戻る

資料2

検討課題の背景について

1. 権利が譲渡された場合

(1) 一般的な貸借の場合(民法)

Aは所有物をCに賃貸
その後、Aは所有権をBに譲渡
一般的な貸借の場合
AC間の賃貸契約について、Bに承継の義務はないため、BはCに所有物の返還を請求できる。

CはBに対抗できない。ただし、Aに対して債務不履行による損害賠償請求は可能。


(2) アパートの賃貸契約の場合(借地借家法)

AはアパートをCに賃貸
その後、Aはアパートの所有権をBに譲渡
アパートの賃貸契約の場合
不動産の賃貸借について、民法では、登記をすることによりCはBに対抗でき、引き続き利用可能。

アパートを借りた(借家の)場合には、民法の特則である借地借家法により、登記がなくても、建物の引き渡しをもって、CはBに対抗できる。

参照条文

民法(明治二十九年法律第八九号)
(不動産賃貸借の対抗要件)
六百五条  不動産ノ賃貸借ハ之ヲ登記シタルトキハ爾後其不動産二付キ物権ヲ取得シタル者ニ対シテモ其効力ヲ生ス

借地借家法(平成三年法律第九十号)
(建物賃貸借の対抗力等)
三十一条  建物の賃貸借は、その登記がなくても、建物の引渡しがあったときは、その後その建物について物権を取得した者に対し、その効力を生ずる。


(3) 特許のライセンス契約の場合(特許法)

AはCに対し通常実施権を設定し、特許庁に登録
その後、AはBに特許権を譲渡
特許のライセンス契約の場合
譲渡の登録をしなければBはCに対抗できない
通常実施権の設定が登録されている場合には、CはBに対して対抗でき、引き続き利用可能。

しかし、通常実施権の設定登録がされてない場合には、CはBに対抗できず、一般的な貸借((1)のケース)と同様となる。
※2001年の特許の通常実施権の設定の登録件数は273件。

参照条文

特許法(昭和三十四年法律第百二十一号)

(通常実施権の登録の効果)
九十九条  通常実施権は、その登録をしたときは、その特許権若しくは専用実施権又はその特許権についての専用実施権をその後に取得した者に対しても、その効力を生ずる。
  (略)
  通常実施権の移転、変更、消滅若しくは処分の制限又は通常実施権を目的とする質権の設定、移転、変更、消滅若しくは処分の制限は、登録しなければ、第三者に対抗することができない。

特許登録令
(通常実施権の設定等の登録の申請)
四十五条  通常実施権の設定の登録を申請するときは、申請書に次に掲げる事項を記載しなければいけない。
  設定すべき通常実施権の範囲
  登録の原因に対価の額又はその支払の方法若しくは時期の定めがあるときは、その定め


(4) 著作権の利用許諾契約の場合

AはCに対し著作物の利用を許諾
その後、AはBに著作権を譲渡
著作権の利用許諾契約の場合
出版の利用の場合には、出版権の設定登録をすれば、特許法と同様に第三者に対抗できる。
譲渡の登録をしなければBはCに対抗できない
著作権法では、利用許諾契約に係る第三者対抗制度はないので、CはBに対して対抗できず、一般的な貸借((1)のケース)と同様となる。

 

2. 権利者が破産した場合

AはCに所有物を賃貸
その後、Aが破産し、破産管財人A'がAの債権債務関係を承継し、整理
権利者が破産した場合
破産管財人A'はAの債権債務関係を承継するが、双方未履行の双務契約については、破産法第五十九条により破産管財人A'は破産財産の整理に当たり契約を解除することができる。

参照条文

破産法(大正十一年法律第七十一号)

五十九条  双務契約ニ付破産者及其ノ相手方カ破産宣告ノ当時未タ共ニ其ノ履行ヲ完了セサルトキハ破産管財人ハ其ノ選択ニ従ヒ契約ノ解除ヲ為シ又ハ破産者ノ債務ヲ履行シテ相手方ノ債務ノ履行ヲ請求スルコトヲ得
  前項ノ場合ニ於テ相手方ハ破産管財人ニ対シ相当ノ期間ヲ定メ其ノ期間内ニ契約ノ解除ヲ為スカ又ハ債務ノ履行ヲ請求スルカヲ確答スヘキ旨ヲ催告スルコトヲ得破産管財人カ其ノ期間内ニ確答ヲ為ササルトキハ契約ノ解除ヲ為シタルモノト看做ス

s_01   s_03
b_1   (参考)

知的財産大綱(抜粋)

2知的財産ライセンス契約の安定強化(P37)
1 ライセンサーが倒産した場合に対抗要件を備えたライセンシーを保護できるよう、2003年中に破産法等の改正法案を提出する。(法務省)
2 ライセンス契約保護の観点から、2002年度中に、より望ましいライセンス契約の保護の在り方について検討を行う。(経済産業省)
  b_1
s_02   s_04

 

3. 検討課題の視点(例)

著作物の利用者(ライセンシー)の第三者対抗の付与について、例えば、

利用者を保護すべきケース
利用者を保護するための方策
利用者と譲受人の権利保護のバランス

などの観点を含めて検討する必要があると考えられる。


(参考) 著作権法改正に関する要望事項


ページの先頭へ