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参考資料

○ 「地上デジタル放送の利活用の在り方と普及に向けて行政の果たすべき役割」(抄)

(平成17年7月29日情報通信審議会第2次中間答申)

第3章   「通信・放送融合」の成果の積極的活用
2   伝送路の融合
2   IP伝送
(1) 基本的な考え方

 従来、電話回線に使用する公衆網は、主に音声の送受信を前提に構築されており、接続中は一定の伝送容量を占有し、音声通話と親和性の高い「回線交換方式」によるものであった。しかし、インターネットの登場等によるデータ・トラフィック需要の急激な増加に伴い、トラフィック発生の都度、データをパケットに分割して伝送を行う「パケット交換方式」による伝送方式の重要性が増し、現在公衆網においては、インターネットと親和性の高いIP伝送に対応したネットワークへの変化が急速に進展していることは周知のとおりである。
 大容量のデータを多数の相手方に効率的に配信するための技術としては、一つの光ファイバ中に多数の波長を多重させるWDMが実用化されており、既にこの方式を採る電気通信役務利用放送事業者に対しては、地上放送の再送信が認められている例も見られる。今後さらにこうした方式についての再送信が促進され、地上デジタル放送の普及に資するよう、この方式による伝送の一層の低廉化、効率化が図られることが期待される。IPの分野においても、同様の目的を実現する技術としてIPマルチキャストが実用化されているが、現在、この方式を前提とした地上波再送信は認められていない。
 IPは、回線の効率的な使用を可能とする優れた伝送方式の一つであり、公衆通信網において、そのIP化が現在急速に進展していることは既に指摘したとおりである。したがって、IPマルチキャストを用いた光ファイバ等の通信インフラ(以下「IPインフラ」という。)については、地上波放送と同等のサービス実現に必要な一定の条件が満たされた場合には、条件不利地域に限らず、地上デジタル放送を視聴者まで配信する伝送路として積極的に活用すべきであり、政府としては、技術・制度の両面から、これを促進するための環境整備に努めていくことが必要と考える。

<中略>

(3) IPインフラを用いた地上波再送信(以下「IP再送信」という。)の実現に向けた目標

<中略>

当審議会としては、IP再送信については、2008年中に、HDTV品質によって、全国で開始することを目標として、政府及び放送事業者その他の関係者が所要の取組を推進すべきであると考える。
そして、IP再送信を行うための技術上・運用上の仕組みを確立するには、実地検証を含めて相当の期間を要することを勘案し、2008年までに再送信を実施するための仕組みを確立するため、都市難視聴上の効果の検証等を含め、2006年からSD品質においてIP再送信を開始することが必要と考える。
以上の目標の実現に向け、政府及び放送事業者等関係者が取り組むべきと考えられる事項については、おおむね次のとおりである。

(4) 政府として取り組むべき事項
  政府としては、上記の目標を確実に達成する観点から、以下それぞれの項目について示す年次目標の下に、IP再送信に関する諸条件を整理するとともに、制度面、技術面から、所要の環境整備を進めることが必要である。
  1 IP再送信に関する整理等
標記については、政府は以下の3点を実施する必要がある。
 
2005年内に、「地域限定」「同一性保持」「著作権保護」など、IP再送信において確保されるべき技術面・運用面の条件について整理し、公表する。
上記の検討と並行して、2005年内に、放送事業者、通信事業者、メーカー等関係者の参加を得て、当該条件を担保する「技術的手段」と「その運用方法」の確認と検証等を行うための実証実験に着手し、2005年度内に結論を得る。
2005年内に、再送信を行う目的、主体やその性格など、2006年から実施されるIP再送信の具体的な進め方について、放送事業者や通信事業者等関係者の参加を得て検討を行い、遅くとも2005年度内に結論を得る。

