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文化審議会

2002/09/09議事録
文化審議会著作権分科会著作権教育小委員会(第3回)議事要旨

文化審議会著作権分科会
著作権教育小委員会(第3回)議事要旨

  日  時   平成14年9月9日(月)  午後14時〜午後16時

場  所 文部科学省分館201・202

出席者 (委員)
松村主査,小熊,久保田,坂井,清水,菅原,関口,土屋,中井,永井,中村,水島の各委員
(文化庁)
丸山長官官房審議官,岡本著作権課長,吉尾国際課長,石垣課長補佐,堀野著作権調査官,その他の担当官

配付資料

資料   著作権分科会・著作権教育小委員会第2回議事要旨

概  要

(1) 事務局(8月1日付け)の異動について報告があった
(2) 「社会人等を対象とした著作権教育への支援」及び「大学における著作権教育への支援策」について検討を行った。
  まず,委員から「社会人等を対象とした学校外での著作権教育の現状と課題」及び「大学における著作権教育の現状と課題」についてそれぞれ意見が述べられ,それを参考としつつ,意見交換等を行った。
  概要は次のとおりである。

(以下,委員:○,事務局:△)

[社会人等を対象とした著作権教育への支援]

○:   著作権教育について,何故自治体が遅れているのか。IT化そのものが遅れていのかあるいは別の要因があるのか。また,いわば情報教育等でトータルとして試行していく必要があるとお考えなのか。
○:   自治体が問題として意識するかどうかだと思う。情報の切口によって,いろいろな形・法益がある。著作権からの切口で教えてもなかなか理解されない。国民の底上げのためには,情報モラルという規定の中でルールとしての法律をきちんと教えていくということが非常に重要だと思う。

○:   著作権の問題となると,権利制限とかが出てくるが,その場合の社会教育というのはかなり限定されていると思う。そのことが,研修等できちんと分けられ認識させることが必要ではないか。

○:   35条の観点で,学校教育と社会教育とでは,活動と制限規定が非常に密接にリンクする部分がある。

○:   セミナー等の事業を行う場合の問題は集客だと思う。一般的な社会教育の中でどう人を集めていくかということが一番大きな問題だと思う。

○:   集客はホームページが中心になる。あとは口伝で広がって行くということが結構重要だと思う。人集めということではかなり苦労している。

○:   ホームペ−ジを活用する,質問に答えられる体制を創っていくことで,有効に機能していくと思う。

○:   企業の中で教育が行われているが,「教育」と「35条の教育」を理解していない。大学の教授も然りである。知らないというところが問題ではないか。社会教育の指導者が教育に係わる著作権を知らない場合どのように対処するかがポイントとなる。イーランニングについて日本でも非常に軽く考え,著作権のことをあまり知らずにスタートしつつあり危機感がある。企業も同じである。そこをどうするかということを考えなければいけない。

○:   今はクイックアンドワイドの時代であって,気が付かないと潰れるという状況である。それは企業だけでなく,企業を構成している一人一人が気付かずに著作権侵害を犯してしまう,自分自身の著作物をどう発信していいか分からないというところまできている。

○:   社会教育主事は,年間で何百人と講習を受けているが,問題は,都道府県レベルの研修会で著作権を取り入れるかどうかである。全都道府県から講師派遣依頼があっても対応できなし,また,国レベルの講習でも1コマ2時間程度で終わってしまう。これで十分なのかどうかというところに問題があると思う。

○:   講師をできる人,そういったキャリアを持った人がいない。今後どういうレベルでそういった講師ができる人材を確保していくかが課題だと思う。

○:   協会の事業の運営とその過程を通じて講師になり得る知識と条件を整えている。とにかく積極的に外に出していって,話をすることが必要だと思う。

○:   研修受講者が都道府県・市町村に戻って,研修を行う場合に著作権という項目が入っている例は少ないと思う。著作権教育のモデルを示すのが一番早いのではないか。行政的にそういう研修の実施を指示し,あるパターンを示せば進むのではないかと思う。市民レベルでは,著作権についての情報が欲しいというのが住民の方から上がってきている。


[大学における著作権教育への支援策]

(以下,委員:○,事務局:△)

○:   大学のひとつのテーマが,教養教育だと思う。教養教育の中に必ず入っているのがITとか情報だが,その中に必ず著作権が入っているかどうかがひとつのメルクマールとなるのではないか。

○:   プロバイダーの利用など学生の著作権教育に関しては,社会教育的なレベルになっていると認識している。教職員に対する著作権教育は重要であるが,問題発生の回避のための周知を教育というべきかどうか。大学の教員は,権利をすぐ他に渡してしまうが,我が国としての知的財産管理としてどうなのか。その辺をどのように知らしめていくかが問題である。大学だけでなく,学者,研究者全体として考えなければいけない問題である。知的財産戦略大綱のところで,知的財産の管理の専門家の養成というようなことがあったと思うが,何か決まっているのか。

