組織がチャリティに登録されていれば、法人税、不動産税等、また寄付などの面で優遇措置がとられ、具体的には個人、企業、その他の団体からの寄付には免税措置を受けることができる。

博物館・美術館:登録チャリティの資格を有する団体は、本来事業、関連収益事業による所得や利子・配当などの受領所得に対する課税が免除。美術館の入場料等も非課税に。

寄付金制度
ペイロール・ギビング…個人がチャリティに寄付をする場合、寄付金が所得税の控除対象となる制度。
ギフト・エイド…寄付を受けたチャリティは、寄付者からの証明書をつけて内国歳入庁に申請することにより、寄付者が納めた税金分を取り戻すことができる制度。

ドイツ
文化政策の特徴
 ドイツの諸都市は、基本的に大小の独立した領域、自由都市などによって構成されてきた歴史がある。また、ナチス独裁政権下で、文化についても強制的な政策が行われたことから国家単位の文化政策に強い反省がある。よって文化振興の実施についての権限は、その大部分を各州政府および各地方自治体が有している。

 ただし、近年は地方自治体の財政状況も厳しいことなどから、連邦政府に文化担当部署が必要だという認識により、1998年に行政組織文化メディア庁(BKM)が設置された。

伝統文化
文化財保護・活用
旧東独地域の文化、芸術振興のための諸措置…文化的インフラストラクチュアの拡充、強化。
現代史を記憶するための施設・記念史跡等の保護・保存…ナチズムの犠牲者に関する記念施設の維持・管理、東部欧州におけるドイツ人の文化史研究、文化財保護・保存、ドイツ文化財の流出防止法の制定、戦中・戦後に略奪された又は略奪した文化財の返還等。

文学・出版文化保護のための支援
ドイツ文学の遺産の保護・保存措置…ワイマール古典文学財団、ゲーテの生家及び博物館、シラー国立博物館等に対する補助金交付、ドイツ語・ドイツ文学アカデミーに対する助成。
ドイツ出版文化保護のための書籍の定価維持…ドイツの出版文化はその書店及び出版社の数量、多様性、高品質の三点で世界に誇るべきものとの考えがあり、その基盤となるのが書籍の定価販売制度であり、その堅持を出版文化振興の根幹としている。

現代芸術文化
優れた芸術文化活動に対する支援
連邦政府による現代美術の購入
音楽祭等に対する支援と音楽施設に対する支援を通じた、ドイツ音楽の遺産の保護・保存、現代音楽の振興及び若手音楽家の育成

地域の芸術文化活動に対する支援
ベルリン、ボンの文化芸術施設の整備・拡充のため補助金を支出
国立(州立)劇場・文化ホールへの公的助成

文化産業
映画に関する支援について、連邦政府は、1951年以降映画の振興に努めている。ドイツ映画賞とドイツ短編映画賞を設け、優秀作品を顕彰。
映画振興法
ドイツの映画産業とビデオ産業の振興を目的
連邦政府による芸術性の高い創造的な映画制作に対し補助金を支出

テレビ放送規制
EU規制に基づき、放送時間の50%以上は、EU諸国で作成された作品を放映しなければならない。

文化関係税制
芸術文化団体:文化芸術の振興を目的として活動する公益団体は、原則として法人税および営業税を免除される。文化芸術団体の所有する文化的施設と文化芸術団体が実施する文化的行事は、収益について税を免除される。
 また、芸術文化促進公益財団の設立ならびに同設立に対する寄付は、課税優遇対象となる。

個人の芸術家:芸術的活動に関する所得税の免除、芸術家の給与所得税についての特別規定などの、芸術家に対する税制の優遇措置がある
また、外国の芸術家の国内での所得に対する課税軽減により、国際文化交流の促進を行っている。

美術館、博物館:非営利団体である美術館は、税制上の優遇措置の適用を受ける。本来事業および関連収益事業には軽減税率が適用。

米国
文化政策の特徴
 アメリカでは、芸術活動は、ブロードウェイやポピュラーミュージック等のコマーシャルな活動を除くと、基本的には「非営利活動」として社会的に認められており、文化芸術団体は非営利法人として税制面等において優遇されている。

 芸術活動への支援については、個人、財団、企業など民間部門が主体となっており、行政は、文化芸術団体に免税の特権を与えるとともに、文化芸術団体への寄付分を所得税から控除することによって、民間の寄付を奨励するなどの形で支援している。
 芸術活動への助成は、連邦政府の独立行政機関である全米芸術基金(NEA)などが実施。


伝統文化
文化財の保護・活用
1966年の国家歴史保存法の成立により、米国において保存に値する歴史的建造物は、アメリカの歴史や文化において重要な地区、建築、場所、建物等を記したリストに登録され、米国国務長官によって管理される。
歴史遺産は保存が可能な限り、そのままの形で利用しつづけるべきとされている。

民芸、伝統芸術に対するフェローシップ
NEAによる芸術団体、芸術家への助成

現代芸術文化
NEAによるフェローシップ
アメリカン・ジャズ・マスターズ・フェローシップ:議会が国宝と定めるジャズの音楽家に賞金を授与。
文学フェローシップ:出版経験のある作家を対象に詩、散文制作、またそれらの翻訳に対して助成。
国家芸術メダル:合衆国の芸術の質、支援、成長、アクセスにおいて卓越した業績を持つ個人あるいは団体にホワイトハウスから授与。

