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文化審議会

2003年6月13日議事録
国語分科会読書活動等小委員会(第4回)議事要旨


国語分科会読書活動等小委員会(第4回)議事要旨

平成15年   6月13日(金)
10時30分〜12時30分
東条インペリアルパレス   「曙の間」

〔出席者〕
   (委員) 甲斐主査,舘野副主査,阿刀田,臼井,岡部,勝方,齋藤,辺見各委員(計8名)
   (文部科学省・文化庁) 山口国語課長,鈴木国語調査官,中神国語調査官
ほか関係官

〔配布資料〕
   1    第3回議事要旨(案)
   2−1    これまでの意見の整理(骨子例)
2−2    読書活動等小委員会における意見の整理

〔参考資料〕
   1    「学校読書調査」からの抜粋と取組事例の追加
   「平成14年度国語に関する世論調査」の結果からの抜粋
                     −読書にかかわる問い−
   日本人として必要な国語力の目安について
                     −委員アンケート(平成14年7月)の概要−
   国語力に関し何らかの具体的目安を明らかにしている例
   ヒアリング資料 社団法人日本書籍出版協会からの資料
   甲斐主査提供資料    光村図書「中学校国語教育相談室」ナンバー36,37

〔経過概要〕
   1    事務局から,配布資料の確認があった。

   前回の議事要旨について確認した。(担当調査官朗読)

   出版界からの意見開陳と質疑応答があった。

   事務局から資料2−1,2−2,参考資料3,4について説明があり,その後,読書活動を定着・発展させるための取組,目指すべき国語力の目安について協議を行った。

   第5回の小委員会は,6月24日(火)の午後に開催することが確認された。

   協議における主な意見は次のとおり。

   (1)小峰紀雄氏の意見の要旨

          「読書離れ」は,社会環境や生活環境,教育環境,メディア環境などの変化の複合的な要因から生まれたものである。その中でも,テレビ・ビデオ・ゲームなどの電子メディアと言語の関係は看過できない状況になっており,国語力という観点からも調査・研究を深める必要がある。
   読書の問題は教育の問題でもあり,特に教師の役割が重要だ。教師の読書指導の質が問われるべきである。
   出版界は,昭和22年の第1回読書週間以来,読書活動推進に努めてきたが,まだ子供の読書環境には格差があり,「子どもの読書活動の推進に関する法律」の基本理念が実現されることを願っている。
   出版界では,平成12年から0歳児検診時に絵本を手渡す「ブックスタート」運動を始めたが,昨年策定された国の「子どもの読書活動の推進に関する基本的な計画」でも重要な視点とされている。「ブックスタート」が急速に進んでいるのも,その基本計画の指針があるからである。
   今後の読書活動推進のために必要だと思われることは3点ある。まず学校図書館や公共図書館を整備充実させることである。次に,「子どもの読書活動の推進に関する基本的な計画」について,各自治体での実施状況を定期的に調査し公表することである。最後に,読書に関する専門的な研究機関が設立されることである。

   (小峰紀雄氏と委員との意見交換/○は委員,□は意見発表者を示す。)

   ○    国際子ども図書館の構想はどのようなものか。

   国際子ども図書館は平成14年に全面開館しており,アジアに基礎を置いた図書館である。18歳以下を対象としているが,研究所も設置するなど大人向けに研究の場の提供も行っている。

   いろいろな国の本が集まるようだが,絵本なら見ても分かるとはいえ,日本語で書かれていない本はどのような扱いになるのか。

   外国の本の取扱いについては国際子ども図書館の収蔵方針なのでこちらでは分からないが,海外で翻訳された日本の児童書は収蔵されているようである。

   「読書離れ」がまず児童書に現れたとのことだが,なぜ売れなくなったのか。

   まず,本に代表される活字文化の価値が,1980年代以降下がってきたことが挙げられる。また,子供が本を手に取る時間がないことや,子供対象の本が余り出版されていないという原因もある。実際高校生向けには年間150種程度しか出版されていない。さらに,教育面では読書を推進する教師が育っていないし,作家の側から見ても最近は大きく売れる作家が出てきていない。

