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本編 第2章 知的財産の保護

1.知的財産を適切に保護する

2.我が国がリーダシップを取って国際知財システムを構築する

(4)アジア地域等における知的財産権制度の整備と協力を促進する

5自由貿易協定(FTA)/経済連携協定(EPA)等を活用する 大かっこP38]

 自由貿易協定(FTA)/経済連携協定(EPA)や投資協定などの二国間・複数国間協定の交渉の機会において、外国周知商標の保護など交渉相手国の知財制度の整備や特許におけるいわゆる修正実体審査の制度上又は運用上の受入れなどを促し、我が国産業界等の要望に沿った「知的所有権の貿易関連の側面に関する協定(TRIPS協定)」等の国際約束で規定されているよりも厚い知財の保護が達成されるよう積極的に働き掛ける。

(外務省、文部科学省、農林水産省、経済産業省)

(5)国際公共政策に配慮した国際ルールの構築に貢献する 大かっこP39]

  • 1)遺伝資源や伝統的知識、フォークロア(民謡などの伝統的文化表現)の問題など、知財政策と開発、人権、環境、公衆衛生といった他の様々な国際公共政策との関係について、我が国として適切な対応が図れるよう、関係省庁による「知的財産関連の国際公共政策に関する連絡会議」等を通じて政府内の連携を深めるとともに、産業界との意見交換の場を設けるなど、国際的な知財政策に関する検討体制を強化する。

    (内閣官房、外務省、文部科学省、厚生労働省、農林水産省、経済産業省、環境省、関係府省)

  • 2)知財政策と他の様々な国際公共政策との関係に関する問題に関する国際的な相互理解とコンセンサスづくりに貢献するために、これらの問題に関する先進国、途上国、地域コミュニティ間の対話、国際シンポジウム等の開催、アカデミアやシンクタンクなどでの研究活動を促進する。

    (外務省、文部科学省、厚生労働省、農林水産省、経済産業省、環境省、関係府省)

5.利用者の利便性を高める

(4)知的財産に関連する法律の英訳を国際的に発信する 大かっこP46]

 我が国の知財に関連する法律などが国際的に理解され、利用されやすくするため、法改正や新規立法に適時に対応しつつ、2008年3月に再改定された翻訳整備計画に従い知財法や関連する実体法・手続法の正確かつ統一された英訳の整備を更に進めるとともに、英語による検索機能等を付加した利便性の高いウェブサイトの構築を速やかに進めるなど、利用者のニーズを踏まえた英訳の利用環境を整備する。

(内閣官房、法務省、文部科学省、農林水産省、経済産業省、関係府省)

2.模倣品・海賊版対策を強化する

1.外国市場対策を強化する

(1)国際的な法的枠組みを構築し活用する

1「模倣品・海賊版拡散防止条約(仮称)」の早期実現を目指す 大かっこP50]

 我が国が提唱した「模倣品・海賊版拡散防止条約(仮称)」について、米欧などとの集中的な協議が開始されたことを踏まえ、一層国際的な関心を高めるとともに、関係国・地域との協議において、方針や見解を迅速かつ明確に示し、議論をリードし、関係省庁が一体となって、早期の実現に向けた取組を加速する。

(警察庁、総務省、法務省、外務省、財務省、文部科学省、農林水産省、経済産業省)

2自由貿易協定(FTA)/経済連携協定(EPA)等を活用する 大かっこP50]

 自由貿易協定(FTA)/経済連携協定(EPA)や投資協定などの二国間・複数国間協定に、知的財産権の実効的なエンフォースメントの確保のための条項を盛り込むよう積極的に交渉する。また、エンフォースメントも含めた実際の執行状況等について協定上のメカニズムの場等を利用してレビューを行う。

(警察庁、外務省、財務省、文部科学省、農林水産省、経済産業省、関係府省)

(2)侵害発生国・地域への対策を強化する

2侵害発生国・地域に対し具体的要請を行う 大かっこP51]

 アジア諸国などの侵害発生国・地域に対し、デザイン模倣対策の強化、執行の強化、再犯防止の強化、周知商標の認定促進、水際における権利者負担の軽減、国際郵便における我が国の輸入制限の周知徹底及び当該郵便の引受検査の徹底等、具体的な制度改善や取締りの実効ある強化などについて、閣僚レベルを始め様々なレベルにおいて、また官民合同ミッションの派遣などを通じ、強力に要請する。

(総務省、外務省、財務省、文部科学省、農林水産省、経済産業省、国土交通省、関係府省)

