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文化政策部会(第10回)議事録

1.日時: 平成16年9月9日(木曜日)13時〜15時

2.場所: 丸ビル 8階 コンファレンススクエア room

3. 出席者:
(委員) 高階委員、津田委員、富澤委員、中村(紘)委員、川本委員、熊倉委員、都築委員、山野委員、米屋委員、神崎委員、惠委員、吉本委員、
(事務局) 河合文化庁長官、加茂川文化庁次長、森口文化庁審議官、寺脇文化部長、辰野文化財部長、吉田政策課長、他

4. 議題:
(1) 「文化多様性に関する基本的考え方について」(報告)
(2) 地域文化の振興と発信について
事例発表と意見交換
4 NPO法人の立場からの地域文化の振興
(大谷 燠 NPO法人ダンスボックス)
5 公立文化会館を通じた地域文化の振興
(山本 肇 静岡県コンベンションアーツセンター)
6 記念物等を通じた地域文化の振興
(長谷川幸治 福井県大野市教育委員会 本願清水イトヨの里)
(3) その他

5. 議事:
高階部会長
 ただいまから文化審議会の文化政策部会第10回を開催いたします。本日はご多忙の中ご出席いただきまして,まことにありがとうございます。
 初めに,今回この文化政策部会に初めてご出席いただきました先生方をご紹介させていただきます。中村紘子委員です。それから神崎宣武委員です。
 それでは早速議事に入りたいと思います。まず,事務局から配付資料のご説明をお願いします。

吉田政策課長 お手元の,資料1は前回の議事録でございます。
 それから,資料の2-1と2が,この後ご報告をいただきます,「文化多様性に関する基本的な考え方」のレポートでございます。
 それから,資料3,4,5は,この後行っていただきます団体からのヒアリング関連の資料でございます。
 それから,その後に参考資料ということで,平成17年度文化庁予算の概算要求の概要資料を,添付させていただいております。この詳細につきましては次回の会議でご説明を差し上げたいと思います。今回は資料のみの配付にさせていただきたいと思います。
 その後に,「丸の内元気文化プロジェクト」のチラシと,このプロジェクトに関連いたしますこれまでの新聞記事のコピーをつけさせていただいております。
 また,第2回の国際文化フォーラムのチラシも同様に配付させていただいておりますので,ご覧いただければと思います。
 また,本日川本委員から,地域創造レターという資料をご用意いただきました。この中で熊本県におきますアウトリーチフォーラムの紹介などもございますので,配付させていただいております。
 以上でございます。

高階部会長 ありがとうございました。
 では資料1の前回第9回の議事録(案)につきましては,委員の皆様にご確認いただき,ご意見がございましたら1週間以内,9月16日木曜までに事務局までご連絡願います。
 それでは,まず本日は「文化多様性に関する基本的考え方」について,本部会のもとに設置されております文化多様性に関する作業部会において精力的にご審議いただき,このたびお手元の報告をまとめていただいております。作業部会長であられた富澤委員からご報告をお願いしたいと思います。

富澤委員 それでは,「文化多様性に関する基本的考え方」について説明申し上げます。資料の2-1及び資料の2-2をごらんいただきたいと思います。
 文化多様性に関する作業部会は本年6月8日の第8回文化審議会文化政策部会で設置が了承されました。ユネスコにおいて昨年秋の第32回総会で文化多様性に関する条約の策定手続きが開始されたことを踏まえまして,我が国として文化多様性の保護,促進に関する取組みについて基本的な考え方を検討するためのものであります。
 本作業部会は,本年6月8日の第1回会合から計5回の会合を開催し,審議を重ねてまいりましたが,このたび報告書を取りまとめました。この間,作業部会では,外務省,経済産業省の関係各省と,日本レコード協会,日本芸術実演家団体協議会,日本映画海外普及協会,CG‐ARTS協会などの関係団体からご意見をお聞きし,また文化庁ホームページにより一般の方からの意見聴取も参考にして本報告書を取りまとめました。
 報告書の概要については,資料2-1に基づいて,以下簡潔に説明をいたします。
 まず第1章の「文化多様性について」では,グローバリゼーションが進展する中で,グローバリゼーションによる利点と問題点を把握した上で,自他の文化を同等に尊重すること,また文化交流を通じた相互理解,異文化間の対話が重要であることを指摘いたしました。
 また,文化的財,サービスの流通につきましては,文化多様性を促進する反面,国際競争が激化する中で,文化多様性を損なう可能性があり,経済,貿易の観点からのみでなく,文化そのものの観点から検討する必要を指摘いたしました。
 第2章の「文化多様性を保護,促進するための我が国の取組み」では,国の役割は,すべての国民が平等に文化芸術に触れることのできる環境整備を基本とし,今後子どもたちの文化芸術への関心を高めることや,日本文化の魅力の海外への浸透を図り,「日本文化の磁力」を高め,「住んでよし,訪れてよしの国づくり」を実現するよう提言しています。
 また,1文化遺産,2オペラ,オーケストラその他の舞台芸術,3メディア芸術の分野ごとに文化多様性の保護,促進の観点から,今後の支援方策の在り方を示しました。
 第3章の「文化多様性を保護,促進するための国際的な体制の構築に向けて」では,文化多様性条約策定に向けての我が国の基本的な立場として,ユネスコで文化多様性に関する条約を策定することを支持すべきであり,文化の国際的な流通を妨げない内容となるよう配慮すべきことを指摘いたしました。
 また,条約の目的でありますが,人類の文化のあるべき姿を理念的に示すものとし,対象範囲は,先行する世界遺産条約あるいは無形文化遺産保護条約の規定が及ばない事項に限定されるべきことを提言いたしました。
 さらに,条約で規定されるべき具体的措置としては,国際的措置に関して,ユネスコが情報交換の場としての機能を担うこと,そして途上国に対する人材育成プログラム開発等の支援が行われるべきことを指摘しました。
 各国の国内的措置に関しては,クォータ制などの規制措置を安易に認めず,各国が人材育成,補助金,税制控除等を活用した環境整備を行うことが望ましいと提言しています。
 今後,ユネスコにおける文化多様性条約の策定作業及び文化多様性条約が成立した後の我が国の取組みにおいて,本報告を参考として文化政策を実施していただきたいと考えております。
 以上です。ありがとうございました。

高階部会長 作業部会の委員,大変ご苦労さまでございました。
 では,ただいまの富澤委員からのご説明について,委員の皆様からご質問等ございましたらお伺いしたいと思います。

森口審議官 事務局から,資料の訂正をお願いします。資料2-1の概要の3ページの第3の1の「我が国の基本的な立場」の2番目の丸の2行目のところですが,「国際的な流通の促進を妨げることのないよう」で,漢字で「内容」とあるところを,かなで「ないよう」としてください。

高階部会長 わかりました。
 委員の皆様,いかがでございましょうか。大変的確にご報告いただきました。特にご質問等ございませんようでしたら,「文化多様性に関する基本的考え方」についてのご報告について,これで承って終了とさせていただきます。
 それでは,本日は前回に引き続き,それぞれの地域で「地域文化の振興と発信」について,さまざまな取組みを進めていらっしゃる方々に事例発表をしていただこうと思います。
 本日は3団体の方々にお越しいただいております。最初は「NPO法人の立場からの地域文化の振興」ということで,NPO法人ダンスボックスの大谷 燠(いく)様に来ていただいております。
 それから2番目が「公立文化会館を通じた地域文化の振興」ということで,静岡県コンベンションアーツセンター館長の山本 肇様に来ていただいております。
 3番目は「記念物等を通じた地域文化の振興」ということで,福井県の大野市教育委員会本願清水(しょうず)イトヨの里から長谷川幸治様に来ていただいております。この3団体からの事例発表と意見交換を30分程度ずつ行った後,最後10分程度,事例発表を踏まえて各委員の自由討議にさせていただきたいと思います。
 それではまず,大谷 燠ダンスボックス理事長より「NPO法人の立場からの地域文化の振興」についての事例発表を10分程度お願いいたしまして,その後20分程意見交換を行いたいと思っております。
 では,ご紹介いたします。大谷理事長です。本日はわざわざお越しいただき,ありがとうございます。よろしくお願いいたします。

