1. |
デジタルコンテンツの特質に応じた制度の在り方 |
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問題の背景
昨今、デジタル化・ネットワーク化の下で新たに発達してきた流通の仕組み等においてコンテンツが十分に流通していないとして、官民を通じて、デジタル化・ネットワーク化の特質に応じて、著作権の保護や利用の在り方に関する新たな法制を提案する動きがある。これらの提案は、詳細や全体像が必ずしも明らかでないが、概ね以下のような共通の内容を含んでいると思われる。このような提案について、法体系や条約等との関係から、どのような可能性や課題があるか。
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提案されている案の概要
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著作権法とは別に特例法を制定する。特例法が対象とする範囲については、
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「デジタルコンテンツ」(詳細は不明)とそれ以外で分ける |
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財産的価値のある商業用コンテンツとそれ以外で分ける 等の案がある。 |
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◆ |
特例法では登録制を採用する。登録したコンテンツについては、
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・ |
より簡易な裁定制度により、一定の合理的な利用であれば、報酬を支払うことで許諾なく利用できる。 |
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新たに設けるフェア・ユース規定の対象となる。 |
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不正使用に対するより強力な取締りの仕組みを設ける。 等 |
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最近の動き
○ |
知的財産戦略本部コンテンツ専門調査会(平成19年3月8日配付資料)
(2) |
法制度・契約を改革する |
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ビジネススキームを支える著作権制度を作る
<課題> |
デジタル化・ネットワーク化の進展などコンテンツを巡る環境は急激に変化しており、ユーザーニーズの多様化も進んでいる。コンテンツビジネスの振興は、民が主体であり、官は阻害要因を排除するという視点の下、環境の変化に柔軟に対応する新たなビジネスを支えることができるよう、著作権制度とその運用の見直しを進める必要がある。 |
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一般ユーザーが著作物を楽しむ機会を充実する
<課題> |
ネット上で誰でも気軽に参加してコンテンツが創作され、循環する時代において、ユーザーが我が国の豊かなコンテンツを楽しむことができるよう、技術の発展や多様化するユーザーニーズに柔軟に対応したサービスを支える法制度を構築し、コンテンツ産業の健全な発展を目指す必要がある。 |
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○ |
経済財政諮問会議(平成19年2月27日・有識者議員提出資料)
(2) |
デジタル・コンテンツ流通促進法制の整備
わが国では貴重なデジタル・コンテンツの多くが利用されずに死蔵されている(例:過去のTV番組の再放送等が著しく制限)。インターネット上でデジタル・コンテンツを流通させるためには、著作権、商標権、意匠権などの全ての権利者から事前に個別に許諾を得る必要があり、手続きコストがビジネス上見合わないためである。
デジタル・コンテンツ市場を飛躍的に拡大させるため、世界最先端のデジタル・コンテンツ流通促進法制(全ての権利者からの事前の許諾に代替しうる、より簡便な手続き等)を2年以内に整備すべきである。 |
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問題点の概要
ネットオークション等で海賊版の取引が行われる場合、海賊版の流通防止のためには、出品の段階で必要な措置を行うことが必要であるが、海賊版出品者を特定するため等の手段として活用が期待される「プロバイダ責任法」(注1)に基づく手続きは、情報の流通それ自体が権利侵害になる場合(注2)でなければ適用がない。このため、産業財産権法と同様に、著作権法上、海賊版の販売等の広告行為(譲渡の申出等)を、権利侵害と位置づけるべきとの要請がある。
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関係規定
○ |
商標法(昭和34年法律第127号)
(定義)
3 |
この法律で標章について「使用」とは、次に掲げる行為をいう。
八 |
商品若しくは役務に関する広告、価格表若しくは取引書類に標章を付して展示し、若しくは頒布し、又はこれらを内容とする情報に標章を付して電磁的方法により提供する行為 |
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○ |
意匠法(昭和34年法律第125号)
(定義)
3 |
この法律で意匠について「実施」とは、意匠に係る物品を製造し、使用し、譲渡し、貸し渡し、輸出し、若しくは輸入し、又はその譲渡若しくは貸渡しの申出(譲渡又は貸渡しのための展示を含む。以下同じ。)をする行為をいう。 |
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○ |
著作権法(昭和45年法律第48号)
(侵害とみなす行為)
第113条 |
