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2 検討内容 |
(ア)UCITAの成立経緯 米国においては、契約法の一般的な規律を行うものとして、UCC(Uniform Commercial Code;統一商事法典)があるが、これは原則として有体物(あるいは有体物と役務の混合)の取引を規整するものである。情報が有体物に化体して取引される以上は、UCCの適用が認められる(現にProCD事件で問題となったのは、統一商事法典の第2編であった)が、情報それ自体が取引の対象となる現代社会において、その法的規整を行う一般的な制定法が必要であるという認識が高まり、当初は、UCCの第2編を改正するという形で立法作業が開始された。 この改正作業は、NCCUSUL(National Conference of Commission on Uniform States Laws;全米統一州法委員会全国会議)及びALI(American Law Institute;米国法律協会)で検討が進められたが、立法過程は紆余曲折を極め、最終的にはUCCに盛り込むことは断念され、UCCとは独立したUCITA(Uniform Computer Information Transactions Act;統一コンピュータ情報取引法)としてNCCUSULで成立した。現在、州レベルで採択が進みつつある。 |
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(イ)UCITAにおける論点 UCITAにおいて興味深いのは、マスマーケット・ライセンス(Mass-Market License)について規定した第209条、そして「基本的な公共政策(Fundamental Public Policy)」に反する契約を無効化することを規定した第105条である。第209条では、契約条件がライセンスの一部にならないと掲げられているところの「非良心的(unconscionable)な契約条件、又は第105条(a)(連邦法による専占(Preemption)の場合)若しくは(b)(基本的な公共政策(Fundamental Public Policy)に反する場合)に基づき実施できない契約条件」が問題となる。 いかなる契約条項が、有効又は無効とされる可能性があるのかに関し、オフィシャル・コメント( ![]() |
このように、オフィシャル・コメントにおいては、幾つかの類型について具体的に有効又は無効となる契約条項が列挙されているものの、それらの類型に対しても、「通常の場合には(ordinarily)」という文言が再三に渡って用いられており、常に無効となるとまでは言い切っていない。なお、リヴァース・エンジニアリングに関しては、繰り返し述べられていることから、一般的にそれを制限する契約条項は無効とされるべきなのだろうということは看取し得る。
欧州においては、1991年のコンピュータ・プログラム指令、1996年のデータベース指令等が、それらの法が認める一定の利用行為に反対する契約は無効である(null and void)と説く(例えば、前者においては、リヴァース・エンジニアリングの際に問題となる逆コンパイルがそれに当たる(コンピュータ・プログラム指令第6条))が、各国が国内法化する過程において対応に違いが生じているようである。
この点、データベース指令に対応する形で改正がなされたベルギー著作権法が、教育目的や科学研究、行政手続や司法手続等での複製等について強行性を認める対応を行っている点が注目される(第23条の2)。その他、ドイツ著作権法が、「独立して作成されたコンピュータ・プログラムと他のプログラムとの互換性を確保するために不可欠な情報を得るためには」という条件つきで、逆コンパイルを許容する立法を行っている(第69e条)。
米国における議論を概観したかぎり、特定の類型が無効となるという一義的指針を得ることはできず、この問題を我が国において議論するに当たって、我が国著作権法の制限規定は強行規定か否かという問題設定を行うことには困難も予想される。もっとも,欧州におけるコンピュータ・プログラム指令、データベース指令における議論では、ある特定の類型が強行性を有すると規定されるケースも見受けられ、米国における議論だけが普遍的であると考えるのには留保が必要である。
現段階で重要なことは、米国における議論にせよ、ヨーロッパにおける議論にせよ、かかる議論が本格的になされていない我が国においては、以下に述べる作業を着実に行うことであると思われる。その過程において、ある特定の利用類型について強行規定とすべきと考えられるならば、その旨を立法することで対応すべきである。
今後、検討しなければならない点は、著作物の利用に関し、ある種の契約は無効としなければならないのではないか、その要素としてはどのようなものが考えられるかということである。米国では、UCITA第105条に、契約成立の有効性に関する一般条項があり、これにより無効となる契約の類型を、著作権法の考え方も1つの判断要素として議論している。以下、これらの諸問題を3つの段階に分けて論じることとする。
第1に、この問題を「制限規定が強行規定か否かという問題」として議論した場合、結論としてある制限規定が強行規定であるという場合には、契約における他の要素を一切考慮することなく、当該強行規定に反する契約は無効となるのだが、どのような場合にあっても絶対に無効であると言えるような制限規定が著作権法に果たしてあるだろうかという点である(68)。とりわけ欧州の議論から伺えるように、制限規定について個別に検討し、強行規定である制限規定を抽出する作業を行うことも可能である点は前述のとおりであるが、この洗い出し作業を行うには、さらなる検討が必要である(
