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5.司法救済ワーキングチーム


5 検討結果

 前記1.の立法的検討事項につき、裁判例の研究(前記2.)、主要国の比較法研究(前記3.)、特許法における間接侵害規定との対比(前記4.)の3点を軸に、鋭意検討を進めてきた。

 裁判例としては、前記2.(1)のようなカラオケ法理(クラブ・キャッツアイ法理)に基づき侵害主体性を肯定した一連の裁判例があるが、他方、侵害行為の幇助者に対する差止請求については、前記2.(2)のように、これを肯定する裁判例と否定する裁判例との間で鋭い解釈論上の対立が存する。また、比較法としては、ドイツ法、フランス法、アメリカ法、イギリス法の主要4法制につき検討を開始した。これらの法制の検討に当たっては、もちろん法律(制定法)と判例の双方を対象としたが、著作権法ないし知的財産法のみならず、各国における民事法一般等も視野に入れた総合的な比較法研究を心掛けるようにした。特許法の間接侵害規定(特許法101条)との対比においては、現行法(昭和34年法)の当初から存する同条1号・3号と、平成14年改正で付加された同条2号・4号の双方を検討の対象とした。

 前記1.の検討事項は、著作権法において、差止請求をいかなる範囲で肯定すべきかの問題にほかならず、差止請求権と損害賠償請求権との関係や刑事法との関係といった、一般法上の論点も本格的に視野に入れる必要のある複雑困難な論点であるが、本格的な先行研究は必ずしも豊富とはいえない状況にある。このような中で、前記の3点を軸として、最大限努力して検討作業を進めてきたが、現時点までの検討期間が対象事項の複雑困難性に比すと非常に短いものであるために、前記各検討、特に比較法研究は、いまだ緒に就いたばかりといっても過言ではない状況にある。今後これらの検討を行うこととしたい。

 以上のような現時点までの検討状況を踏まえた上でも、特許法101条1号・3号に対応するような間接侵害の規定を著作権法にも何らかの形で盛り込むという基本的方向性については特に異論はなかったが、それを超えるような規定の導入の当否の点については、前述のような比較法研究を含めた徹底的な総合的研究を踏まえた上で、更に検討を継続すべきものとされ、2007年を目途に結論を得るべきものとされた。

 なお、司法救済に関するもう一つの検討項目である損害賠償・不当利得等については、「間接侵害」についての検討が相当程度進んだ時点で、並行して検討を開始することとして、これについても、2007年を目途に結論を得るべきものとされた。

【参照条文】

日本法
著作権法(昭和45年5月6日法律第48号)(抄)
   (差止請求権)
112条 著作者、著作権者、出版権者、実演家又は著作隣接権者は、その著作者人格権、著作権、出版権、実演家人格権又は著作隣接権を侵害する者又は侵害するおそれがある者に対し、その侵害の停止又は予防を請求することができる。
2  著作者、著作権者、出版権者、実演家又は著作隣接権者は、前項の規定による請求をするに際し、侵害の行為を組成した物、侵害の行為によつて作成された物又は専ら侵害の行為に供された機械若しくは器具の廃棄その他の侵害の停止又は予防に必要な措置を請求することができる。

