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文化政策部会(第8回)議事録

1.日時: 平成16年6月8日(火曜日)10時〜12時

2.場所: 丸ビル8階 room

3. 出席者:
(委員) 高階委員、津田委員、富澤委員、川本委員、木村委員、佐藤委員、都築委員、根木委員、惠委員、山野委員、吉本委員、米屋委員
(事務局) 稲葉文部科学副大臣、河合文化庁長官、素川文化庁次長、森口文化庁審議官、寺脇文化部長、木曽文化財部長、湯山文化財鑑査官 他

4. 議題:
(1) 部会長の選任
(2) 運営規則等の決定
(3) 文化多様性に関する作業部会の設置について
(4) 文化政策部会における審議事項等について
(5) 意見交換
(6) その他

5. 議事:
尾山政策課長 ただいまから文化審議会文化政策部会を開催させていただきます。先生方には本日はご多忙の中、ご出席いただきまして誠にありがとうございます。
 私は、文化庁長官官房政策課長の尾山でございます。本日は、本年2月の委員改選後はじめての会合でございますので、部会長が選任されるまで、私の方で議事を進めさせていただきます。
 はじめに、文化政策部会の委員の先生方をご紹介させていただきたいと存じます。資料3に名簿が入れてございますので、ごらんいただきながらお願いいたします。お席の順に紹介させていただきます。
 高階秀爾委員でいらっしゃいます。
 津田和明委員でいらっしゃいます。
 富澤秀機委員でいらっしゃいます。
 川本雄三委員でいらっしゃいます。
 木村俊光委員でいらっしゃいます。
 佐藤信委員でいらっしゃいます。
 都築敏子委員でいらっしゃいます。
 根木昭委員でいらっしゃいます。
 惠小百合委員でいらっしゃいます。
 山野博大委員でいらっしゃいます。
 吉本光宏委員でいらっしゃいます。
 米屋尚子委員でいらっしゃいます。
 なお、本日、中村紘子委員、野間佐和子委員、神崎宣武委員、熊倉純子委員、中村桂子委員がご欠席でございます。
 続きまして、本日の会議に出席の文部科学省及び文化庁関係者をご紹介させていただきます。
 河合文化庁長官でございます。
 素川文化庁次長でございます。
 森口文化庁審議官でございます。
 寺脇文化部長でございます。
 木曽文化財部長でございます。
 湯山文化財鑑査官でございます。
 なお、後ほど、稲葉文部科学副大臣が到着次第、ごあいさつをさせていただくことになってございます。

※文化審議会令の第6条第3項に基づき部会に属する委員の互選により高階部会長が再選された。

 それでは今後の議事進行につきましては、高階部会長にお願い申し上げます。よろしくお願いいたします。

高階部会長 高階でございます。どうぞよろしくお願いいたします。
 それでは、まず、文化審議会令第6条第5項の規定に基づきまして、部会長代理を指名させていただきたいと思います。私といたしましては、昨年に引き続きまして津田委員にお願いしたいと思いますが、いかがでございましょうか。

(「異議なし」の声あり)

高階部会長 ありがとうございます。それではそのようにお願いさせていただきます。

※文化政策部会運営規則及び議事の公開について(案)について事務局から説明後、原案どおり決定された。


高階部会長 それでは、第2期文化政策部会の発足に当たりまして、稲葉文部科学副大臣からごあいさつをいただきたいと思います。

稲葉文部科学副大臣 皆さん、おはようございます。一言ごあいさつ申し上げます。本日は、ご多忙中のところをご出席いただきまして、誠にありがとうございます。文化審議会文化政策部会の第8回の開会に当りまして、一言ごあいさつ申し上げます。
 まず、はじめに、新たにご参加をいただきました3人の委員の方々をはじめとしまして、委員の皆さま方には本部会の委員をお引き受けいただきまして、誠にありがとうございます。厚く御礼申し上げます。今後のご審議をどうぞよろしくお願いします。
 この部会におきましては、本年2月に今後の舞台芸術創造活動の支援方策についてご提言をいただきました。文化芸術の振興における国の役割は大きく分けて文化芸術の頂点の伸長、それと裾野の拡大にあると思われます。昨年度は文化芸術の頂点の伸長についてご議論をいただきましたので、今年度は第2の課題であります文化芸術の裾野の拡大について、ご検討をお願いしたいと存じます。地域における多様な文化芸術への取組が我が国の文化芸術が発展する源であると確信しております。全国各地において、国民が生涯を通じて身近に文化芸術に接し、個性豊かな文化芸術活動を活発に行うことができる環境の整備が必要であります。
 本文化政策部会において、地域文化の振興の観点から国がどのような環境を整備していくべきかをご議論いただきたいと存じます。
 また、グローバリゼーションの急速な進展について近年、世界中の文化の均一化が憂えられております。そのような状況において、今後ユネスコにおいて文化の多様性の保護に関する条約が検討されることをも踏まえて、本政策部会において「文化の多様性に関する作業部会」を設置し、文化の多様性に関する基本的な考え方についてご議論をいただきたいと考えております。
 本部会の委員の皆さま方におかれましては、本年度こうした観点から積極的なご審議をいただき、私どもに示唆を与えてくださいますようにお願い申し上げます。
 以上です。ありがとうございます。

高階部会長 副大臣ありがとうございました。
 それでは続きまして、河合長官からもごあいさつをお願いいたします。

河合長官 どうも本日は誠にありがとうございます。委員の皆さまにおかれましては、この文化政策部会の意義や役割につきましてご理解をいただきまして、今後、お力を賜りたいと思っております。よろしくお願いいたします。
 この文化政策部会におきましては、平成14年12月に閣議決定いたしました文化芸術の振興に関する基本的な方針において、留意すべき事柄として挙げられておりました芸術支援施策につきまして、今後の舞台芸術創造活動の支援方策について、ご提言をいただきました。本年度は先ほど稲葉副大臣も申し上げましたとおり、地域文化の振興と発信についてご議論をいただきたいと考えております。
 私は文化庁の長官に就任以来、全国約20カ所におきまして芸術文化懇談会を開催し、各地域の文化芸術関係者の方々あるいは住民の方々と直接意見交換をしておりますが、地域の特色を活かした様々な文化活動が展開していることを見聞いたしまして、地域の文化活動が非常に活発になりつつあると理解しております。こうした地域の文化活動をいかに全国に発信し、国民が共有していくかが課題ではないかと考えております。
 私としましては、本部会におけるご議論を十分に踏まえまして、今後の文化芸術振興施策の一層の充実に力を尽くしてまいりたいと考えておりますので、委員の皆さま方におかれましては忌憚のない活発なご議論をいただきますよう、よろしくお願い申し上げます。

高階部会長 河合長官、ありがとうございました。
 それでは、議事に入ります前に私からも一言もごあいさつをさせていただきます。
 改めて部会長に選任されました高階でございます。この文化審議会文化政策部会では、本年2月に、今後の舞台芸術創造活動の支援方策についての提言をとりまとめ、文化審議会に報告申し上げたところですが、この提言のとりまとめにご尽力いただきました委員の皆さまには改めて御礼申し上げますとともに、文化庁におかれては本提言を踏まえて文化芸術創造プラン等の具体的な改善、充実に努めていくことを期待しております。
 そして、本部会の本年度の審議事項につきましては、先ほど稲葉副大臣や河合長官から、地域文化の振興と発信について審議してほしいとのお話がございました。より身近なところで文化活動に参加したいというのは国民の願いであり、地域において様々な文化活動が活発に行われ、競争してこそ文化のさらなる発展が期待されるところであります。
 また、近年各地においては文化を活かした地域振興やまちづくりが盛んに行われております。こうした取組を発信していくことも大切であります。部会長といたしましても、こうした課題を検討していくのは大変時宜を得たものと考えております。委員の皆さま方におかれましては、この審議の場において忌憚のない活発なご意見をいただくとともに、審議の円滑な運営にご協力いただきますようお願い申し上げて、ごあいさつといたします。どうぞよろしくお願いいたします。
 それでは審議に入りますが、稲葉副大臣は公務のため、ご退席されます。