69)。
第2に、本問題の大前提として、著作物の利用に関して、ある種の契約は無効となるべきではないかという問題意識が存在するのであり、従ってこの問題は、制限規定も一つの契約無効を判断する要素としつつ、いくつかの要素から判断して「一般的に」無効となると考えるべき契約としてどのようなものがあるか、また、制限規定以外の判断要素としてどのようなものが考えられるかという点から検討がなされるべきである。
第3に、これらの諸要素を確定させた上で、契約の有効性に関する判断についての立法的対応が必要か(民法第90条、あるいは消費者契約法第10条で対応するのか、それだけでは足りないとして著作権法に契約無効に関する何らかの一般条項を置くのか)を検討すべきである。
なお、制限規定との関係を直接的な要素とはしないものの、保護期間の満了した著作物、非著作物の利用契約についても、今後の作業の見通しのために若干記述する。
保護期間の満了した著作物が契約によって流通する形態は、現在においても、保護期間の満了した映画や音楽の複製物等の流通や絵画等のアーカイヴといった領域で見受けられるところであり、また非著作物に関しても一般に契約を通じた利用がなされていることから、このような情報等の利用に関する法的規整について検討することも必要であると思われる。なお、データベース等を通じた利用がなされているという場合には、個々の情報の利用に関する法的規整の検討に加えてデータベースの法的保護との関係といった問題も念頭に置いた検討がなされるべきである(70)。
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第5節 規制の対象とすべき行為 |
著作権者は、他人に対し、その著作物の利用を許諾することができ(第63条第1項)、 許諾を得た者は、その許諾に係る利用方法及び条件の範囲内において、その許諾に係る著作物を利用することができる(第63条第2項)。
著作物の利用許諾(ライセンス)契約では、複製、上演、貸与、放送等の、著作権法が著作者に排他的な利用を認めている利用形態のいずれを許諾するのかを明確にしている条項の他、利用部数、演奏回数、利用場所、利用時間、対価の額等やさらに各利用形態を細分化した条項等様々な事項を定めることが一般的である。
著作権法第63条第2項は、「許諾を得た者は、その許諾に係る利用方法及び条件の範囲内において、その許諾に係る著作物を利用することができる」と規定しているが、次の点について解釈が明確でないという問題があるとされる(71)。
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第63条第2項の「利用方法及び条件」には、利用許諾契約で定められている全ての条項が該当するのか。 |
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第63条第2項の「利用方法及び条件」の範囲に反して著作物を利用した場合、ライセンシーは、著作権侵害を問われるのか。 |
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これに付随して、ライセンシーの契約違反を理由に契約を解除した場合、解除前に行った利用は著作権侵害となるのか。 |
旧著作権法は、著作物の利用の許諾についての規定を置いていない。
著作権制度審議会答申においても、利用の許諾に関する答申はなく、答申を受けて作成された文部省試文化局試案(昭和41年10月)においても、利用の許諾に関する条文案はない。
しかしながら、その後の検討において、「権利行使の最も普遍的かつ普通の態様である利用許諾の規定がないということは適当ではない」とされ、現行著作権法第63条第1項から第4項と同様の条文案が作成された。しかし、第1項及び第2項については、当たり前のことを確認的に規定したものとして理解されていたようであり、当該条項についての議論は見あたらない。
第2項に関連する規定として、第63条第5項が平成9年の著作権法改正で追加されている。第5項は、送信可能化の許諾にかかる利用方法及び条件のうち、送信可能化の回数、又は送信可能化に用いる自動公衆送信装置に係るものについては、これに反しても公衆送信権の侵害とならないと規定している。
第63条第2項の考え方としては、第1に、(ア)「利用許諾契約で定める事項は全て第2項の「許諾に係る利用方法及び条件」であるとする考え方」があり得る。この考え方は、さらに次の2つに分けられる。
()「許諾に係る利用方法及び条件(=利用許諾契約で定めた事項)」にライセンシーが違反した場合、全て著作権侵害となる。
(
)「許諾に係る利用方法及び条件(=利用許諾契約で定めた事項)」にライセンシーが違反しても、著作権侵害になる場合とならない場合がある。
()については否定的な見解が多い。例えば、出版物や録音物の譲渡先や譲渡場所を限定する事項については、譲渡権の規定の趣旨からも、それが著作権侵害になることはないとする説明が一般的である。
()を採る場合、第2項は「利用者は契約を守らなければならない」という一般的なことを確認的に規定する条項に過ぎないということになる。
第2の考え方は、(イ)「利用許諾契約で定める事項のうち、ライセンシーが違反すると著作権侵害になるものだけが、第2項の「許諾に係る利用方法及び条件」であるとする考え方」である。この考え方を採ると、第2項は、「許諾に係る利用方法及び条件」に反して著作物を利用することは著作権侵害であると規定する条項ということになる。