   出版界から言って小中高それぞれの児童生徒が好んで読む本はどのような本なのか。

   児童書はロングセラーが多く,絵や構成が良ければ売れている。子供の想像力や好奇心に訴えることができる本を作ることが必要である。

   臼杵市でもブックスタートを始めたが,ブックスタートのポイントは何だと考えるか。

   詳しくは資料にあるが,押し付けではない形で進めることが大切である。


   (2)自由討議における意見の要旨

   ○    PTAの全国組織では以前から有害図書のアンケートなどは取っているが,読書の重要性についてはまだ十分に意識されていない。学校教育の中で読書活動に積極的に取り組むためにはPTAを巻き込んでいくことが必要であろう。

   本について語ることは教師の職務であり,「本を読まない教師はいらない。」という明確な方針を強く打ち出すことが必要である。
   子供の成績表の中に読書活動を評価する欄を設けることを提唱したい。それにより,親に対しても動機付けができるはずである。

   教師が生徒に等身大で読書体験を伝えることも大切である。私が中学2年生の夏休みの登校日には,「今日のお話」という行事があった。一人一人の教師がそれぞれに話のテーマを設定し,1時間程度話をしてくれるのだが,生徒は好きな話を選んで,その話を聞くことができる教室に移動して聞いていた。今考えると話の内容は教師が読んだ本の内容であったが,そのような試みも面白いのではないか。

   具体的目安にかかわることで三つ提案がある。一つ目は,読書活動を学習指導要領の総則に明確に位置付ける必要があるということ。二つ目は発達段階に応じて,読書力の内実を明らかにすること。三つ目は,調べるために読む読み方を学校の発達段階の中で位置付けることである。

   学校評価のなかで図書の充実,読書活動の取組状況などを評価することは大事だし,この面でも保護者・PTAに呼び掛けてはどうか。学校によっては,教育委員会や校長など「上から」言われるより効果的な場合もある。

   成績表に読書欄を設けることは賛成である。また,週5日制の土曜日を月に一度でも国語力に結び付く企画に活用すべきである。

   国語力の具体的目安について考えると,漢字検定はあるのだから,語彙力を測定する検定などもあれば良いかもしれない。

   小中高それぞれの段階で,1万ページの読書をするという「読書マラソン」といった取組を行い,グラフにするなど目に見える形で目標を実現させていけば,読書の動機付けにもなり,達成感も味わえるはずである。

   読書活動等小委員会でやれることには限界があり,結局のところ,地域や自治体のいろいろな活動事例を紹介する程度しかできないのではないか。また,今は地方分権の時代だから,国が前面に出て主体的に一斉にやらせるのは意味がないのであり,読書環境の整備についても自治体が行うことを前提にすべきである。
   読書活動の推進を学習指導要領の総則に書いても,普通の国民が知らないと余り意味がないのではないか。また,成績表に読書活動の欄を加えることについては,国で一斉にやらせるというのは論外であり,せいぜい「やってもよい」という程度でよいのではないか。読書活動をどう測るかには問題があり,何ページ読んだから評価するというのはいかがなものか。どう好奇心を持たせるかという教え方の問題が大事で,すべてを評価につなげることには疑問がある。

   読書の重要性は学習指導要領には入れるべきである。今までの社会の風潮として読書を軽視してきたことが問題であるから,価値観を示すことが大切である。成績評価に加えるのも良い。また,教師が本を読まないのは問題で,教員採用試験を読書をしていないと通らない方式にしてはどうか。

   読書活動以外の国語力向上の取組事例や漢字使用について,現状が分かる資料が欲しい。また,本を読まない教師に対する委員の意見には賛成である。

   具体的な目標を示すといっても,読書でどういうことが身に付くのかという読書活動についての研究が進展することが必要である。


(文化庁文化部国語課)

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