大谷 燠氏 NPO法人ダンスボックスの大谷です。よろしくお願いします。
 まず,沿革ですが,ダンスボックスというのは1996年にトリイホールという民間の劇場の中で任意の団体としてスタートしました。コンテンポラリーダンスにかかわるアーティスト及び制作者が集まり,コンテンポラリーダンスの環境をいろいろな形,角度から整備していこうということでスタートしております。
 その後2002年にNPO法人化いたしまして,大阪の「新世界」というところがあるのですが,そこにあるフェスティバルゲートという遊園地の中に,大阪市との共同で劇場をつくりました。
 この劇場はいわゆる公設置民営という,日本ではまだ珍しい形態をとっています。いわゆる財団ではなく,NPO法人が大阪市からの委託を受けて運営しています。家賃と光熱費は大阪市が持って,運営そのものはすべてNPO法人に任されています。したがって運営費は全然出てこないという非常に厳しい中で活動しており,新しい劇場の在り方として,いろいろな形で注目されているかと思っております。
 次に事業内容を,お手元の「ダンスボックスの概要」という資料に沿って簡単にご説明いたします。
 まず1つ目は「公演事業」で,その中心が「コンテンポラリーダンス育成支援プログラム」です。これは関西というエリアからコンテンポラリーダンスの優れたアーティストを育成していくために,アーティスト自身が次第にステップアップしていけるようなシステムとして,運営しているものです。その第1のステップが「ダンスサーカス」です。これは1組が12分の作品をつくり,1日に5組が出演します。出演者の公募をして面接はしますが,審査はしません。広い窓口を設けて,身体表現をしたい人は,誰もが参加できるという仕掛けをつくっております。このプログラムを年に4回行うことで,約40組の新しいアーティストが生まれてきます。その中で優れていると判断された年間8組の人たちが,「ダンスボックスセレクション」という,次の段階のプログラムにステップアップしていきます。このプログラムでは1組につき20分の作品を1日4組が演じるという形になります。これで基本的には年間8組が選ばれます。ただ,無理に8組選ぶわけではなく,4組のみの選考ということもありました。その次にあたるのが,「ダンスインディペンデント」というプログラムです。これは1人の既に独立したアーティストとして認められる人が1時間ぐらいの作品を年間10本から12本つくっていくというものになります。
 このように,アーティストにとっても観客にとってもわかりやすいステップアップのシステムをつくることで,アーティストとしても活動をする上での励みを持てるのではないかと思っております。
 来年は,大阪市と共同で,「OSAKA AWARD」という自治体主催のコンテンポラリーダンスの賞を設定する予定です。今年は,それに関するシンポジウムを開く等,いろいろと準備をしているところです。
 これが「公演事業」の中でアーティストを育成していくという考えのもとに行っているプログラムです。
 2つ目が「国際交流事業」です。この中で一番大きな事業が「アジアコンテンポラリーダンスフェスティバル」です。ことしで4回目になります。ダンス,それからワークショップ及び,ことしはフィジカルシンポジウムという企画も行いました。これは,言葉によるシンポジウムではなく,ある仕掛けをつくって行うダンスアーティスト達による即興のセッションです。このように,いろいろな形でアジアとの交流を図ってきています。
 そのほかにも海外の公演を年に3本程度を招聘したり,逆に関西のアーティストの中で優れたアーティストが出てきたときに海外の劇場へ推薦をして,海外で踊れる機会をつくったりしています。この事業は現在までにフランスやオーストラリアの劇場との提携関係の中で行っております。
 それから3つ目は,「アートキャバレー」です。これはふだんなかなか劇場に来ない人たちをどうやって劇場に呼ぼうかという問題です。日本の昔の歌舞伎は別として,ふだん劇場というのは,基本的には場内で飲食はできないということになっています。しかし,「飲食もいいですよ,このときだけは飲み食いしながら見てください。」とする。舞台もふだんのつくりとは変えて,音楽も生バンドを入れてアーティストの作品も少しくだけたとでもいいますか,いわゆる公演とは少し違う形で,ダンスを中心に演劇や音楽やジャグリングのような,いろいろなものがコンプレックスされた「アートキャバレー」と称する事業を年に2回から3回開催しております。
 これは非常に新しい傾向を引き出しております。本当にふだん劇場に来ない人たち,特に中年の男性が劇場に足を運ぶための,確かなきっかけになっています。それが「アートキャバレー」で,これもアウトリーチというようなことかもしれません。
 4つ目に「ワークショップ」の開催,これは本日のテーマである「地域振興」ということの一環としてもとらえることができるかと思うのですが,1つはプロ向けの,アーティストがプロになるための「表現講座」を,現在年に2回開催しております。そして,それ以外に一般市民向け,これは障害者の方であったり親子であったり子どもであったり,あるいは何も制限がなかったりと,一般の様々な方がダンスの技術を学ぶのではなく,あくまでダンスというものを通じて自分の体を発見したり,あるいは他人の体を発見したりして,ダンスのいろんな力を体験してもらうという事業です。これはアートシアターdBという,我々ダンスボックスが運営する劇場だけではなく,大阪府内のいろいろな公立施設の中で出前ワークショップという形で行っています。今,非常に盛んになってきていますので,年間12プログラムぐらい,さまざまな場所で実施しております。
 それから,「地域社会とのコミュニティ事業」です。これもまさに本日の地域振興ということにつながってくることです。我々の劇場がある街「新世界」は,大阪の中でもコアサウスと言われており,様々な人々が入り乱れている場所です。そこで劇場というものを,その地域の人々に認知してもらうために,劇場から出て街中でダンスを見せることを,去年から実施しています。実は「新世界」という場所には,一部怖いというイメージがあります。犯罪に関するような事柄の噂が飛び交っていたりもします。確かにそれだけの雰囲気を実際持っている街ではありますが,同時に非常に魅力のある街なのです。懐かしい雰囲気がして落ち着くような,そういう雰囲気を持っている街です。そこで,「怖いだけではない。街の姿も見てほしい。」という思いで始めました。ツアーという形で募った参加者に街中を歩いてもらい,街とダンスとの両方を見られるという形で行っています。そして,これも劇場のある地域だけではなくて,例えば奈良県の十津川村という,日本一大きい村に「こだまの里」という知的障害者の施設があるのですが,そこから依頼をされて,この10月にその施設の10周年記念イベントを企画しています。ダンスや音楽をコーディネートして単に一過性の企画ではなく,利用者の方々がダンスや音楽の体験を通じて気持ちが解放され,自分たちの可能性も開発されることを目指しています。これも10回程度ワークショップを行い,その結果を最終的なイベントに結びつけます。このような大阪以外の他の地域での事業依頼もとても増えてまいりました。このように「地域振興」ということを考えたときには,確かにワークショップそれ自体の位置づけは非常に大きいのですが,それにとどまることなく,その結果を例えば公開試演会や,公演などにつなげていくことにより,ワークショップ体験の充実感のようなものが非常に広がってくる。そのように継続性のものと一過性のものとを適宜組み合わせる中で「地域振興」を考えていこうと思っております。
 それでは,これまでお話してまいりましたことも含めて,ここからはビデオをご覧いただきながら,ご説明いたします。
(ビデオ映写)

大谷 燠氏 これは昨年のものです。
(ビデオ音声)一風変わったこのダンス,コンテンポラリーダンスと呼ばれています。形式にとらわれない自由な表現が特徴です。

大谷 燠氏 これはダンスボックスのあるフェスティバルゲートという遊園地です。これの裏が通天閣に通じるのですね。
 (ビデオ音声)舞台は「新世界」の街です。地元のNPOが「ダンス」と「新世界」の街に親しんでもらおうと企画しました。関西を中心に国の内外で活躍しているダンサー4組が「新世界」の街でそれぞれダンスを披露します。
 あいにくの雨でしたが,ダンスツアーには大阪を中心におよそ50人が参加しました。「新世界」を2時間ぐらいにわたって巡りました。
 「ダンス」が行われる場所への移動中,参加者もパフォーマンスに挑戦します。
 ツアーはじゃんじゃん横丁,通天閣など,「新世界」の街をくまなく巡ります。
 温泉リゾート施設の前でも「ダンス」が披露されました。見ている人に温泉気分を味わってもらおうと,衣装はバスローブにシャワーキャップです。

大谷 燠氏 コンテンポラリーダンスというなかなか一般的には認知されてない「ダンス」と,この「新世界」という私たちにとって非常に魅力的な街とが出会う。意外とマッチするのがわかったことが,収穫だったと思います。
 実は今年は3,000人ぐらい集まりました。去年はそんなに多くなかったのですが,今年は地元の人も見に来てくれていることもあり,そういう意味では年々認知されてきました。
 これはクレオという公共施設でやったダンスの「ワークショップ」です。これは10回行いました長期型の「ワークショップ」ですが,年齢層も10代から50代と幅広く,職業も様々です。学生さんもいましたが,踊りの経験のある人は一人もいませんでした。その人たちが10回,2カ月半にわたって「ワークショップ」を体験して,地元の方々等を招いた無料の公開試演会で見ていただく。非常におもしろいのは,わずか10回の共同体験をするわけですが,新しいコミュニティを彼・彼女たちがつくっていったことです。これは3月に行ったのですが,現在はアマチュアのコンテンポラリーダンスのカンパニーとして,自主的に活動を持続しています。去年も同様でしたが,「ワークショップ」の実施後にとても親密な関係性ができるという,おもしろい効果を上げていると思っております。
 踊りは,ご覧のように決して上手ではありません。けれども,踊りをしている人たちが非常に生き生きしているというところが,とてもすばらしいことだと思っております。「ワークショップ」においては,一方的に教えるのではなくて,それぞれの個人が持っているものをいかに引き出すかを大事にします。それを引き出すことによって,個人個人が解放されていき,自分が解放されることで他人が見えてくるということを得られます。その意味で,これも今後続けていきたい「ワークショップ」の1つです。
 それでは,ここまで短時間に駆け足のお話になりましたが,以上でご説明を終わりたいと思います。ありがとうございました。何かご質問があれば,よろしくお願いいたします。

高階部会長 大谷理事長どうもありがとうございました。それでは,ただいまの発表を踏まえまして,委員の皆様から自由にご意見を出していただきたいと思います。どなたからでも構いませんが,いかがでございましょうか。はい,どうぞ山野委員。

山野委員 ダンスボックスはとてもすばらしい活動をしていることはよく存じております。それで,トリイホールがなくなりまして……。

大谷 燠氏 あるのはあるのです。

山野委員 あることはあるのですか。あそこから移りますときに大変なピンチがございましたよね。それをどういうふうにクリアしていったかということをご説明いただけますか。