しかし、この場合、許諾契約で定める事項のうち、何が著作権侵害となる事項であるか、つまり、何が「許諾に係る利用方法及び条件」であるかが、少なくとも条文上明確ではないという問題がある。
従って、(ア)()の考え方を採用しない限りにおいては、第2項に規定する「許諾に係る利用方法及び条件」の文言を解釈することに実質的な意味はなく、むしろ、第2項に関しては、利用許諾契約で定める事項のうち、「違反すると著作権侵害になる事項」と「違反しても単なる契約違反にしかならない事項」が明確化されることに意味がある。
・利用許諾契約の解除とその効果
利用許諾契約において定めた事項の違反が著作権侵害とならないとしても、当該事項に違反したことをもって著作権者が利用許諾契約を解除できる場合には、解除の効果が解除前に行った利用行為について遡及する(例えば、契約関係が当初から存在しなかったことになる)とすれば、当該利用行為は結局著作権侵害となるとも考えられる。
そして、この場合には、利用許諾契約において定めた事項の違反が、著作権侵害となるかならないかに関係なく、利用許諾契約の解除によって利用者の著作権侵害を問うことができることとなるので、(4)における分類は意味をなさなくなり、むしろ、利用許諾契約を解除できる契約違反として、どのようなものが認められるかが重要となる。
第5項についても、「送信可能化の回数」と「送信可能化に用いる自動公衆送信装置」に係る利用方法及び条件についての契約違反を理由に利用許諾契約を解除できるのであれば、解除の効果によっては、規定の実質的な意味がなくなるおそれがある。
従って、今後、どのような場合に利用許諾契約を解除できるのか、利用許諾契約の解除がどのような効果をもつのかについて検討する必要がある。例えば、継続的利用許諾契約の解除の効果、利用により作成された著作物の複製物を購入した第三者への効果、刑事罰の適用などについて整理が必要である。
一般的な著作物の利用許諾契約では、複製、上演、貸与、放送等の著作権法が著作者に独占を認めた利用形態のいずれを許諾するのかを明確にしている条項の他、利用部数、演奏回数、利用場所、利用時間、対価の額等やさらに各利用形態を細分化した条項等様々な事項が定められている。
このうち、対価の額等やさらに各利用形態を細分化した条項等については、これらの条項に違反したからといって著作権侵害とはいえず、従って、通常の利用許諾契約には著作権者が著作権に基づく差止請求権を行使しない旨を定めた著作物利用適法化条項と、対価の額等の契約解除事由にしかならない単なる契約事項があるといえる。
第63条第1項の「許諾」は、契約の他に単独行為によっても可能であると解されている。従って、第62条第2項でいう「許諾に係る利用方法及び条件」を著作権者が単独行為で決められることに限定し、著作権者が差止請求権を行使しない範囲のみが第63条第2項の「許諾に係る利用方法及び条件」であり、これ以外は単なる債務不履行の問題であると考えても不自然ではない。
しかし、上記(4)考え方の整理で述べたように、どの立場を支持するかは重要ではなく、実質的な意味は「違反すると著作権侵害になる事項」と「違反しても単なる契約違反にしかならない事項」の峻別である。
第63条2項の問題は、特許法と同様、現時点では直接的に立法的解決を図る必要性に乏しく、契約の解除の効力の問題を含めて、解釈論に任せるべき事項であると考える。
ただし、一方で利用許諾契約における利用者の保護の問題において、著作権者の破産や、著作権者が第三者に著作権を譲渡した場合に利用者の著作物利用を保護する制度の導入について検討が行われている。そこでは、利用許諾契約の契約上の地位の承継の問題と、許諾の対抗の問題を分けるべきであるとの議論もある。今後、この議論に際し、上記の「違反すると著作権侵害になる事項」と「違反しても単なる契約違反にしかならない事項」の峻別が必要になってくる可能性があるので引き続き注意すべき事項であるといえる。
著作権は、著作権者による任意の移転が可能である(第61条1項)。そして、著作権の移転は、所有権その他の物権の移転と同様、当事者の意思表示のみによって効力を生じる。すなわち、著作権の売買、交換、贈与、信託等の契約(譲渡契約)成立により移転する。ただし、著作権の移転は、登録しなければ第三者に対抗することができない(第77条)。
我が国においては、一般的に売買等の契約は当事者の意思の合致で成立し、契約書の作成は契約成立の要件ではない。
著作権の譲渡について書面により当事者の意思が明確に確認されないことにより、後日、その契約の解釈について問題となることが多いとされる。そして、この問題は次の2つに場合分けすることができる。
第1に、契約が譲渡契約であるということについては争いがないが、譲渡した著作権の範囲や条件等について事後に争いがある場合である。
これは、ア.譲渡に際しての著作権の細分化が相当程度自由に認められていることや、イ.著作物の利用が技術の進歩や社会の変化により多様化するため当初契約に含まれていたかの判断が難しい新しい利用(媒体・形態)の登場が避けられないこと等に起因する問題であると思われる。ただし、これは譲渡特有の問題ではなく、利用許諾においても同様の問題が生じる(72)。
第2に、契約が譲渡契約であったかどうかを争う場合である。