文化産業
MPAA(Motion Picture Association)による活動
政府機関に対するロビー活動により、国際展開を推進
著作権侵害行為に対する訴訟活動、海賊版行為に対する調査などの実施

エンターテインメント産業自由貿易連盟(EIC)の結成
コンテンツに係る海外マーケットアクセスの拡大
著作権の保護強化を求めて政策決定者に対する情報提供、啓発活動の実施

文化関係税制
芸術文化団体:非営利団体と認定された芸術団体は、内国歳入法により、教育を目的に設立された機関として税制上の優遇が受けられる。例えば、連邦収入税、固定資産税、法人税が非課税になる。

個人の芸術家:個人芸術家が賞や奨学金、助成金をもらった場合に、非課税になることがある。
 例えば、個人が芸術家に無条件で金銭を与える場合、1万ドルまでは贈与税が非課税。また、資格ある舞台芸術家が雇用されて行った活動のために支払われた経費は、ある一定の基準をみたせば、所得から控除。

美術館、博物館:美術館等は、非営利団体と認められるため、法人税、不動産税が免除。また、設立目的のための事業および関連収益事業所得への課税は免除。さらに、ミュージアムショップの美術に関連する物品の販売に売上税は課されない。

寄付金:アメリカでは、非営利団体への寄付を促進するために、個人では総所得の50%までが、法人では10%までが所得控除になる。

日本
文化政策の特徴
 日本における文化行政は、日本の伝統的な文化財の保護に万全を期するとともに、芸術文化の振興のため、積極的な施策を講じることとし、これらの行政を一体的に推進すること、地方に対する芸術文化の普及に力点をおくこと、芸術文化の振興については、あくまでも文化人や芸術家の自主性を尊重し、その活動がより自由に活発に行われるよう側面から支援することを基本としている。

 特に無形文化遺産の保護については、文化財保護法(1950年)制定時に、無形文化財を法律上位置付けるなど、各国に先駆け無形文化遺産の保護制度を整備してきた。

伝統文化
文化財の保護
文化財保護法に基づき、文化財のうち重要なものを指定・選定し、現状変更、修理、輸出などに一定の制限を課す一方、有形の文化財(美術工芸品、建造物、民俗資料)については保存修理、防災、買上げ等により、無形文化財(芸能、工芸技術、風俗習慣、民俗芸能)については伝承者養成、記録作成等に対して助成。

現代芸術文化
芸術創造活動の活性化支援
オペラ、バレエ、映画等の重点支援によるトップレベルの芸術の創造:トップレベルの舞台芸術公演等に対する支援のほか、世界的な芸術団体、芸術家の参加を得た国際フェスティバルの開催、我が国と外国との二国間における芸術交流の推進、海外との優れたオペラ等の共同制作や海外フェスティバル等への参加を支援。
芸術文化振興基金:芸術文化振興基金の運用益をもって、芸術文化団体等の文化活動に対し幅広く助成。

芸術家の養成、芸術家等の顕彰
我が国の新進芸術家の海外留学、国内研修、統括団体が行う養成、研修事業や新人コンクール等への支援、海外の新進芸術家の招へいの実施。
発表の機会の恵まれない優秀な新進芸術家に対し、公立文化会館などにおける発表の場の提供。
世界トップレベルの指導者を海外から招へい
文化勲章、文化功労者、日本芸術院賞、芸術選奨等の贈呈

文化産業
知的財産基本法の策定
コンテンツの恵沢を享受し、文化的活動を行う機会の拡大等を目指す。
多様なコンテンツ事業の創出、事業の効率化及び高度化を目指す。

コンテンツ振興法
コンテンツの創造、保護、活用の促進に関する基本理念を定める。

映画振興への支援
映画制作等への支援:優秀な映画製作への重点支援や新人監督や若手シナリオ作家の作品製作への支援、地域において企画・製作される作品の製作支援を実施。国内で上映される映画への支援や国内映画祭への支援を実施。
海外映画祭への出品等支援:海外で開催される映画祭への日本映画の出品の支援の実施。
メディア芸術祭の開催等:優れた映画を表彰する優秀映画賞や、CGや映画等の優れたメディア芸術作品の発表、顕彰及び鑑賞の機会を与えるメディア芸術祭の開催。子どもたちが映画館等で映画を見る機会を増大させるための事業の実施。

東京国立近代美術館フィルムセンター:貴重な映画フィルムの修復事業や優秀映画鑑賞推進事業など映画フィルムの保存・活用を実施。

文化関係税制
芸術の普及向上に関する業務や、文化財の保存活用、博物館、美術館の運営等を行う公益法人や、国立博物館・美術館等の独立行政法人及び特殊法人といった特定公益増進法人と、学術、文化、芸術等の振興を図る活動をする認定特定非営利活動法人については、寄付金に対する所得税の控除や、相続税の非課税等の優遇措置がとられる。

重要文化財の譲渡取得、相続等に対し、所得税、法人税の控除・軽減が受けられる。
 また、重要文化財の所有に関し、固定資産税等の税金が非課税・軽減などの優遇措置がある。


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