大谷 燠氏 トリイホールというのは民間のホールで,経済不況の波をそのまま受ける形で企画をするだけの余裕がなくなり,閉館はしておりませんが,私たちもやめざるを得ない状況がありました。そのときは本当に収入がゼロになりましたから,どうしようか悩みました。当時実は,大阪やそれ以外の東京や地方都市からも,ホールとは別の個人的な仕事のご依頼をいろいろといただいてはいたのです。ただ,その時点でも,1996年から2002年までの約6年間の活動でつくってきたダンスのネットワークがありました。そのネットワークを通して,いろいろな方から励ましをいただきました。そういう中で,とにかくやめるわけにはいかない,ましてや自分が個人的な仕事に走るということもできないと思いました。またダンスボックスという1つのネットワークの中で,これを生かしていく責任といいますか,つくった責任とともに継続していく責任があるということを実感していたわけです。
 とはいえ,その中で本当にお金はゼロですし,極めて個人的な話になりますが,私としても自分の生命保険を全部解約して,あとは家を売るだけというところまでいきました。それでも,精神的にそれほど深刻にならなかったのは,ネットワークがあっていろんな人が応援してくれていることが,私自身の力として実感できていたからです。その辺が少しのんびりしているところもあるのですが,何とかなるでしょうという思いで実際おりました。
 そのときに大阪市から,フェスティバルゲートの中に活動拠点を置くことを提案されました。大阪市の2001年に出した「芸術文化アクションプラン」の中に,評価の定まらない先駆的で実験的な舞台芸術を支援するという項目があります。それを実行する事業の1つとして,われわれに活動の場を提供することになったのです。フェスティバルゲート自体は,1997年につくられた都市型の遊園地ですが,われわれが入居した当時はテナントが半分抜けている状況で,近代建築遺産ではなくて現代建築遺産になっているようなエリアでした。
 それで,条件としては大阪市が施設の家賃と光熱費のみを払うことと,契約するためにNPO法人化することでした。それでできるかということでしたので,できますとお答えして,その時にNPO法人化したというわけです。
 とはいえ,その前のホールをやめてから劇場がオープンするまでに,10カ月全く収入がない状況にありました。その中で,私を含めて3人ほどスタッフを抱えていましたから,その分の給料を何とか集めながら,どうにかその形でいける状況をつくりました。そして,そこで大きかったのは,私の友人がそこの改装資金を貸してくれたことです。もともと焼鳥屋さんだった場所でしたが,大阪市からの改装資金は少額。要するに自分たちで改装しなさいということです。それで,お金をかけない部分もあったのですが,私としてはいわゆるブラックボックス,完全暗転ができ,防音もいきとどいた劇場らしいものをどうしてもつくりたかったので,結局総額で4,000万円ほどの借金をしました。それを銀行から借りるのは難しかったと思いますが,友人が無担保無利子で貸してくれたということも,運がよかったというか,非常にありがたいことでした。そういうこともあってなんとかスタートが切れました。
 スタートが切れてしまうと,それまで7年間やってきたノウハウがありますから,何とかいけるだろうと思ってやっている状況です。ただ,やはり経済的基盤が必ずしも安定しているわけではないので,毎年毎年そういうことに関しては苦労しております。

山野委員 こちらからの働きかけをしないで,大阪市の方から話があったのですか。

大谷 燠氏 そのときは,そうでした。ただ,それ以前に私自身は民間のホールのプロデューサーをやっていましたから,大阪で,まだ「扇町ミュージアムスクエア」や「近鉄劇場・近鉄小劇場」が閉鎖する前でしたが,そろそろ民間の劇場が大変になってきているということはわかっておりましたので,地方自治体が公立ホールだけではなくて,民間のホールも助けることはできないものかということを話しに行ったことはありました。それと2002年の2年前,2000年に,ちょうどこの秋小劇場としてオープンする精華小学校という,大阪の真ん中にある廃校になった小学校がありまして,大阪市とダンスボックスの共催事業でそこを劇場化するということを先駆的にやりましたので,その信頼関係はあったかと思います。

山野委員 ありがとうございました。

高階部会長 ありがとうございました。ほかにいかがでしょうか。はい,どうぞ。

川本委員 2点伺いたいのですが,第1点はアートシアターという芸術館というハードについてですが。これは何か既存の焼鳥屋さんを改造しておつくりになったということで,ここには写真がありますね。

大谷 燠氏 はい。かなり大きな店舗ではあったのですが,本当に焼鳥屋さんだったので,これはもう全面的に改造しました。劇場としては120席ぐらいの狭いものですが,一番気をつけたのは天井高を確保することでした。そういうビルですから高さがないのですが,天井を剥いでジャングルのようになっていた配管を全部端に寄せて,高さが取れて防音もできるようにするために,すごく苦労しました。

川本委員 それからもう1つは,コンテンポラリーダンスを軸にした都市間の連携についてです。私の見るところ,勢いのある都市圏でコンテンポラリーダンスに関心が非常に高まっています。私は九州におりますが,福岡などでは非常にコンテンポラリーが盛んになっています。そういう状況にあって,何かお互いに提携するプロジェクトを検討されていますか。

大谷 燠氏 ジャパン・コンテンポラリーダンス・ネットワーク,通称JCDNというNPOがございます。これが今回で4回目か5回目になるのですが,「踊りに行くぜ」というプロジェクトを行っております。まさに今おっしゃったように日本のコンテンポラリーダンスというのは関東と関西の都市圏に集中しておりまして,地方では見ることもできないし,やっている人もいない。これは日本のコンテンポラリーダンスの問題点です。地方都市に行くとバレエの教室やモダンダンスの教室はあるのですけれども,そのようないわゆる教室からは表現者は余り出てこないのかも知れません。コンテンポラリーダンスというのは本当に自由な新しい表現ですから,まずは見て体験することが必要なのですが,実際問題として見たこともない人が地方に多いわけです。そのように日本のコンテポラリーダンスも海外では受けるのに国内の地方に行くと全然知られていない,言ってみれば国内の空洞化という状況を,JCDNで何とかしようということで始まったプロジェクトです。1年目は札幌,東京,横浜,大阪だったのですが,ことしで言えば14都市か15都市ぐらい回るようになっています。福岡などでは,ただ公演を見るだけではなくワークショップを3年間続けていまして,東京や関西のアーティストが長期型のワークショップを持続的に実施しています。その結果,ことし初めてこのプロジェクトで福岡のアーティストが東京や,大阪の私どもの劇場でも踊ることになりました。JCDNを中心としたこのような地道な努力によって,いまそういうような状況が出てきています。
 ダンスボックスとしては劇場間交流のようなもの,例えば横浜のSTスポットという同じように小さな規模で同じような考え方でプログラムをつくっている劇場と,年に1回それぞれの劇場で生まれた作品を交換するようなプロジェクトも始めています。これを特に,私どもは大阪ですので,西日本のいろんな地方都市と将来的に盛んに行っていきたいと思っております。

高階部会長 ほかにいかがですか。吉本委員どうぞ。

吉本委員 この会議のテーマである地域文化振興ということでいくと,大谷さんのところと同じようにNPOがこれからどんどん活躍できるようになるといいと思っています。それで,大谷さんのところのNPOは大阪という大都市にあって,なおかつ文化庁の拠点形成の対象にもなっていると思うのですが,多くのNPOで,一番困っているのは人材だったり運営財源だったりすると思うのです。その人手の話とお金の話というのは根本にある問題だと思うのですが,国の政策としてそういう地域のNPOがもっと活発になれるような提案ですとか,こんなことがあるといいということがあればぜひご発言いただきたい。

大谷 燠氏 それは非常に難しい問題ですし,一番大きな課題だと思いますけれども,一つ目は,今いろいろなNPOが増えてきている中で,NPOの仕事をどう評価していくのか,その評価基準を明確にする必要があることだと思います。まさに様々なNPOが出てきているとお聞きしますので,実際丹念に書類だけではなく,活動の現場も含めて見られるような評価システムをつくれないか。その評価システムをつくることにより,適正なお金の使い方をしていただければいいのではないか。
 二つ目は,お金だけではなく,例えば国が持っている遊休施設などを活かして,経費のみならず場所や人材なども提供するという援助を考えていただきたいということです。これについて来年の3月に向けて準備しているのが,内閣官房の都市再生モデル事業にも選ばれた,大阪府と一緒に行う共同事業です。実はこの事業は,すんなり実施に向けて進んできたものではありません。去年大阪府との共同調査事業として,府内の遊休施設をいろいろ見て回り,アーティストの表現の場として利用できるところはないか調査活動をしたところからスタートしています。その時は,例えばだれも通ってない川べりをきれいに整備した親水公園や,高架下,駅前広場などを主な調査対象にしました。そういう遊休施設をリストアップすると同時に,劇場以外で自分の作品を発表したり活動したりする希望があるかどうかという,アーティストサイドの意識も調べました。昨年度それを取りまとめまして,いよいよ今年度にそうした施設を利用する事業を実施することにしていたのですが,大阪府の事業予算がゼロになり,その枠組みでの活動は中止になってしまいました。私どもとしましても,せっかくの調査データを活かした事業を実施できないものかと,改めて内閣官房のモデル事業に応募しましたところ採択となり,来年3月に国からの支援をいただいてようやく事業ができることになりました。そして,国の方から事業費を出していただく枠組みの中で,大阪府もその事業を共同で推進するための人材を出してくれることになりました。それも生活文化や芸術にかかわるジャンルのみならず,土木課の方々の協力を得られることになったのです。これなどは,まさに国の支援で地方自治体との協働が実現できた好例かと思います。
 そして三つ目は,都市部で一定の活動実績のあるNPOのノウハウを活かして地域で活動するNPOを育て,そのNPOが地域住民と企業などを結びつける役目を果たすことで,地域の文化力を掘り起こすことができるような支援を国ができるといいということです。これは,先ほどもお話しました,この10月に行う私どもの十津川村での活動との対比で考えることができます。この活動は村が施設に予算を出して,その施設が私どもに委託をしてくるというものです。私どもは今このような形で結構いろいろなところに直接出張して仕事をしているのですが,一番大切なのは私どもNPOサイドで考えると,そうした仕事をひとつひとつ全部お受けするわけには到底いかないということなのです。このように全部自分たちが出かけていって仕事をするのではなく,地元のNPOの力をつけてやるサポート活動ができるよう,私どものような都市部である程度の活動実績を持つNPOが動ける環境をつくるための支援を国にしていただきたいのです。長くなりますので詳しい内容は省きますが,今お話した観点で私どもの取り組んでいる事業が一つあります。これは先ほどの調査事業をした大阪府内の,わずか6駅しか持たない,泉北高速鉄道鉄道を軸に,その利用圏で展開しているものです。先ほどの調査対象の中から泉北地域を選んだのですが,この事業にはその地域にある帝塚山大学で,美学を教えていらっしゃる先生とそのゼミ生,それから地元ベースで自転車をつくっている企業や,同じくエアコンをつくっている企業,そして全国規模の大企業にも1つ入っていただいています。学校や企業,そして地方自治体から,お金だけではなく人的なものも含めて援助をいただく。そして,NPOがそうした一連の活動を円滑につないでいけるよう国がお金を出すというフレームになっています。こうした事例として,何とかして成功させたいと思っています。
 ただこれも,一番大事なのは地域の人なので,地域住民がいかにそういう活動に対する意識を持っていくか。毎年毎年ダンスボックスがそういうことをコーディネートしていくのじゃなくて,あくまで地域のNPOを育てていく感覚。やはりこれからは,そうした形の活動システムをつくっていかねばならないと思っています。