例えば、著作物の制作を第三者に委託する制作委託の場合の著作権の帰属を巡る問題がある。著作物の制作委託契約において、委託者と受託者が、契約時に著作物の著作権の帰属を明確化しないことにより、委託時に両当事者が明確に認識していた利用については(少なくとも利用許諾は認められるだろうから)争いは生じないが、それを超えた利用を行う場合に顕在化する問題である。
また、出版業界等における「買取契約」と呼ばれる契約も、原稿、写真、イラスト等の著作権の譲渡契約であったのかどうかが問題となりやすい。
これらの問題は、譲渡に特有の問題であると思われる。
また、これらの契約の解釈という問題の他に、あまり論じられることはなかったが、譲渡契約時の弱者保護の必要性や諸外国との法制度の調和という問題もあると思われる。
具体的検討に先立ち、契約書作成の効果と当事者に契約書を作成させる立法手段を整理してみたい。
契約書を作ることの効果としては、一般的には、契約当事者の意思を明確にする効果、契約締結時に当事者に慎重な判断を促す効果、訴訟等の争いになった場合の証拠としての効果、契約書を提示することで譲受人が第三者に対し自らが権利者であることを公示する効果等があると考えられる。また、当事者に契約書を作成させる立法手段としては、以下のような方法が採り得るだろう。
ア.要式契約とする(契約書がなければ契約は成立しないとする。)。
イ.諾成契約であるが、書面作成義務又は書面交付義務を、両当事者又は一方に課す。
ウ.契約書がない場合、裁判所が契約の存在をみとめない。
ア.については、契約は当事者の意思表示の合致により成立するという原則を変更して、要式契約とすることには相当の理由が必要であるし、契約書がなければ契約の成立をみとめないとすることまで必要かどうかの検討が行われなければならない。
イ.については、このような立法例は、特に事業規制として我が国にも見られるところであるが、いずれにせよ必要性について十分な検討を行わなければならない。
ウ.については、我が国の訴訟における自由心証主義の例外として、書証主義をとることになるので、アと同様に相当の理由が必要であろう。
過去2回の検討は、いずれも契約の要式化について検討しているが、著作権制度審議会では譲渡契約のみを、著作権審議会マルチメディア小委員会ワーキング・グループでは利用許諾契約を含む著作物に係る利用契約全般を対象としている。
従って、特に著作権審議会マルチメディア小委員会ワーキング・グループにおける議論は、(2)の問題についての議論であったと考えるべきであろう。一方、著作権制度審議会における議論では、要式契約化の意義を、当事者間の関係を明確にして将来における紛議を回避し、また、紛争が生じた場合における事実認定を容易にする等の点に認めていたようであり、それが(2)の
と
のどちらを念頭においていたのかは明らかではないが、おそらく両者を区別せずに議論していたものと思われる。ただし、「書面による契約を期待すること」ができない譲渡契約の実態に言及している点は、主に
を念頭にしていたと思われる。
また、いずれの議論にも共通することは、要式契約化(すなわち、契約書のない契約の成立を認めないこと。)について、そこまでの必要性を認めていないということ、そして著作権だけの特別なルールを作ることについては消極的であったということである。
我が国では、例えば不動産の所有権の譲渡契約についても諾成・不要式契約であるし、特許権の譲渡契約についても、登録しなければ移転の効力を生じないが、口頭の譲渡契約であっても無効ではなく、譲渡人は、譲受人に対して移転登録手続を行うべき契約上の義務を負う。そうすると、なぜ著作権の譲渡契約についてのみ書面を要求し、要式契約とする理由の説明は難しい。もっとも、不動産については登記することが一般的であるし、特許権については登録しなければ特許権が移転しない等、契約自体の成立とは別の面で当事者合意の書面による明確化が図られる仕掛けとなっている(書面がなければ登記又は登録を行うことができない)一方、著作権は登録が第三者対抗要件となっているがほとんど登録が利用されておらず、補完的役割を担っていないという違いもある。
また、著作物の制作委託等の契約を行う際には、契約内容の具体的な条項の詰めを行う前に、受託者が著作物の制作に取りかかる場合も多いが、このように契約の履行行為が契約書の作成に先行するということは、著作物の制作委託に限らず我が国の契約実態としてしばしば見られるところである。
我が国の契約法はこのような実態とも相互関係にあるため、著作権の譲渡だけに特別のルールを作った場合、著作物の制作委託等の実態等がこれに対応できるかどうかは疑問があり、少なくともそのためには大きな努力を必要とすると思われる。
なお、契約書を作成させることで譲渡人である著作者に慎重な判断を促すといった著作者保護の発想は、過去の検討からは明示的には読み取れない。また、諸外国と法制度が異なることによる、書面なき外国著作権の譲渡の有効性や訴訟等の場面における扱いに係る国際私法上の問題の議論は一切行われていない。
「譲渡された権利の範囲等の明確化の問題」は、利用許諾における「利用許諾契約における利用権の範囲の解釈問題」とも共通する契約の解釈問題である。当事者は契約の存在又は有効性を争っている訳ではないので、過去の議論と同様に、契約書がなければ譲渡契約の成立を認めないとする対応によって解決をはかろうとするのは適当ではないと思われる。
もちろん、その他の手段により契約書作成を強制することで、一定程度の契約内容の明確化の効果は期待できるが、契約書を作成したとしても当事者の意思表示が書面上不明確であれば何の問題解決にもならないし、契約書があっても解釈についての争いが起きている実態にかんがみれば、要式契約化その他の契約書作成の強制は、問題に対する完全な解答とはならない。
