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(1) | 国際条約とIPマルチキャスト放送 世界知的所有権機関(以下「WIPO」という)において、著作権関連条約上のIPマルチキャスト放送の取扱いについて明示的に合意されたことはない。したがって、IPマルチキャスト放送の属性が個々の条約の要件に該当するか否かを個別に検討し、解釈によって位置づけを明らかにする必要がある(条文については資料1参照)。
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(2) | 各国におけるIPマルチキャスト放送の実態 現在、海外においてIPマルチキャスト放送と同様のサービスとしてIPTVというサービスが行われているが、国によって技術仕様は異なる。IPTVのビジネスモデルやニーズの背景については、欧州放送連盟(EBU)の報告書(注2)が、デジタル地上波放送の難視聴地域への番組提供手段としてのIPTVの有用性に言及している(資料3)。例えばフランスでは、都市部で難視聴となる衛星放送を抱えていたTF1と、音声通信ビジネスが下り坂であるために固定網の活用方策を探していたFrance Telecom社の利害が一致したため、都市部での衛星放送の難視聴の解消手段としてIPTVが発展したという経緯があることが、同報告書で紹介されている。商用化されたIPTVの事業例は、以下のとおりイタリア、フランス、イギリス、香港、米国等に存在する。 【欧州】 (イタリア) イタリアでは、従来型の有線放送サービスはほとんど存在しないため、FASTWEB社が行っているIPTVのサービスが相当普及している。2005年4月の時点で、国内8都市において500,000人以上の契約視聴者を得ている。うち、100パーセント光ファイバーを達成しているミラノでは、生のIPTVチャンネルで全ての全国TVチャンネル及び複数の国際チャンネル及びテーマ別チャンネルを試聴することができる。(注3) (フランス) フランスでは、Internet Free社、Neuf Telecom社、France Telecom社等、複数の会社がIPTVのサービスを行っている。Internet Free社のFreeというIPTVサービスではビデオ・オン・デマンドサービスは行っていないが、100以上のTVチャンネルを試聴することができ、2005年3月の時点でのセットトップボックスの提供個数は200,000個以上に上っている。またNeuf社は、2004年末の時点で10,000人のIPTVサービスの契約視聴者を得ている。(注4) (イギリス) Video Networks社のHome Choice BTVというサービスがIPTVをロンドンで提供しており、15,000ほどの契約視聴者を獲得している。(注5)また、通信大手のBT社が、2006年中にIPTVサービスを開始する予定との情報もある。(注6) 【米国】 米国では、カリフォルニア州のSure West Communications社、オクラホマ州のPioneer Telephone社、ジョージア州のRinggold Telephone社などIPTVの事例が数社ある(各社のHPより)。さらに米国第二の大手地域電話会社であるSBCが今後同様のサービスを開始すると表明している。 【香港】 香港では、PCCW社のNowTVがIPTV放送を行っている。 |
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(3) | 各国におけるIPマルチキャスト放送の著作権契約と関連法制の概要 IPマルチキャスト放送により地上テレビ放送の再送信を行うに際し、各国でどのような著作権契約を求められ、行っているかの全容の詳細は明らかでないが、概ね以下のとおりであることが確認されている。 【欧州】 (イギリスを除く欧州各国) イギリスを除き、EU及び欧州各国の著作権法令においては、IPTVに関する明示的な規定の存在は確認されていない。ただし欧州放送連盟(EBU)の報告書は、放送の同時再送信については、IPTVは有線放送と同様とみなされるとしているため、欧州の放送事業者はIPTVを有線放送と区別しながらも同様の著作権契約の位置づけで扱っているのではないかと推測される(注7)(資料3)。 (イギリス) イギリス著作権法は、「放送」の定義に無線放送・有線放送の他、インターネット送信のうち
等を含めている(イギリス著作権法第6条(1A))。IPマルチキャスト放送を含めたインターネットによる同時再送信は、ここで定義された「放送」に該当するため、イギリス著作権法では伝統的な有線放送による同時再送信とインターネットによる同時再送信を同等に扱っていることになる。さらに、ここで「放送」と定義されたものは「利用可能化」には含まれないとされ(イギリス著作権法第20条、第179条)、実演家は一般的には「利用可能化権」のみを持つ(第182条CA)。ただし、商業目的で発行された録音物については、「利用可能化」以外の方法で「公衆伝達」された場合(すなわち放送された場合)は、報酬請求権を持つ(182条D)(資料4)。 【米国】 現時点ではまだ連邦レベルでIPTVの放送法制・著作権法制上の位置づけについて明確に定められたものはない。現在事業を行っている事業者は従来のCATVの規制ルールに則って、州レベルでの認可を受け、CATVとして事業を行っているとの情報もあるが、連邦レベルの放送法制・著作権法制下でオーソライズされた解釈というわけではない。 【香港】 著作権契約と関連法制の概要は明らかでない。 |
(注2) | EBU Technical Review誌2005年4月号掲載報告書“Will Broadband TV Shape the Future of Broadcasting?” |
(注3) | EBU報告書による。 |
(注4) | EBU報告書による。 |
(注5) | EBU報告書による。 |
(注6) | 米国Jupitermedia CorporationのIT関連ニュースサイトinternet.com記事 http://www.internetnews.com/bus-news/article.php/3593131等 (※internetnews.comホームページへリンク) |
(注7) | EBU報告書による。 |
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