高階部会長 よろしいでしょうか。

吉本委員 ありがとうございました。

高階部会長 ほかには。津田委員,そうぞ。

津田委員 私は以前から大谷さんのことを存じ上げておりまして,今お話を聞いていて本当にそのとおりなのですが,皆さまに誤解があるといけないと思うことがあります。それは,地方自治体(大阪市とか大阪府とか)から都市再生の話があったというと,何かそういう支援を受けての活動が基本になっていると受け取られるかもしれません。しかし,実際のところは全く違っています。先ほどお話がありましたように,大阪でも通天閣周辺,じゃんじゃん横丁というと全国でも有数の路上生活者の多いところなのです。そこに大阪市が車庫の跡地を再開発して非常にきれいな建物をつくったのですが,周辺ニーズとミスマッチして,全くといって良いほど人がいなくなって,ゴーストタウンになりかけました。大阪市もせっかく巨額の金を出した再開発エリアに何とか人を引き寄せられないかと考えて,白羽の矢を立てたのが大谷さんだったのです。
 我々から考えてもNPOも本当に様々で,どのような活動をされているのかさえよくわからないというNPOも多々ある中で,大谷さんというのは,ご本人がいらっしゃるから言うのではないのですが,本当に稀有の方です。極めて着実でありながら,非常に発想は突飛だという,日本ではたいへん珍しいプロデューサーだと思います。京都にもう1人,コハラさんという,これも将来大プロデューサーになるのではないかと思う方もいらっしゃるのですが,大谷さんもそういう意味で,かなりの定評があります。大阪府というのは今全国でも一二の財政難を抱える自治体ですから,経費の面でなんとか合理的にまちおこしをしようとして,おもしろい考えを持っている大谷さんに依頼したということでしょう。
 そこには,結局私財も投げうって,食えない人たちを何とか食えるようにダンスボックスというチームをつくって活動してこられた人であればこその実績があるわけで,地域おこしというのは,やはりこういう方をたくさん発見して,大きく支援してやってもらわないとなかなか難しいということです。
 そういう意味で,我々が見ても劣悪な条件の中で,さっき見せていただいたような経験に乏しい方を仕込んでいくステップアップシステムなどは,私はすばらしいと思います。芝居とかダンスというのは素人でもだれでも若い子は一過性でやりたがるところを,何とか少しでも上手になろうという刺激を彼らに与えながら引っ張っていって,お金を取って見せられるようなものにしていく。この点においても,ご自身であらゆる面で本当に大変な状況の中で人を育てていっていらっしゃるというのが実情です。そこが,先ほどからのお話を伺って,何か大谷さんという方は既にできあがっていて,公的なところから頼まれた仕事をこなして食べていらっしゃると受け取られたとしたら,とてもそうではないわけです。しかし,各地域で本当に困っている土地があって,大谷さんの知恵を借りて,ただし有償で借りていただいたら,まちおこしに非常に役立つのではないかなと思って,失礼ながら要らぬことを言いました。

高階部会長 ありがとうございました。お話を伺って,大谷さんが頑張って本当にいろいろなことをなさっていらして,国だけではなく地方自治体とか民間会社,そして個人と非常にいろいろなところにネットワークをつくっていらっしゃることがわかりました。地域の場合に文化のそういうネットワークをつくるというのは大変重要だと思うのですが,今の津田委員のお話のように,やはりそれにふさわしい方がいないとなかなか難しいです。大谷さんのような方を地域で発見していくとともに,国としてはもちろんお金も出してほしいのですが,そういう方をパイオニア賞のような,何かの形で顕彰するなどの方策で,本当にいろいろな努力している方を知らしめることがあればいいと,少し思いました。
 どうも大谷さんありがとうございました。大変参考になりました。
 では引き続きまして,今度は山本 肇静岡県コンベンションアーツセンター会長から「公立文化会館を通じた地域文化の振興」についての事例発表を,10分ほどお願いして,意見交換したいと思います。では山本さんお願いいたします。

山本 肇氏 静岡からまいりました山本でございます。よろしくお願いいたします。私どもの館は県立の静岡県コンベンションアーツセンターというところで,愛称はグランシップ,大きな船という名前がついています。グランシップという名前を申しますと,演劇関係の方々には鈴木忠志さんのやっている,ああ,あそこですかとおわかりいただけるようですし,建築に興味のある方からは磯崎新さんがつくったあの大きい建物ねというような感じでとらえられておりますが,内容的にいろいろ特色のある事業をやっておりますので,それをご紹介することが地域文化の振興という観点でご参考になればと思います。
 お手元の資料4の中に私どもが用意した資料がございますが,一番最初の「グランシップフロアガイド」を見ていただきますと,大変大きな建物だということがおわかりいただけるかと思います。5年半前の平成11年3月にオープンしました。地上12階地下2階,建設費だけで500億円という大変お金のかかった建物でございます。
 4,600人の観客が入る大ホール,1,200入る中ホール,400人の芸術劇場,それから展示ギャラリー,交流ホール,会議ホール等々,いろんな目的を持ったものがこの1つの建物の中に入っている。床面積は6万平米ございます。
 県がつくりました,県内にある唯一の県民文化ホールです。東京から静岡に行く新幹線が静岡駅にとまる直前になって,左側の線路沿いに見える大きな建物ですので,恐らくあれは一体何だろうと思われた方もいらっしゃると思うのですが,そこがグランシップでございます。
 県が私ども静岡県文化財団にこの管理運営を委託するという形をとっておりまして,私はその館長,同時に財団の方の副理事長も兼務しております。
 この建物の中に芸術劇場が1つありますけれども,ここだけは鈴木忠志さんが芸術監督をなさっている静岡県舞台芸術センターという別の財団が管理しています。専有をしておりまして,鈴木さんの指導するSPACという劇団がここを専有的に拠点として,舞台芸術の創作と発表,それから2年ほど前からは文化庁ともかかわってロシアとの芸術交流事業を行っております。私どもの文化財団は,その芸術劇場を除く,ほかのホールや会議室などを使って自主企画事業と貸し館事業の二本立てで運営を続けております。
 館長である私は県の職員ではございませんで,元はNHKの解説委員をしておりました。静岡県出身で,NHKを定年になり知事の依頼を受け館のオープン半年前に館長に就任して,現在に至っております。
 NHK時代は報道の仕事をしていましたので,文化ホールの運営については本当に素人で,私自身試行錯誤しながら行ってまいりましたけれども,ともかく県民の心のオアシスになろうということを標榜して,優れた文化芸術の鑑賞機会の提供,それから地域の伝統文化あるいは地域の文化活動への支援,継承といったものを行ってまいりました。同時に,これは鈴木さんが指導する劇団の舞台芸術の創造と絡んでくるのですが,新しい文化の創造,発信,交流,それに県民をどう巻き込んでいくかということを主眼にやってまいりました。年間大体40本前後の自主企画事業と,それから大体2,500件を超える貸し館事業を行っています。
 それで,今回のテーマであります地域文化の振興ということで,私どもの事業の一端をご紹介します。資料に「おとみち」という少々変わったタイトルの事業のパンフレットがございますが,これはことしの8月20日と21,22と3日間,私どものグランシップの開館5周年事業「文化のクロスロード2004」という大きなタイトルの中で行ったものでございます。これはまさに県民参加,県民が日ごろ楽しんでいる音,リズムを毎日日替わりで,見せよう,見ましょう,みんなで楽しみましょうという行事で,20日は「ザ・伝統」ということで,伝統的な舞楽でありますとか田遊びとか,お囃子,太鼓,それからさらに新しいものでバンブーオーケストラというものがあります。これは静岡でプロの活動をしているグループですが,それを紹介したり,鬼太鼓座のスペシャルステージなどを実施しました。
 2日目は,まさにストリートミュージックといいますか,ヒップホップのダンスやストリートファッション等々,若者文化を,県内各地で活動するグループを紹介しながら,みんなで楽しむということを行いました。
 最終日は「世界の音楽のショーケース」「ワールド・リズム・フェスタ」を行いました。静岡県というのは例えばブラジルの方などが非常に多いところですので,ブラジルのサンバとかフィリピンの舞踊。それからアフリカンダンス,これはセネガル人のアリュウン・ジョップさんという方が活躍していらっしゃるので,そういう方々にもご登場願って,県内の様々な,アマチュア,プロを含めたグループにグランシップの中で活動していただく。我々の企画でこういう催し物を,3日間共通してワークショップで,一般の子どもたちを含めて,大人も一緒に参加していただくということ。それからグランシップの大ホールを舞台にしましたので,周りに,観客席以外にスペースがありますので,そこでここにあるような「ふるさと物産展」あるいは海外の,ブラジルとかフィリピンとか,そういうところのいわばお土産物をその国の人に売ってもらいました。そのように物産ともコラボレートした企画をして,かなりグランシップの中は賑わいました。