稲葉副大臣 大変申しわけありません。よろしくお願いします。ありがとうございました。

高階部会長 どうもありがとうございました。

(稲葉副大臣、退席)

高階部会長 それでは、議事に入ります。まず、事務局から配布資料の確認をお願いいたします。

尾山政策課長 配布資料の確認をさせていただきます。本日、先生方のお手元には資料14点、参考資料4点、合わせて18点お配りをさせていただいております。
 資料1は、文化審議会という2枚もののペーパーでございます。
 資料2は、文化政策部会の設置について。
 資料3は、部会の名簿。
 資料4が、文化審議会関係法令の抜粋。
 資料5が、文化審議会運営規則。
 資料6が、文化政策部会運営規則(案)。
 資料7が、文化政策部会の議事の公開について(案)。
 資料8が、文化審議会文化政策部会文化多様性に関する作業部会の設置について(案)。
 資料9が、文化多様性の保護に関する現状という資料。
 資料10が、文化政策部会における審議事項等について。
 資料11が、データから見る地域文化の振興について。
 資料12が、地域における文化芸術活動に対する支援事業等について。
 資料13が、関西元気文化圏の取組。
 資料14が、「丸の内元気文化プロジェクト」についてということでございます。
 あと、冊子が5点、平成14年4月の答申、文化芸術基本法のパンフレット、基本的な方針に関するリーフレット、そして基本的な方針に関するパンフレット、あとその下に「平成16年度の文化庁予算のあらまし」とございます。

高階部会長 ありがとうございました。お手元にそろっていると思います。 それでは、まず、新たに本文化政策部会の委員になられた方もいらっしゃいますので、本部会の概要について事務局からご説明をお願いいたします。

尾山政策課長 資料1、資料2に基づきまして文化審議会と文化政策部会について、ご説明をさせていただきます。
 まず、文化審議会でございますが、この審議会は平成13年1月6日付で中央省庁の改革の中で文部科学省に設置されたものでございまして、従来ございました国語審議会、著作権審議会、文化財保護審議会、文化功労者選考審査会の機能を整理統合したものでございます。所掌事務につきましては2にございますように、文化の振興及び国際文化交流の振興に関する重要事項、国語の改善及びその普及に関する事項、著作権法、文化財保護法、文化功労者年金法等の規定に基づき、審議会の権限に属された事項ということでございます。
 構成は、審議会は委員が30人以内ということで任期1年ということになってございます。国語分科会、著作権分科会、文化財分科会、文化功労者選考分科会の4分科会が設置されてございますが、(4)にございますように、審議会及び分科会には必要に応じて部会を設置することができるということになってございまして、これに基づきましてこの文化政策部会が文化審議会に設置されておるところでございます。
 資料2でございますけれども、文化政策部会の設置の趣旨は1にございます。中ほどからでございますが、文化の振興に関する基本的な政策の形成に係る重要事項に関し調査審議を行うため、設置されておるということでございまして、調査審議事項としては、文化芸術の振興に関する基本的な方針の取組状況、その他文化の振興に関する基本的な政策の形成に係る重要事項について、ご審議をいただくということになっておるところでございます。
 以上でございます。

高階部会長 それでは次に、文化の多様性に関する作業部会の設置について、設置する件を諮りたいと思います。詳細に関して事務局から説明をお願いいたします。

森口審議官 それではお手元の資料8と9をごらんいただきたいと思います。恐縮ですが、先に資料9をごらんいただきたいと思います。
 資料9、「文化多様性の保護に関する現状」ということで、現状の説明資料でございます。まずこれからご説明申し上げます。2をごらんいただきますと「ユネスコにおける取り組み」というのが書いてございます。その1番目としまして「文化多様性に関する世界宣言の採択」というのが平成13年の第31回のユネスコ総会において行われております。その第1条が上の「1.文化多様性とは」ということに書いてございます。ここを読み上げさせていただきます。
 時代、地域によって、文化のとる形態は様々である。人類全体の構成要素である様々な集団や社会個々のアイデンティティーは唯一無比のものであり、また多元主義的である。このことに、文化的多様性が示されている。生物的多様性が自然にとって必要であるのと同様に、文化的多様性は、交流、革新、創造の源として、人類に必要なものである。この意味において、文化的多様性は人類共通の遺産であり、現在及び将来の世代のためにその重要性が認識され、主張されるべきである。
 こういう宣言が平成13年に採択されてございます。その後、(2)でございますが、平成14年のヨハネスブルク・サミットにおきまして、シラク大統領が「文化的多様性は、言語の急速な消滅及び製品、法規範、社会構造やライフスタイルの画一化により脅かされている。」と、こういうこともあって「文化多様性宣言」というものを表明してございます。これを受けまして平成15年、昨年の10月に開催されました平成13年に継ぐ、次の回の第32回のユネスコ総会におきまして「文化多様性に関する国際規範の策定手続を開始する」ということが決議されてございます。この32回の総会の決議を受けまして、昨年の12月から専門家会合ということで予備的条約の草案について検討が3回ほどなされてきてございます。そして本年の4月になりまして、ユネスコの第169回の執行委員会におきまして、政府間会合を開催するということが決定しました。具体的な開催時期は未定でございますが、このような動きが出てきてございます。
 今後、この3回実施された専門家会合で検討されました予備的草案が加盟国に配布される予定ということでございまして、早ければ、ユネスコ総会は2年毎でございますので、来年秋の次回のユネスコ総会で条約案が制定されるということも予定されております。
 3ですが、「我が国の取り組み」といたしまして、我が国においても文化多様性については特に近年、グローバリゼーションということがございますので、多様性の確保ということも非常に重要であるということで、平成12年の沖縄サミットにおきまして我が国のイニシアティブのもと、G8のコミュニケで文化の多様性の確保の重要性ということが明記され、我が国としても非常に関心をもって取り組んできているところでございます。
 このような背景を踏まえまして資料8をごらんいただきたいと思いますが、今般、この文化政策部会に文化多様性に関する作業部会というものを設置してはいかがかということで、本日、資料を提出しているところでございます。趣旨は今申し上げたとおりでございまして、本部会のもとに文化多様性に関する基本的な考え方について検討を行う、文化多様性に関する作業部会を設置するというものでございます。
 調査審議内容といたしましては2にございますが、「グローバリゼーションと文化多様性」。こういう相反するとまではいきませんけれども、違った方向の主張があるわけですけれども、これについてどう調和をとっていくのかという議論。それから2番目としましては「文化多様性を保護・促進するための我が国の取組」、途上国の支援等々いろいろあろうかと思いますけれども、あるいはクリアリングハウスということも議論になってございますが、そういった我が国の取組。あるいは「文化多様性を確保するための国際的な体制の構築」と。こういったことについてご議論をいただきたいと思ってございます。4は「その他重要事項」ということでございます。こういったユネスコ等での動きを踏まえまして、我が国として基本的なスタンスというものを固める意味でも、ぜひこの場でご議論をいただきたいと思っているところでございます。
 構成といたしましては、ここにございますように、文化政策部会長の指名する委員及び臨時委員、それから文化多様性に関する作業部会に分属された専門委員により構成するということにいたしたいと思ってございます。その他、必要な運営事項等につきましては作業部会で定めるということでございます。
 資料のご説明は以上でございます。

