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文化審議会

2003年7月14日 議事録
文化審議会著作権分科会著作権教育小委員会(第2回)議事要旨

文化審議会著作権分科会著作権教育小委員会(第2回)議事要旨

  日  時   平成15年7月14日(月)10:30〜13:00

場  所 三田共用会議所3階D・E会議室

出席者 (委員)  
小熊、久保田、坂井、清水、菅原、関口、大楽、齋藤、中井、永井、菱木、福島、水島、光主の各委員
(文化庁)
森口長官官房審議官、岡本著作権課長、川瀬著作物流通推進室長、岩松国際著作権専門官、穴沢国際課課長補佐、その他の担当官

配付資料

資料1     文化審議会著作権分科会著作権教育小委員会(第1回)議事要旨(案)  
資料2   大学生・大学院生による著作権侵害事案
(久保田委員提出資料)
 
資料3   大学における著作権教育等に対する支援について  
資料4   地方自治体・社会教育施設等に対する支援について  

【参考資料】
  参考資料     学生における違法コピー実態調査報告書
(平成12年3月実施)
 

  概   要

   (1)    「大学における著作権教育への支援のあり方」に関して、久保田委員から「大学生・大学院生による著作権侵害事案」についての説明と事務局から平成14年度の著作権教育小委員会審議経過と「大学における著作権教育等に対する支援について」の説明が行われた。そしてその説明に対し、以下のような意見交換が行われた。
(以下、説明者:◎、委員:○、事務局:△)

   ◎: 当協会で平成12年に学生を対象にアンケート調査をしたが、そこでは海賊版がファイル交換やコピーにより売買されている実態が明らかになった。これは、技術が簡単に手に入り、簡単にコピーができ、簡単に送信ができてしまう状況が背景にあり、その中で学生や大学院生は著作権が何のためにあるのか、何のために法律があるのか、については認識が低いということが原因としてある。ただし、無断でコピーをしたり、公衆送信したりすると罰則があるという認識は高い。当協会では、講習会において、なぜ著作権制度があって、その制度がどういう社会的人材を支えているのかを伝え、大学生や大学院生には社会的コスト論の側面から説明し理解してもらうよう努力している。なお使用許諾契約については知的レベルの高い大学生でも、理解できず、違法行為をしてしまう状況が見られる。
  ○: 実際の侵害行為ですが、ネット上での違法行為では、全体の5%から10%は、大学のサーバーを使ったファイル交換であり、大学に対して著作権侵害への対策を講じるように要請をしている。また、実際の教養教育への支援であるが、これは著作権をより多くの人に身近に触れていてもらうのが大事であり、自分の論文とか、自分の研究成果が無断で使われた場合には、どうなのかというあたりをいかに著作権教育なり、教養教育で触れていくというところが課題であると思う。
  ○: 事務局資料は、ポイントがどこなのか、ネックはどこなのかが不充分。具体的にどこをどうしたら、大学の学生の意識なり、行動が変わるのかということを指し示した提案資料がよいと思う。それから、大学の教養教育の場合、単独で著作権教育を実施しようとしても無理と思うので、情報管理教育の中に織り込むことや、或いは法令遵守の教育の中に織り込むこと等、どこに織り込むのが最適で、最も効果的なのかということを、具体的に考えることが大事である。また、社会全体の規範意識を高めないと、学生の規範意識が高まらないという意見については、著作物を侵害すると極めてリスクが高いという認識を社会的にどう伝えるかをマスコミの活用を含めて考えることが必要ではないかと思う。
  ○: 大学における著作権教育について、大学では、議論の最中で固まってない。また引用と著作権侵害の境界線も定かではないように思う。著作権教育の方法として、職業教育において、著作物の違法な利用は、個人及び企業に損害を与えるという危機意識にたった教育もあると思う。また事務職員を含めて、この人に聞けば著作権制度がわかるという方には、資格を与えるというような方策も必要ではないかと思う。
  ◎: 大学では、情報をどう守るのかという教育の中で、子供の書いた作文も著作権法で保護される著作物であり、そこには人格権もあるという話をすると、学生は、敏感に反応して、個人情報保護の観点で考え始める。その後、問題意識を持った学生に、法律の説明を行うと、大体概要は理解するので、情報教育の観点で、著作権制度の説明に入っていく発想に賛成である。
  ○: メーカーの著作権教育では、リスクマネジメントの観点で著作権教育を行っている。学生に対しても、リスクの意識付けを行うことによって、著作権制度への理解を促すような意識改革をしていかなくてはいけないのではないか。また教育機関における大容量のサーバーを活用して情報流通システムについても、技術的な開発で違法な使用を制限するアプローチをしていかないといけないのではないかと思う。
  ○: 大学関係者の場合、教授の論文にコピーOK又はコピーしてはいけないなどを付記するといったように、現実的な対処に取り組まないと、いくら法律的な講義をしても著作権制度はわかりにくいのではないかと思う。
  ○: 先程の報告を聞いて、大学における著作権教育においては、レポート等の作成で自分が作ったものについて自由利用マークのような著作者の意思表示を明示していくことが非常にわかりやすいのではないかと考えている。カリキュラムを考える時には、事務局と教官の立場によって違うのではないかという気がする。教員が、学生に著作権教育を一生懸命を行うことについては、もう少し時間がかかる感じがするので、事務局のように簡単にはいかないと思う。
  ○: 大学の先生が著作権制度を知らないというのが、一番の問題ではないかと思う。職業教育については、大学生というのは必ず社会に出て活躍するので、今後の方向として、キャリアディべロップメント(能力開発)の中に著作権に関する知識の取得をどのように組み込んでいくかということを議論することが必要だと思う。
  ○: 著作権に人格権の部分があること、違法な利益の場合には大きなリスクが伴うといった観点については、大学は全く知らない。それから新しい情報化に伴って、具体的に、どのような場面で、どのようなときに著作権が関係するのかということや、適切な引用の方法についても知らない。
  ○: リスクとしての視点というのはかなり重要なことだと思うので、例えば情報教育で、情報リテラシー(情報収集処理能力)の1つとして著作権教育を入れるということはできないか。また大学のサーバーを技術的に制限するとは、コピーに対しての制限なのか、アクセスに対しての制限なのか。
  ○: コピーとアクセスの両方である。