高階部会長 入場者は大勢入ったのですか。

山本 肇氏 入場者が,3日間通して大体2,500人ぐらいでした。 これは1つの例ですが,そのほかに現在進行形で,演芸関係ですと,静岡に実験劇場というグループがありまして,障害者と健常者が一緒に演劇,舞台をつくるということで,泉鏡花の「天守物語」をテーマに,十数人の障害者を含めた50人ぐらいの出演者が現在稽古をやっております。9月22,23,24と,連休を利用して4公演行うべく今一生懸命稽古に励んでいるところです。
 この障害者と健常者が一緒になって芝居をやるという活動は,もう10年ぐらい前から静岡市内で行っておりまして,それを今回初めてグランシップの舞台を使って行っていただこうということで,私どもホールの使用料の無償提供とか宣伝,チケット販売への協力で支援しております。
 それから,音楽関係でいいますと,静岡に幾つかプロのオーケストラがあるのですが,私どもで3年ほどまえから,静岡の中部,静岡市を中心に活動する静岡交響楽団というオーケストラを支援しています。堤俊作さんという指揮者の方が音楽監督で,もう14〜15年前から一生懸命活動してきています。それまでは年に2〜3回程度の公演活動を細々と行っていた状況でしたが,これでは静岡として情けないと考え,グランシップで支援することを決めました。大体年間1,200万円ぐらい支援して,3年計画で年4回から5回のグランシップでの演奏会を企画しております。その3年計画がことしで終わりますが,もうしばらく延長して続ける予定です。
 こういう支援のおかげで静岡交響楽団自体の後援会がNPO化して会員をふやし,スポンサー企業を増やして,財政的な基盤を大分固められるようになってまいりました。同時に,私どものこの支援活動が一種の起爆剤になって,静岡県のあちこちからお呼びがかかる形での公演機会が増えてまいりました。将来的にはグランシップを基盤とし,フランチャイズというとお金がかかり過ぎて難しいものですから,準フランチャイズ化したオーケストラにしていきたいと考えています。
 そのほか音楽関係でいいますと,中村さんがやっているピアノコンクールと並んで,静岡では国際オペラコンクールを3年に1度やっていますが,これと連携して,その優勝者,入賞者を主役にし,静岡交響楽団が演奏をする県民オペラをスタートさせています。3年前には第1回「蝶々夫人」を上演し,大変少ない予算の中で成功させることができました。2回目を来年の3月,同じく「蝶々夫人」でやろうということで,現在計画が進んでおります。これは私どもの財団と県の教育委員会との連携でございます。
 それから,ちょっと変わった催し物としては,静岡連詩という,連詩を行っています。大岡信さんがもう20〜30年前から始めていらっしゃるのですが,詩を連ねて30篇か40篇ぐらいの大きな全体の詩をつくっていくという事業を,大岡さんが静岡県の三島のご出身なものですから,大岡さんにお願いして,平成11年のオープンの年から毎年開催しています。日本の詩人数人と外国の詩人,最初の年がドイツ,それから中国,イギリス,北欧,アメリカ,それぞれ1人ないし2人ぐらいの詩人をお招きして,日本の詩人と共同作業で40篇の連詩をつくってきました。
 ことしは少し一段落でお休みをして,この5回の連詩の本をつくろうということで,現在岩波書店に頼んでおりまして,11月には出版される予定です。
 静岡というのは宗祇・宗長以来の連歌の伝統がございまして,こういうものを生かした,いわば連歌から連詩へというような感じの1つの文化的な継承にもなるのではないかということで,来年以降も続けてまいりたいと思っております。
 それから,静岡の文化で言えば,静岡というところは観阿弥,世阿弥以来のお能が大変盛んなところでもございまして,静岡能というのを行っています。今度新しく「世界お茶祭り」がことしの11月に開催されるのをきっかけに,新しい能をつくろうということで,「利休」というタイトルの能をつくって,まさに静岡から公演を出発させようとしております。観世清和さんを中心として,梅若六郎さん,野村四郎さん,それからちょっとおもしろい趣向としては,裏千家の坐忘斎家元がお能の前に利休の像にお茶を供えるという,「お茶湯の儀」というのをやって,そこからお能を始めるというふうなことを考えております。
 ざっとこういう形で,地域の文化と連動し,それを生かし,あるいはそれを育てていく形のいろいろな事業の展開を図っているところでございます。
 ただ,私どもの課題としては,これは川本さんも熊本でご苦労されていると思うのですが,私どもに38人職員がいるのですが,半分が県の職員で,半分が嘱託のプロパーの職員という感じで,いわば県の職員は3年に1度の割合で異動していくのです。この間まで税金関係の仕事をしていましたとか,病院に勤めていましたとか,公園緑地課にいましたというような人が文化の仕事をして,3年間ようやく慣れて少しおもしろくなってきたころにはまたほかのところに異動していきます。3分の1ずつ替わっていくわけで,まさにゼロからの出発ということで,いつも私ども3月,4月は非常に憂鬱になるわけです。事業の性格上,こうした人事を改めるべくたびたび知事部局にも話をしてきたが,やはりなかなかこういう人事は改まらない。ならば現状において文化事業を担っていく人材の育成を図るという意味から,次善策として今考えているのは,なるべく県の職員を減らしていき,プロパーの職員を増やし専門性を持った人間を長期的に育てるという方向に動きつつあるところです。
 それから,指定管理者制度という新しい制度とも関連しますが,現在私ども文化財団が管理をしていく際に,大きな公立の文化会館を運営していく際の評価システムは残念ながらまだ全くと言っていいほど整備されていません。観客数とか入場料による収益とか,利用率とか,そういう数字的な尺度は,従来からあるにはありますが,これだけではどのように文化への貢献度,地域文化への貢献度や,お客さまの満足度向上にこたられているかなど,質の問題にかんする尺度には到底なり得ません。これから,評価システムをどういうふうに特に公立文化施設の運営の中に,いわばメルクマールとして,物差しとしてとり入れていくかということは,大変重要になってくると思っております。今これについても私どもの内部で検討作業を始めているところでございます。
 以上でございます。

高階部会長 ありがとうございました。
 それでは,ただいまの山本館長のご発言に何かご質問ございますでしょうか。このグランシップは随分いろんなことをなさっていらっしゃる。指摘された人事の問題,予算の問題,評価の問題は,ほかにも共通する問題だと思います。
 では,私からですが,グランシップの中に展示ギャラリーがございますよね。これは貸し会場ですか。それとも自主事業の方でございますか。

山本 肇氏 両方で使っています。

高階部会長 両方。展示ギャラリーというと美術関係のスタッフもいらっしゃるのですか。

山本 肇氏 いや,それが残念ながら専門の学芸員というのはいないのです。学芸員の資格を持った人間はおりますが。

高階部会長 そうすると自主事業はその方がやっている。

山本 肇氏 いいえ,静岡県立美術館の学芸員にお願いして手伝っていただく,協力していただくという形をとっています。

高階部会長 ありがとうございました。いかがでございましょうか。はい,山野委員。

山野委員 鈴木さんの指導されているSPACとのご関係,それからもう1つは日本平に楕円堂という劇場がございますね。そのあたりとのご関係を少し説明してくださいますか。

山本 肇氏 一応財団が別々だというふうに言いましたが,私どもの財団とは非常に深い関係にありまして,いろいろと協力しあいながら運営しております。ただ,鈴木さんのところは鈴木さんのところでやはり独自の考え方でやっていらして,私どもの中にある芸術劇場が拠点ですが,そのほかに郊外の日本平という丘陵の中に野外劇場,楕円堂,宿泊棟,練習棟そのほかの施設を持っていまして,SPACという演劇集団と,それからそれを支えるバックステージの人たちに対して給料を払って,そこで創作活動をしていただく。これはまさに日本の中でも相当ユニークな,欧米型の活動機会を鈴木さんのところに県が提供しているという形のもので,私どももそれと連携して事業展開をしているということです。

山野委員 そうすると,演劇がらみのところは鈴木さんの方にかなりお任せしているということですか。

山本 肇氏 お任せということではありませんが,鈴木さんのところはいわば鈴木さんの考え方で演劇をつくっていらっしゃいまして,もう少し大衆的な演劇を楽しみたいというような要望もあるわけです。そういうものは私どもの役割として東京の演劇を呼んで,グランシップの中で上演したり,多少実験的なグループの演劇をつくってもらったりしております。
 同時にもう1つ,きょうは佐藤信委員がいらっしゃらないのですが,佐藤信さんにお願いして,結城座という糸操り人形の一座に,新しい人形劇をつくってもらったことがございます。それは「夢の浮橋」というタイトルで,「人形たちとの源氏物語」という,糸操り人形で源氏物語をお見せするという演劇を佐藤さんと結城座につくってもらったことがございます。そういうことも多少はしております。

高階部会長 よろしゅうございましょうか。はい,ありがとうございました。共通の問題がいろいろ出てまいりましたので,また最後にもお願いすることがあろうかと思います。では,引き続きまして,福井県の大野市教育委員会の本願清水(しょうず)イトヨの里の長谷川研究員から「記念物等を通じた地域文化の振興」について事例発表を,これも恐縮ですが10分ぐらいでお願いいたしまして,その後意見交換したいと思います。長谷川研究員よろしくお願いします。