△:   拠点大学などにその知財センターの本部を創って行こうという企画が進められている。基本的には特許が中心であり,著作権については,先生が創った著作物,ソフトウェアなどを大学で管理するのが良いのか悪いのかといった議論も始まっていない状況にある。理科系の学会では,内外問わず,学会に権利を集中してしまうということが昔から行われており,そのために電子図書館も作りにくいという状況になっている。

△:   これから法人化していく時に,大学と先生個人との権利処理をどうするかという問題は避けて通れないと思う。現にアメリカのカリフォル二ア大学では,大学と先生の間で詳細な条文がある。このようなことをしなければ,社会が成り立たなくなれば,必然的に著作権の勉強をせざるを得なくなる。国立大学が法人化し,大学と先生との関係が契約関係に基づいて決められ,守らないと一定のペナルティを受けることとなれば,かなり変わるのではないかと期待している。大学の先生に,小・中学生と同じようなモラル教育ではなく別の方法を考えることが適切と思う。

○:   大学図書館のひとつの流れとして,学術雑誌が高くなっており,自主管理でいくしかないのではなのかということがでている。そうすると雑誌社なり学会の方に権利を渡してしまうのは非常に危険である。例えば,MITでは,むしろ,大学のサーバに立てるという状況になっている。その辺りまで国立大学とかを使ってやらないと,著作権で守られた情報の流通の促進ができなくなるという感じがする。

○:   教員,事務職員,学生に対する著作権教育は,それぞれ分けて問題を明確にしていかなければいけないと思う。今の学生は非常に安易に,引用というものを考えている。学生に対する著作権教育,授業としての著作権を取り入れていく必要があるのではないかと思う。大学の中で学生が修得しなければいけない著作権教育というものがあると思う。

○:   大学生の意識を調査したものがあれば,中学・高校でやってきたことが,大学生でどれくらい残っているのかということを調査する時のメルクマールになるのではないか。ひとつの評価軸になるだろうし,大学生にどういう教育をしていくかという時の何らかのヒントになるようなことも考えれる。

○:   中学・高校で著作権を学習した学生が大学生になるのは5年くらい先になる。今やっておかないと5年後どうなったかわからないということになる。是非やっていただきたい。

○:   日本の子供は世界で一番著作権に対する認識が高く,大学は低いという調査結果がある。「ゲームソフトのコピーをしていいか」という質問をし「してはいけない」というところに○を付けたのは日本の子供達だったという。大学生は「何故コピーして悪いのだ」という意識である。ドイツでは逆転していて,大学生の時には違法コピーはしてはいけない,その理由は「知的財産というものの重要性を認識している」という非常に真っ当な答が出ていた。

○:   資格関係科目などの中で必修のものとして,著作権が取り上げられるといいと思う。大学の運営の中での管理というのがかなり必要と思う。ある時点でのファイル交換ソフトというのを見ていくとだいぶ海賊版がでてくるという実態がある。大学での活動という点での著作権の見方というのも必要かなと思う。

○:   著作権について,大学の運営としてまずいことは結構あると思う。資格関係科目であるが,学芸員は図録を創るが社教主事は図録を創らない。大学でも資格関係については,それぞれ用途に応じた必修の置き方も重要と思った。

○:   海外では,一般の研究法と論文の書き方は何処の大学でも,大学院あるいは学部ですら全員必修で取らされており,正しい引用の仕方とか正しいクレジットの与え方,権利の主張の仕方ということも併せて教えている。独立行政法人になって個々の大学でそれぞれのアプローチということを考えることになるが,そういう点も非常に重要である。

○:   教養教育の中で情報教育をやる,その際に著作権のことも教えるということは重要であるが,問題は,情報教育をやる人手が充分にあるかどうかである。大学の中に著作権の講座がある,先生がいるところはいいが,必ずしもそうでない大学もある。人材を今後どうやって確保していくかを検討していかなければいけない。

○:   人の養成は不可能で,全体として意識のかさ上げが必要だと思う。ビデオとかハンドブックなどの教材を作るということでかなり対応できるのではないか。実際,情報教育について,非常にまずい人材の雇用政策をとった私立大学がたくさんあり,この反省に基づくと絶対に著作権担当の教員は置きたくないわけである。マテリアルなどを共同で作っていくという方が現実的だという印象がある。

△:   人員不足,資金不足という状況を前提にして,現実的に何をしたらいいか,特に文化庁が何をしたらいいかということをご議論いただきたい。例えば,著作権について素人の教員でも指導に使えるマテリアルなどの在り方が課題となる。「引用」については,関係団体と協力して,具体的な事例集を作って,広めようということを考えている。

6  次回は,平成14年9月20日(金)に開催することとなった。


(文化庁長官官房著作権課)

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