高階部会長 この文化審議会の文化政策部会に文化多様性に関する作業部会を設置するという件につき、何かご質問なりご意見ございますでしょうか。

(発言する者なし)

高階部会長 特にご意見ございませんようでしたら、ただいまご説明の案のとおり部会の決定として、作業部会を設置したいと思います。よろしゅうございましょうか。

(「賛成」の声あり)

高階部会長 それでは、ご異議がないようですので、決定とさせていただきます。この文化の多様性に関する作業部会に所属する委員及び臨時委員につきましては、ただいまご決定いただきましたように、委員及び臨時委員は部会長の指名ということになっておりますので、部会長である私が指名させていただきたいと思います。それでは、富澤委員、渡邊委員、根木委員の3名を指名したいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。
 次に、本政策部会における審議事項等について、事務局から説明をお願いいたします。

尾山政策課長 それでは、資料10をごらんいただきたいと思います。「文化政策部会における審議事項等について」というペーパーでございます。
 本年度の審議事項につきましては、先ほど稲葉副大臣、河合長官からお話があったところでございますが、それを簡単に柱立てさせていただいているところでございます。ご審議いただいてはいかがという事項でございますけれども、(1)「地域文化の振興と地域の活性化について」、これは地域文化の振興の意義でございますとか施策の基本的な方向、地域文化振興と地域経済との関係など、地域文化振興に関する基本的な考え方についてご審議いただいてはいかがかということでございます。
 それから(2)「地域文化の振興に関する成功事例の情報収集・分析、提供について」ということでございますが、全国各地で取り組まれております様々な事例を収集・分析いたしまして、文化による地域振興について成功するためのポイントなどを整理していただき、地方公共団体に対して国としてわかりやすい情報を提供していくということは大変意義があるのではないかと考えているところでございまして、そうした分析等についてご検討いただければと考えております。
 それから「文化庁による地域文化発信事業などの今後の展開」でございますけれども、いろいろと各地域の事例などをご検討いただく中で、文化庁における施策として欠けているもの、あるいは改善を図るべき事項等についても明らかになってくると思われますので、そのような点も整理し、ご提言をいただければと考えております。
 スケジュール案でございますが、今日が第2期の第1回ということでございますけれども、今後8月を除いて月1回くらいのぺースでご検討いただき、本部会の委員の任期が来年の2月4日まででございますので、それまでに提言をおまとめいただければ大変ありがたいと考えておるところでございます。
 以上でございます。

高階部会長 ありがとうございました。それでは以上のご説明に基づいて審議に入りたいと思いますが、審議に先立ちまして検討の対象となります地域文化の振興に関して、現在の文化庁の施策等につきまして、事務局からご説明をいただきたいと思います。