長谷川幸治氏 日々イトヨは大事,大事と子どもたちに教えております,本願清水イトヨの里の長谷川幸治でございます。よろしくお願いいたします。
 まず,イトヨというのは何だということですが,ちょっと見にくいのですけれども,これがイトヨでございます。学名をガステロステウス・アクレアーツス,英名をthree-spined stickleback,背中に3本のトゲがあります。正確にはわき腹に1対,しりびれの手前に1本,計6本のトゲを持っております。大野市では昔からハリシンという名前で親しまれております。こちらですね。体長約5センチで,水温20度以下の湧き水にしか生息できない魚でございます。
 水産価値としましては何もない魚ですが,大野市にとっては大野の宝物,鍵となる生き物として位置づけられております。
 まず始めに項目1,イトヨの里の活動概要ですが,イトヨの里ができるまでの背景を含め,少し欲張りましたので,超特急でご説明させていただきます。
 昭和9年5月1日,本願清水が淡水型イトヨ生息地の南限地として国の天然記念物に指定されました。
 大野市は福井県の東部に位置し,周囲を白山の支脈1,000メートルを越す山々に囲まれた盆地にあります。盆地の中には九頭竜川を含め,4本の川が流れています。これらの川は扇状地を形成し,伏流水は湧き水となって,大野に水の町の印象を与えております。
 大野が良質な地下水に恵まれていることには幾つかの地形的理由が挙げられます。大野盆地の地下水は帯水層の構造になっておりまして,盆地内には4本の川がほぼ並行して南北に向かって流れ,川沿いには扇状地が広がっております。この扇状地は市街地へと続き,浸透した水が湧き出ます。
 大野市の地下水は比較的水位が高いため,ちょっとしたくぼ地では水が湧き出すことがあり,地元ではこれを清水と呼んで,古くから飲み水や生活用水として利用してきました。
 天正元年織田信長の武将金森長近が大野郡を統治し,亀山に越前大野城を構築するとともに,京都に模した城下町を建設しました。
 市内の南側に位置し,水量が豊富であった本願清水の湧水を市街地まで導き,道路の中央に引き,生活用水として利用してきました。現在も市街地の飲料水,上水道用水,工業用水の水源は地下水に依存しております。
 地下水は清澄で,おいしく,夏は冷たく,冬は温かく,まさに命の水,生産の水,潤いの水として,大野市の誇り得るものです。
 しかしながら,地下水の自然涵養量が減少し,利用量が増大する傾向にあり,昭和40年代後半から多くの湧水に枯渇現象があらわれました。
 市内全域にはたくさんのイトヨが,生活水として利用されてきた湧水と共存していましたが,地下水の低下などにより,本願清水など数箇所に見られるだけとなってしまいました。
 イトヨ生息地本願清水においても,地下水位の低下に伴いイトヨが危機的状況に陥り,池の改修,地下水のポンプアップと対策を講じてきましたが,危機的な状況からの脱却はできませんでした。
 そのような中,平成8年に880万円をかけてイトヨの大型水槽を市庁舎ロビーに設置し,本願清水でも間近に姿が見えないイトヨを直接市民の目に触れられるようにしました。
 こうしたことから,イトヨ保護の機運が市民の間からも高まり,本願清水イトヨの里の整備につながりました。
 当施設は,こちら文化庁の天然記念物整備活用事業の1つとして,平成10年から3カ年で整備されました。
 天然記念物に指定される動植物は,これまではその貴重さゆえに公開や活用に慎重になり過ぎる傾向がありました。本願清水イトヨ生息地でも,イトヨを絶滅させないための生息環境の維持を目的としたハード面での整備が実施されてきましたが,ソフト面での総合的な保護活動は必ずしも十分ではありませんでした。
 当施設は,事業の趣旨にのっとり,イトヨを地域固有の貴重な財産と考え,生涯学習や環境教育の場,さらには地域おこしの拠点としてとらえ,郷土の宝であるイトヨとともに生きることを日常生活の意識の中に育て,保護育成を行うことを目的に整備されました。
 施設整備の機運が高まる平成8年6月,大野市民及びイトヨに関係する団体に呼びかけ,イトヨを守ることを通して住みよい環境づくりを推進することを目的として大野イトヨの会を組織しました。
 それとともに,大野イトヨの会と共催で,平成11年からは毎年イトヨシンポジウムを開催し,市民に広くイトヨ保護と自然の大切さを啓発しております。こうした準備期間を経まして,平成13年7月14日に当会館は開館しました。
 当施設は,大きく分けまして学習施設と野外園路,観察池及び生息池からなる観察エリアからなり,学習施設は,切妻づくりの木造平屋建てで,木の力強さと温かさを感ずる建物になっております。
 時間の関係で当施設内の説明は割愛させていただきますが,このような状況です。
 これはイトヨシンポジウムの様子です。第5回イトヨシンポジウムです。
 館内はこのようになっております。1カ所だけ特に見ていただきたいのは,観察研究棟の半地下になっているイトヨ観察コーナーです。観察窓からは実際に池の中で生活しているたくさんのイトヨを間近で見ることができ,一日中見ていても飽きることがありません。大型水槽では,生育段階ごとのイトヨを見ることができ,時期によってはイトヨの巣づくりや稚魚を見ることができます。
 イトヨの里の開館から3年が経過しましたが,その間マスコミの取材はもとより,市外からも多数の方が来館くださり,平成16年8月末現在,総入場者数が4万7,653人,1日平均50.6人となっております。
 施設には,職員が4名のほか,施設ボランティアが8名おり,子どもボランティアも16名いて,受付,施設案内,清掃奉仕などの協力をしていただいています。
 イトヨの里の主な活動としましては,森館長が講師になりまして,水の国大野イトヨなどをテーマに自主講座を開催しております。
 また,学校の総合的な学習の一環として「それゆけ!本願清水探検隊」や「イトヨ博士になろう」と銘打ち,小学生が本願清水イトヨの里に頻繁に通い,イトヨを考え,本願清水の保全を考え,大野の地下水を考え,それらを包括する大自然とのかかわりについて学習しております。
 イトヨを守ることは水環境を守るバロメーターでもあります。イトヨ保護の重要性を子どもたちに常に発信し続け,自然の大切さを学んでほしいと考えております。
 地域と連携した行事としましては,年間パスポートを購入した子どもたちを対象にお楽しみ会を開催したり,近くの保育園児による水槽で生まれたイトヨの稚魚の放流会などを開催しております。
 また,毎年地元糸魚町の夏祭りに協賛し,平成14年8月には名水の町大野のシンボルであるイトヨをテーマにしたイトヨ音頭の発表会が,また平成15年8月には民謡の夕べなどを開催し,婦人会によるイトヨ音頭踊りが披露されました。このような行事などはイトヨの里のホームページ上で最近の話題として,その都度情報発信しております。
 このように,いろいろな活動を通してイトヨを地域の貴重な財産として保護,活用し,国の天然記念物に指定されている本願清水イトヨ生息地を,市民及び市外の方たちにも親しみあるものとして図りたいと考えております。この写真はボランティアの状況でございます。
 続きまして,項目2の,イトヨの里が地域文化の振興に関して成功していると思われる点についてお話いたします。大野市はイトヨの住む名水の町で,独自の水文化と生き物文化を持っております。しかしながら,年々環境は悪化の一途をたどる中,イトヨの生息環境を整備したことによって,地下水の量だけではなく,質の問題も一緒にということで,イトヨを守ることが即大野の地下水を守ることになり,大野の自然を守ることにつながっております。
 すなわち,川づくりから水環境の整備,さらにはまちづくり,住民との合意形成の場,ひいては人づくり,人間関係へと発展していると確信しております。
 イトヨの里と地域組織の連携と活動の在り方という面では,それが学校であり,市民団体であり,また行政機関であっても,それぞれと連携し歴史と自然の風土を生かし,イトヨを通した自然環境の郷土学習や環境教育の場として確立しつつあることがあげられます。
 開館時よりこのフィールドで展開しております小中学校の総合的な学習や豊かな体験学習は,まさにそれそのものであり,イトヨの里が整備されたことによって改めてイトヨを守ることが大野の地下水を守ること,大野の自然を守ることであると再認識されたと考えます。イトヨとイトヨの里が核となってそれが回り出していることです。
 3番目は,イトヨの里において工夫した点です。
その第一は,平成11年度から毎年イトヨシンポジウムを開催していることです。これはイトヨの里が整備されるまでとそれ以後の一連のものですが,第1回はテーマが「本願清水イトヨ生息地を今日にどう生かすか:天然記念物と環境の関わり」,第2回が「イトヨ・水・人:会館の果たす役割」,開館後の第3回は「まちづくり発信:イトヨの里から―市民によるイトヨを通した水環境の保全―」,第4回が「イトヨの里に学ぶ環境保全とまちづくり」,第5回が「自然と人との共生「地域資源を活用し,地域を元気にする地域住民と学校の役割」という様に,地域において啓発し続けている点でございます。そして本年度が今月9月25日に開催予定の,パンフレットをご用意しました「第2回トゲウオ全国サミット in Ono:トゲウオから日本の水環境を考える」です。将来の世代に豊かな自然を継承していくことを目的に,トゲウオの保護やイトヨを通したまちづくりに取り組んでおられる全国の方々が大野市において一堂に会し,意見交換をするというもので,外へ向けての発信をいたします。さらに将来的には,国際シンポジウムを視野に入れた明確な目標設定を持って進んでいる点でございます。
 また,情報発信では,ホームページによる情報の公開を行っています。イトヨ学習室では「イトヨの生態」,「イトヨのいる暮らし」,「考えよう水のある暮らし」などの学習ビデオをシアターとして公開し,イトヨの里へ来なくてもイトヨの学習ができるようなシステムをとっております。また,開催されたイベントなどを,最近の話題として紹介,さらに全国各地のトゲウオ保護団体や天然記念物整備活用事業施設のリンクによってネットワーク化を図っております。現在ホームページ開設以来,3年間で3万2,000件のアクセスになっているのも工夫のあらわれと自負しております。
 また,学校教育,総合的な学習などの支援におきましては,1日,数日,通年など,学習支援プログラムを設定し,小学校では必ず学校教育の中にイトヨを取り入れて,歴史と自然の郷土愛の再興をお願いすべく働きかけていることです。
 4番目に,イトヨの里の活動における今後の課題であります。これまでのシンポジウムのテーマはすべてイトヨの里が取り組むべき課題であり,これからの目指すべき目標でもありますが,まさにそれをどう具体的にするかということです。イトヨの里という構造物が目的ではなく,完成形ではないわけで,大野の地下水をどう保全するかは長いスパンで考えなければならないことであり,イトヨの保護も同様でございます。命令でイトヨを守れではなくて,自発的な意識の中から,イトヨを愛する者1人ひとりの使命として取り組む必要があり,それらの人をどう意識づけて活動するかにかかっているかと思います。これについては,1,2年で結果を求めるものではなく,地道に10年,20年先を見据えた活動をいかに行っていくかが今後の課題であると考えております。さらに,情報発信基地としての機能を果たすべく,継続的な調査研究が必要となりますが,人員や予算的な問題などいろいろな側面があり,今後解決策を模索しながら重要視しなければならない課題であると考えております。
 5番目の地域文化の振興と発信に必要なことでありますが,地域における啓発と理解という面では,継続的な調査研究,地元住民と学校教育関係との連携,行政・企業の協力援助,さらに情報の連絡・公開の体制づくりが必要であると考えます。外への発信という面では,湧水とイトヨ,トゲウオで他の市町村との連携など,ネットワークが重要であると考えます。またハード面では,生息地整備,公園施設整備,資料館の建設,ソフト面では教材の冊子製作や日常活動,図書資料の整備,学習会,シンポジウム開催などが必要と考えております。
 最後に,6番目の地域文化の振興と発信に関する国への要望でございます。文化とは地域で生まれ,育まれ,継承されていくものでございます。わがイトヨの里におきましては,イトヨを核とした活動が今や水文化としてその形が形成されようとしております。たかがイトヨでございます。されどイトヨは大野市民に古き懐かしき時代の豊かな自然を思い起こさせ,子どもたちに自然環境の大切さを学ばせております。そして,それらを子どもたちを巻き込んだ市民活動として地域へ発信しております。さらに今回は国へ,やがては世界を目指して発信し続ける思いでおります。しかし,一市町村のイトヨの里がセンター的役割を持って地域文化を生み育て継承していくには,次のような多くの問題があると思います。まずは,イトヨ・水・環境にかかわる専門的人材の必要性,施設設備の充実,施設の管理運営にかかわる人材の充実,人材,内容を含めた情報のネットワーク化です。何より,地域の文化活動を支援する補助金を含む国レベルの支援体制が必要であると感じております。
 以上でありますが,本日はビデオを持参しました。これは平成15年度の有終南小学校3年生の総合的な学習で,「義景清水にイトヨ復活へ」という取組みの集大成を劇にしたものです。最後の部分だけですが,ぜひご覧いただきたいと思いますので,お願いいたします。
(ビデオ映写)