4コンテンツ海外流通マーク(CJマーク)等の活用を促進する 大かっこP51]

 海賊版の摘発活動を容易にするため、コンテンツ海外流通マーク(CJマーク)の周知・普及やCJマークに係る商標登録国の拡大、調査・摘発活動を支援する。また、国内外における摘発活動の際の真贋判定を容易にするため、権利者・権利者団体や製造業者・流通業者に対し、その有効性を検証しつつ、偽造防止技術の活用を奨励する。

(警察庁、外務省、財務省、文部科学省、経済産業省)

(3)国際的な連携を強化する

1諸外国・地域との連携を強化する 大かっこP52]

 侵害発生国・地域への働き掛けなど模倣品・海賊版対策に関する各種取組を効果的に推進するため、以下の取組などを通じ、諸外国・地域との連携を強化する。

  • a)首脳間・閣僚間を始めとする日米間の二国間協議などを積極的に活用するとともに、第三国における知財保護に関する情報交換の推進などを通じ、米国との連携を強化する。
  • b)首脳・閣僚レベルの定期・個別協議や「知的財産権に関する日・EU対話」などを積極的に活用するとともに、第三国における知財保護に関する情報交換の推進などを通じ、EU及び欧州各国との連携を強化する。
  • c)「日中ハイレベル経済対話」「日中経済パートナーシップ協議」などを活用し、知財権の保護・運用の強化を働き掛けるとともに、中国との対話と協力を強化する。

(外務省、財務省、文部科学省、農林水産省、経済産業省、関係府省)

2多国間の取組をリードする 大かっこP52]

 主要国首脳会議(G8サミット)を始めとして、経済協力開発機構(OECD)、アジア太平洋経済協力会議(APEC(エイペック))、アジア欧州会合(ASEM)、世界貿易機関(WTO)、世界知的所有権機関(WIPO)、世界税関機構(WCO)などの国際機関・フォーラムにおいて、模倣品・海賊版問題が首脳を始めハイレベルで取り上げられるよう準備や働き掛けを行うとともに、以下のような加盟国・参加国の間における協力や取組を積極的に推進する。

  • a)G8サミット・プロセス及びG8知財専門家会合を積極的に活用し、税関当局間における情報の交換・共有するための国際的ネットワークの構築、途上国への技術支援、啓発活動などを推進し、主要先進国間における連携を強化する。
  • b)OECDによる模倣品・海賊版対策プロジェクトについて、デジタル・コンテンツに対する海賊行為に係る報告書の取りまとめに向け、諸外国と連携しつつ議論を推進する。
  • c)APEC(エイペック)において、「APEC(エイペック)模倣品・海賊版対策イニシアティブ」に基づき新たに策定された「知的財産権に関する能力構築ガイドライン」を含む関連ガイドラインを周知するとともに、同ガイドラインに沿った取組、各国・地域における知的財産権サービスセンターの早期設置の働き掛け、植物品種保護に関するセミナーの実施に向けた取組などを推進する。
  • d)ASEMにおいて、ASEM関税局長・長官会議での議論等を通じ、エンフォースメントを含む知財権保護のための活動を推進する等、アジア・欧州間での協力を強化する。
  • e)WTOの対中国経過的レビューメカニズムや貿易政策検討制度(TPRM)などを積極的に活用し、アジア諸国・地域に対して模倣品・海賊版の取締りを強化するよう要請するとともに、TRIPS理事会におけるエンフォースメントの議論に積極的に参加する。
  • f)WIPOにおいて、エンフォースメント諮問委員会の場などを活用し、模倣品・海賊版問題を主要議題として採り上げ、積極的に議論を推進する。
  • g)税関の国際機関であるWCOにおいて、知的財産侵害物品の水際取締りに関する基準(SECURE)の策定に向けた議論に積極的に参画するとともに、WCOに加盟する途上国が当該基準を充たすことが可能となるよう、WCOによる能力構築(キャパシティビルディング)を支援する。

(外務省、財務省、文部科学省、農林水産省、経済産業省、関係府省)

3当局間の連携を強化する 大かっこP53]
  • 1)侵害発生国・地域を含む外国関係当局(権利付与官庁、警察当局、税関当局、行政取締当局、司法当局)との連携を具体的に強化するため、日常的な情報交換に加え、相互支援協定などの締結や当局間での定期協議などを推進する。

(警察庁、外務省、財務省、文部科学省、農林水産省、経済産業省)