   (侵害とみなす行為)
113条 次に掲げる行為は、当該著作者人格権、著作権、出版権、実演家人格権又は著作隣接権を侵害する行為とみなす。
 国内において頒布する目的をもつて、輸入の時において国内で作成したとしたならば著作者人格権、著作権、出版権、実演家人格権又は著作隣接権の侵害となるべき行為によつて作成された物を輸入する行為
 著作者人格権、著作権、出版権、実演家人格権又は著作隣接権を侵害する行為によつて作成された物(前号の輸入に係る物を含む。)を情を知つて頒布し、又は頒布の目的をもつて所持する行為
2  プログラムの著作物の著作権を侵害する行為によつて作成された複製物(当該複製物の所有者によつて第47条の2第1項の規定により作成された複製物並びに前項第一号の輸入に係るプログラムの著作物の複製物及び当該複製物の所有者によつて同条第一項の規定により作成された複製物を含む。)を業務上電子計算機において使用する行為は、これらの複製物を使用する権原を取得した時に情を知つていた場合に限り、当該著作権を侵害する行為とみなす。
3  次に掲げる行為は、当該権利管理情報に係る著作者人格権、著作権、実演家人格権又は著作隣接権を侵害する行為とみなす。
 権利管理情報として虚偽の情報を故意に付加する行為
 権利管理情報を故意に除去し、又は改変する行為(記録又は送信の方式の変換に伴う技術的な制約による場合その他の著作物又は実演等の利用の目的及び態様に照らしやむを得ないと認められる場合を除く。)
 前二号の行為が行われた著作物若しくは実演等の複製物を、情を知つて、頒布し、若しくは頒布の目的をもつて輸入し、若しくは所持し、又は当該著作物若しくは実演等を情を知つて公衆送信し、若しくは送信可能化する行為
4  第95条第1項若しくは第97条第1項に規定する二次使用料又は第95条の3第3項若しくは第97条の3第3項に規定する報酬を受ける権利は、前項の規定の適用については、著作隣接権とみなす。この場合において、前条中「著作隣接権者」とあるのは「著作隣接権者(次条第4項の規定により著作隣接権とみなされる権利を有する者を含む。)」と、同条第1項中「著作隣接権」とあるのは「著作隣接権(同項の規定により著作隣接権とみなされる権利を含む。)」とする。
5  国内において頒布することを目的とする商業用レコード(以下この項において「国内頒布目的商業用レコード」という。)を自ら発行し、又は他の者に発行させている著作権者又は著作隣接権者が、当該国内頒布目的商業用レコードと同一の商業用レコードであつて、専ら国外において頒布することを目的とするもの(以下この項において「国外頒布目的商業用レコード」という。)を国外において自ら発行し、又は他の者に発行させている場合において、情を知つて、当該国外頒布目的商業用レコードを国内において頒布する目的をもつて輸入する行為又は当該国外頒布目的商業用レコードを国内において頒布し、若しくは国内において頒布する目的をもつて所持する行為は、当該国外頒布目的商業用レコードが国内で頒布されることにより当該国内頒布目的商業用レコードの発行により当該著作権者又は著作隣接権者の得ることが見込まれる利益が不当に害されることとなる場合に限り、それらの著作権又は著作隣接権を侵害する行為とみなす。ただし、国内において最初に発行された日から起算して七年を超えない範囲内において政令で定める期間を経過した国内頒布目的商業用レコードと同一の国外頒布目的商業用レコードを輸入する行為又は当該国外頒布目的商業用レコードを国内において頒布し、若しくは国内において頒布する目的をもつて所持する行為については、この限りでない。
6  著作者の名誉又は声望を害する方法によりその著作物を利用する行為は、その著作者人格権を侵害する行為とみなす。

民法(明治29年4月27日法律第89号)(抄)
   (不法行為による損害賠償)
709条 故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。

   (共同不法行為者の責任)
719条 数人が共同の不法行為によって他人に損害を加えたときは、各自が連帯してその損害を賠償する責任を負う。共同行為者のうちいずれの者がその損害を加えたかを知ることができないときも、同様とする。
2  行為者を教唆した者及び幇助した者は、共同行為者とみなして、前項の規定を適用する。

特許法(昭和34年4月13日法律第121号)(抄)
   (差止請求権)
100条 特許権者又は専用実施権者は、自己の特許権又は専用実施権を侵害する者又は侵害するおそれがある者に対し、その侵害の停止又は予防を請求することができる。
2  特許権者又は専用実施権者は、前項の規定による請求をするに際し、侵害の行為を組成した物(物を生産する方法の特許発明にあつては、侵害の行為により生じた物を含む。第102条第1項において同じ。)の廃棄、侵害の行為に供した設備の除却その他の侵害の予防に必要な行為を請求することができる。

   (侵害とみなす行為)
101条 次に掲げる行為は、当該特許権又は専用実施権を侵害するものとみなす。
 特許が物の発明についてされている場合において、業として、その物の生産にのみ用いる物の生産、譲渡等若しくは輸入又は譲渡等の申出をする行為
 特許が物の発明についてされている場合において、その物の生産に用いる物(日本国内において広く一般に流通しているものを除く。)であつてその発明による課題の解決に不可欠なものにつき、その発明が特許発明であること及びその物がその発明の実施に用いられることを知りながら、業として、その生産、譲渡等若しくは輸入又は譲渡等の申出をする行為
 特許が方法の発明についてされている場合において、業として、その方法の使用にのみ用いる物の生産、譲渡等若しくは輸入又は譲渡等の申出をする行為
 特許が方法の発明についてされている場合において、その方法の使用に用いる物(日本国内において広く一般に流通しているものを除く。)であつてその発明による課題の解決に不可欠なものにつき、その発明が特許発明であること及びその物がその発明の実施に用いられることを知りながら、業として、その生産、譲渡等若しくは輸入又は譲渡等の申出をする行為


ドイツ法
著作権法(1965年9月5日の著作権及び著作隣接権に関する法律)(抄)