契約が譲渡契約であったかどうか争う場合に、その解決策として譲渡契約の要式契約化及びその他の契約書作成の強制を制度化(証拠ルール化)することによって、紛争解決を容易にすることは可能であるが、これは、「著作権の譲渡について書面で意思表示しないこと」について「契約成立の有効性を認めない」というペナルティを与える制度であり、このペナルティが課せられるのは著作権の譲渡を受けたと主張する側となる。
しかし、この問題は、「当事者が著作権の帰属について明確に取り決めをしない(著作権の譲渡について書面で意思表示しない)」ことが原因であるなら、問題の解決法として著作権の譲渡を受けたと主張する側だけがペナルティを負う制度には疑問がある。
もちろん、約款規制的な視点や独占禁止法的な視点から、例えば、個人の著作者が制作委託契約において、大企業である委託者から一方的に提示された制作委託契約約款中に著作権の帰属について一切触れられていなかったような場合に、当事者間で著作権の譲渡があったかどうかが紛争となったとすれば、裁判所が「表現使用者に不利に解釈」して譲渡契約の存在を否定するということがあるかもしれない。しかし、「著作権の譲渡について書面で意思表示しないこと」一般について、他の要素を考慮せずに、著作権の譲渡を受けたと主張する側に不利に判断することは適当ではない。
なお、このような問題に対する判例からも特に基準は抽出できない。例えば、同一案件について、下級審と上級審で、事実認定が異なる場合も見られる(73)。
なお、弱者保護の観点からの対応としては、平成16年4月1日から施行された改正下請法により、新たにプログラムや映画・放送番組等の情報成果物の作成に係る下請取引等が規制対象となっている。同法では、下請取引の公正化を図ることを目的として、発注元である親事業者に対し、下請の内容、下請代金の額、支払期日及び支払方法等を記載した書面(3条書面)の下請事業者への交付義務を課しており、これによって、著作物の制作委託契約に関する契約の問題についても、一定程度の手当が行われていることにも留意すべきである(74)。
諸外国の立法例をみると著作権の譲渡について書面の作成を要求する立法例は多い。しかし、我が国において同様の立法を行うことは、必ずしも適切であるとは言えない。
その理由として、
) 不動産の所有権その他の物権の譲渡契約一般が要式契約とされていない我が国の法制度の中で、著作権の譲渡契約についてのみ要式契約とするだけの十分かつ合理的な理由を見いだせないこと、
) 著作権の譲渡について書面の作成を要求する国には、著作権に限らず、不動産の所有権や一定価値以上の権利の譲渡にも書面を求める等の法制度を採っており、それとは異なる法制度を採る我が国において同様に考えるべき必然性はないこと、
) 我が国の民事訴訟では、著作権の譲渡につき争いがある場合には、著作権の譲渡があったと主張する者がその点について主張・立証責任を負うとされ、契約書面がない場合には、それ以外の証拠方法によって譲渡契約の存在が認定されない限り、著作権の譲渡はなかったものと判断される。従って、契約書面のないことによる不利益は、現行法制度のもとでも譲渡を主張する側に発生しており、契約書面以外の方法により著作権譲渡を立証し得る場合にもそれを否定する法制度の必要性・妥当性について疑問があること、
) むしろ自由心証主義のもとで裁判所が個別事案に応じた適切な事実認定及び契約解釈を行うことにより、合理的かつ公平な結論を得られると期待できること、
を挙げることができる。
また、実態としても、
) 著作物の中には映画やゲームソフトのように経済的価値の大きいものや、小説や芸術写真のように高度の精神的活動の所産であるものが含まれる反面、業務報告書やスナップ写真のようにごく日常的に作成されるものも多数含まれ、それらの著作権の譲渡に一律に契約書面を要求するのは必ずしも適切ではないと思われる。
なお、弱者保護の検討の必要性については、以下の理由から、著作権の譲渡契約に関して何らかの手当が必要な差し迫った状況にはないと考える。
) 原始的著作権者には零細な個人の著作者のみならず、大規模なソフトウェア会社・映画製作者等の法人や、個人であっても強大な立場を有する著作者もおり、原始的著作権者が必ずしも社会的・経済的弱者であると断じることはできないこと、
) 社会的・経済的弱者保護の法制度としては、制作委託契約に伴う著作権譲渡のケースに対象が限られると思われるが、既に下請法による規制が存在しており、著作権法とは異なる法制度のもとで社会的・経済的弱者である著作者の保護を図る余地があること、
ただし、諸外国の法制度と比較した場合、我が国の法制度がかなり特殊であることから、今後、仮に我が国において著作権の譲渡契約を要式契約化した場合にどのような不都合が生じるおそれがあるかについて、さらに議論を深める必要がある。
また、国際化の進展に伴い、著作権が国際取引によって譲渡される場合が多くなっているが、我が国の法制度が著作権譲渡について契約書面の作成を要求しないとすれば、諸外国では契約書面を要求されることが多いことから、
) 我が国の著作権を譲渡する契約の準拠法が契約書面を要求する国の法律であった場合、
) 逆に、著作権譲渡に契約書面を要求する国における著作権を、我が国の法律を準拠法とする契約によって譲渡する場合、のそれぞれに生じる国際私法上の問題(
75)を検討しておく必要がある。
また、外国の裁判所で争われた際にどのような結論になるのかについても、注意が必要である。
