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現行制度の概要
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権利の目的となっている著作物又は実演等について、個人的に又は家庭内その他これに準ずる限られた範囲内において使用することを目的とするときは、著作物等の公正な利用を図り、教養・娯楽・文化活動などを円滑になし得るようにすることが必要であるという観点から、その使用する者が複製することができる(第30条第1項及び第102条第1項)。
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私的使用のための複製であっても、公衆による使用を目的として設置されている自動複製機器を用いて行う複製については、社会全体として大量の複製を可能ならしめ、著作権者等の経済的利益を著しく害する形態であることから、権利制限規定の対象とならない(第30条第1項第1号及び第102条第1項)。
ただし、当分の間、ここでいう自動複製機器には、専ら文書又は図画の複製のために使用されるものを含まない(附則第5条の2)。
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3.技術的保護手段の回避による私的使用のための複製 |
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私的使用のための複製であっても、技術的保護手段(第2条第1項第20号)の回避により可能となり、又はその結果に障害が生じないようになった複製を、その事実を知りながら行う複製については、権利制限規定の対象とならない(第30条第1項第2号及び第102条第1項)。
この措置は、平成11年の著作権法改正により導入されたものであり、制定過程において、著作権審議会マルチメディア小委員会ワーキング・グループ(技術的保護・管理関係)報告書(平成10年12月)では、権利制限規定の趣旨の1つとして、「(a)著作物等の利用の性質からして著作権等が及ぶものとすることが妥当ではないもの」を挙げ、「そもそも私的使用のための複製を認めている趣旨は、上記(a)に該当し、個人や家庭内のような範囲で行われる零細な複製であって、著作権者等の経済的利益を害しないという理由によるものと考えられる。一方、技術的保護手段が施されている著作物等については、その技術的保護手段により制限されている複製が不可能であるという前提で著作権者等が市場に提供しているものであり、技術的保護手段を回避することによりこのような前提が否定され、著作権等が予期しない複製が自由に、かつ、社会全体として大量に行われることを可能にすることは、著作権者等の経済的利益を著しく害するおそれがあると考えられるため、このような、回避を伴うという形態の複製までも、私的使用のための複製として認めることは適当ではないと考えられる。」としている。
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私的使用のための複製のうち、デジタル方式の私的録音録画については、広範かつ大量に行われ、さらに市販のCD、DVD等と同等の高品質の複製物を作成しうるものであることから、そのような私的録音録画を自由とする代償として、政令で定める機器及び記録媒体(以下、「特定機器」及び「特定記録媒体」という。)による録音又は録画を行う者は、相当な額の補償金を権利者に支払わなければならない(第30条第2項及び第102条第1項)
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私的録音録画補償金の対象となっている機器・記録媒体(録音・録画専用の機器・記録媒体) |
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録音機器: |
DATレコーダー、DCCレコーダー、MDレコーダー、CD−R方式CDレコーダー、CD−RW方式CDレコーダー |
録音記録媒体: |
上記の録音機器に用いられるテープ、ディスク |
録画機器: |
DVCR、D−VHS、MVDISCレコーダー、DVD−RW方式DVDレコーダー、DVD−RAM方式DVDレコーダー |
録画記録媒体: |
上記の録画機器に用いられるテープ、ディスク |
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5.私的使用のための複製により作成された複製物の目的外使用の制限 |
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私的使用のために一旦複製したものを、その後公衆に頒布又は提示する場合は、原則に戻り、許諾が必要となる(第49条第1項第1号及び第102条第4項第1号)。
<例>
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個人視聴の目的で自宅で録画したテレビ番組のビデオテープを公民館に持参して、その利用者に視聴させた場合 |
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ファイル交換ソフトを利用して音楽ファイルを自分のパソコンにダウンロード(私的複製)し、さらにアップロード状態にして、インターネットを通じてファイルを自動的に公衆に送信した場合 |
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考えられる検討課題
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近時のデジタル化・ネットワーク化の進展を背景に、インターネット上のファイル交換・共有などにより、パソコン等を介して複製が大量かつ広範に行われている。そのような状況のもと、いかなる複製であれば零細で著作権者等の権利を害さない私的使用のための複製であるといえるのか、その範囲が課題となる。
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1.「著作者の正当な利益を不当に害しないこと」を条件とするか |
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私的使用のための複製は、本来は著作権者等の経済的利益を不当に害することなく公正な利用を図ることができることから認められていると考えられる。このため、私的使用のための複製に該当するかどうかの判断において、著作権の国際条約である、文学的及び美術的著作物の保護に関するベルヌ条約第9条第2項の趣旨を踏まえて、「著作者の正当な利益を不当に害しないこと」を条件として明記すべきとする意見がある。
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私的使用のために複製される著作物等には、適法に流通しているもののみならず、著作権者等の許諾を得ずに違法に複製・頒布等されるものがある。そのような著作物等について、現行法では、私的使用のための複製の対象から除外されていない。そこで、このような違法複製物について、大量かつ広範な複製の可能性が考えられることから、そもそも許諾が不要な私的使用のための複製の対象としておくことが妥当なのかについて、論点として取り上げることができる。
