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文化審議会

2002/09/09 議事録
文化審議会著作権分科会契約・流通小委員会(第3回)議事要旨

文化審議会著作権分科会契約・流通小委員会(第3回)議事要旨

1  日  時   平成14年9月9日(月)10時30分〜13時

2  場  所 文部科学省分館201,202特別会議室

3  出席者 (委員)
紋谷、秋田、石井、入江、上原、大森、加藤、金原、久保田、児玉、佐々木、渋谷、寺島、土肥、生野、橋元、橋本、松田の各委員
(文化庁)
岡本著作権課長、吉尾国際課長、尾崎著作物流通推進室長ほか関係者

  配付資料

    第3回議事次第
資料1 契約・流通小委員会(第2回)議事要旨
資料2 「円滑な流通の促進」に向けた施策の柱
資料3 「バーチャル著作物マーケット」について(検討案)
資料4 「自由利用マーク」について(検討案)

5  概  要

(1) 「バーチャル著作物マーケット」について
  事務局から資料3に基づき説明があった後、委員から以下のような意見があった。(以下、委員:○、事務局:△)

○:   映像ソフト業者は、このようなマーケットを利用する可能性はあるのか。

○:   セキュリティや課金が合理的なものになれば、断片的な映像カットやショートフィルムを始めとして映像についてもこのようなマーケットを利用することがありうると考える。

△:   長い伝統と経験を持つ集中管理方式とは異なり、「N対N」の契約システムについては、現段階において政府が対応すべき課題である。「バーチャル著作物マーケット」は、集中管理ができるプロの著作物とは異なり、埋もれているアマチュアのコンテンツを世に出すということを主な目的としている。

○:   「バーチャル著作物マーケット」の運営主体はどこか。

△:   民間が、文化庁が研究するモデルシステム及びそのノウハウを参考にして、事業を企画・運営することになる。

○:   通常の映画やテレビ番組は権利関係が複雑なので利用が期待できないが、ビデオジャーナリストやCSの番組などで個人で作っている番組については利用が期待できる。また、今は自分史など出版に代わり映像を作成する者も増えているので、そのような者の利用もありうる。

○:   現状を見ると、写真は動画と異なりプロテクションがかけられないし、人権上問題のあるような写真が掲載されているサイトがあるなど、ネット上のライアビリティが確立されていない状況で、フリーマーケットは可能なのかという根本的な議論がある。ただし、セミプロのカメラマンなどは、ネットという媒体は市場の一つとして考えたいと言っているのも事実。掲載方法については、画素数を落とすよりも、サンプルなどの文字を重ねた方が適当と考える。また、写真の場合、利用方法はある程度限定される。

○:   動画については、個人が作り、個人がアップロードし、かつ短時間のものについては、自らが権利者であり、すぐにでも流通すると考える。最近のホームぺージを見ると、挿絵的な動画も流通するのではないか。また、なりすましについては、著作権者側のみならず利用者側についても研究することが必要。

○:   著作物の円滑な流通には、認証技術が重要である。利用者のなりすましが多いので、認証技術について研究することが必要。

○:   PCで様々なツールが開発されているので、動画もアニメも音楽もコミックも新しいクリエーター層ができて、著作物が大量に制作される状況になる。また、素材としても、ライブラリー会社が様々な著作物を売っているし、一般の人の自費出版も増加している。こうした状況の中、N対Nについて、「バーチャル著作物マーケット」の研究の中で、認証技術、セキュリティ技術、課金技術などの紹介など様々な情報を提供するようにしてもらいたい。

△:   ネットを活用した流通促進システムに係る国際的な議論においては、権利情報のみを提供する「フェーズ1」と流通や契約まで行える「フェーズ2」が分けられていたが、フェーズ1がJ−CISであり、フェーズ2が「バーチャル著作物マーケット」である。J−CISの頃は「N対N」の整備をネット上で行う十分な環境がなかったが、その後、ネットの発達等とともに、フェーズ2を行える環境が整った。「バーチャル著作物マーケット」の実験では、モデルを示すことが目的である。実験は権利者・利用者双方ともクローズドな環境で行うとともに、実験でできない課題についても研究し広く情報を提供していきたいと考えている。

(2) 「自由利用マーク」について
  事務局から資料4に基づき説明があった後、委員から以下のような意見があった。

○:   自由利用は常に「無料」がセットになっている印象があるが、自由利用がそのまま無料である必要はなく、許諾は不要だが使用料の支払は必要という形態であってもいいと考える。また、「バーチャル著作物マーケット」の中で「自由利用マーク」を組み込んで実験するのも一案と考える。

○:   「自由利用マーク」を発行する機関があって、そこから一定の条件の下に「自由利用マーク」を自分のサイトにダウンロードするという仕組みもありうる。

△:   「自由利用マーク」は本人が自分の意思に基づき付すものであって、第三者が付すものではない。「自由利用マーク」を統一規格として普及させる当たり、法的にどういう問題があるかということも併せて整理し研究することが今回の趣旨。

○:   意思表示の有効性を前提としているが、「著作権侵害として訴えない」と主張することが意思表示となるのか検討する必要がある。意思表示と解釈する場合には、効力を発生する時点、発言の撤回等について注意が必要となる。

○:   音楽のように複数の権利が含まれるものについて、例えば、実演の部分は自由に利用してもよいが著作権の部分は許諾が必要というような部分的な自由利用についてマークを付すことも対象としているのか。

△:   著作権について知らない人でも利用できるようにするためには、単純でわかりやすいものにする必要がある。複数の者の権利が働く場合で「私の部分はいい」というものはマークを付す対象とはしない予定。

○:   著作権を知らない利用者がこのマークを守るという担保はあるのか。

△:   著作物は、マークの有無に関わらず、公表された時点で違法に利用されないことについて担保されない。違法利用を防ぐには権利者がプロテクションを掛けること等しかなく、またプロテクションを掛けて違法コピーを防ぐことが、条約が想定する状況である。

○:   条件によってマークに違いがでるようでは利用者はわかりづらいので、シンプルなところから始めた方がよい。

○:   ネット上ではクリックを活用できるので、文章で詳細に記された著作権ポリシーを掲げることができる。「意思表示システム」については、著作権者が様々なアプローチを選択できるのがいいと考える。

○:   自由利用マークが付された著作物を利用した場合、自由利用に基づく利用であることの表示を義務づけることも必要でないか。

○:   第三者に権利を譲渡した場合の自由利用の意思表示の有効性についても検討する必要がある。

△:   「自由利用マーク」の普及に当たっては様々な法的な問題について整理する必要がある。実行段階では小さく始め、その先の段階については継続的に検討していきたい。

○:   「自由利用マーク」については、法律的な課題が多数あるが、権利制限など法律の整理とは異なる有用な整理方法が発見されうると考えており、「自由利用マーク」の開発自体には積極的に賛成したい。

(3) 閉会
  事務局から今後の日程について説明があった後、閉会になった。

(文化庁著作権課著作物流通推進室)

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