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資料2

海賊版の広告行為の権利侵害化に関する実行者の範囲および海賊版対策の実効性確保についての権利者・団体の考えについて

社団法人コンピュータソフトウェア著作権協会

1. 広告行為の実行者の範囲について

 海賊版の広告行為の権利侵害化に際して、実行者をどの範囲とするかについては、主体的に広告行為を行った者に限定し、広告行為の場を提供したインターネットオークション事業者やインターネットサービスプロバイダー(以下「事業者」とする)については、想定しておりません。その理由は以下のとおりです。

1 事業者の法的責任のバランスを欠くこと
 著作物そのものが権利者に無許諾でインターネット上にアップロードされた場合の事業者の法的責任については、原則として刑事責任は問われず、民事責任についてもいわゆる「プロバイダ責任制限法」に基づき責任が制限されています。今回、見なし侵害としての法制化が検討されている広告行為について、事業者も実行者に含めるとすると、無許諾アップロードの場合と同様の「場の提供」という関与対応にかかわらず、広告行為の場合にのみ事業者が刑事・民事責任を負い、支分権侵害では原則として問われない事業者の法的責任が、見なし侵害の場合には追及されることになり、両者のバランスを著しく欠いてしまいます。もちろん、権利者としては、広告態様が多様になっている等の理由から、海賊版の広告行為を主体的に実行する者の範囲については、より広く捉えるべきであると考えていますが、現時点では事業者を対象とすることは想定しておりません。

2 権利者と事業者との協力体制への影響
 第3回の法制問題小委員会への提出資料「インターネット上での海賊版対策と広告行為について」にて報告のとおり、現在、当協会と一部のインターネットオークション事業者との間においては、海賊版の蓋然性の高い出品についての削除スキームを構築し、運用しています。仮に事業者を広告行為の実行者に含めることとすると、これまで、権利者・事業者間で構築してきた上記取り組み等の協力体制にも、著しい悪影響を及ぼす可能性があります。なお、事業者を行為者に含めない場合でも、当協会では下記の通り海賊版対策の実効性は確保できるものと考えています。

2. 海賊版の広告行為の権利侵害化後における海賊版対策の実効性確保について

 海賊版の広告行為の実行者を、主体的に広告行為を行った者に限定するとした場合においても、権利者・権利保護団体としては、以下の取り組みを通じて海賊版対策の実効性は確保できると考えます。

1 差止請求について
  Webページを通じた海賊版の広告行為を主体的に実行する者に対しては、現在、法的根拠のない広告中止「要請」が行えるにとどまっていますが、実行者の所在が分かれば、海賊版の広告行為自体を根拠にして、実行者に対する広告行為の差止請求ができるようになります。
 また、事業者との関係では、著作権法違反ではなくオークションサービスの規約違反に基づいて上述の出品削除スキームが運用されているところですが、広告行為自体が権利侵害とされれば、事業者に対して、「プロバイダ責任制限法」に基づいた削除請求(差し止め請求)を行うことができるようになります。また、このような出品削除スキームを構築していない事業者に対しても、海賊版出品の削除要請が法的根拠をもって行えるようになります。

2 発信者情報開示請求について
 海賊版の広告行為が権利侵害となれば、事業者に対して「プロバイダ責任制限法」に基づく発信者情報開示を請求することが可能となり、これまで実行者が不明の場合には行えなかった民事的な対応の実現に資するようになります。もちろん、現状の「プロバイダ責任制限法」の運用上、発信者情報開示が容易にはなされないことは認識していますが、当協会も参加している「プロバイダ責任制限法ガイドライン等検討協議会」において策定されている「発信者情報開示関連ガイドライン」に関して、海賊版の広告行為に関する規定を盛り込むよう見直しを求めるなどの努力を行っていきます。

3 刑事摘発について
 インターネットオークションを悪用した海賊版販売について、悪質性の高い事案については、権利者から捜査機関に対し告訴を行い、刑事責任の追及を要請しています。このような場合においても、広告行為自体を権利侵害とすることで、実行者の刑事責任の追及を迅速に開始することが可能となることから、海賊版の流通防止の実効性向上につながると考えます。

4 その他の効果
 上述の通り、海賊版広告行為の権利侵害化は、現に発生しつつある、あるいは実際に発生した著作権侵害行為への対策に効果的であると考えていますが、加えて、インターネットオークションの利用者に対して、海賊版の出品行為が犯罪であることを事前に告知・広報することができるようになるなど、著作権侵害の発生予防・防止にも相当な効果を有すると考えます。
以上


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