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諸外国の著作権法における無線放送・有線放送・インターネット送信に係る権利規定の概要平成18年4月27日 本資料は、各国の著作権法の条文の和訳・英訳、各種文献資料(注)及び政府の著作権担当者からの聞き取り調査(米国・韓国に限る)に基づき作成したものである。条文の解釈については、翻訳からの推測により解釈しているが、原典が英語以外の場合は原典を参照しておらず、またすべての解釈について各国政府の著作権担当者に確認が取れているものでもない。
米国著作権法では、無線放送・有線放送・インターネット送信により著作物を送信する行為は、包括的に「公の実演権(right of public performance)」(106条(4))又は「デジタル音声送信による公の実演権」の対象となる(106条(6))。後者は録音物のみにかかる権利であり、逆に録音物は106条(4)の一般の「公の実演権」の対象から外されている。つまり、従来型のアナログ放送に関しては、録音物についての許諾権は存在しない(注)。なお音楽配信サイトから録音物のコピーをダウンロードするような、インターネットでの個々の著作物の配信行為は、「公の頒布権(right of distribution)」の対象となる。 「公の実演」に関して、「実演」と「公に」は、それぞれ次のように定義される。(101条) 「実演」 「公に」
よって、この権利の定義自体では、録音物に関する例外的扱いを除けば無線放送・有線放送とインターネット放送を区別しておらず、映像著作物については、放送・有線放送・インターネット放送を問わず、基本的に排他的許諾権としての「公の実演権」の対象となる。 放送形態のインタラクティブ性については、録音物の「デジタル音声送信による実演権」の権利の範囲と法定使用許諾に関する114条に規定がある。 具体的には、録音物の「デジタル音声送信による実演権」については、インタラクティブ・サービスによる送信の場合は許諾権であるが、非インタラクティブなものについては、大きく分けて加入契約放送と非加入契約放送で扱いが異なる。非加入契約放送のデジタル音声送信については、そもそも権利が働かない(114条(d)(1))。一定の加入契約放送については、報酬付き(114条(g))の法定使用許諾制度(114条(d)(2))が、認められている。 「インタラクティブ・サービス」は、114条(j)(7)において以下のように定義されている。 「インタラクティブ・サービス」 映像著作物については、上記のようなインタラクティブ性の有無による扱いの違いは存在せず、「公の実演権」は基本的に無線放送・有線放送・インターネット放送を問わず排他的許諾権の対象となっている。ただしケーブル・システムによる二次送信については、基本的にローカル放送区域内での二次送信の場合は権利が働かず、ローカル放送区域外における二次送信の場合には法定使用許諾の対象とされている。
英国著作権法では、無線放送・有線放送・インターネット送信により著作物を送信する行為は、包括的に著作者の「公衆伝達(communication to the public)権」の対象となる(16条(1)(d))。そしてこの「公衆伝達」の内容は、
さらにここでいう「放送」は、無線放送・有線放送とインターネット送信の一部を含む概念として定義されている。すなわち「放送」は、視覚的映像、音その他の情報の以下の電送(electronic transmission)行為と定義される(6条(1))。
また以下のインターネット送信は「放送」に含まれるが、それ以外のインターネット送信は「放送」に含まれない(6条(1A))。
実演家は、許諾なしに固定された録音録画物についてのみ、著作権者と同様の公衆伝達権(放送権 なお英国著作権法の著作隣接権制度は実演家のみを対象としており、レコード製作者については録音物の著作者として、一般の著作権と同様に扱われる(9条(2)(aa))。すなわち、レコード製作者は無線放送・有線放送・インターネット送信を含む「公衆伝達(communication to the public)」について排他的権利を持つ(16条(1)(d))。
フランス著作権法では、無線放送・有線放送・インターネット送信により著作物を送信する行為は、包括的に著作者の「上演・演奏権」の対象となる(122条の1)。 「上演・演奏」は、次のとおりに定義されている(122条の2)。
このように、著作者の「上演・演奏」権は、あらゆる手段を用いた「公衆への伝達」に関する権利として規定されている。この「上演・実演」は、衛星放送や有線放送だけでなく、ネットワーク内のデジタル送信にも及ぶと解されている。 実演家とレコード製作者の権利はフランス著作権法では著作隣接権とされる。無線放送・有線放送・インターネット送信に係る権利は、実演家・レコード製作者ともに以下のとおり「公衆への伝達」に関する権利として規定されている。 (実演家 212の3条) (レコード製作者 213の1条2項) 214の1条の場合とは、商業目的で発行されたレコードをラジオ放送する場合及びそのラジオ放送の全体を有線で同時再送信する場合で、このときは実演家及びレコード製作者は、報酬請求権のみを持つ。(214の1条) 以上のように、フランス著作権法では、無線放送・有線放送・インターネット送信により著作物を送信する行為は、214の1条の例外を除き基本的に全て排他的許諾権である「上演・演奏権」(著作権の場合)及び「公衆への伝達権」(著作隣接権の場合)の対象となり、イギリス著作権法やアメリカ著作権法のように、一定のインタラクティブ性を持つか否かによる区別を設けていない。