尾山政策課長 それでは、資料11から14に基づきまして一括して私の方からご説明をさせていただきます。
 まず、資料11「データから見る地域文化の振興について」ということでございます。まず、1ページの一番下の方をごらんいただきますと、文化会館、博物館、それから美術館の数の推移を記してございます。昭和62年度以降3年毎の数字をまとめてございますけれども、文化会館につきましては3年間で概ね250から300という規模で増えてきておるところでございますが、平成11年度から平成14年度にかけてはその増え方は若干ゆるやかな形になっているところでございまして、文化会館自体は平成14年度の数字で1,832館ということでございます。
 博物館につきましては、3年毎に大体600館から800館ぐらいの館が増えてきておるところでございます。これもやはり平成11年度から平成14年度にかけては設置の数がゆるやかになっておるところでございまして、平成14年度は5,363館でございます。この博物館の中には美術館も含まれているところでございますけれども、美術館を取り出した数字が一番右側にございまして、平成14年度は1,034館という形になってございます。
 その上をごらんいただきますと、文化施設建設費、文化施設経費、文化芸術事業費についてそれぞれの地方公共団体、都道府県と市町村のを合わせたものでございますけれども、予算がどのように推移しているかということを整理したものでございます。文化施設建設費につきましては、平成5年度がピークでございまして、5,879億円ということでございますが、それ以降減ってきております。ただ最近では、平成11年度の1,888億円を下限として、平成12年、平成13年につきましては若干増える傾向にあるということでございます。
 それから文化施設経費につきましても、文化施設建設費の増加に伴いまして平成7年、8年、9年あたりは少し増加した形になっておりますけれども、10年以降は若干減少傾向に転じておるところでございまして、文化施設の数は増えてきてはおりますけれども、施設費の方はむしろ減る傾向にあるといったような状況でございます。それから芸術文化事業費につきましては、やはり5年、6年、7年、8年、9年あたりは増えておったわけでございますけれども、10年以降は減っておりまして、10年以降はほぼ横ばいといったような状況といえるかと思います。全体の予算に占める芸術文化事業費につきましては、平成13年の数字でいえば11%ということでございます。この数字を図表にしたのが一番上にあるものでございます。
 それから2ページをごらんいただきますと、昨年の11月に内閣府が行った文化に関する世論調査からいくつか抜粋したものがございます。まず、「地域の文化活動の振興に関する要望」ということで、大きいものから順番にいきますと「文化施設の整備・充実」、「文化に関する情報の提供」、それから「国や地方公共団体による主催公演・展覧会などの事業の実施」、「文化芸術団体・サークルの育成や援助」、「指導者の養成・派遣」となっておるところでございます。ただ、文化施設につきましては、やはり平成8年の数字などと比べますと、要望としてはかなり減ってきておるという状況にございます。
 それからどういう文化施設を整備してほしいかということにつきましては、やはり文化会館の整備が一番多いわけでございますけれども、割合は大きく減少しております。特に増えてきておりますのは映画館でございまして、昭和62年が3%でしたが、今回の調査では9%ほどになってございます。
 3ページ、「文化が息づくまちづくりのための要望」でございまして、これも多い順で申し上げますと、「地域の芸術文化団体・サークルの育成・援助」、「歴史的な建物や遺跡などを活かしたまちづくり」、「文化フェスティバルなどの開催」、「まちのデザインや公共施設の整備に芸術的な感性を取り入れる」といったようなことなどが上位にあがっているところでございます。
 4ページでございますけれども、国民の方々がどのようなジャンルの文化芸術を鑑賞したいと考えておられるかということでございますけれども、一番多いのが映画、そして音楽、演劇・演芸、美術という順序になっております。また、伝統芸能につきましては、演芸、歌舞伎、民族芸能という順序になっておるところでございます。
 5ページをごらんいただきますと、公立文化会館でどのような自主公演事業等が行われているかということでございます。まず買取型の事業が多いのでございますが、制作型が徐々に増加している傾向がございます。買取型公演につきましては音楽が41%、演劇が16%、映画が21%でございます。制作型につきましては、音楽が32%、演劇が10%、映画が6%でございまして、映画の上映場所として適当かどうかということはあるかもしれませんが、住民の方々の映画に対する要望に対し、文化会館で行われる事業としては映画が少ないという傾向があろうかと思います。
 それから6ページでございますけれども、「鑑賞から参加へ」というタイトルをつけさせていただいておりますけれども、平成12年の、文化庁の国民の文化に関する意識調査からの抜粋でございます。「文化を核にした地域づくりに必要なもの」を多い順に申しますと、「住民の自発的参加や協力」、これが62%ということで圧倒的に多ございます。あと、「文化施設の活動の充実」、「国からの財政的支援」、「地方公共団体による事業やイベント」、「各種文化団体、活動の活性化」、「文化団体間の交流活動や協力」、「地方公共団体間の交流活動や協力」、このようなものが20%を超えておるところでございます。
 それから「増加するアートNPO」ということで、これは吉本先生の資料から使わせていただいておるものでございますけれども、NPO自体もふえておりますが、芸術関係のNPOにつきましても、一次関数のような形でふえてきておりまして、平成15年12月31日現在4,485法人ということでございます。
 それから7ページ以降は「文化ボランティア」に関する資料でございまして、これもほぼ内閣府の世論調査から取っておりますけれども、文化ボランティアの経験をされた方が約10%ということで、ほとんどの方は行われておりません。8ページにその行わなかった理由が掲げられておりますが、一番多いのが「忙しくて時間がとれないから」、次が「支援を行う施設や場所、団体等の内容がわかる情報が少ないから」、「同好の仲間がいないから」などとなっております。
 ただ、9ページをごらんいただきますと、今後文化ボランティアを「是非行ってみたい」、「多少は行ってみたい」という方が合わせて44.7%いらっしゃるということで、潜在的なものはあるのではないかと考えておるところでございます。
 10ページですが、これは文化庁のアンケート調査からの抜粋でございますけれども、文化ボランティアの活動分野といたしましては、音楽、演劇・演芸、美術といったところが圧倒的に多ございますけれども、遺跡、文化財、地域の風土、歴史、それから伝統芸能といったようなことについても15%ほどの方々が活動をされておるところでございます。それから文化ボランティアの活動場所といたしまして文化会館や文化ホールでの活動が圧倒的に多いわけでございます。あと、美術館、歴史系博物館、地域の公民館、コミュニティ施設等となっております。
 11ページ、「文化ボランティアの活動内容」といたしましては、「切符もぎり、客席案内などの会場整理・誘導補助」、それから「ガイドボランティア」、「受付やチケット販売などの窓口業務の補助」というものが多ございますけれども、「照明、音響操作などの舞台設営・運営補助」、それから「公演展示、イベントなどの企画・立案」などにつきましても、10%ほどの方々が関わっておられるということでございます。
 次に資料12でございますけれども、「地域における文化芸術活動に対する支援事業」ということで、文化庁が行っております地域文化振興にかかわる施策を整理したものでございます。ざっとご紹介させていただきたいと思いますが、「ふるさと文化再興事業」につきましては、これは伝統文化保存団体が実施いたします伝承者の養成、用具等の整備、映像記録等の作成を支援するものでございまして、地域において守り伝えられた伝統文化の継承・発展を図るということを目的に実施しておるものでございます。それから「芸術拠点形成事業」でございますけれども、地域の文化会館、劇場などの行う優れた自主企画・制作の公演等を支援しようというものでございまして、3ページにございますのが舞台芸術の公演の支援。それから4ページにございますのが美術館、博物館で行う展覧会事業等への支援という2つに分けて実施しておるところでございます。
 5ページは「本物の舞台芸術体験事業」ということで、子どもたちが優れた舞台芸術を鑑賞し、芸術文化団体等による実演指導、ワークショップやこれらの団体等との共演に参加することにより、本物の舞台芸術に身近にふれる機会を提供しようというものでございます。
 6ページでございますけれども、「伝統文化こども教室事業」、これは土曜日、日曜日などにおきまして学校で子どもたち対して、茶道、華道、日本舞踊、伝統音楽、郷土芸能などの活動を継続的に修得できる機会を提供しようということで実施しておるものでございます。
 7ページは「学校の文化活動の推進」ということで、優れた活動を行っておられる芸術家の方々、伝統芸能の保持者の方々などに出身地域の学校などに行っていただき、講話や実技披露などを行っていただく事業でございます。児童生徒や教員、保護者に対して公演や実技をしていただくというもののほかに、8ページでございますけれども部活動を指導される教員の方々を対象として、技術指導を行うということも行っております。
 9ページでございますけれども、「文化体験プログラム支援事業」ということで、対象事業のところにございますAからDのようなそれぞれの分野についてプログラムを組みまして、文化会館などでの施設でそれぞれ1日から2日間ほどずつ実施するということで、年間を通じて様々な文化にふれ、体験できる機会を提供しようということでございます。
 次の10ページでございますけれども、「文化芸術による創造のまち」支援事業ということで、対象事業にございますように、地域リーダー(指導者)の育成、地域の文化芸術団体の育成、シンポジウムなどによる発信・交流等、市町村が行う事業を支援するというものでございます。
 11ページ「文化ボランティア推進モデル事業」ということで、文化ボランティアに関するモデル事業でございますが、活動の場、機会の提供、研修事業、情報提供事業、普及啓発活動に対する支援を行うものでございます。
 12ページ「国民文化祭」、これは国民が一般に行われている各種の文化活動を全国的な規模で一堂に集めて相互に共演、交流、発表するということで、昭和61年から実施しているものでございます。本年度は第19回ということで福岡県で実施する予定です。
 13ページ「全国高等学校総合文化祭」、これは高校生の文化活動の全国的な発表の場ということで、昭和52年から実施しておるものでございまして、本年度は徳島で実施する予定にいたしております。
 14ページ「芸術情報プラザ」、公立文化会館の企画を支援しようということで芸術文化に関する情報提供や活動に対する指導助言などを行っているものでございます。
 15ページ、「芸術文化振興基金による支援」ということで、特徴的なのは対象事業の2と3にございますように、地域の文化の振興を目的として行う活動、アマチュア等の文化団体が行う公演、展示その他の活動及び文化財である工芸技術または文化財の保存技術の復元、伝承その他文化財を保存する活動等に対してこの基金から支援が行われているところでございます。
 16ページ、「映画製作への支援」ということで、地域において企画された映画、地域を題材に制作された映画等についても支援を行っているところでございます。
 資料13でございますが、「関西元気文化圏の取り組み」を1年間経ちましたので新聞記事等も含めて整理したものでございます。資料14でございますが、「丸の内元気文化プロジェクト」というものをこの5月から始めることにいたしました。この1月に文部科学省が丸の内地区に移転してきたわけでございますけれども、従来から大手町・丸の内・有楽町地区再開発計画推進協議会がございまして、その協議会と文部科学省が協力してこの「丸の内元気文化プロジェクト」を実施するということでございます。ねらいは二段目のパラグラフに書いてございますように、この地域で働く方々の芸術文化にふれる機会をふやすことなどによりまして、地域の文化力を高め、文化力で社会を元気にしていくことを目指すということでございます。
 私からの説明は以上でございます。

高階部会長 ありがとうございました。それでは、ただいまの事務局からのご説明への質問なども含めまして、資料10で先ほどご説明ありました検討事項に沿って早速、委員の皆さまに意見交換をお願いしたいと思います。本日は初めての会合でもございますので、皆さま方それぞれからお一人ずつご意見あるいはご質問、何でも結構でございますのでうかがいたいと思います。地域文化の振興に関する日ごろのお考えあるいはご注文等をお願いしたいと思います。
 それでは、お一人まず3分程度で順次ご発言をお願いします。席の順序で津田委員からお願いいたします。

津田委員 地域おこし、地域文化の育成について現にうまくやっているところは全国たくさんあると思います。例えば金比羅では、昔の劇場を復活して、それをもとに地元の人が手伝って歌舞伎をやる。あるいは愛媛県の内子のまちおこしとか徳島の阿波浄瑠璃を農村の人が皆演じている。ひところ平松知事が一村一品運動というのをやられましたが、一地域一文化育成活動というのを全国的にやっていけば非常におもしろい。
 特に先ほども話に出ていましたけれども、子どもの参加というのが地域文化の育成には欠かせないと思います。最近の子どもの行状を見ていると、本当にできるのかなという心配もするのですが、国立劇場の歌舞伎鑑賞会に高校生、中学生が毎日観光バスでやって来ます。バスを降りたときのありさまを見ると、とても歌舞伎をじっと座って見ているような雰囲気ではないのですが、この間2時間余り付き合ってみると本当によく見ていました。やはり本物を見せれば子どもはついてくるのかなという自信を持ちました。そのようなことから各地域での文化おこしに高校生以下の子どもの参加を入れてやっていけば必ず一地域一文化活動という花が咲くのではないかと思います。
 以上です。

