資料2−3

私的録音録画小委員会中間整理に関する意見募集の結果について(著作権法第30条の適用範囲の見直し関係)

1.違法配信からの私的録音録画の現状について

2.著作権法第30条の適用範囲の見直しについて

(1) 私的録音録画の実態から権利者に著しい経済的不利益を与えているのではないか等との指摘があった利用形態

a 違法録音録画物、違法配信からの私的録音録画

  •  拡大する音楽コンテンツの違法な流通を防止し、音楽産業の健全な発展を図るためには、違法音楽配信サイトからのダウンロードを著作権法第30条の適用範囲から除外し違法とするとともに、民間レベルでの広報・啓発活動及び学校における著作権教育を一層充実させ、ネットワーク環境に適合したITモラルの涵養を図ることが必要。
    (日本レコード協会)(同旨 レコード会社)
  •  第30条からの適用除外に賛成。
     違法録音録画物や違法サイトからの私的録音録画を放置することは、ベルヌ条約のいわゆるスリーステップテストにある通常の流通を妨げる利用形態であり、また、著作者の利益を不当に害するものであることは明らか。一部にはダウンロードまで違法とするのは行き過ぎとの意見もあるが、明らかな違法複製物からの録音録画物からの録音録画に限定するなどの条件を付すことで利用者保護は十分可能である。
    (音楽出版社協会)(同旨 個人複数)
  •  違法サイト等からの私的録音録画を第30条から外すこと、またその際一定の条件を付すことは、合理的であり賛成。
    (音楽制作者連盟)
  •  違法な録音録画源から録音・録画した複製物が適法となるとは考えられないことから、そのことが法律上明らかになることについては賛成。
     ただし、当該利用行為が著作権法第30条の適用外となった後における違法複製を把握するための方法や、その撲滅・防止の具体的な方法については、今後の議論において十分な配慮を願う。
    (日本音楽著作権協会)
  •  第30条からの適用除外に賛成。
     違法複製物かどうかが分かるような仕組みや、社会的啓発・教育等、利用者保護の観点からの手当を行いつつ、違法な録音録画物や違法サイトからの私的録音録画を30条から除外し、権利者が権利を主張できるよう法律上の措置を講ずるべき。
    (日本経済団体連合会知的財産委員会企画部会)
  •  第30条からの適用除外に賛成。
     違法複製物はすでにウェブ上に蔓延しており、正規の携帯電話向け音楽配信などに甚大な被害をもたらしている。違法な行為を違法と言えるようになるのは、違法サイト対策としても大きな意味がある。また、条件を付すことによって利用者保護は十分可能である。
    (音楽出版社)(同旨 個人複数)
  •  第30条からの適用除外に賛成。
     違法録音録画物や違法サイトからの私的録音録画を第30条の適用範囲にとどめた場合は補償金で対応することになるが、実態調査等で明らかな被害実態に照らせば、極めて莫大な補償金を想定しなければならず、現実的ではない。
    (日本芸能実演家団体協議会・実演家著作隣接権センター)
  •  コンテンツを盗む行為は、物を盗む行為と同じであることを明確にするため、違法サイトからのダウンロードを第30条の対象外にする意見が出たことは評価。ただし、罰則の適用を除外することには反対。また、デジタル複製はDRMにより管理可能であるから第30条を制限する必要もあるため、以上の点から第30条に「著作物の通常の利用を妨げずかつ著作者の利益を害さない範囲」という文言を追加することが必要。
    (日本国際映画著作権協会)
  •  第30条からの適用除外に賛成。
     その上で、違法行為助長に対する抑止力として、早急に罰則規定を法定すべきである。
    (日本俳優連合)
  •  第30条からの適用除外に賛成。
     正直なユーザーが損をしないようなシステムの一環として至極当然だと思う。
    (個人)(同旨 個人複数)
  •  第30条からの適用除外に賛成。
     有害なコンテンツがインターネット上に蔓延しているのは周知の事実であり、違法なものをダウンロードすることを「適法」とするのは社会正義に反し、教育上にも問題があるので、速やかに違法とすべき。
    (個人)
  •  中間報告の記述のみでは広汎な分野に負の影響を及ぼすおそれがなお払拭されていないと考えられるため、リスク評価を含めた議論の継続が望ましい。
    (日本コンパクトディスク・ビデオレンタル商業組合)
  •  著作権法第30条の適用範囲の見直しにあたっては、第30条の立法趣旨に立ち返り、また憲法が保障する表現の自由との調整が不可欠であるという観点から慎重に検討していただきたい。改正後の影響があまりに広範囲に及ぶうえに、影響の度合いも深刻であるため、拙速な結論を導くことには反対。