イタリア著作権法では、無線放送・有線放送・インターネット送信により著作物を送信する行為は、包括的に著作者の「公衆伝達(communication to the public)権」の対象となる(16条)。 この権利は、「有線送信か無線送信かを問わず遠隔地から公衆に送信することをいい、電信機、電話局、ラジオ放送局、テレビ放送局その他これに類する手段により遠隔地から放送する手段の一を使用すること、通信衛星により公衆に通信すること、およびケーブル・システムによる二次送信をその対象に含む。もしくは特殊な接続条件で暗号化された二次送信も同様である。また、一定の場所または個別に選択した時間に各人が利用しうる方法で公衆の利用に供される著作物の放送もその対象に含む。」と定義されている(16条)。このように、著作者の権利はインタラクティブな送信行為を含めて「公衆伝達権」の対象とされている。 また実演家は著作隣接権者であり、実演家は生の実演について排他的許諾権としての「公衆伝達権」を有する(80条(c))。この「公衆伝達」は、方法または方式の如何を問わず、個別に選択した場所または時間において利用しうる方法で公衆の利用に供することを含むと定義されている。ただし、実演のラジオやテレビ放送が予定されている場合、または放送するための録画物が既に存在する場合は除外される。実演がレコードまたは類似の媒体に録音され、営利を目的として利用された場合、実演家は報酬請求権を有する。(73条)さらに、インタラクティブな利用可能化行為については、別に「個別に選択した場所または時間において利用しうる方法で自己の芸術的行為またはこれに関連する固定物の複製物を公衆の利用に供すること」について許諾権があることが明記されている(80条(d))。 レコード製作者も著作隣接権者として、営利を目的とした映写、ラジオ・テレビ放送、衛星放送等について、報酬請求権を有する(73条)。しかし、インタラクティブな利用可能化行為については、録音物を「各個人が個別に選択した場所または時において利用しうる方法で公衆の利用に供すること」について許諾権を与えている(72条(1)(d))。
ドイツ著作権法では、無線放送・有線放送・インターネット送信により著作物を送信する行為について、著作者は包括的に「公衆への伝達権」(15条)を有しており、この権利には「放送権」(20条)及び「公衆に利用可能にする権利」(19条(a))が含まれる。 これらはそれぞれ、以下のように定義される。 「公衆に利用可能にする権利」 「放送権」 上記二つの権利はどちらも「利用可能化」の用語を使っているが、インタラクティブな送信形態はおそらく前者の「公衆に利用可能にする権利」の対象となると思われる。非インタラクティブな放送型のインターネット送信については、「公衆に利用可能にする権利」と「放送権」のどちらの対象になるのかは不明であるが、いずれにせよ許諾権であるので、著作者の権利については差は生じない。 実演家は著作隣接権者であり、生の実演については「公衆に利用可能にする権利」と「放送権」の両方を許諾権として有する(78条)。ただし、「放送権」については、実演が許諾を得て録音録画媒体に収録され発行された場合、又は許諾を得て公衆に利用可能にされた場合はこの限りではない。 レコード製作者も著作隣接権者であるが、「公衆に利用可能にする権利」を有する(85条)。これがインタラクティブ性のあるもののみを指しているのかは不明である。放送については、発行されたレコード又は許諾を得て公衆に利用可能にされたレコードによる公衆伝達について、報酬請求権を持つ(86条)。
韓国著作権法では、無線放送・有線放送・インターネット送信により著作物を送信する行為は、著作者の「放送権」(18条)及び「伝送権」(18条の2)の対象となる。「放送」及び「伝送」は、それぞれ以下のように定義されている。 「放送」 「伝送」 韓国文化観光部著作権課によると、後者はWCT・WPPTの「利用可能化権」に対応するために設けられた権利で、オンデマンド等のインタラクティブな送信形態を対象とする権利とのことである。非インタラクティブな、放送型のインターネット送信については権利が存在せず、現在、この権利を新設するための改正法案が国会審議中である。(注) 実演家は著作隣接権者であり、「実演放送権」(64条)と「伝送権」(64条の2)の両方を許諾権として有する。ただし「実演放送権」は実演家の許諾を得て録音された実演については働かず(64条)、放送事業者が販売用レコードを使用して放送する場合は、実演家は報酬請求権を持つ(65条)。 レコード製作者も著作隣接権者であるが、「伝送権」(67条の3)のみを持つ。放送事業者が販売用レコードを使用して放送する場合は、レコード製作者は報酬請求権を持つ(68条)。 (注)韓国の改正法案について
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