(4)外国市場対策に関する基盤を整える

1模倣品・海賊版対策の能力構築を支援する 大かっこP54]

 2003年8月に決定されたODA大綱を踏まえ、個別の援助計画において必要性及び優先度に応じ開発途上国の知財制度の整備・執行の強化を支援する。また、模倣品・海賊版対策に積極的に取り組むアジア諸国の政府関係者や民間の団体・企業等に対し、各府省が実施している知財権の保護に関する能力構築を、「知的財産保護協力・能力構築支援戦略」(模倣品・海賊版対策関係省庁連絡会議決定)に基づき、我が国企業と協力しつつ、関係府省や国際協力機構(JICA(ジャイカ))、JETROなどの関係団体が協調して実施し、年度終了後に事業内容のレビューを行う。

(警察庁、総務省、法務省、外務省、財務省、文部科学省、農林水産省、経済産業省)

2模倣品・海賊版対策に関する情報発信を強化する 大かっこP54]

 2008年度において、関係府省の連携を確保しつつ、各種協議や国際会議などを通じ、我が国の模倣品・海賊版対策に関する制度や取締実績、官民による取組事例などについて、積極的に諸外国・地域に紹介する。また、対策に関する相互理解の促進、透明性向上という観点から、取締実績など取組の実施状況に関する情報の整理・公表について、その状況を勘案しつつ、諸外国・地域の政府に対して働き掛ける。

(警察庁、総務省、法務省、外務省、財務省、文部科学省、農林水産省、経済産業省)

3模倣品・海賊版の被害の実態を調査する 大かっこP54]

 海外市場における我が国企業の模倣品・海賊版の被害が未だ深刻であることにかんがみ、模倣品・海賊版による被害の実態などを調査・分析し、その結果を広く公表するとともに、国際交渉にも活用する。また、我が国の企業が侵害国において訴訟提起などの権利行使をするために必要なノウハウなどの情報を収集し、資料としてまとめ、企業に配付する。

(外務省、文部科学省、経済産業省、関係府省)

2.水際での取締りを強化する

(1)税関による水際取締りを強化する 大かっこP55]

 税関が知的財産侵害疑義物品を発見した場合、その多寡にかかわらず、原則として認定手続を執ること等を明確化している通達に沿って、税関は水際における取締りを強力に推進するとともに、侵害認定について、状況により専門委員制度を活用する等、厳正化を図る。また、模倣品・海賊版に係る水際取締りの実効性の確保及び流通の抑止効果という観点から、税関による差止状況、国内の取締状況、模倣品・海賊版による被害状況、個人使用目的による模倣品・海賊版の輸入・所持の規制に関する諸外国の動向などについて、関係府省が連携し、情報の収集・分析に努める。

(警察庁、法務省、財務省、文部科学省、経済産業省)

3.国内での取締りを強化する

(3)劇場内で無断撮影された映像の違法流通への対策を強化する 大かっこP56]

 「映画の盗撮の防止に関する法律」について、その周知徹底、映画関係事業者による映画の盗撮防止の自助努力、違反行為の取締り等、官民挙げて劇場内で無断撮影された映像の違法流通への対策を推進する。

(警察庁、文部科学省、経済産業省、関係府省)

4.インターネット上での対策を強化する

(1)インターネットオークション上の模倣品・海賊版の取引を防止する 大かっこP57]

  • 1)2008年度中に、著作権法において、インターネットオークションへの出品など海賊版の広告行為自体を権利侵害とすることについて検討し、必要に応じ法制度を整備する。

    (警察庁、法務省、文部科学省、関係府省)

  • 2)権利者が権利侵害品の出品を確認しオークション事業者に通報がなされた場合には、権利者・オークション事業者間の適切な責任分担に基づき違法出品の削除や出品者情報の開示の措置が迅速に行われるよう、関連するガイドラインを周知し運用を促進する。また、侵害行為への権利者・事業者による迅速な対応がなされるよう更なる対策の検討を行い、必要な措置を構ずる。

    (警察庁、総務省、関係府省)

  • 4)官民協力の下、権利者及びオークション事業者による「インターネット知的財産権侵害品流通防止協議会」などを通じた以下の取組を推進する。
    • a)違法な出品を防止するため、オークション事業者による正確な本人確認を促進する。
    • b)模倣品・海賊版をオークションサイト上から一掃するため、「知的財産権侵害品流通防止ガイドライン」の運用などを通じた自主削除の強化など、オークション事業者及び権利者が一体となった自主的取組を促進する。
    • c)模倣品・海賊版の出品・購入を防止するため、協議会のウェブサイトを積極的に活用することなどを通じ、出品者及び消費者への啓発活動を強化する。また、権利者及びオークション事業者双方に対し、協議会への更なる参加を促す。