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3.「DRM」との関係でどのように範囲を決める必要があるか |
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2.の場合、私的録音録画補償金制度の対象となるべき私的使用のための複製の範囲であるのかという観点からの検討も必要となる。あわせて、私的使用のための複製の範囲との関係で特に検討を要すると考えられるのは、いわゆる「DRM」(コピーガードなど権利管理システム)との関係である。DRMを内蔵した機器による、配信サービスを通じた楽曲の提供・保存など、著作物等の複製を行う場合には、複製についての契約が介在することが考えられる。私的録音録画について、DRMの普及・適用状況を踏まえたとき、そのようなDRMを前提とした契約があることによって、補償金を課す必要がない場面もあるのではないか、また、著作権者等の経済的利益を不当に害しない場合もあるのではないかについても、関連する論点として取り上げることができる。 |
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以上
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【参考条文】 |
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○ |
著作権法(昭和45年5月6日法律第48号)(抄)
(定義) |
第2条 |
この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。 |
二十 |
技術的保護手段電子的方法、磁気的方法その他の人の知覚によつて認識することができない方法(次号において「電磁的方法」という。)により、第17条第1項に規定する著作者人格権若しくは著作権又は第89条第1項に規定する実演家人格権若しくは同条第6項に規定する著作隣接権(以下この号において「著作権等」という。)を侵害する行為の防止又は抑止(著作権等を侵害する行為の結果に著しい障害を生じさせることによる当該行為の抑止をいう。第30条第1項第2号において同じ。)をする手段(著作権等を有する者の意思に基づくことなく用いられているものを除く。)であつて、著作物、実演、レコード、放送又は有線放送(次号において「著作物等」という。)の利用(著作者又は実演家の同意を得ないで行つたとしたならば著作者人格権又は実演家人格権の侵害となるべき行為を含む。)に際しこれに用いられる機器が特定の反応をする信号を著作物、実演、レコード又は放送若しくは有線放送に係る音若しくは影像とともに記録媒体に記録し、又は送信する方式によるものをいう。 |
(私的使用のための複製)
第30条 |
著作権の目的となつている著作物(以下この款において単に「著作物」という。)は、個人的に又は家庭内その他これに準ずる限られた範囲内において使用すること(以下「私的使用」という。)を目的とするときは、次に掲げる場合を除き、その使用する者が複製することができる。 |
一 |
公衆の使用に供することを目的として設置されている自動複製機器(複製の機能を有し、これに関する装置の全部又は主要な部分が自動化されている機器をいう。)を用いて複製する場合 |
二 |
技術的保護手段の回避(技術的保護手段に用いられている信号の除去又は改変(記録又は送信の方式の変換に伴う技術的な制約による除去又は改変を除く。)を行うことにより、当該技術的保護手段によつて防止される行為を可能とし、又は当該技術的保護手段によつて抑止される行為の結果に障害を生じないようにすることをいう。第120条の2第1号及び第2号において同じ。)により可能となり、又はその結果に障害が生じないようになつた複製を、その事実を知りながら行う場合 |
2 |
私的使用を目的として、デジタル方式の録音又は録画の機能を有する機器(放送の業務のための特別の性能その他の私的使用に通常供されない特別の性能を有するもの及び録音機能付きの電話機その他の本来の機能に附属する機能として録音又は録画の機能を有するものを除く。)であつて政令で定めるものにより、当該機器によるデジタル方式の録音又は録画の用に供される記録媒体であつて政令で定めるものに録音又は録画を行う者は、相当な額の補償金を著作権者に支払わなければならない。 |
(複製物の目的外使用等)
第49条 |
次に掲げる者は、第21条の複製を行つたものとみなす。 |
一 |
第30第1項、第31条第1号、第33条の2第1項、第35条第1項、第37条第3項、第41条から第42条の2まで又は第44条第1項若しくは第2項に定める目的以外の目的のために、これらの規定の適用を受けて作成された著作物の複製物を頒布し、又は当該複製物によつて当該著作物を公衆に提示した者 |
(著作隣接権の制限)
第102条 |
第30条第1項、第31条、第32条、第35条、第36条、第37条第3項、第38条第2項及び第4項、第41条から第42条の2まで並びに第44条(第2項を除く。)の規定は、著作隣接権の目的となつている実演、レコード、放送又は有線放送の利用について準用し、第30条第2項及び第47条の3の規定は、著作隣接権の目的となつている実演又はレコードの利用について準用し、第44条第2項の規定は、著作隣接権の目的となつている実演、レコード又は有線放送の利用について準用する。この場合において、同条第1項中「第23条第1項」とあるのは「第92条第1項、第99条第1項又は第100条の3」と、第44条第2項中「第23条第1項」とあるのは「第92条第1項又は第100条の3」と読み替えるものとする。 |
4 |
次に掲げる者は、第91条第1項、第96条、第98条又は第100条の2の録音、録画又は複製を行つたものとみなす。 |
一 |
第1項において準用する第30条第1項、第31条第1号、第35条第1項、第37条第3項、第41条から第42条の2まで又は第44条第1項若しくは第2項に定める目的以外の目的のために、これらの規定の適用を受けて作成された実演等の複製物を頒布し、又は当該複製物によつて当該実演、当該レコードに係る音若しくは当該放送若しくは有線放送に係る音若しくは影像を公衆に提示した者 |
○ |
文学的及び美術的著作物の保護に関するベルヌ条約パリ改正条約
(1971年)(抄) |
第9条 |
〔複製権〕 |
(1) |
文学的及び美術的著作物の著作者でこの条約によつて保護されるものは、それらの著作物の複製(その方法及び形式のいかんを問わない。)を許諾する排他的権利を享有する。 |
(2) |
特別の場合について(1)の著作物の複製を認める権能は、同盟国の立法に留保される。ただし、そのような複製が当該著作物の通常の利用を妨げず、かつ、その著作者の正当な利益を不当に害しないことを条件とする。 |
(3) |
録音及び録画は、この条約の適用上、複製とみなす。 |
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