次に掲げる行為は、当該著作者人格権、著作権、出版権、実演家人格権又は著作隣接権を侵害する行為とみなす。 |
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二 |
著作者人格権、著作権、出版権、実演家人格権又は著作隣接権を侵害する行為によつて作成された物(前号の輸入に係る物を含む。)を、情を知つて、頒布し、若しくは頒布の目的をもつて所持する行為 |
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最近の動き
○ |
知的財産戦略本部知的創造サイクル専門調査会(平成19年2月26日配付資料)
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海賊版の広告行為を権利侵害とする法制度の整備を図る
著作権法において、海賊版を販売するための広告行為は権利侵害を構成しないとされていることを踏まえ、商標権・意匠権など産業財産権と同様に、著作権法においても、海賊版の広告行為自体を権利侵害とすることにつき検討し、必要に応じ法制度を整備する。 |
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(注1) |
特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律(平成13年法律第137号)。インターネット上の違法情報の流通に関して、「情報の流通によって自己の権利を侵害されたとする者」がプロバイダに対して情報発信者の氏名・住所等の情報の開示請求をすることができる旨(第4条)や、当該者からの求めに応じてプロバイダが侵害情報の送信防止措置を講じた場合の効果(第3条)等を規定している。 |
(注2) |
名誉毀損となる場合や、著作物である情報を流通させることで公衆送信権侵害になる場合などを想定している。一方、例えば、海賊版を販売する旨の記述を送信することは、送信行為の結果として行われる取引で権利侵害品が扱われるものの、その送信行為自体は、自ら書いた記述を公衆送信しているにすぎない場合がある。 |
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3. |
非親告罪化(海外における海賊版の撲滅のための方策) |
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問題点の概要
海外で組織的に海賊版の製造、販売等が行われている場合、これらの取締りについては、当該外国の当局の協力を得ることが不可欠であるが、仮に当該外国が著作権等の侵害を親告罪としていた場合、海外の被害者との連絡に要する時間などから、迅速、効果的な取締りが期待できないおそれがある。このため、我が国が提唱した「模倣品・海賊版拡散防止条約(仮称)」構想について関係各国との議論をリードしていく観点から、まず我が国の著作権法について、親告罪としている範囲について見直しが必要ではないかとの指摘がある。
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関係規定
○ |
著作権法(昭和45年法律第48号)
第123条 |
第119条(注3)、第120条の2第3号及び第4号(注4)、第121条の2(注5)並びに前条第1項(注6)の罪は、告訴がなければ公訴を提起することができない。 |
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※ |
上記以外には、第120条(注7)、第120条第1号・第2号(注8)、第121条(注9)、第122条(注10)に罰則の規定がある。 |
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○ |
刑事訴訟法(昭和23年法律第131号)
第230条 |
犯罪により害を被つた者は、告訴をすることができる。
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第235条 |
親告罪の告訴は、犯人を知つた日から6箇月を経過したときは、これをすることができない。ただし、次に掲げる告訴については、この限りでない。 |
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最近の動き
○ |
知的財産戦略本部知的創造サイクル専門調査会(平成19年2月26日配付資料)
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著作権法における「親告罪」を見直す
海賊版の氾濫は、文化産業等の健全な発展を阻害し、犯罪組織の資金源となり得るなど、経済社会にとって深刻な問題となっている。重大かつ悪質な著作権侵害等事犯が多発していることも踏まえ、海賊版の販売行為など著作権法違反のうち親告罪とされているものについて、非親告罪の範囲拡大を含め見直しを行い、必要に応じ法制度を整備する。 |
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(注3) |
第119条…… |
著作者人格権、著作権、出版権、実演家人格権、著作隣接権の侵害(第1号)、自動複製機器の供用(第2号) |
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(注4) |
第120条の2…… |
権利管理情報の営利改変等(第3号)、国外頒布目的商業用レコードの営利輸入等(第4号) |
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(注5) |
第121条の2…… |
外国原盤商業用レコードの無断複製 |
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(注6) |
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(注7) |
第120条…… |
死後の著作者人格権、実演家人格権の侵害 |
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(注8) |