高階部会長 ありがとうございました。重要なご提言でした。
 では、富澤委員お願いします。

富澤委員 今年度文化政策部会が地域における文化芸術活動ということを取り上げていただいて、大変うれしく思います。私はこの文化審議会でいつも一極集中が一番悪いということを何度も繰り返し言ってきたものですから、そのような意味で今回の審議事項を大変高く評価しています。
 地域文化の振興という場合、一番大事なのは個人の参加意識、特にその地域の人たちが参加する意識をいかに起していくかということが一番大事だと思っています。そういう意味で最近の日本の経済を眺めると、金利も低く株価もそこそこの状況ですが、それでも個人のタンス預金が消費に向かっていない。これは将来に対する不安があるということもありますが、もっと大きいのは物が有り余っているからだと思います。もう買うものがないということだと思います。そういう状況の中で反面、ちょっとなら文化にお金を使ってみたいと思っている人たちがたくさんいるのではないかと思います。
 そういう個人の善意をうまく文化に向けるシステムというようなものをつくることができないかというようなことを考えております。例えばインセンティブになるのは税金の控除とかいろいろあるでしょうが、最近大学への寄付なども柔軟になってきていますし、個人のスモールマネーを束ねて、文化に向けていく制度をつくるということも考えられます。個人のスモールマネーを束ねて文化を支援していくことができれば、国が予算を文化に注ぎ込むよりも、より有効的ではないかと思います。つまり、個人の参加意識を高めることが一番効果的であると思います。そういう観点から議論ができればいいと思っております。
 以上です。

高階部会長 ありがとうございました。それでは川本委員どうぞ。

川本委員 どうもまだ考えがよくまとまっておりませんで、一つ逆にご質問したいのは、この2月でしたか提言をしましたね。

高階部会長 はい、今後の舞台芸術創造活動の支援方策についてです。

川本委員 それについて、昨年の会議でも、かなり具体的な提案もいくつか申し上げましたけれども、それはどのように実現されるのかという、質問がございます。
 今期の審議事項についてですが、裾野の広げ方、これは十分検討する必要があるだろうと思います。俗に言われるばらまき的な支援ではやはり困るんじゃないかと。そのために、芸術団体等に支援をするよりも、人材育成のような、芸術文化に携わる人たちのレベルを上げるための支援をすることが大変大事になってくるのではないかと思っております。
 それから鑑賞型の事業に関しましては、例えば歌舞伎は全国をいろいろな形で巡回しておりますが、それ以外のいろいろな文化芸術の優れたものを多重多層な地域のネットワークで巡回させて鑑賞してもらうやり方もあるのではないかと思っております。そうしたことは検討に値するのではないかと思っております。
 それから人材養成についてですが、私のところでも何回か事業として実施しましたが、参加できる人数は限られております。一度に何十人しか参加できませんので、コンサートを聴くよりも人数としては大変限られてしまいます。しかし、そこでアートマネージメントの訓練を受けた人たち等が、非常に自発的に文化芸術を創造する活動に参加していくことになります。私のところでは芸術サポートセンターなどが受講者の間からできまして、自主事業をやるときには非常に積極的に参加してくれています。そういうことも大事なのではないかと思います。

高階部会長 熊本県立劇場館長として、実際に地域文化振興のために活動しておられる川本委員のお話でした。ありがとうございました。
 ただいまご質問にありました2月の「今後の舞台芸術創造活動の支援方策について」、今後の取り組みなども含めて今後の予定を文化庁からご説明いただけますでしょうか。では、文化部長。

寺脇文化部長 一般的に審議会の答申文というのは一般の方には読みにくうございますので、その眼目はどういうことなのかということをきちんと伝えていくということ、これは私どもの方でまた整理をさせていただきたいと思います。また、ご答申いただいた事項と、答申の文書の中には出てまいりませんが、会議でご指摘をいただいた事項がございます。それらにつきましては、私どもの方で今具体的にどのように取り組むのかということで、来年度の予算編成に向けて支援のあり方というものを、舞台芸術を中心に検討させていただいております。検討結果につきましては、またご報告をさせていただきたいと思います。
 先のご提言の内容は、いろいろございました。例えば地方で活動している方に目を向けるような予算の使い方はできないのかというようなことや、いわゆる単純なばらまきという批判を受けないような支援のあり方を考えること、作り手、演じ手への支援と同時に、観客や、さらに今後育っていく若い世代に対する、広い意味での教育というようなものにどのような支援をしていくのかということ。2月にご答申いただいたこと、あるいはそれまでにご議論いただいたことを踏まえて、8月の概算要求に向けて最終的な検討を行っております。概算要求の形につきましては、またご報告をさせていただけると存じます。

川本委員 確かに提言の行間にいろいろ各委員の方々が具体的に提案をされたことがたくさんあったと思いますので、それを記録として残して、今後の参考資料として、ぜひ活用していただきたいと思ったので申し上げました。

寺脇文化部長 もちろん記録として留めますと同時に、それを具体化できるものについてはできるだけ早く具体化できますように、今検討しております。

高階部会長 よろしくお願いいたします。それでは、木村委員お願いいたします。

木村委員 私も質問なんですが、資料12の9番、10番の国民文化祭と全国高等学校総合文化祭について、両方とも共催だから予算的な支援はしていないのでしょうか。あるいは地域差があるからここに予算額が記載されていないのでしょうか。もし、おわかりになったら、まず予算額を教えていただきたいと思います。

高階部会長 それはわかりますでしょうか。

有松室長 国民文化祭でございますけれども、国の予算額は1億8,000万円でございます。ただ、これだけで国民文化祭が賄われるわけではなく、実際にかかっている経費はそれぞれの大会、各県で違いはありますけれども、15億円前後位でございます。国の負担でない部分は関係都道府県、市町村が負担しているというのが現状でございます。
 それから高総文祭でございますが、一応国の直接の負担額としては2,600万円でございます。このほかに企業からの協賛金ですとか、団体の負担金等々で全体で4,000万円位で実施しております。

木村委員 一例として富山の国民文化祭のことを少し知っているのですが、確かに国民文化祭に向けてハードの建設、施設の拡充が行われたのはよくわかっております。国民文化祭が行われたあと、果たしてどの程度ソフト的に取組の効果が残っていっているのかというのは甚だ疑問に思っているものですから、予算的なことからうかがってみました。
 国の予算は1.8億円、全体で15億円ですか、これはやっぱり場所によって相当、額は違うのでしょうね。

有松室長 当然地域によってかなり違っておりまして、下は10億円位から上は20億円近くでございます。今年の福岡大会はかなり規模が大きくなるのだろうと思います。それは県の規模によっても違いますし、それぞれの財政力によっても違うということだと思います。

高階部会長 はい、わかりました。

寺脇文化部長 先生のご指摘は要するに予算の額もさることながら、その以後の効果というところにあると思います。国民文化祭というのはご案内のように18回実施しております。初期のころは、やはり全体にハードが重んじられた時代でございますので、これを機会にハードの建設をというようなことが中心になっていました。その意味でご指摘がございましたようにソフトがどのように残っていくのかということについての問題が無きにしもあらずだったと思っております。
 ただ、最近は自治体でも、ハードは整備され尽くしている面もございましょうし、ハードを整備するだけの財源が乏しい面もございましょうが、それよりもソフトの方が重視されてきたというふうに考えるべきではないかと思います。例えば昨年の鳥取の大会は、短期間のお祭りにせずに1カ月ぐらいゆっくりやって、一過性の台風がすぐに過ぎていったというようなことのないように実施しました。そして、既に今年、昨年の国民文化祭を踏まえたその次の開催の検討へ進んでおりますので、確かに初期のころにつきましてはご指摘のような問題もあったと、私どもも認識をいたしておりますけれども、これからはそういうことではなく実施していけますように、開催都道府県とも十分話し合いもさせていただきたいと思っております。

