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資料3

過去の放送番組の二次利用の促進に関する報告書の概要について

1   検討の経緯
 文化庁では、昨年10月、放送事業者、番組製作者及び権利者のそれぞれの分野の有識者の協力を得て、「過去の放送番組の二次利用の促進に関する検討会」を設置し、過去の放送番組の保存と二次利用(注1)の現状を把握・分析し、著作権契約(注2)の円滑化を中心に課題の解決に向けて必要な方策を検討することとした。

  (注1)  「二次利用」とは、放送番組の当初の放送(一次利用)後に行われる放送、有線放送、自動公衆送信(インターネット配信等)、複製(ビデオ、DVD製作等)等の放送番組の利用のことを言う。
(注2)  「著作権契約」とは、著作物や実演・レコードの利用に関する契約のことをいう。

2   報告書の概要
(1) 過去の放送番組の二次利用について
1 過去の放送番組の保存について
 1980年代後半から各放送局は、二次利用を視野に入れた番組の保存を行っているが、NHKが比較的早くから二次利用のための保存を始めたのに対して、民放では、1990年代後半からである。

2 過去の放送番組の二次利用の現状について
 放送局や番組製作者は、放送番組には、契約や人権・プライバシー等の問題から二次利用が制限されているものもあるので、あくまでも可能な範囲で二次利用を行うこととしている。
 主な用途は、自局による再放送、国内外の放送局への番組販売、ビデオ・DVD等の販売会社への提供、書籍・ゲーム等への商品化等である。
 インターネット配信については、配信インフラや消費者ニーズの問題からまだ市場が成立しておらず、関係者がビジネスになりにくいと考えているところから、放送番組の供給はあまり進んでいない。

3 著作権契約について
 放送局と締結した著作権契約の効果は、契約の一方が著作権等の管理団体の場合を除き、多くの場合、当初の放送(一次利用)に関する契約であり、放送番組の二次利用については改めて契約が必要である。
 これは、放送番組は、視聴者やスポンサーにすぐれた番組を提供すること、すなわち当初予定した放送(一次利用)の実施を最優先にして制作するという性格を有しているからであり、著名な作家や実演家については、二次利用の許諾を含めた契約の締結を求めると、使用料や出演料の高騰を招いたり、制作現場が混乱したり、関係権利者の反発を招くなど一次利用にも影響を与える可能性があるため、今後もこのような著作権契約の慣行が完全に変わることはないと考えられる。

(2) 過去の放送番組の二次利用に関する問題点の整理について
1 著作権契約以外に関する問題点
 過去の放送番組の二次利用ができない場合のほとんどは、著作権契約以外の理由であり、主な理由は次のとおりである。
   そもそも番組が保存されていない。また、保存されていても保存状態が悪く利用できない。
 二次利用をするためには、使用料の支払いを含め様々な経費が必要となるが、これに見合う収入が見込めない。
 放送局自らが再放送を予定していたり、他のメディアによる提供と競合する場合など、他の事業者への番組提供について、調整を要する業務上の理由がある。

2 著作権契約に関する問題点
 著作権契約を理由として、二次利用できない場合はそれほど多くないが、主な理由を整理すると次のとおりである。
   できた作品がイメージどおりでない、演技が未熟で他人に見せたくないなど主として権利者の思想信条により、許諾を拒否される場合(少数のケース)
 著作者、実演家等の死亡、引退等により権利者の所在が不明である場合
 権利者との間で使用料について協議の整わない場合か、実演家のイメージ戦略のため、一定の期間は二次利用を制限される場合等

(3) 過去の放送番組の二次利用に関する著作権契約を円滑化するための方策について
 番組供給ができない理由の中で、著作権契約の問題が占める割合はそれほど大きくないが、文化庁や関係団体は、次の措置に取り組む必要がある。

1 広範な関係者による議論の場の設定
 放送番組の二次利用にかかわる様々な関係者が、意見交換し共通認識を持った上で、二次利用の促進に向けて協議できる場を文化庁が設定する。

2 権利者情報の整備
 円滑な著作権契約のためには、権利者情報に関するデータベースの整備と必要に応じて情報を提供しあう仕組みの構築が必要であり、関係団体は一層の取り組みを行う。また、文化庁は、これらの取り組みを側面から支援する。

3 権利者不明における利用促進等
 権利者の所在が不明で連絡がとれない場合を可能な限りなくすために、関係者の連携・協力により、権利者団体において権利者情報の整備を進める。
 文化庁は、裁定制度について、ベルヌ条約等の国際条約の規定や裁定制度の趣旨に留意しつつ、裁定手続きの見直しも含め、利用マニュアルの整備・公表を行う。

4 使用料の設定等に関する協議の促進等
 インターネット配信については、関係の利用者団体から構成される「利用者団体協議会」が関係権利者団体と順次、使用料について協議を進めているが、文化庁は、それらの協議が円滑に進むように必要に応じて助言等を行う。
 関係団体間のルールが適用されない権利者に対して、ルールの適用拡大を図るために、関係団体間の協議の推進や関係権利者団体への加入の働きかけを強化する。


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