長谷川幸治氏 これは近くにある歩いて5分ぐらいの小学校ですが,開館以来3年生がイトヨについての学習を,4年生が一歩進んだ水環境の学習を毎年展開しております。それを1年間の研究の集大成として,学校の校内で発表しております。この劇は,第5回イトヨシンポジウムでも発表していただきました。
(ビデオ映写)

長谷川幸治氏 ありがとうございました。以上でございます。

高階部会長 ありがとうございました。大変にいろいろご活動なさっていらっしゃいます。このイトヨの里は市が直営ですか。

長谷川幸治氏 はい,そうです。

高階部会長 では委員の皆様,どうぞご質問をお願いします。

津田委員 むしろ文化庁の方にお聞きしたいのだけれども,立派な発表でいいのだけれども,今のようなケースというのでの地域文化振興というのを入れてくると,例えば吉野ヶ里遺跡を利用した地域文化振興とか,あるいは琵琶湖のモロコをどうしてとかいうふうな分野まで入ってくると思うのですよね。だから,私は今たまたま国土交通省の水資源委員会をやっているのだけれども,むしろ環境省とか水とか,ウエイトからいくと,そういう地域振興もこの文化審議会に入ってくるというわけですか。

寺脇文化部長 文化というのを私どもは広くとらえたいという考えから文化財保護法も改正をいたしましたし,それから私どもの地域文化振興でもそういうことを念頭に置いて進めております。ただ,今おっしゃったように,こういう問題になりますと環境省あるいは国土交通省,いろんなところにかかわってまいります。したがってこの文化審議会ではもちろん文化の観点からご議論をいただき,そのことを踏まえて私どもも今までの文化庁だけでやっていくという考え方ではなしに,さまざまな関係省庁とこういうことについては一緒にやりましょうということを進めてまいらなければならないと考えております。
 そういう意味で,実は地域文化振興につきましても,ことしの1月からでございますけれども,まず文部科学省と文化庁が連携をとるために,生涯学習政策局やスポーツ青少年局などと一緒に,文部科学省,文化庁全体の「地域づくり振興室」をつくりました。まず文部科学省,文化庁の中の一体化を図り,さらにそこをキーステーションにして関係各省庁とも連携がとれるようにしたいと考えております。

津田委員 それはどういうテリトリーでやるのか,そこを聞いておきたいのですが。

寺脇文化部長 いろいろな光の当て方があると思いますので,文化という光の当て方もあるのだということは強く主張させていただきたいと思っております。

高階部会長 天然記念物の指定というのは,文化庁で行うわけですね。
 はい,ありがとうございます。ではいかがでしょう。どうぞ惠委員。

惠委員 今のイトヨの里づくりというのが,天然記念物というキーワードでいうと,佐渡のトキを空に舞わせようというのと同じジャンルで解釈をしたらいいのかなと思ってお話を承っておりました。その活動がある効果を伴って地域に根づくかどうかは,今回の発表について言えば,地域にとってその指標としての象徴であるイトヨが,今の館の中だけではなく,湧き水に生息できる環境をもう一度復元できるかということに反映されてくるわけです。昔は当たり前にイトヨが生息できる状態を市民がつくっていた,それが地域文化だったと思います。今の津田委員のご発言から,イトヨの里の活動が,文化の考え方を象徴として指定された記念物からも,広げていけるきっかけの例になっていると思いました。その意味で豊岡市のコウノトリなど,人の暮らしの影響で減らしてきてしまったものに焦点を当てて,それを劇にするなど,その護り方などについて地域一体で連携して考え,行動していくということがすごく魅力的に思えました。
 それで1つお尋ねしたいのですが,地下水の涵養に関しては,いわゆる農水省系の水田の,水盆,水をためるための水田の様子とか,そういうものも大きく影響しているのではないでしょうか。例えば熊本市が市内の水を確保するために,上流域の水田に冬でも水を湛水するよう呼びかけているとか,そういう連携の話も出ているのですが,今回はいかがでしょうか。

長谷川幸治氏 市としましても,年度ははっきり覚えていないのですが,継続して冬の間一部の田んぼに水を張るという実験は試みております。
 さらに一昨年より,砂礫層まで掘り込みまして,さらに水が浸透するところまで水を入れる実験を試みております。これは,顕著に結果としてあらわれております。
 ただ,地元農村の間で誤解を招いておりますのが,冬の間に田んぼに水を張るということで,土がやせるというのと,土が冷えて作物に影響があるのではないかということです。熊本の状況として,水を張ることで微生物が発生するなど,いい結果が出ていると伺っていますので,今後もさらに理解を求めていくことが必要であると考えております。

惠委員 ありがとうございました。

高階部会長 ほかにいかがでございましょうか。はい,熊倉委員。

熊倉委員 そもそもこのイトヨがすめなくなった地下水の涵養量の減少の原因は何だったのでしょうか。

長谷川幸治氏 原因は,まずは第1に生活様式の変化です。大野盆地は扇状地になっておりまして,上流に浸透する構造になっております。それは地下の基盤に起因していまして,ちょうど水を通さないお椀の上に砂礫層が入っていて,そこに水がたまるというつくりになっております。生活様式の変化によって水を使う量,例えばトイレにしても水洗になったとか,そういったことで非常に水を使う量が増えました。それに,大野は繊維の町でございます。繊維工場ではウオータージェットという工程に使用する地下水を,大量にくみ上げて使っております。さらにはもう1つは,昭和40年後半から,ちょうど水が浸透する場所が広葉樹の森林だったのですが,圃場整備により乾田化されて,川も三面張りで水が浸透しないようなつくりになってしまいました。それで需要と供給のバランスが崩れてどんどん地下水全体の水位低下によって湧き水の量が少なくなっております。
 さらにもう1つは,治水の問題です。4本の川が流れておりますけれども,その川を掘り下げたことによって地下水がそちらの方に流れてしまっているというのも現状でございます。そういったことが地下水の低下につながっております。

熊倉委員 その辺のことは,今子どもたちが演劇という形式をとって,行政のスローガンを最後に言っていましたけれども,シンボルとしてのイトヨを守るということの先にある社会的なところまで,どう生活様式の価値概念として提示していけるかというところが文化であるかどうかというところの重要なポイントだと思うのですが,その辺のところが,例えば高学年だとか中学校だとかで教えて,あるいは生徒達が考えていくわけですか。

長谷川幸治氏 これはとにかく小学校,中学校の子どもたちにそういう意識づけをして,彼らが20歳なりになったときにどのような考え方を持っていけるかということで,将来に向かって長いスパンで考えているわけでございますが,直接的には市としまして,この上流にある平家平ブナ林を市有地として購入したりとか,市条例で水を大切に使おうとか,行政側としてもそういった取組みはしております。

高階部会長 ほかにご質問ございますか。それでは長谷川さん,どうもありがとうございました。
 残りの時間で,きょうのご発表も踏まえて,さらに広く地域文化の振興と発信についてご自由に討議をいただきたいと思います。どうぞ委員の皆さん,どなたからでも結構でございます。特に国へのヒントあるいは,要望のようなものがあればと思いますが。はいどうぞ,それでは川本委員,吉本委員。