 具体的にはそれぞれ次のとおりである。

<中略>

   2006年に開始されるIP再送信の進め方の検討
 2008年におけるIP再送信においては、HDの映像品質の確保をはじめ、地上波直接受信との「同一性」保持に係る条件が遵守されなければならない。そして、地上波再送信を担う現在ほぼ唯一のメディアであるケーブルテレビにおいては、事業者の相当の努力の下にこうした条件が担保され、再送信が実現しているところであり、こうした事業者と、今後IP再送信に携わる者の間の均衡には十分配意していくことが必要である。

     2008年の全国開始の実現を確実なものとする観点から見れば、
(ア)  技術及び運用上の仕組みの確立には、実地検証も含めて相当の期間を要することから、2006年内には再送信を開始すること
(イ)  その際、通信インフラの対応状況に鑑みれば、映像品質については、当面SD品質で行うことの2点が必要であることは、既に指摘したとおりである。しかしながら、「同一性保持」に係る上記の観点も踏まえれば、2006年に開始されるIP再送信の具体的な進め方については、以下のような点について、放送事業者や通信事業者等関係者の参加を得て更に検討を行い、2006年開始に向け、遅くとも2005年度内には結論を得ることが必要であると考えられる。
  A再送信の目的
 IP再送信の目的は、視聴者の選択肢を拡大することによって、地上デジタル放送の普及を加速・推進することにある。したがって、2006年からIP再送信を開始するに当たっては、普及推進における効果の検証がなされることが望ましい。特に期待される都市難視聴解消上の効果をはじめ、どのような観点からの効果検証を目的とすべきか検討することが必要である。
B再送信の主体等
 2006年から再送信を開始する主体については、以下のとおり、今後のIP再送信の基盤をなす技術・運用面の仕組みを構築する重要な役割を担うこととなる。したがって、その制度上の位置付けや、当該主体に対し再送信同意を行う放送事業者や、既に地上波再送信を実施している事業者等関係者の理解を得られる主体の在り方など、その性格について、検討することが必要である。
A)  前記アにて整理される技術面の条件を満たす再送信システムの構築・運営
B)  前記アにて整理される運用面の条件に沿った事業の運営、特に当該主体に地域性の確保を委ねる放送事業者の関与の確保
C)  地上デジタル放送普及におけるIP再送信の効果の検証

<中略>

  2 制度環境整備
  IPインフラによる地上デジタル放送の送信を促進する観点から、以下のような制度環境整備に着手することが必要である。

<中略>

 第二に、役務放送事業者が、IPインフラを用いて地上デジタル放送の再送信を行う送信形態が、著作権法上、「有線放送」に該当するか否か、制度上の取扱いの明確化を図ることが必要である。現状では、電気通信役務利用放送法上の「電気通信役務利用放送」と著作権法上の「放送等」とは、その定義を異にしているところであり、IPインフラを用いて地上デジタル放送の再送信を行う送信形態は、視聴者それぞれがコンテンツの提供を求めることにより初めて当該コンテンツが自動的に送信されるものであり、それが電気通信役務利用放送法上の電気通信役務利用放送に該当するか否かにかかわらず、公衆によって同一の内容の送信が同時に受信されることを目的として行う送信形態ではないと考え、著作権法上「有線放送」には当たらない、という解釈もあるなど、制度上の取扱いは明確となっていない。



○「デジタルコンテンツの振興戦略」(抄)(平成18年2月20日コンテンツ専門調査会)

※ 下線は当方が付したものである

3.具体策

目標1:ユーザー大国の実現


(提言1) 放送と通信の一体化の中で、デジタルコンテンツの供給を拡大する


<課題>
   メディアの融合が進む中で、ユーザーから見た場合、いわゆるテレビ放送とIPマルチキャスト放送(ブロードバンドを利用した放送)との違いはわからない。デジタル時代のコンテンツ供給を拡大し、ユーザー視点の利用環境づくりをする必要がある。また、ユーザーである国民が豊かなコンテンツを享受するためには、既存のコンテンツの利用だけでなく、新しい質の高いコンテンツを数多く流通させることが重要である。これらにより、ビジネスチャンスが拡大し、クリエーターの収入増加につながる。