    (警察庁、総務省、文部科学省、経済産業省)

(2)インターネット上の海賊行為への対策を強化する

1海外の動画共有サイトにおける違法コンテンツの排除を働き掛ける 大かっこP58]

 海外の動画共有サイトに掲載されている我が国のコンテンツビジネスを阻害するような違法コンテンツを円滑に排除し、コンテンツの流通を促進するよう、2008年度において、日本のコンテンツ事業者が容易に排除を要求できる枠組みや技術的手段の導入などについて、官民挙げて対象国に要請するなどし、その結果を取りまとめる。

(内閣官房、総務省、外務省、文部科学省、経済産業省)

2違法コンテンツ配信の根絶に向けた取組を推進する 大かっこP58]
  • 1)2008年度から、Winny等のファイル共有ソフトを用いて著作権を侵害してファイル等を送信していた者に対し、警告メールを送付するなど電気通信事業者と権利者団体が連携した侵害行為を排除する仕組みづくりを支援する。

    (警察庁、総務省、文部科学省)

  • 3)コンテンツ提供事業者に対し、適法配信サイト識別マークの付与や違法コンテンツ排除のための技術的手段の活用を促す

    (総務省、文部科学省、経済産業省)

5.模倣品・海賊版に関する国民の理解を促進する

(2)模倣品・海賊版に関する国民への啓発活動を強化する 大かっこP59]

 権利侵害事犯の特徴等について事例を紹介したり、様々な機会を捉えて模倣品・海賊版の問題をとり上げたりする等、模倣品・海賊版が社会悪であることを明確にするとともに、その氾濫が社会にもたらす悪影響について訴求し、政府が推進している模倣品・海賊版対策についてセミナーの開催などを通じて周知する。
 また、このような訴求などにより国内外において模倣品・海賊版の購入をしない適切な消費行動につなげることが重要であるという認識の下、消費者の意識向上を図るための戦略的かつ効果的な啓発活動を関係省庁が一体となって展開する。

(内閣府、警察庁、総務省、法務省、外務省、財務省、文部科学省、農林水産省、経済産業省、国土交通省)

6.模倣品・海賊版対策に関する連携体制を強化する

(1)政府内の連携を強化する 大かっこP60]

 外国市場対策、水際・国内での取締りなど模倣品・海賊版対策の推進に関し、関係府省が一体となって対策を推進するため、以下の取組などを通じ、関係府省の連携を強化する。

  • a)政府模倣品・海賊版対策総合窓口は、ウェブサイトによる情報提供を行い、権利者や企業などからの相談に対し、関係府省の連携を確保しつつ、迅速に対応するとともに、「総合窓口年次報告書」を作成する。
  • b)知的財産侵害事案に関する税関当局や国内取締機関からの照会について、知的財産制度を所管する省庁において迅速に回答する等、強力な取締りを推進するための協力体制を強化するとともに、関係府省間において積極的な情報共有を図る。
  • c)各種施策については、関係府省間で相互に調整を行うとともに、「模倣品・海賊版対策関係省庁連絡会議」を機動的に開催し、政策調整を密に行い、総合的に実施する。

(内閣官房、警察庁、総務省、法務省、外務省、財務省、文部科学省、農林水産省、経済産業省)

(2)官民・民民の連携を強化する 大かっこP60]

  • 1)侵害発生国・地域への働き掛けや啓発活動等模倣品・海賊版対策を効果的に推進するため、以下の取組を始めとした様々な取組を通じ、官民・民民の連携を強化する。
    • a)官民合同ミッションの派遣を始め、国際知的財産保護フォーラム、コンテンツ海外流通促進機構、不正商品対策協議会、日本関税協会知的財産情報センターなどの民間団体や我が国企業の内外における模倣品・海賊版対策に関する活動を支援する。
    • b)企業間における模倣品・海賊版に係る情報共有、複数企業が共同した対策の実施、国内外の関係当局による効果的な摘発のための企業による情報提供を促進する。
    • c)企業等を対象にした模倣品・海賊版対策のためのセミナーを全国各地で開催する。

(警察庁、外務省、財務省、文部科学省、農林水産省、経済産業省、関係府省)