第120条の2第1号、第2号…… |
技術的保護手段回避装置・プログラムの供与等 |
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(注9) |
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(注10) |
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4. |
ネットワークを通じた検索サービスの位置づけの明確化と法制上の課題の解決 |
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問題点の概要
インターネット上のコンテンツの所在を検索するために用いられる「検索エンジンサービス」では、情報を収集する自動的なプログラム(「クローラー」と呼ばれる)がインターネット上の著作物を間断なく収集し、その著作物(の一部)を複製して一時的に記録し、サーバーに格納、解析データベース化するとともに、リクエストに応じてその情報(の一部)を検索結果として表示している。
これらの行為に関し、国内においてデータベースを構築する場合について、我が国の著作権法に関して権利侵害(複製、翻案、公衆送信)を問われる可能性から実行がためらわれているとの指摘があり、このために、検索エンジンサービスの著作権法上の位置づけを明確にし、法制上の課題を解決すべきとの要請がある。
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最近の動き
○ |
知的財産戦略本部ンテンツ専門調査会(平成19年3月8日配付資料)
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ネット検索サービス等に係る課題の解決
ネット上での検索サービス等に伴うサーバーへの複製・編集等や検索結果の表示に関する著作権法上の課題を明確にし、所要の措置を講ずるなど、知の世界の秩序の再編に対応して、デジタル化・ネットワーク化に適応した法制度を検討する。また、新たなコンテンツへの検索・アクセス技術の開発・国際標準化や、適切な保護ルールの検討などを行う。 |
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○ |
経済産業省「情報大航海プロジェクト」
現在、経済産業省において、ウェブ上の画像・映像を含めた多種多様な情報や、医療分野、流通分野等で蓄積された大量の情報を有効に活用するため、大量の情報の中からユーザーが求める情報を的確に検索・解析する共通技術(「知的情報アクセス技術」)の開発を目的とする「情報大航海プロジェクト」が進められている。
現在、平成18年7月に発足した「情報大航海プロジェクト・コンソーシアム」を中心として、3年程度を目途に研究開発を進め(注11)、3年〜5年後の商用サービス化を目指した試験サービス・実証実験を行うこと等が念頭に置かれている(注12)。 |
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問題点の概要
著作権分科会では、著作権が譲渡された場合や著作権者が破産した場合等においてライセンシーを保護するため、契約上の地位を第三者に対抗し得る制度の創設及びこれに関連する登録制度の見直しに関して、以前より検討(注13)を進めている。
一方、産業財産権法については、ライセンシーの保護のための方策の一つとして、包括的ライセンス契約ごとに通常実施権を登録する制度の創設を内容とする「産業活力再生特別措置法等の一部を改正する法律案」が今通常国会に提出されている。
このような状況も踏まえ、著作権についても(特にプログラムの著作物について)、ライセンシー保護のための制度的対応についての検討が必要である。
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関係規定
○ |
産業活力再生特別措置法等の一部を改正する法律案
20 |
この法律において「特定通常実施権許諾契約」とは、法人である特許権者、実用新案権者又は特許権若しくは実用新案権についての専用実施権者が、他の法人に、その特許権、実用新案権又は専用実施権(特許権又は実用新案権についての専用実施権をいう。以下同じ。)についての通常実施権(……)を許諾することを内容とする書面(……)でされた契約であって、当該書面に許諾の対象となるすべての特許権、実用新案権又は専用実施権に係る特許番号(……)又は実用新案登録番号(……)が記載されているもの以外のものをいう。 |
(通常実施権の対抗要件に関する特例)
第58条 |
特定通常実施権許諾契約により通常実施権が許諾された場合において、当該許諾に係る通常実施権につき特定通常実施権登録簿に登録をしたときは、当該通常実施権について、特許法第99条第1項(実用新案法第19条第3項において準用する場合を含む。)の登録があったものとみなす。 |
2 |
特定通常実施権許諾契約により通常実施権が許諾された場合において、当該許諾に係る通常実施権の全部の移転又は処分の制限につき特定通常実施権登録簿に登録をしたときは、当該通常実施権について、特許法第99条第3項(実用新案法第19条第3項において準用する場合を含む。)の登録があったものとみなす。 |
3 |
前二項の規定により登録をした場合における当該通常実施権については、特許法第67条の3第1項第2号、第84条、第87条第1項、第123条第4項及び第125条の2第1項第2号並びに実用新案法第21条第3項において準用する特許法第84条及び第87条第1項並びに実用新案法第37条第4項の規定は、適用しない。 |
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(注13) |
平成14年〜、契約・流通小委員会(平成16年1月分科会報告書参照)。昨年からは、本小委員会の下の契約・利用ワーキングチームにおいて検討を行っている。 |
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