高階部会長 ありがとうございました。それでは、佐藤委員お願いいたします。

佐藤委員 今日は最初ということで多少概念的になってしまうかもしれませんが、私が地域文化というものを考えるときの留意点を3つほど挙げさせていただきたいと思います。
 1つは、地域文化と呼ばれているものの内容について、もう一度再検討してみたいという点です。従来、地域文化というと伝統的なもの、つまり文化を継承する活動、それからアマチュアの活動というものを中心に考えられてきましたが、これから地域文化を考えていくときには、各地にこれから新しく創造していく活動、それから地域におけるプロフェッショナルな活動というものについて、もう少し認識を深めていく必要があるのではないかと思っております。
 2点目は、津田委員もご指摘になっていましたけれども、やはり子どもとの関連というのは非常に重要なことだと思います。私も世田谷区で劇場の仕事に若干関わっておりまして実感しているのですけれども、小学校ぐらいまでの子どもたちにとっては、地域というのは本当に世界のすべてなわけです。インターネットやテレビ等を通じてバーチャルな概念は入ってくるのですけれども、実際に体を動かして行動できる範囲というのは、やっぱりその地域なんです。そこの地域にどういう文化的なインフラがあるかということは、子どもにとって重要な意味を持っていると思うので、子どもとの関わりということを考えていきたいと思っております。
 それから3点目は、地域の問題を考えていくときに、地域の規模をもう少し広くとらえる必要があります。例えば、関西文化圏では関西というような少し広い地域を一つの地域として考えているわけです。それから、小さい自治体を結ぶネットワークを一つの地域と考えることもできます。例えば先ほどもご指摘があったような各地域にある非常に古い劇場の活動が活発になっていますけれども、それよりもう少し小さい規模、例えば農村舞台のような施設がまだまだかろうじて残っているわけです。そういうものの保護あるいは事業というのは、小さな行政単位ではできない。それを結んでいくような一つの中間的なネットワークの構想のようなものというのは、おそらくこれから地域を考えるときに必要なのではないかと思います。その3点を今後の留意点として挙げさせていただきます。

高階部会長 ありがとうございました。それでは都築委員いかがでございましょうか。

都築委員 徳島の浄瑠璃ですとか各地方に全国へ発信していけるものがあればいいのですが、何もないところだってあるわけで、そこに文化会館をつくってもいったい何ができるのか疑問です。また、私は、大阪の出身ですが、大阪の人間ってなかなか集まってこないのです。興味を持つものが、多種多様という傾向がありますので。
 大阪芸術文化祭とか浪速芸術祭とかございますが、賑わいはそれほどではありません。かと思うと、彦八祭のような催しにたくさん人が来たり、その辺大阪はとてもむずかしい場所です。私は地方のことをあまり知りませんので、地方の文化会館がいったいどういう具体的な作業でもって、子どもたちへ裾野を広げるという努力をしておられるのか、その辺のところをこの機会にぜひ、学んでいきたいと思っております。

高階部会長 ありがとうございました。それでは、根木委員お願いいたします。

根木委員 総論的なことを申し上げますが、私は地域文化の振興ということに関しては、地域住民のための文化的な環境をつくるということに集約されるのではなかろうかと思います。その際に2つの側面があると思います。
 1つは、平均的な水準の文化を全国津々浦々にまで及ぼすという、言うなれば文化格差の是正という側面です。もう1つがそれを踏まえた上で地域が独自に固有性を発揮し、地域文化の自立性を確保していくという側面です。この2つが大きな柱ではなかろうかと考えております。後者に関しましても、いくつか小柱が立つわけですけれども、一番重要なのは、やはり地域における住民を主体とした創造活動の展開についての支援です。また、そういった場を確保するということもあります。
 それから先ほど来、お話が出ておりましたけれども人材育成を図るということも重要です。さらに国際交流ということも、これから地域にとっては非常に重要なことであろうと思います。また、基盤整備も重要です。この中にはハードの整備がありますが、むしろこれからは組織の形成、情報システムの構築などが重要になってくるのではなかろうかと思います。そういった大枠を整理した上で先ほど佐藤委員がおっしゃったような事柄が、個別具体的にメリハリを効かして今後推進をされていくべきではなかろうかと考えられます。

高階部会長 ありがとうございました。それでは惠委員どうぞ。

惠委員 私は環境の面で上流から海までいろんな人、物、金が行き来する流域のネットワークに今取り組んでいまして、その中で財政的な面で行政やボランタリーな活動だけではどうしても経済が上流まで行き渡らないという観点から、経済的にみんなが支え合うというエコロジカルにもエコノミカルにもプライドを持った、エコプライドの醸成というのが必要だという運動を日常的にやっています。
 その中で、かつてかかわったナショナルトラスト運動に民家の保存があります。かつて恵那谷で活動していた人形浄瑠璃の保存会の方たちが、民家で発表を行ってくださったことがあります。伝統的なものを守る機会として単発でやっていたのですが、それを少しずつ地域の子どもたちが自分もやってみたい、あるいは今回やった舞台のかなづちで台を作る作業をやってみたいという動きにつながりました。このように参加を促したり、あるいは興味を持つ人を喚起できないかということがあります。
 流域という形でものを考えていると、例えば映画などにしてみても白神山などの流域をテーマにして、そういうことを私たちは環境保全の側から応援しようという発想になってきます。相手にどういう芸術的な、文化的なことを届けたいかということがわかってくると、お金を出す人も出てくるかもしれません。そういうことを知った上で、裾野を広げるときにはどのようなサービスを提供するか、政策的なことやイントロダクションとして必要な情報提供を国でもいろいろできると思います。それを地域がどう受けとめるかということが2番目に大事だと思います。
 例えば私は埼玉県の入間市というところに住んでいて、そこはかつて繊維試験場であったところで、井戸も湧いていたところなのですが、そこにアミーゴという名前の文化創造アトリエがあります。それは建物も地元の建築家が地元の木材を使って建て替えているんですが、芝居の練習や演奏の練習などで道具やしつらえも全部そのまま置いたまま1週間とか2週間とか借りられるのです。一方、そこを利用している人たちからは宿泊施設も設置してほしいという要望もありますが、宿泊施設は別なので、稽古を続けるときには別なところに泊まることになります。そういうほかの施設との連携によって芸術活動をする人の支えになるような仕組みが地域で工夫できないかということを、今考えています。
 最後に担い手として地域で文化芸術活動をする人たちは、普段は他の仕事をしている方も多いので、いわば片手間でやらなくてはいけない。先ほどアン・プロフェッショナルなというご指摘もありましたが、そういう人たちが生活していけるにはどうしたらよいのかという、経済的に成立できる条件というのを常に考えています。そういう人たちを支えるように薄く広く多くの人々を支援するというやり方がよいのか、集中的に予算をつけていくのがよいのか、このあたりは悩んでいる最中です。