川本委員 先ほどの山本さんのお話を伺っていて,わたしのおりますところと同じような組織なものですから,共通する悩みをたくさんお抱えになっているということで,大変身につまされておりました。
 例えば,これから地域の公立文化施設にとって非常に大きな問題である指定管理者制度なども,自由競争に基づいて民営を引き受けようという,一種のキャンペーンのような形式で選ぶわけです。それは例えば熊本県なら熊本県,静岡県なら静岡県で選ぶのですが,山本さんのところの理事長は県知事ですか。

山本 肇氏 理事長は静岡新聞社の社長をやっている方です。

川本委員 そうですか。うちの場合は財団の理事長が県知事だものですから,県が選ぶのにその財団の理事長が県知事であるというのは問題ではないかということがあります。また,先ほどおっしゃっていたように県の職員が来ておりますね。そういう大勢いる職員を県が選ぶというのは,不公正ではないかというような問題も出てまいります。
 それからもう1つは,NPO法人の問題については,今の日本で有数の専門家である吉本さんに,私などは何かいろんな各地の事例を挙げていただきながら,正しいNPO法人のつくり方というようなことをレクチャーしてもらいたいと思います。そういうチャンスがもしありましたら大変うれしいと思っております。そからまた,公立施設の場合はボランティアという問題もあります。これをどう組織していくか。あるいはこの間少し申し上げたのですが,ボランティアというのは無償だからボランティアだろうというわけです。確かにそうなのですが,有償ボランティアという考え方も出てきておりまして,その辺はどういうふうにとらえていくか。そういった問題を文化政策に絡めて検討するチャンスがあればいいと思っております。

高階部会長 今の例えば指定管理者制度は,かなり具体的に進行しているのですか。いかがでしょうか。

山本 肇氏 これは各県みんな同じだと思いますけれども,平成18年度に指定管理者制度が導入されるわけです。だから18年の9月までには実際に移行されるわけで,そのために今各自治体が条例づくりをして,どういうふうに指定管理者を選んでいくかということをそれぞれに工夫されています。ですから当然,それこそ熊本県も静岡県も,その制度に組み込まれていくわけですから,私どもとしてもその指定管理者制度にいわばエントリーをして,選ばれないと管理ができないという状況になってくるわけです。その場合,県のつくった財団がそこに加わることにかかわる条件づくりについて,静岡県の場合はまだ整備ができていません。まさに,これからの課題になってくると思っています。

高階部会長 吉本委員どうぞ。今の川本委員のご発言も踏まえて。

吉本委員 川本館長から何か過分なご紹介をいただきましたが,とてもここで私がこうすべきだというようなことを軽々に発言できるような内容ではないかと思います。ただ,1つだけNPOのことでご紹介をすると,10月23,24の2日だったと思いますが,2回目の全国アートNPOフォーラムが札幌市で開かれることになっています。去年は神戸で1回目のフォーラムが行われました。そこでわかったことは,各地のNPOは,言葉が適切かどうかわかりませんが,非常に孤立していて,みな孤軍奮闘でやっているということです。そんな中で,やはり目標を共有化したり,みなが集まって意見交換をして共通の問題を認識することが求められています。そして,ことしのテーマは学校現場でアートNPOは何ができるかということで、授業や教育の中で連携したり,あるいは廃校になった小学校などをアートスペースに変えたりするような,学校という場におけるアートNPOの可能性についてです。それと公立文化施設が指定管理者制度になるということで,富良野の演劇工房というNPOが第1号の指定管理者になったようですので,NPOと公立文化会館とが協力し合えるかどうかということ。その2つがテーマになっています。そこの場でいろいろ議論が出てきたようなことについて,またこういう審議会の場で報告できるようなことがあるといいかなと個人的には思っています。
 それで,NPOのことについて付け加えることがあるとすれば,きょうは静岡コンベンションセンターのお話があったわけですけれども,やはり地域文化というと公立文化会館では,県立ではなくもっと小さな市町村のものが対象となるべきでしょうし、それからNPOもきょうは大谷さんに本当にすばらしい報告をいただいたと思いますが,小さな市町村で頑張っている小規模なNPOの話を伺える機会が,スケジュール的に可能かどうかわからずに言っているのですが,設けられたらいいかなと思いました。
 それで,手を挙げたのは最後の長谷川さんのご発表への質問も兼ねてだったのですが,最後に演劇をやっていらっしゃいました。あの演劇をつくるときのご指導は,学校の先生がなさったのですか。

長谷川幸治氏 基本的に子どもたちがやったそのままのことを劇としてやっております。

吉本委員 演劇をつくる指導者のような方は。

長谷川幸治氏 指導者は先生です。

吉本委員 演劇の最後の部分しか見ていないので,少し申し上げにくいのですが,私は何かいかにも学校の先生がつくった演劇だなという印象を受けました。先ほども,天然記念物ということが文化に入るかどうかというお話もあったわけですが,せっかくなので,ああいう演劇作品をつくる場面に演劇の専門の方が入っていらっしゃると,より文化的なものになるのではないかと思います。学校の現場,あるいは長谷川さんがおやりになっているような活動現場に,文化的な活動をしている専門家の方がうまくつながって入ってくると,より幅広い形で地域文化が振興されるのではないでしょうか。

高階部会長 ありがとうございます。ほかに,どうぞ。

惠委員 同じように,3人の方のお話を伺いながら,ダンスボックスの,パフォーマンスをして自分を解放してくるとほかの人が見えてくるという手法が,子どもたちに対する教育の中にうまく取り入れられるといいと思いました。そういう意味で文化と教育がつながるのではないかということです。それからダンスをする際に,イトヨなどというテーマを設定することはあり得るのでしょうか,いかがでしょうか。

大谷 燠氏 それは十分あり得ると思います。ただ,初めに1つの結果を用意しておかないところが大事だと思います。だから,イトヨというものを活動する上での1つの仮説として置くということは,例えばダンスで行う場合に,観察から始めてそれを描写するとか,別にイトヨそのものではなくて,その周りの水を描写するとか,いろんな方向からそれにアプローチする可能性を拓いていけるかどうかがポイントになるでしょう。とにかくワークショップで大事なことは,あらかじめ何となく決められた結果に持っていかないということです。先ほどのビデオの演劇で,なぜ子どもたちの体があのように硬直しているのだろうかと考えると,おそらく子どもたちが楽しくないからだと思うのです。それは,すごく決められたことの中で行っている。もっともっと,違う視点が見つけられてもいいと思います。実は子どもの視点というのは,ダンスなどを行った場合に非常にたくさん出てきます。これはとにかく感性が柔らかいということであり,そういうものを引き出していくというのも1つの文化の在り方かと思います。ダンスにいい指導者をつけるとそういうことは可能になってくると思います。

高階部会長 ありがとうございました。どうぞ,米屋委員。

米屋委員 私も,以前から存じ上げている,演劇という方法論の中で,子どもたちのお芝居を,というよりは子どもたちの活動を生かしていろんな伸ばし方を心得ていらっしゃる方を,ご紹介したいなと思いながらビデオを拝見しておりました。きょうお3方の発表を伺いまして,それぞれに何をやっていらっしゃるか短い時間でまとめてくださって,すばらしいなと思いながら拝聴はいたしました。中でも大谷さんの発表は何を目指していらっしゃるかというところがよくわかりましたが,もっと言えば,それぞれの組織それぞれの個人が何を目指しているかということと,地域が何を求めているかということの関連において,お話いただけたらよりよかったのではないかと思いました。
 きょうはもうお時間もないので,この場でというのは難しいかと思いますが,今後審議会の議論の中で,そことの関連をどう考えていくのかというのが重要ではないかという感想を持ちましたので,一言申しました。

高階部会長 そこは,むしろ委員の皆さんにいろいろお考えいただくことでもあろうかと思います。
 そろそろ時間になりました。それでは,いろいろとお3方,地域の事例発表をありがとうございました。
 文化ボランティアは長官がいろいろとおっしゃっていることで,有償でもあり得るのじゃないかということ,実際には有償の場合が出てきているのですね,手弁当だけではなくて。これも今後いろいろな問題として考えていきたいと思います。

川本委員 文化ボランティアの実践実例集を3月ごろおつくりになったと思いますが,この部会にはまだ配られてないような気がします。この次あたりにぜひお配り願いたい。

河合長官 文化ボランティアは本当にまだ出てきたところで,いろんな試行錯誤があると思います。ただ,有償というよりは,ボランティアの方の活動に対して,こちらに余裕があるから援助を差し上げるとか,食事を差し上げるということはあると思うけれども,ボランティアの人が有償を要求されるのは何か自己矛盾だと私は思います。

高階部会長 わかりました。
 それではいろいろこれからもまた討議をしていかなければいけない問題が出てまいりましたが,時間となりましたので本日はこれで終了したいと思います。3人の皆さんありがとうございました。(拍手)
 では事務局から次回の日程等についてご発言をお願いします。

吉田政策課長 次回は10月7日木曜日でございますが,10時から予定をさせていただいております。
 次回の内容について申します。これまで,2回のヒアリングをしていただきました。それからそれ以外に先ほど吉本委員の方からお話もございましたが,吉本委員を初めとして何人かの委員の方から,各地にこういった事例もあるというご紹介もいただいておりまして,それにつきましては,事務局の方でいろいろと聞き取り調査なども今現在続けているところでございます。そういったことの紹介も含めまして,次回はまとめに向けまして論点整理を一応させていただきたいと思っております。
 以上でございます。

高階部会長 それでは,そういうことでございますので,また改めてご案内があると思いますが,よろしくお願いいたします。
 本日はこれで終了したいと思います。どうもありがとうございました。


(文化庁長官官房政策課)

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