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(a) | 著作権の移転は、法の作用によるものを除き、譲渡証書または移転の記録もしくは覚書が書面にて作成され、かつ、移転される権利の保有者またはその適法に授権された代理人が署名しなければ効力を有しない。 | |
(b) | 略 |
(1) | (2)略 | |
(3) | 著作権の譲渡は、譲渡人により、又はその者のために署名された書面によらない限り、有効ではない。 | |
(4) | 略 |
第131の2条(![]() |
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2 | その他のいずれの場合にも、民法典第1341条から第1348条までの規定が、適用される。(![]() |
著作権は、その全部又は一部を譲渡することができる(第61条第1項)。
著作権法は、著作権の一部を譲渡することができるとしているが、ここでいう一部とはどのような単位を指すのか、利用形態、期間、地域による細分化が認められるのかについては明らかではない。
旧著作権法第2条は、「著作権ハ之ヲ譲渡スルコトヲ得」と定めていたが、昭和9年法律第48号により、出版権の創設と同時に「著作権ハ其ノ全部又一部ヲ譲渡スルコトヲ得」と改正された。現行著作権法は、この規定をそのまま引き継いでいる。
著作権の譲渡については、明治32年制定時から、登録が対抗要件とされていたが(第15条第3項)、おそらく後述する昭和6年著作権法施行規則の制定までは、「興行権のみの譲渡」や「年限を限定した譲渡」を登録できる制度は用意されていなかったようである。
内ヶ崎作三郎他三名の議員が、制限を付した著作権の譲渡が可能である旨を規定する条文案(81)を含む「著作権法中改正法律案」(大正15年第51議会)を提出したが、審議未了により不成立に終わっている。
内務省は、昭和6年7月28日制定の著作権法施行規則第3条において、一部譲渡・制限付移転の登録手続を定めている(82)。この施行規則制定についての解説は見つからなかったため、この時期にこのような改正をなぜ行ったのかは不明である。また従前から行われていた登録実務を明文化したものか、変更したものかも不明である。しかしながら、少なくとも所管官庁たる内務省の考えとしては、一部譲渡や制限付譲渡が可能であるとの理解に立っていたことは確かである。
出版権の創設に伴い、著作権の一部譲渡が可能であることを確認的に規定する改正が行われた(83)。
なお、本改正の起草担当者であった小林尋次氏は、この改正は大正15年改正案の第2条及び第2条の4の改正案と「全く同一趣旨に則ったもの」であるとしている(84)。
昭和9年改正後、解釈上及び実務上著作権の可分性の範囲及び譲渡の際に付し得る制限の範囲が不明確であるという問題が生じ、これは著作権制度審議会における検討当時も認識されていた問題であった。例えば、答申審議の段階において、あまりにも細分化された著作権の分割譲渡の登録は文部省(当時)において受理しないように措置することが望ましいとの指摘が一部の委員からあったとされる。
しかしながら、著作権制度審議会答申はこの問題については触れず、答申説明書において、著作権の全部又は一部を譲渡することができるとする旧著作権法を維持すると説明するに留まっている。
第二条 著作権ハ制限ヲ付シ又ハ付セスシテ之ヲ譲渡スルコトヲ得 | ||
第二条ノ四 著作権譲渡ノ場合ニ於テ左ノ行為ヲ為ス権利ハ別段ノ契約ナキ限リ移転セザルモノトス | ||
一〜四 (略) |
我が国著作権法は、著作権の譲渡又は出版権の設定以外に、第三者が著作物の利用についての「物権的な権利」を得るための制度を有していない。現行制度では、許諾は全て債権的権利であり、被許諾者(ライセンシー)は、独占利用許諾契約を結んだとしても当該独占性は債権的効力しか有さないため第三者が利用することについて当然には差し止めることはできない。さらに、利用許諾について対抗要件制度が存在しないため、著作権者(ライセンサー)が破産した場合や第三者に著作権が譲渡された場合、引き続き当該著作物を利用することについても、破産管財人や譲受人に対抗することができないと解されている。
著作物には多様な利用形態が存在し、利用形態ごとに独立の経済的効用を期待し得る。著作物の利用に係る「物権的な権利」を、第三者に与えるに際し、著作権の全部を譲渡するか又は全く譲渡しないかの二者択一しかないとすれば、著作権者及び利用者の双方にとって不便であり、ここに著作権の一部譲渡を積極的に認める意義がある。
ア.著作権法に具体的に規定されている個別的な利用態様別の権利の譲渡
著作権法第21条から第28条までに規定する複製権、上演権、演奏権、上映権、公衆送信権等については、これらの単位での譲渡が認められるというのが通説である。第61条第2項の規定からも、少なくとも、第27条に規定する権利、第28条に規定する権利が分割して個別に譲渡できることについては疑いがない。ただし、法改正により著作権法の規定が変わったもの(例えば、放送権と公衆送信権など)があることには留意する必要がある。
しかしながら、著作権法に具体的に規定されている個別的な利用態様別の権利の譲渡についても、複製権と譲渡権の譲渡を別々に認める必要性があるかどうか(独立の経済的効用を期待できると言えるか)、また、複製権と公衆送信権若しくは見なし侵害規定等における権利間の重複という問題がある。