    (ポータルサイト提供事業者)
  •  次のような理由から第30条からの適用除外に反対。
    1. ダウンロードしたファイルが違法なものであるかどうかは、ダウンロードした後でなければ厳密には分からない。
    2. ダウンロードした後であっても、それが違法なものであるかどうかを区別するのは難しい場合がある。
    3. ユーザーがダウンロードした時点で違法サイトと承知していたかどうかを判定するのは難しい。
    4. 管理されたサイトにのみ適法マークを与え、それ以外をすべて違法であるかのように扱うのはあまりに乱暴である。
    5. 曖昧な違法性の定義によって、一般のユーザーは常に「犯罪を犯す」リスクにさらされることになる。
    (個人)(同旨 個人複数)
  •  第30条からの適用除外に反対
    1. 現在のインターネットは、適法・違法の区別も難しい多様な情報が流通しているので、違法サイトへのアクセスへの減少を起こすばかりか、適法サイトへのアクセスをも減少させてしまう可能性がある。適法サイトへのアクセスも減少してしまいかねない本案は、明らかに著作権法の目的と反している。
    2. 本案の有効性が問題。そもそも、どのように「情を知って」行為を行ったことを知るのか分からない上、あるユーザがどのサイトにアクセスしたかという情報は、「通信の秘密の保護」により守られており、知るすべがなく、解釈の仕方によってはどのようにも解釈でき、日本国民全員が犯罪者となってしまう危険性をはらんでいる。また、違法ダウンロード者の発見などという行為は、国家による情報統制・監視を助長するものであり、危惧を覚える。
    3. 技術的側面について問題。現在のWeb技術は、あるページを閲覧すると同時に、クライアントにデータが保存されるようになっており、Webを用いてストリーミングを行うと言うことは、ダウンロードしながら再生しているに過ぎず、ダウンロードのみを対象とするという本案は現実に即していないと言わざるをえない。
    (個人)(同旨 個人複数)
  •  第30条からの適用除外に反対。
     現行法で取り締まれることを行わず、いたずらに法改正で縛ることは、利用者の立場として看過できない。
     「情を知って」という例えを用いているが、違法サイトと適法サイトを見分ける確実な方法が存在しないため、その判断は非常に曖昧にならざるを得ず、厳密な適用は非常に難しい。
     また、運用上の工夫を施すにしても、違法サイト側に偽装されてしまえば、一般利用者には識別が困難であり、結果として、一般利用者が適法サイト、違法サイトのチェックを行う新たな負担を強いられることとなる。
    (個人)(同旨 個人複数)
  •  第30条からの適用除外に反対。
     利用者に責任を負わせるのは行き過ぎであり、インターネット利用者を萎縮させるだけである。
    (個人)(同旨 個人複数)
  •  第30条からの適用除外に反対。
     ファイル交換ソフトを利用したダウンロード等を「通常の流通を妨げる利用形態」と見なしているが、近い将来において、このファイル交換ソフトによる流通技術が、ローコストな流通形態として市場を確立しうる可能性が高く、この技術を含むネットワーク技術の利用を違法対象とすることに強く反対する。
    (個人)(同旨 個人複数)
  •  第30条からの適用除外に反対
     法文にストリーミングは対象外と明記されない限り、映画の保護期間延長問題で文化庁の発言を裁判所がひっくり返したように、個々の裁判官の判断がどうなるか不安である。専門的知識を持たない裁判官に違法と判断される可能性がある。
    (個人)(同旨 個人複数)
  •  違法サイトとは誤解をまねく表現であり、報告書を通じて使用されるべきではない。
    (個人)(同旨 個人複数)
  •  この中間整理では、個人のパソコンまで含めて便宜的に「違法サイト」と呼んでおり、その範囲が膨大で、かつ、基準が明確ではないため、厳密な定義をするべき。
    (個人)
(違法サイトと適法サイトの区別について)
  •  第30条からの適用除外に賛成。
     利用者保護の観点から、適用除外の範囲に一定の条件を課すことにより、知らずに罪を犯すリスクをユーザーに負わすことのない制度設計とすることができる。なお、権利者としても違法サイトと適法サイトを識別するためのマークを制定し、広くユーザーに周知を図る予定。
    (日本レコード協会)
  •  第30条からの適用除外に反対。
