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聴覚障害者に関する課題

全日本難聴者・中途失聴者団体連合会
理事長 高岡 正

1.  日本国憲法では何人も生きる生活する権利の平等をうたっている。
 日本には身体障害者福祉法の聴覚障害者は30万人であるが、ある補聴器メーカー社長は難聴者人口は1,500万人を越える業界の推定を紹介しており、さらに高齢者は2,300万人を越えていることから、実際の生活に支障をきたしている高齢難聴者は多い。
 これらの人びとは、放送や著作物の提供を受けているとはいいがたい。現在、放送につけられている字幕は(資料1に示す)総放送時間に対してNHK総合で43.1パーセント、民放キー5局で32.9パーセントである。手話はNHK教育が2.4パーセント、民放(在京)0.1パーセントである。日本図書館協会が配付事業としている映像資料は20,956タイトルであるが、そのうち字幕付きは7.1パーセントである。視覚障害者のための録音図書は1,700冊である。この現実の中で情報の共有は完全に崩されており、この状態下に聴覚障害者が生活しているという現実がある。

2.  聴覚障害者向けに、著作物に対して字幕や手話、解説をつけたビデオやDVDを貸し出しすることは聴覚障害者情報提供施設で実施されているが利用者が限定されている。
より、幅広い聴覚に障害を持つ人々を対象に、公衆通信することに、著作権の権利制限をもとめる。公衆通信とは公衆自動送信(インターネット)だけではなく、衛星や地上電波による通信をも意味する。

3.  生放送の困難さと要約については、字幕や手話、音声解説について、音声や情景をすべて字幕や手話に置き替えたり、音声で説明することは困難である。また、それを受け取る側からしても、話された言葉を聞くのと同じ速さで読み取ることは困難で、また理解を進めるものではない。従って全体を通じて要約表現することを認める必要がある。
 例えば、落語などは生放送の字幕では字幕と映像が遅れてしまい、落語が鑑賞できない。事前に字幕を入れて提供する必要がある。

4.  放送された番組に、字幕と手話、解説放送をつけることを、現行認められている生放送、リアルタイム通信で全てを行なうことは不可能であり、それぞれ作業には時間を要する。オフライン作業で字幕や手話、解説をつけ障害者に対して公衆通信で再放送することに、著作権者の権利制限を求める。
 特に、緊急災害時の視聴覚障害者への情報保障は放送事業者が十分な体制を取れない現状では、字幕、手話、解説などをつけて、再放送する必要がある。

5.  これらの作業は本来出版や放送を行う側が行い、それを保証することを政府が義務化すべきことであるが、放送事業者だけの取り組みでは十分でない現状から情報提供施設やNPOなどが自主的に行なうこと必要があり、著作権制限はそれを保障するものとなる。
 字幕や手話、解説は、著作物から見て、一定の水準を要求するものである。従って実施主体は誰でもとは言えない。聴覚障害者情報提供施設のほか、聴覚障害者のために情報を提供する事業を行う公益法人、及び公共図書館を含む公的な教育機関等が貸し出しや公衆送信、ならびに、映像による著作物への手話や字幕を挿入する機関と考える。


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