なお、「著作権法に具体的に規定されている個別的な利用態様別の権利ごとに別々に譲渡できる」との解釈は、かえって「著作権全部の譲渡」を難しくする可能性がある。例えば、破産した著作者の著作権について破産財団に帰属することとなるが、破産手続きの終了後に、新しい権利(例えば貸与権)が著作権法に規定された場合、著作者は新しい権利を有するとの解釈論が存在し得ることとなる。これは、合意による譲渡についても同様である。
イ.更に細分化された利用態様別の権利の譲渡
著作権法に具体的に規定されている個別的な利用態様別の権利よりも細分化された権利、例えば、著作物を英語に翻訳して出版する権利、音楽の著作物をレコードに録音する権利小説を映画化する権利といった、実務上も別個の権利として区別されており、かつ社会的にそのような取り扱いをする必要性が高いものについては、細分化が可能とする見解が一般的であるが、その限界は明確ではない。
判例には、著作権法に具体的に規定されている個別的な利用態様別の権利よりも細分化された権利単位で譲渡できることを前提とした判決(85)がある。
ウ.期限付き譲渡(時間的な限定を付した譲渡)
期限付き譲渡は、譲渡としての効力は認められるとする考え方が一般的である。判例も傍論であるが「時間的一部の譲渡」を認めたものがある(86)。期限付き譲渡については、時間的に分割された著作権の譲渡とする(
87)(期限付き譲渡を一部譲渡として認める)考え方と、解除条件付きの譲渡契約や買い戻し特約付きの譲渡契約とする(一部譲渡としての期限付き譲渡は認めない)考え方がある。
両者の考え方の違いは、期限の到来前に譲渡人・譲受人が破産した場合等に現れる。期間限定を解除条件、買戻特約付の譲渡と解する場合、期間の限定が登録簿に公示されていても(この立場からは本来公示すべきでないことになるが)、原著作権者は譲受人の破産時に期間制限の存在を第三者に主張できない可能性がある。期限付譲渡を一部譲渡として認める見解からは、期間が限定されていることが公示されていれば原著作権者は第三者に期間の制限を主張することができる。
エ.地域を限定した一部譲渡
地域を限定する譲渡は認められるとする考え方が一般的だが、対外的な権利関係が不明確になる、錯綜する場合については効力が否定される可能性があるとする見解や、境界を跨いだ複製物の流通を阻止できるような解釈論までは許容されないとする見解がある。
また、同一国内(同一法領域)における地域的分割が可能であるかについては国際的にも議論のあるところである。
ア.所有権の場合
物の使用、収益及び処分をなし得る権利として所有権があるが、所有権はその一部を譲渡することはできない(共有持分の譲渡は除く)。例えば、所有権を時間的に分割して第三者に譲渡することもできない。
所有権者は、物を部分的に又は一定期間に支配する定型的な内容の制限物権を第三者に設定することができる。例えば、土地の所有権者は地上権(民法第285条)を設定できる。
地上権者は、その地上権を(多くの場合工作物と共に)他者に譲渡すること、及び土地を他者に賃貸することができると解されている(永小作権については民法第272条で明示されている)。地上権の設定によって、所有権の排他的支配力は設定した範囲について制限されるが、設定した期間が終了すれば制限物権は消滅し、所有権は自動的に元の排他的支配力を回復する。
イ.特許権の場合
現行法上、特許権はその一部を譲渡することはできない。
しかしながら、第三者に特許権の一部の利用について「物権的な権利」を設定することができる専用実施権制度を有している。特許法の専用実施権は、旧特許法下の「特許権の制限付移転(いわば一部譲渡)」と「独占的利用許諾」の双方に対応するものとして創設されたものであり、登録しなければ効力を生じない。なお、実務的に、期間、実施態様、地域等の制限を付した登録が可能との実務運用がなされている。
専用実施権は、特許権者の承諾を得なければ、第三者に譲渡すること(特許法第77条3項)や、第三者に通常実施権を許諾すること(特許法第 77条4項)ができない。専用実施権設定時における、特許権者の侵害者に対する差止請求権については、最判平成17年6月17日平成16年(受)第997号がこれを肯定している。
登録を効力発生要件としたために、「登録による専用実施権」はあまり用いられておらず、実務的には、「契約による独占的通常実施権」が用いられることが多い(特に、代表取締役が特許権を有し、会社に実施させている事案については、会社に黙示の独占的通常実施権が認定されることが多い)。そして、特許権の侵害者に対する独占的通常実施権者による損害賠償請求については、一般論として否定する判例は存在しない(大半の判例では結論としても認容)。差止請求については、訴訟提起の段階では専用実施権登録を済ませている場合や、特許権者が差止請求をする事案が多いため、最近の判例では余り争点となっていない。
検討結果
・現行制度の評価
ア.一部譲渡の意義・機能
著作物の利用行為につき、内容的・時間的制限を付して物権的権利を設定する実際上の必要性が存在し、現に一部譲渡が用いられている。国際的にも、内容的・時間的制限を付された著作権の譲渡(一部譲渡)あるいは排他的許諾が有効とされている。我が国の著作権法は、法定の内容を有する出版権と共に、当事者が譲渡される権利の範囲を決定できる一部譲渡の制度を設けている。これにより、著作権者は柔軟な内容の排他的権利を他者に移転することができ、また譲渡された権利が一部に過ぎないことを登録しておけば、第三者(譲渡された権利の転得者)に対抗できる。
また細分化された一部譲渡を認めることは、著作者が譲渡した権利の範囲を限定的に解釈する余地を広げる機能を果たしている。
イ.「一部譲渡の問題点」の検討