高階部会長 ありがとうございました、貴重な問題提起でした。それでは、山野委員どうぞ。

山野委員 私は舞踊関係が専門ですから、舞踊に引きつけて考えざるを得ません。日本の舞踊は伝統芸能からいろいろなものがありますが、いわゆる外国から入ってきた洋舞という分野についてはバレエをはじめ現代舞踊等がいろいろあって、100年ぐらいの歴史を持っているわけです。日本で伝統芸能以外の舞踊というのがかなり一般化してきています。日本的な発展をしてきたそういう舞踊文化と、外国でもともとあるものとの違いがすごくあります。
 その一番大きなところは、海外では劇場にダンサーが住み着いて舞踊をつくっているような状況に対して、日本の場合には劇場が全部貸し劇場で、そこへ舞踊団はスタッフから何から全部引き連れて行って公演をやらなければいけません。そうしますと、舞踊の最高のものはやはりなかなか見せにくいのではないかと思います。日本で劇場を持っている舞踊団というのは新国立劇場バレエ団だけでして、ここの創立は1997年なんですけれども、さほど歴史はないけれども、もうかなりコール・ド・バレエが上手になってきています。毎日毎日同じところで練習しているということがいかに大事かということの証拠ではないかと思います。
 地域文化ということを議論いたしますときに、地域にそれぞれバレエ団がたくさんあるわけですが、そのバレエ団にその地域の劇場を与えてやりたいというのが、私の切なる願いです。つまり、同じ劇場の中で毎日練習しないと素晴らしい舞踊は創れないと思います。

高階部会長 ありがとうございました。吉本委員いかがでございましょう。

吉本委員 私は事例を2つほどご紹介したいと思います。先日、北海道の朝日町というところを訪問する機会があったのですけれども、そこは人口はわずか1,980人、高齢化率が50%というようなところでございます。そこにはサンライズホールという規模は大変小さいのですが、活発な事業をしているホールがございまして、そこが10年ぐらい活動をしてきた中で、今年から学校に演劇の専門家を招いて子どもたちと芝居をつくるなどの事業を始めています。
 そういう小さな町に行くと、今一番の関心事は合併問題なんです。それでその朝日町のケースでは確か隣が士別市といったかと思いますが、今の予定のまま合併が行われると1市で香川県よりも広い人口が10万人前後の市になってしまうようです。朝日町というところは財政の状況が非常によくて、小さな町にもかかわらず文化ホールの予算は3,000万ぐらいつけて運営しています。ところが、合併されると相手方の大きな市は非常に財政状況が悪くて、当然文化会館のようなものが統合され、そのホールには予算があまりつかなくなるのではないかという状況なのです。
 合併をされるということは、ある意味で地域固有の文化が失われるようなことにつながりますので、何とか文化ホールを核にして地域の独自性を維持することができないだろうかということで、その担当の方は非常に今懸命になっていろんなことをやっていらっしゃいます。ところが、合併というものは否応なしにきますから、できれば文化庁のこういう審議会から、地域で頑張っている非常に規模の小さな、ホールを合併でマイナスにならないように特別な支援ができるような制度などを提案できないかと思っています。
 もう1つの事例もこれも北海道の例で、大変おもしろいので僕はいつもご紹介するのですが、新冠町という町が十勝の方にありまして、そこは人口が五、六千人だと思うのですが、その新冠町にレ・コード館というホールがありまして、そこも高齢者が非常に多いものですから、ホールの担当の方が高齢者を元気にするプログラムというのを徹底的に考えて、カラオケ大会のようなことを始めたそうなのです。従来、文化ホールでカラオケというと、むしろネガティブにとられがちだったのですが、ツツミさんという方が、同じカラオケをやるにしても発声のプロ、メイクのプロを呼んで来て、徹底的にトレーニングをするというプログラムを考えました。それで本番はスター誕生という名前にして発表会をしました。
 彼のねらいはそのことによって参加するお年寄りが元気になるということにあるのです。派生的な効果としてお化粧をしなければいけないので元気になる。それから本番に出るとなると花束が届く。それからそれを写真に撮ろうということで地域のお年寄りがデジタルカメラに挑戦するということで、その地域の消費も活発になり、元気になる。そのあと彼が考え出したのはゴスペルのプログラムで、カラオケは一人で歌うので一人だけ出てくるのですけれども、ゴスペルはハーモニーなので、ひきこもり老人をそれで引き出そうということを考えたのです。
 それで昨年度もいろんなことをやって、かなりそれも成功したのですが、あるとき常連のお年寄り二人が稽古に来なかったので、どうしたのだろうとみんなで言っていたら、二人は新婚旅行でハワイに行っていたそうなのです。つまり、文化というものを核にして、そこに生きる人が非常に元気になっていくという例が、そういう小さな町でいろんな形で起こっています。何とかこういう審議会でそういう動きをすくい上げて、活動が維持できるようなことが検討できないかなと思っています。

高階部会長 ありがとうございました。では、米屋委員お願いします。

米屋委員 私は日本芸能実演家団体協議会という舞台、芸能の関係団体が集まっているところに勤めておりますので、多くの実演家の方、それから最近は舞台技術スタッフの方々ともお話する機会があります。そういう方々の中で学校や地域で、何か貢献していかなければいけないという意識がここ数年とても高まり、顕在化してきていることを感じております。
 その一方で地域の問題というのは、行ってみていろいろなお話を聞くと、歴史とかその地域の人口構成とか、どんな産業があるのかといったことによってまったく違いますので、地域とのかかわりというのは本当にこれが唯一正しいというのはないと思っています。地域文化の振興ということに、模範回答というのはあり得ないなというふうに感じております。その点でこのテーマは大変な問題であって、やや途方にくれているところもあります。
 あとはもう1つ、私事になりますが、私も家に帰りますと小学生の母親でして、学校の校外のいろんな地域の活動、学童クラブ等の活動に参加しています。ボランティアで活動していることについては、それぞれ温度差がありますので、参加者全員気持ちを一つにするのはむずかしいなというところで悩むこともたくさんございます。
 そうすると、やはりコーディネーターというものの専門性というのがもっとクローズアップされなければいけないと思います。地域の特性によっていろいろ違うということを考えますと、きめ細やかな配慮ができるコーディネーターあるいはその政策を提案するような人たちが、これから必要になると思います。その意味で人材養成という点で何人かの委員の方々が既に言及されていますけれども、そこがポイントかと思います。それと舞台芸術に関わっているものの身から言いますと、どうも一般的に舞台芸術というと完成された作品のことだけというふうにとらえられているような気がするのですが、そのプロセスもありますし、それを見たときに共感する関係をいかにつくっていくかも重要であると思います。
 先ほど津田委員が高校生たちのことをおっしゃっていましたけれども、多分、高校生同士の間で何かこう共有するものが、きっとそのとき生まれていたんだと思います。また、私が息子と何か見たあともどんな感想をいうかなとか、どう思ったかなというところを考えますしお互いに何か共感し合える関係というのを大事にしていきたいなと思っていまして、そういった配慮というのが地域文化といったときに、素材が伝統的なものであれ現代的なものであれ、メディア芸術であれ、共感し合える関係を、どういうふうにつくっていくかというところがポイントであろう感じております。これをまた皆さんと議論していきたいと思っております。

河合長官 米屋委員のいわれたことと関係しているのですが、私はコーディネーターというのは、専門家といっていいと思います。今の日本には、それを養成するための学問とか学部とかいうのはあるのでしょうか。私はそういうのが必要だと思っていますががどうですか。

寺脇文化部長 おっしゃるとおり文化についてのコーディネーターに限ると、それはまだないと思います。アートマネージメントのような形ではあるのですけれども。ただ、従来から社会教育とか生涯学習ということについては、非常に長い伝統がありまして、社会教育主事という制度がございます。しかしながら、社会教育主事本人もまたその周りの人たちも、この人たちは社会教育をやる人たちだということで、まちのコーディネーターとしての役割という側面に気づいていないと思います。
 ですから、コーディネーターが必要だから新しく養成をしようというよりは、今いらっしゃる人材を活用することが必要だと思います。やはり文化というのはまちづくりには欠かせません。社会教育や生涯学習はそういうものまで含めた大きなものであって、まちでリーダーになろうとする人は文化・芸術の素養も必要なんだというように広げていく方向で考えていくことを提言してはどうかと思います。