   (2)    「地方自治体・社会教育機関施設等の公的機関が実施する著作権教育への支援の在り方について」事務局から平成14年度の著作権教育小委員会審議経過と「地方自治体・社会教育機関施設等が実施する著作権教育への支援について」の説明が行われた。そして、事務局の説明に対する質問として、以下のような意見交換が各委員から行われた。(以下、委員:○、事務局:△)

   ○: 予算については、来年度に措置するのか。
  △: 予算については、多額の経費がかかるものでもないので、既定経費の流用でも対応できる規模である。
  △: 何をすべきかと、そのための予算をどうするかはまったく別問題なので、まず何をすべきかについて考えていただきたい。
  ○: 著作権教育アドバイザーというのは、誰にアドバイスをするのか。地方自治体の内部で、地方自治体の職員に対してアドバイスをするのか。修了証書は渡すのか。また、どこにアドバイザーがいるかについての情報を、インターネットで得られるような制度が必要かと思う。
  △: 組織の中に、著作権制度について核になる人が必要という御提案があったが、この制度は、まさにその考えに基づくもので、研修を受けたアドバイザーが、著作権に関する問い合わせや研修の要請に対応できる人材を養成し、地域において核として実際に活躍していただくことを目指している。また別の手だてで、人材バンクを作ってニーズに応じて講師を紹介するといったコーディネートをしていただく方もいればありがたいと考えている。
  ○: 地方自治体、大学において、著作権について、責任を持って仕事ができる人が必要であり、そのためには知識のつめこみに偏らない職員教育が必要かと思う。
  ○: カリキュラムの策定については、テスト的に自治体や社会教育施設などで研修会を行い、その成果を参考にすると良いと思う。
  ○: 著作権教育アドバイザー制度は、教育関係者に対する養成講座だけでなくて、一般国民に対して著作権教育を行う専門家を対象とした資格制度も考えて欲しいと思う。こういった資格制度で、修了証書を与えることは一つの目標となり、著作権制度を勉強する契機となると思う。また、他の分野と比べると著作権に関する本は、圧倒的に少ないように思われるので、パンフレットを提供していくのは大事ではないかと思う。
  ○: 著作権講座で配布されているテキスト等を、身近な図書館や、公民館で閲覧できるようにすることは、著作権制度を普及する意味で大事だと思う。
  ○: 地方自治体等の主催の研修会の拡大については、地域の生涯学習推進センターに基本的なカリキュラムを示すと、地域の公民館や、図書館で著作権研修が充実していくと思う。博物館、公民館、図書館は、それぞれに協会があり、研修や全国大会で、著作権制度に関するパンフレットを配っているので、その協会の職員に対して著作権教育なり、その職員に必要な標準カリキュラムを提供することは効果があるのではないかと思う。
  ○: 著作権教育アドバイザー制度は、是非実施してもらいたい。著作権教育アドバイザーの実際の活用方法も含めて検討していただきたい。
  ○: 著作権教育標準カリキュラムについては、自らの権利の活用という点も含めたカリキュラムを考えたら良いと思う。
  △: 事務局では意思表示システムや標準的な契約書と、普及事業とを組み合わせて、ただやってはいけないという教育に終始しないように取り組んでいる。

6   閉   会 
     事務局から今後の日程について説明があった後、閉会となった。



(文化庁長官官房著作権課)

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