<解決策>
(1)   IPマルチキャスト放送の積極的活用
 総務省における地上波デジタル普及政策に関する検討の中でも、2011年のデジタル全面移行に向け、一定の条件を満たす場合には地上波デジタル放送の同時再送信に関し、IPマルチキャストを用いた通信インフラを積極的に活用すべきと指摘されている。その円滑な実施のためにも、2006年からのIP再送信の開始、2008年中の全国展開といった目標を実現するため、放送事業者その他の関係者の参加を得て、競争政策の観点も踏まえ、制度面、技術面や取引慣行の側面からの検討を進めるとともに、IPマルチキャスト放送の著作権法上の取扱いを早期に明確化し、法改正を含め必要な措置を速やかに講ずる。その際、クリエーターに十分な報酬が支払われるよう配慮する。
 さらに、IPマルチキャスト放送事業者自らが魅力的な放送コンテンツを創ることを促し、これによりクリエーターに新たな創作チャンスを与える。

(2) コンテンツ流通経路の多様化促進
(略)

   なお、(1)、(2)の施策の推進にあたっては、デジタルコンテンツ大国を目指す立場から、規制改革・民間開放推進会議や総務省の通信・放送の在り方に関する懇談会における検討の結果を適切かつ迅速に反映する。



○ 島聡前衆議院議員提出「ブロードバンド環境下におけるコンテンツ流通の促進に資する著作権制度等のあり方に関する質問主意書」(平成16年2月23日質問第23号)(抄)

<質問>
 一 ブロードバンドサービスを利用した放送のように、電気通信役務利用放送法第二条によって放送と規定されるものは、著作権法上も全て放送に該当すると理解してよいか。それとも一部は自動公衆送信に該当するか。著作権法上、どのような形態で提供されるものが放送と定義され、またどのような形態で提供されるものが自動公衆送信と規定されるのか、政府の見解をうかがいたい。

(以下、略)
<答弁>
 一について

 電気通信役務利用放送法(平成十三年法律第八十五号)第二条第一項において、電気通信役務利用放送とは、「公衆によって直接受信されることを目的とする電気通信の送信であって、その全部又は一部を電気通信事業を営む者が提供する電気通信役務を利用して行うもの」と定義されている。他方、著作権法(昭和四十五年法律第四十八号)第二条第一項第八号において、放送とは、「公衆送信のうち、公衆によつて同一の内容の送信が同時に受信されることを目的として行う無線通信の送信」をいうものと定義され、同法第二条第一項第九号の四において、自動公衆送信とは、「公衆送信のうち、公衆からの求めに応じ自動的に行うもの(放送又は有線放送に該当するものを除く。)」をいうものと定義されている。
 このように、電気通信役務利用放送法上の電気通信役務利用放送と著作権法上の放送等とは、その定義を異にしているところであり、一般論として申し上げれば、いわゆるブロードバンドサービス等を用いて家庭や職場の受信者それぞれがコンテンツの提供を求めることにより初めて当該コンテンツが自動的に送信されるものは、それが電気通信役務利用放送法上の電気通信役務利用放送に該当するか否かにかかわらず、公衆によって同一の内容の送信が同時に受信されることを目的として行う送信形態ではないことから、著作権法上は、放送には当たらず、自動公衆送信に該当すると考えている。

(以下、略)



【IPマルチキャスト放送とは】
 通信回線を利用した著作物等の送信の例の中で、電気通信役務利用放送法の対象と考えられているのが「IPマルチキャスト放送」である。

IPマルチキャスト放送の主な特徴として以下の点があげられる。

    閉鎖的ネットワークを活用して、放送の配信を行う。
    IPマルチキャストにより、放送センターから常時すべてのIP局内装置に全番組を配信することができる。
    ユーザーが選局した番組のみ最寄りのIP局内装置から配信される(インタラクティブ送信)。

 なお、平成13年6月に電気通信役務利用放送法の施行後、同法の登録を受けて、現在、IPマルチキャスト方式による放送サービスについて4事業者が提供している。



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