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資料4

海賊版の広告行為に対する取締りについて

1. 著作権法の規定について

 著作権法においては、第113条第1項第2号は、権利を侵害する行為によって作成された物及び輸入物を情を知って頒布する行為及び頒布を目的として所持する行為を、権利を侵害する行為とみなしている。
 ここでいう「所持」とは、支配の意思をもって財物を事実上自己の支配下に置く行為をいい、物理的に身につけている状態にはなくとも、社会通念上支配があると考えられる状況で足りるとされる。
 例えば倉庫に保管している行為、レンタル・販売店でカウンターや倉庫に所持保管する行為、宅配方式でレンタルするためや訪問販売のために事務所等に保管する行為、いわゆる「カバン屋」という海賊版を運ぶ者がレンタル店や販売店に販売するために携帯する行為などが「所持」に含まれる(注1)。

(注1)  加戸守行著「著作権法逐条講義」(著作権情報センター 2006)

2. 他の知的財産権法における規定について

 各知的財産法においては、侵害物品の広告や譲渡の申出自体を侵害行為として規定しているところである。

商標法
第2条  1、2 (略)
3  この法律で標章について「使用」とは、次に掲げる行為をいう。
 (略)
 商品又は商品の包装に標章を付したものを譲渡し、引き渡し、譲渡若しくは引渡しのために展示し、輸入し、又は電気通信回線を通じて提供する行為
三〜七  (略)
 商品若しくは役務に関する広告、価格表若しくは取引書類に標章を付して展示し、若しくは頒布し、又はこれらを内容とする情報に標章を付して電磁的方法により提供する行為

 商標の広告的な使い方にも信用の蓄積作用があり、また、このような他人の使い方にも信用の蓄積作用があり、また、このような他人の使い方は商標の信用の毀損を招くという理由で、商標を広告等に用いる場合もその「使用」とみるべきだという見地から、商標の使用の一態様として規定されている。
 ここでいう「広告」とは、看板、引札、街頭のネオンサイン、飛行機が空に描いたもの、テレビによる広告、カレンダー等が含まれる。ただし、ラジオ、街頭放送による広告等は一般的な意味では広告であるが、媒体が音声であるため、ここでいう標章についての「使用」には論理的に入り得ない(注2)。

(注2)  特許庁編「工業所有権法逐条解説」(発明協会 2001)

特許法
第2条  1、2 (略)
3  この法律で発明について「実施」とは、次に掲げる行為をいう。
 物(プログラム等を含む。以下同じ。)の発明にあっては、その物の生産、使用、譲渡等(譲渡及び貸渡しをいい、その物がプログラム等である場合には、電気通信回線を通じた提供を含む。以下同じ。)若しくは輸入又は譲渡等の申出(譲渡等のための展示を含む、以下同じ。)をする行為

意匠法
第2条  1、2 (略)
3  この法律で意匠について「実施」とは、意匠に係る物品を製造し、使用し、譲渡し、貸し渡し、若しくは輸入し、又はその譲渡若しくは貸渡しの申出(譲渡又は貸渡しのための展示を含む。以下同じ。)をする行為をいう。

実用新案法
第2条  1、2 (略)
3  この法律で考案について「実施」とは、考案に係る物品を製造し、使用し、譲渡し、貸し渡し、若しくは輸入し、又はその譲渡若しくは貸渡しの申出(譲渡又は貸渡しのための展示を含む。以下同じ。)をする行為をいう。

 TRIPS協定第28条中の「販売の申出(offering for sale)」は、特許発明に係る物を販売のために展示する行為だけでなく、例えば、カタログによる勧誘、パンフレットの配付等も含む概念であると解されている。
 このため、TRIPS協定第28条の規定に従い、「譲渡若しくは貸渡しの申出」を物の発明(第1号)及び物を生産する方法の発明(第3号)の実施行為として、平成6年の一部改正によって規定したところである。
 実用新案権及び意匠権についても、保護水準の引き上げの観点から特許法と同様、「譲渡若しくは貸渡のための展示」を「譲渡若しくは貸渡しの申出」に改正した(注3)。

(注3)  前出「工業所有権法逐条解説」

種苗法
第2条  1〜4 (略)
5  この法律において品種について「利用」とは、次に掲げる行為をいう。
 その品種の種苗を生産し、調整し、譲渡の申出をし、譲渡し、輸出し、輸入し、又はこれらの行為をする目的をもって保管する行為

 また、種苗法にも同様の規定が存在する。

3. プロバイダ責任制限法の適用について

 プロバイダ責任制限法は、特定電気通信による情報の流通によって権利の侵害があった場合について、特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示を請求する権利につき定めるものであり、適用要件として、「特定電気通信による情報の流通によって権利の侵害があった場合」が必要となる。
 ここでいう「権利の侵害」とは、プロバイダ責任制限法で独自に定義されるものではなく、個人法益の侵害として、民事上の不法行為の要件としての権利侵害に該当するものである。ここで、侵害されることとなる「権利」については、著作権侵害、名誉毀損、プライバシー侵害等様々なものが想定され、特に限定をすることなく、それらについて、横断的に対象とするものである。これは、一般不法行為等の場合と同様である(注4)。
 なお、プロバイダ責任制限法ガイドライン等検討協議会において、平成19年2月に「プロバイダ責任制限法発信者情報開示関係ガイドライン」において、発信者情報の開示請求を受けたプロバイダ等が、権利侵害の明白性を判断した上、裁判外で発信者情報の開示を行うためには、著作権等侵害があることを明確に判断できるケースとして、以下の場合をあげている。
  1   情報の発信者が著作権等侵害であることを自認している
2 情報が著作物等の全部又は一部を丸写ししている
3 著作物等の全部又は一部を丸写ししたファイルを現在の標準的な圧縮方式(可逆的なもの)により圧縮している

(注4)  特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律-逐条解説-(平成14年 総務省)

4. 検討を行うべき点について

 商標権・意匠権等を侵害する偽ブランド品とは異なり、海賊版の販売の広告は著作権の侵害行為とされていないが、知的財産立国をめざす我が国において、模倣品・海賊版の流通を防止する観点から、これらを販売するための広告を許容することは適切ではないとの指摘がある。

 そこで、以下のような点について検討してはどうか。

  1   海賊版の広告行為を取り締まる法的措置を講ずる必要性はあるか。
(現行法で対処できない事例はどのくらい存在するのか)

2 海賊版の広告行為を取り締まる法的措置を講じた場合、どのような行為態様を取締りの射程にすべきか。
例えば、
  広告行為者と海賊版所持者が別人格で、広告行為者が受注を受け、販売する場合


広告行為者と海賊版所持者が別人格で、所持者が受注・販売する場合


広告行為者と海賊版所持者が別人格であるが、両者には特別な関係(例えば、親会社と子会社)があり、所持者が受注・販売する場合


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