『外国著作権法令集(16)―ドイツ編―』(社団法人 著作権情報センター、1995年)〔斉藤博訳〕(1993年一部改正)55頁より】

 
第二節 権利侵害
第一款 民事規定、訴訟方法
97条 不作為及び損害賠償の請求
1  著作権又はこの法律によつて保護を受けるその他の権利を、違法に侵害する者に対して、被害者は、侵害の排除を、反復のおそれがあるときは不作為を、加害者に故意又は過失があるときは損害賠償をも、請求することができる。被害者は、損害賠償に代えて、加害者が権利の侵害によつて得た利得の返還及びこの利得に関する会計報告を請求することができる。


イギリス法
著作権法(1988年の著作権、意匠及び特許法)(抄)
『外国著作権法令集(34)―英国編―』(社団法人 著作権情報センター、2004年)〔大山幸房訳〕(1990年、1992年、1994年、1995年、1996年及び1997年一部改正)23-25頁、247-249頁、251-252頁より】

 
著作権の二次侵害


   (二次侵害―侵害複製物の輸入)
22条 著作物の著作権は、著作物の侵害複製物である物品であって、侵害複製物であることを知り、又はそう信じる理由を有しているものを、私的及び家庭内の使用以外のために、著作権者の許諾を得ずに連合王国に輸入する者により侵害される。

   (二次侵害―侵害複製物の所持又は利用)
23条 著作物の著作権は、著作物の侵害複製物である物品であって、侵害複製物であることを知り、又はそう信じる理由を有しているものについて、著作権者の許諾を得ずに次の行為を行う者により侵害される。
(a)  業務の過程において所持すること。
(b)  販売し、若しくは賃貸させ、又は販売若しくは賃貸のために提供し、又は陳列すること。
(c)  業務の過程において公に展示し、又は頒布すること。
(d)  業務の過程以外において、著作権者を害する程度にまで頒布すること。


   (二次侵害―侵害複製物の作成のための手段の提供)
24条 (1) 著作物の著作権は、その著作物の複製物を作成することを特に意図され、又はそのために適応される物品について、それが侵害複製物を作成するために使用されることを知りつつ、又はそう信じる理由を有しつつ、著作権者の許諾を得ずに次の行為を行う者により侵害される。
(a)  作成すること。
(b)  連合王国に輸入すること。
(c)  業務の過程において所持すること。
(d)  販売し、若しくは賃貸させ、又は販売若しくは賃貸のために提供し、又は陳列すること。
(2)  著作物の著作権は、連合王国その他における送信の受信により著作物の侵害複製物が作成されることを知りつつ、又はそう信じる理由を有しつつ、電気通信設備(放送すること又は有線番組サービスに挿入すること以外の)により著作物を著作権者の許諾を得ずに送信する者により侵害される。

   (二次侵害―侵害実演のための構内の使用の許可)
25条 (1) 文芸、演劇又は音楽の著作物の著作権が公の興行の場所における実演により侵害される場合には、その場所が実演に使用されることに許可を与えたいずれの者も、その者が許可を与えた時に実演が著作権を侵害しないことを合理的な根拠により信じていた場合を除き、侵害について責任を有する。
(2)  この条において、「公の興行の場所」は、主として他の目的のために占有されている構内であって、随時公の興行を目的とする賃貸のために提供されるものを含む。

   (二次侵害―侵害実演等のための機器の提供)
26条 (1) 次のことを行うための機器を用いて著作物を公に実演し、又は著作物を公に演奏し、若しくは上映することにより著作物の著作権が侵害される場合には、以下の者も、侵害について責任を有する。
(a)  録音物を演奏すること。
(b)  映画を上映すること。
(c)  電子的手段により送られる視覚的影像又は音を受信すること。
(2)  機器又はそのいずれかの実質的部分を提供する者は、その者が機器又はその部分を提供した時に次のいずれかに該当するときは、侵害について責任を有する。
(a)  機器が著作権を侵害するように使用される可能性があることを知り、若しくはそう信じる理由を有していた。
(b)  その通常の使用が公の実演、演奏又は上映を伴う機器の場合には、その機器が著作権を侵害するように使用されないことを合理的な根拠により信じていなかった。
(3)  機器が構内に持ち込まれることに許可を与えた構内の占有者は、その者が許可を与えた時に機器が著作権を侵害するように使用される可能性があることを知り、又はそう信じる理由を有していたときは、侵害について責任を有する。
(4)  著作権を侵害するために使用された録音物又は映画の複製物を提供した者は、その者がそれを提供した時に、その提供したもの又はそれから直接若しくは間接的に作成された複製物が著作権を侵害するように使用される可能性があることを知り、又はそう信じる理由を有していたときは、侵害について責任を有する。