     違法サイトと適法サイトを識別するためのマークが、コンテンツではなくサイトごとに設定されるということを前提としているのであれば、原理的にマークが設定できないサービスが多々存在する。また、当該マークは法制化されないのであれば、勝手に当該マークを設置するサイトを規制することもできず、実質的に利用者の違法ダウンロードの故意が認められないこととなる。
    (インターネット先進ユーザーの会)
  •  第30条からの適用除外に反対。
     違法サイトと適法サイトを識別するためのマークにより、簡単に設置されそうにない動画投稿サイトのようなユーザー主導のサービスやアマチュア作者のサイト、また、海外のサイトなどが「適法市場」から不当に締め出されることにならないか。
    (個人)(同旨 個人複数)
(技術的論点について)
  •  第30条からの適用除外に反対。
     ストリーミングとダウンロードは技術的に根本的な違いがあるわけではなく、両者を法律的に大きく意味の異なるものとして取扱うべきではない。
    (インターネット先進ユーザーの会)
  •  第30条からの適用除外に反対。
     議事ストリーミングでダウンロードされたキャッシュが複製と見なされるか否かについては専門家の間でも争いがあり、一般ユーザーの法的地位は甚だ不安定なものとなる。
    (インターネット先進ユーザーの会)(同旨 個人複数)
  •  第30条からの適用除外に反対。
     ストリーミングとダウンロードの違いが判り辛く、無自覚で潜在的な違法行為者を増やしかねない。
    (個人)(同旨 個人複数)
(送信可能化権による対応について)
  •  第30条からの適用除外に賛成。
     海外から送信される場合や、送信元が秘匿されるP2Pソフトウェアが利用される場合など、送信可能化又は自動公衆送信の違法性を追求するだけでは十分な対策を取れないことが多々ある。
    (日本映画製作者連盟)(同旨 日本レコード協会)
  •  第30条からの適用除外に賛成。
     権利者の被害は実質的にはダウンロードされることより生じるものであることから、被害実態を勘案した場合、違法サイトからのダウンロードを合法とすることは適当でない。
    (日本レコード協会)
  •  第30条からの適用除外に反対。
     権利者の利益を大きく損なっていると言えるのは、個々のダウンロード行為ではなくアップロード行為であり、それは既に送信可能化権によって権利行使が可能である。
    (インターネット先進ユーザーの会)
(架空請求の恐れについて)
  •  第30条からの適用除外に賛成。
     利用者保護については中間整理のような条件を付すことで対応可能であり、架空請求の恐れは権利保護を躊躇する理由にはならない。
    (日本映画製作者連盟)
  •  第30条からの適用除外に反対。
     違法サイトと適法サイトとの区別が定かではないサイトからダウンロードした者に対して、第三者が違法ダウンロードであるとの主張により、対価を請求してくる恐れがある。
    (インターネット先進ユーザーの会)(同旨 個人複数)
(第30条の適用除外とする範囲について)
  •  第30条から適用除外に賛成。
     加えて、有料放送のスクランブルを解除する機器(違法チューナー)をインターネットオークションから購入し、有料放送を“ただ見”、録音録画する行為が発生しており、権利者の利益を害している状況があるので、「違法チューナーを経由して有料放送を視聴し録音録画する行為」についても第30条の適用を除外してもらいたい。
    (日本ケーブルテレビ連盟)
  •  録音録画に限定せず、どのような著作物の私的ダウンロードが著作権法第30条から除外することが相応しいかにつき、一から議論すべき。
    (コンピュータソフトウェア著作権協会)(同旨 日本経済団体連合会知的財産委員会企画部会、コンピュータエンターテインメント協会、コンピュータ関連会社)
  •  現在、ファイル交換ソフトを利用した違法なソフトウェアのアップロードおよびダウンロードにより甚大な被害が生じているのは明らか。ダウンローダーが存在するのでアップローダーも存在するという需要と供給の関係があるため、アップロードは違法とされているものの終息する気配がないことから、適用除外の対象を録音録画に限定することは適当とは言えない。また、ソフトウェアの違法複製物のダウンロードは引き続きやっても良いという誤ったメッセージを伝えかねない。違法と知っている場合に限定すること、利用者に十分周知すること、罰則の適用除外とすることの条件付きで、違法なソフトウェアの複製物のダウンロードを30条の適用範囲から除外すべき。
    (ビジネス・ソフトウェア・アライアンス)