河合長官 私も京都にいて思ったのですが、行政の方ですごく熱心な方がおられるのですが、しばらくすると異動してしまうのです。文化とはまったく違う分野へ行ってしまうことがよくあります。そうすると、後任の方は熱心でないということがあり得るのです。だからこれを解決する一つの方法として、私は大学ともっと連携すればいいのではないかと思います。そうすると地域には公立大学がありますから、コーディネーターを大学の助教授の方などにお願いするといいと思います。そうすれば、その人は中長期的に携わっていただけるわけです。その地域のことを一生懸命考え続ける人は、必ず必要なのです。だから公立大学ともっと提携して、地域文化を振興する本当の意味のコーディネーターを実際にやってもらうという仕組みを考えてほしいと思っています。

高階部会長 それは何かの形で提言したいと思います。実際にそれぞれの地方文化会館あるいは公立の美術館などに勤務される県や市の職員の方は、人によって非常に優れた方がいます。しかし本当にすぐに異動で変わってしまうのです。2年か3年で変わってしまう。それは大変大きな問題で、同じ人がある程度の期間腰を落ち着けて仕事ができるようなシステムを考えるということが大事だと思います。
 現在、私も倉敷で大原美術館の館長をしています。地域には美術館だけではなく、いろいろと祭とかバレエとか舞台があります。そこに先ほど津田委員や佐藤委員、そのほかの方から御発言のあった子どもたちを参加させるというのは大変大事だと思います。
 今、大原美術館では幼稚園児、小学生の入場について無料の日を設けて、ほかのお客さんがいないときに子どもたちを案内し、説明するというようなことをやっています。そうすると地域の小学生が喜んで来るのですが、少し離れたところの方に案内を送付しても、行きたいけれど、交通費がないという話になります。教育委員会にも情報提供しますが、なかなか広がらない面があります。
 そのときに、例えばコーディネーターのような人がいて、行政のシステムもわかるし、文化の大切さもわかるとよいと思います。その両方がわからないと解決しません。システムは非常にわかっているけれども、文化のことはまったくわからないというのも困ります。そういう人を養成するなり、大学の人にお願いするなりすることが必要だと思います。そういう形を考えるということは重要だと思います。
 あと、もう1つ、私が考えたのは、佐藤委員もおっしゃった地域のネットワークあるいは、地域というのはどの範囲のことなのかという点です。それは数千人の小さい町から県単位いろいろあるのだと思います。私も岡山と香川と瀬戸内海で瀬戸内文化交流というのを去年からやっていますがそのときに県単位だと動きにくいところがありまして、それぞれの関係で今やっているのですが、そのような、ネットワークの形成ということも重要だと思います。

津田委員 文化庁にお願いしておきたいことがあります。文化というのは心の飯であり、文化を粗末にしてはいけないということを、本当に徹底しないと地域に文化が育たないと思います。筑波の独立行政法人教員研修センターというのがありますが、全国、沖縄から北海道まで校長、教頭が四、五百人で30日間合宿して研修を実施していらっしゃいます。20年間ずっと東京の国立劇場へ歌舞伎を観に来ていたのですが、中止になったと伺いました。
 沖縄や北海道から来て、歌舞伎を観に来ることの意義は非常に大きいと思います。別に歌舞伎には限りませんが、東京へ来て歌舞伎を観るということが無駄なことであるという意識がまだ一部にあります。そういう意識があると地方で特に校長や教頭が文化振興について、いわばオピニオンリーダーとして支援してくれといったって育たないと思います。
 まだまだ文化というのは無駄な、いわば余分なことをしているという考え方が地方にはあります。予算が苦しくなると文化経費を切り捨てています。文化庁として、「文化というのは要するに心の飯だ。たとえ地方でも文化というものを無視する者は、もう今の日本では生きていけないんだ。」と強く主張しないと、これは本当に育たないと思います。現実にはそのような問題が起こっているということです。

寺脇文化部長 ぜひご議論いただきたい大事な問題でございます。今までは国立劇場も文部科学省と、つまり国立劇場側も独立行政法人ではありませんし、国立教育会館側も独立行政法人ではないですから、同じ文部科学省という枠組みの中に事業を位置づけて実施してきました。私も長年現場の教員とおつき合いがございますから、歌舞伎に触れるという経験が非常に素晴らしいというのはよくわかっています。ただ、ここでご議論いただかなければいけないのは、だから元に戻すというようなそう簡単な問題ではないと思います。
 それは、先ほど高階先生もおっしゃいましたバス代はどうするかという問題と関係すると思います。つまり、全国の校長や教頭にバス代を公費負担で歌舞伎を観せるというのを今までやってきたのですけれども、それで本当にいいのかどうかという問題です。校長は自分はバス代を公費で負担してもらって観ているから、じゃあ、今度は大原美術館に子どもが行くというと、それはバス代は支給されるに決まっているだろうと考えてしまいます。筑波の教員研修センターから国立劇場に行くまでは交通費を公費で負担してもらい、観て帰って来て、本人はよかったと思うのですけれども、先ほどお話にも出ていたような文化にお金を使う、つまり文化は御飯だという観点から考えますと、御飯は全部あてがいぶちで無料で食べられるものなのか、全部自費で払うものなのかという、そういう費用負担の問題がどうしても出てくると思います。
 だから今の問題は非常に重要だと思っております。具体的にあの事業をやめたのはよくないというだけではなく、校長や教頭あるいは一般の教員が歌舞伎に限らず文楽でも、あるいはもっと手近なところで映画や美術館でも、どの程度行っているのかということとも関連してきます。それを全部税金で賄うのか、個人負担を求めるのかという問題にも広がってくると思います。
 確かに昔はそのあたりも非常におおらかにやっていた面はあったでしょうが、そういう意味で、津田先生がおっしゃるのは誠に大事なことです。それを実現するために、どのようなものの考え方の変化が必要なのかということをご議論いただく必要がございます。それは先ほどの高階先生のお話にも通じることで、つまり基盤を整備するのは当然国の責任なのですけれども、実際に芸術にふれるときに、自分は何の費用負担もしないでいいのかという問題についても一度議論しておく必要がございます。特に地方でまだそのような考え方が強いところが、地域によってはあると思いますので。私どもも事情は詳細に調べさせていただきます。

高階部会長 文化に対する考え方について、文化を振興させる側と、享受する側の関係をどうすればいいかということですね。それはこれから皆さんのお知恵を拝借したいと思います。そして地方地方でいろいろな問題がございますけれども、しかしいくつかいい事例があると思います。私はいろいろいい知恵が含まれている事例というのは、それをまず広く知らせることは必要だと思います。文化庁でもお調べいただいて、こういう事例がありますということを周知する方策をさらに考えていただくということも重要だろうと思います。地域によってそれぞれの事情が違うだけに、ここではこういう形でうまくいったということはできると思います。それがその他の地域にも元気をつけることにもなりますし、新しい知恵をしぼるきっかけにもなろうかと思います。
 特に地域の文化の振興に関していろいろ本日だけでも問題が出てまいりました。今後ともぜひ活発にご意見、ご提案をいただきたいと思います。時間になりましたので、本日の討議はこれぐらいにしたいと思います。事務局の方から次回の日程等についてご説明ください。

尾山政策課長 次回につきましては7月中・下旬の開催を予定しておりますが、具体的な日時につきましては先生方のご都合をおうかがいし、調整させていただいた上、後日ご連絡をさせていただきたいと思います。

高階部会長 はい、わかりました。それでは、本日はこれにて閉会といたします。どうもありがとうございました。


(文化庁長官官房政策課)

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