 
複製防止を回避するための装置


   (複製防止を回避するための装置)
296条 (1) この条の規定は、著作権のある著作物の複製物が、著作権者により又はその許諾を得て、複製防止の電子的形式により公衆に配布される場合に適用される。
(2)  複製物を公衆に配布する者は、それが侵害複製物を作成するために使用されることを知り、又はそう信じる理由を有しながら次のいずれかのことを行う者に対して、著作権者が著作権侵害について有する権利と同一の権利を有する。
(a)  用いられた複製防止の形式を回避することを特に予定され、又はそのように適応されたいずれかの装置又は手段を作成し、輸入し、販売し、若しくは賃貸させ、販売若しくは賃貸のために提供し、若しくは陳列し、又は販売若しくは賃貸のために広告すること。
(b)  ある者がその複製防止の形式を回避することを可能とし、又は援助することを意図される情報を公表すること。
(2A)  第1項に定める公衆に配布される複製物が、コンピュータ・プログラムの複製物である場合には、第2項の規定は、同項における「販売若しくは賃貸のために広告する」という用語が「販売若しくは賃貸のために広告する」という用語が「販売若しくは賃貸のために広告し、又は業務の過程において所持する」に替えられたものとして、適用される。
(3)  さらに、その者は、第99条又は第100条(ある種の物品の引渡し又は押収)に基づいて、著作権のある著作物の侵害複製物を作成するために使用する意図をもってある者が所有し、保管し、又は管理するそのようないずれかの装置又は手段に関して、著作権者が侵害複製物に関して有する権利と同一の権利を有する。
(4)  この条における複製防止への言及は、著作物の複製を阻止し、若しくは制限し、又は作成された複製物の品質を害することを意図されるいずれかの装置又は手段をも含む。
(5)  この法律第1部(著作権)の目的のために定義されているこの条において使用されている表現は、同部におけると同一の意味を有する。
(6)  次の規定は、第1部(著作権)に基づく訴訟手続に関してと同様に、この条に基づく訴訟手続に関しても適用される。
(a)  この法律第104条から第106条まで(著作権に関するある種の事項についての推定)
(b)  1981年の最高裁判所法第72条、1985年の法改革(雑則)(スコットランド)法第15条及び1978年の裁判権(北部アイルランド)法第94条のA(知的所有権に関するある種の訴訟手続における自己負罪に対する特権の取消し)
また、この法律第114条の規定は、必要な修正を伴って、前記第3項に基づいて引き渡され、又は押収されるいずれかのものの処分に関しても適用される。

 
送信の不正受信


 

 (送信の無許諾受信のための機器等についての権利及び救済)

298条 (1) 次の者は、以下の権利及び救済について資格を有する。
(a)  連合王国内のある場所から提供される放送又は有線番組サービスに挿入される番組の受信について代金を請求する者
(b)  連合王国内のある場所から他のいずれかの種類の暗号送信を送る者
(2)  その者は、次のことを行う者に対して、著作権者が著作権侵害について有すると同一の権利及び救済を有する。
(a)  ある者がそうすることについて資格を有しないときに、その者が番組その他の送信を受信することを可能とし、若しくは援助することを予定され、又はそのように適応されたいずれかの機器又は装置を作成し、輸入し、販売し、若しくは賃貸し、販売若しくは賃貸のために提供し、若しくは陳列し、又は販売若しくは賃貸のために広告すること。
(b) ある者がそうすることについて資格を有しないときに、その者が番組その他の送信を受信することを可能とし、若しくは援助することを企図されるいずれかの情報を公表すること。
(3)  さらに、その者は、第99条又は第100条(ある種の物品の引渡し又は押収)に基づいて、そのようないずれかの機器又は装置に関して、著作権者が侵害複製物に関して有すると同一の権利を有する。
(4)  1981年の最高裁判所法第72条、1985年の法改革(雑則)(スコットランド)法第15条及び1978年の裁判権(北部アイルランド)法第94条のA(知的所有権に関するある種の訴訟手続における自己負罪に対する特権の取消し)の規定は、この法律第1部(著作権)に基づく訴訟手続に適用されると同様に、この条に基づく訴訟手続にも適用される。
(5)  この条により付与される権利の侵害訴訟手続に適用される第97条第1項(著作権の善意による侵害)において、著作物に著作権が存続していたことを知らず、又はそう信じる理由を有しない被告への言及は、その者の行為がこの条の規定により付与される権利を侵害したことを知らず、又はそう信じる理由を有しないことへの言及と解釈される。
(6)  この法律第114条の規定は、必要な修正を伴って、前記第3項に基づいて引き渡され、又は押収されるいずれのものの処分に関しても適用される。


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