b 他人から借りた音楽CDからの私的録音

  •  他人から借りた音楽CDからの私的録音の取扱いについては、私的録音の実態の推移や権利者への影響等を見ながら、今後も継続して検討すべき。
    (日本レコード協会)

(2) 利用形態の実態から私的録音録画の対価が既に徴収されているのではないかと指摘のあった利用形態

a 適法配信事業から入手した著作物等の録音物・録画物からの私的録音録画

  •  権利者が著作物の提供者(配信事業者等)と契約し、この契約の内容に基づき、当該提供者と消費者が契約を結ぶことにより、消費者の録音録画を管理することが可能であるため、第30条の適用除外としてもよい。
    (日本音楽事業者協会)
  •  慎重な検討が必要。
    • 当協会の許諾は、消費者の受信端末へのデータの複製までであり、二重徴収との指摘は事実に反する。
    • 権利者が配信事業者との契約により利用者の録音録画を管理するためには配信事業者の協力が必須であるにもかかわらず、配信事業者の管理責任が法律上明確ではないため、仮に事業者が協力を拒否した場合には、十分な管理が行えない可能性がある。
    (日本音楽著作権協会)
  •  趣旨は理解できるが、権利者が自由な意思に基づいて私的録音録画も含めた許諾を行いその対価を徴収するという前提を成り立たせるだけの状況(対価額の明確化や、権利者に十分な選択肢が与えられているか否か等)についての議論等が十分に尽くされないまま導入することは避けるべき。
    (音楽制作者連盟)(同旨 日本芸能実演家団体協議会・実演家著作隣接権センター、個人)
  •  権利者が市場の動向等から配信後の私的複製を制限しないビジネスモデルを選択せざるを得ないような場合は、配信後の複製の許容範囲やその対価に関する権利者の裁量権が事実上市場の動向や配信事業者に委ねられることから、「配信後の私的複製を制限しない場合」については、著作権法第30条の範囲から除外するべきでない。
    (日本芸能実演家団体協議会・実演家著作隣接権センター)
  •  現行法下で俳優の隣接権が及ぶ範囲が一部不透明な部分もあり、技術的コントロールも全面的に解決されていない現状では、慎重に取り扱って見直しを進めていただきたい。
    (日本俳優連合)
  •  権利行使が事実上できないことに鑑みて第30条が制定されていることに照らせば、技術やビジネスモデルの活用によって権利行使が可能となる場合には私的自治が優先されるべきである。
     ただし、どのような態様の録音録画行為を除外すべきかについての整理は不適当。
    • 有料放送のように著作権保護技術が利用されている場合、それを回避して行う複製は著作権侵害を構成するから、著作権者等によって予め決められた範囲の複製は、著作権者等により許諾された複製であると考えられ、著作権保護技術が利用されている場合の録音録画は、30条の適用を除外すべきである。著作権保護技術が利用されていることを著作権の権利行使と同視すべきと考えれば、その範囲内の複製に対して私的録音録画補償金をかけることは二重の利得を著作権者等に与えることとなる。
    • CDレンタルにおいても、複製量によって複数の契約を用意することは可能なはずであり、管理可能性という点では、適法配信や有料放送と異なるところはなく、ユーザーのプライバシー等を侵害することなくそれに相応した対価の徴収が可能という点でも何ら適法配信と異なるところはない。相違点は著作権保護技術が利用されていない点だけであるが、判例理論において技術的支配が管理支配性の判断の要素となっているわけではなく、第30条の適用範囲の検討に当たり「管理可能性」を技術的管理に限定すべきでない。
    (電子情報技術産業協会)
  •  放送と通信の融合がすでに始まっている時代において両者を峻別する制度を設けることは、時代に逆行するばかりでなく、今後の技術やビジネス・サービスの発展に対して悪影響を及ぼしかねないため、「配信事業者等の音楽・映像ビジネスの新たな展開などとの関係を十分考慮」する必要がある。
    (ポータルサイト提供事業者)
  •  第30条の適用除外に反対。
     著作権法第30条についてオーバーライド契約を許すという発想が、消費者にとって危険である。
    (個人)

b レンタル店から借りた音楽CDからの私的録音、適法放送のうち有料放送からの私的録画

  •  私的録音実態の推移や権利者への影響等を見ながら、今後も継続して検討すべき。
    (日本レコード協会)
  •  「利用者の録音録画を想定した対価を取得し得る、契約等の他の手段があるかどうか」という基準によって判断すべき。権利者、提供事業者、エンドユーザーをつなぐ契約等の手段があるのであれば、補償金制度のような間接的なシステムに頼る必要はない。
     実質的にはレンタルからの録音および有料放送からの録画の料金には家庭内での複製見合い分が含まれていると考えられるので、現実に行われているビジネスやユーザーの慣行に影響を与えることなく、私的録音録画の範囲からそれらを除外出来る。
     なお、有料放送は伝送方式が放送であるだけで、著作権保護技術を用いてユーザーの利用をコントロールしながら有料でコンテンツを配信するという点で適法配信と全く同様であり、これらを区別することは、今後の成長が期待されるネット配信事業者を不利な立場に置くことになり不適切である。
    (日本記録メディア工業会)
  •  有料放送からの私的録音録画にかかる第30条からの適用除外は、ビジネスモデルや契約の大きな変更を生じることになり、関係者にとって有益でないので、中間整理に賛成。
    (日本民間放送連盟)
  •  レンタル店から借りたCDからの私的録音、有料放送からの私的録画は、契約時に私的録音録画の対価は支払われておらず第30条の適用除外とすべきでない。
    (日本音楽事業者協会)
  •  第30条の適用除外を見送る方針は妥当である。
    (日本コンパクトディスク・ビデオレンタル商業組合)