著作権の一部を譲渡することについては、所有権との対比において理論的に問題があるとの指摘があり、特に期間が限定された著作権の譲渡は一部譲渡とは認めるべきでないとの意見がある。しかし、国際的な動向にも鑑みると、所有権との対比において論ずべき問題かどうかは議論のあるところであり、今後の検討が待たれよう。ただし旧著作権法・現行著作権法が著作権の一部譲渡を明示的に定めてきたこと、また、期限付譲渡については立法担当者等が一部譲渡に含まれると解してきたこと、さらにア.で述べた一部譲渡の機能を考えると、一部譲渡の限界を明確化する立法を直ちに行う必要はないと解される。
他方、一部譲渡を認めることの実質的な問題点として、法律関係の複雑化による権利関係の混乱が指摘されている。しかし、この権利関係の混乱は、主に当事者間の契約あるいは登録において、譲渡の範囲(特に利用態様)が十分に特定されていないことによって生じる問題と思われる。従って、明確に利用態様が特定された上でそれが公示されている場合にまで細分化された一部譲渡の効力を否定する根拠としては十分でない。むしろ具体的な譲渡ごとに、契約および登録の文言に照らして譲渡範囲の特定・公示の解釈により解決されるべき問題であろう。
ウ.代替案としての専用利用権制度
イ.で述べた理論的な問題点に鑑み、特許法において特許権の制限付移転を廃し専用実施権を創設したように、著作権法においても専用利用権(88)制度を創設することも考えられる。しかし、実質的な問題点としての権利関係の複雑化は、専用利用権制度にあっても共通の問題となる(
89)。また、著作権の一部譲渡を前提に実務上取引がなされていることを考えると、用語の変更、デフォルトルールの変更により無用の混乱を招くおそれもある。
・今後の立法対応等
一部譲渡の限界を明確化するためだけの立法を早急に行う必要はない。
ただし、ライセンシー保護の立法及び登録制度の見直しとの関係で一部譲渡の問題を再検討する必要が出てくる可能性がある。例えば、対抗要件を備えることにより、独占的な利用許諾を受けた者が独占性を第三者(著作権の譲受人、及び著作権者から後に許諾を受けた者)に主張できるとの制度設計を行った場合には、排他的な利用許諾は一部譲渡と同様の物権的効力を有することにもなる。また、著作権移転の対抗要件としての登録制度を見直す場合には、譲渡範囲が一部であることの公示方法についても見直しが必要となろう。
以上のことから、一部譲渡の問題は、ライセンシー保護の制度・登録制度の検討の中で、著作権者が物権的権利を第三者に設定・移転するための制度設計の問題(定型的な内容のみを認めるのかそれとも当事者の合意に委ねるのか、対抗要件はどうするのか等)として、専用利用権制度を含む著作物の「利用権」に係る制度の創設も視野に議論されるべきものと思われる。
特許法に於は制限を附し若は附せすして譲渡すことを得云々とあるも制限を附し若は附せさることは特に明言するの必要なし、苟も譲渡することを得る以上は其の全部たると一部たると、将た又条件を附すると否とは法の明文なくして随意に為し得らるることにして恰も民法上の凡ての権利の譲渡に此ることを明言せさると同一なり、故に明文なきも著作権は其の一部たる翻訳権又興行権のみを譲渡し又は年限を附して之を譲渡することを得るや勿論なり |
第五章 著作権(財産権)の内容 |
「第二条を改正いたしまして、著作権は其全部又は一部を譲渡し得る旨を明確に致しました。現行法第二条は、単に著作権は之を譲渡し得る旨を規定して居るのでございますから、果して其一部、例へば翻訳権のみとか、又は興行権のみを譲渡し得るか否かが明瞭でないのでございます、それ故法文上の明確に、著作権の一部を譲渡し得る旨を規定いたしまして、著作権の財産的価値の増大をはかったのでございます。」 |
○岩田宙造議員 |
第八 著作権の譲渡・相続 |
(a) | 〜(c)略 | |
(d) | 著作権の移転(![]() |
|
(1) | 著作権は、あらゆる手段による譲渡または法の作用によって、その全部または一部を移転することができ、また、遺言によって遺贈しまたは無遺言相続法によって人的財産として移転することができる。 | |
(2) | 第106条に列挙する権利を含む、著作権に含まれるいかなる排他的権利も、上記第(1)項に規定するとおり移転し、また、個別に保有することができる。特定の排他的権利の保有者は、かかる権利の範囲内で、本編が著作権者に対して認める全ての保護および救済を受けることができる。 |
(a) | 著作権の移転は、法の作用によるものを除き、譲渡証書または移転の記録もしくは覚書が書面にて作成され、かつ、移転される権利の保有者またはその適法に授権された代理人が署名しなければ効力を有しない。 |
(b) | 略 |
(1) | 著作権は、人的財産又は動産として、譲渡、遺言による処分又は法律の作用により、移転することができる。 |
(2) | 著作権の譲渡その他の移転は、1部分とすること、すなわち、次のものに適用されるように限定することができる。 |
(a) 著作権者が行う排他的権利を有する事項の1又は2以上であって全部でないもの | |
(b) 著作権が存続すべき期間の1部分であって全体でないもの | |
(3) | 略 |
(4) | 著作権者により付与される許諾は、対価を支払った善意の購入者であって許諾の通知(現実の又は推定による)を受けていない者又はそのような購入者から権限を得ている者を除き、著作権上の利益についてのすべての権利承継人を拘束する。また、この部における著作権者の許諾を得て又は得ずにいずれかのことを行うことへの言及は、それに従って解釈される |
(1) | この部において、「排他的許諾」とは、著作権者が別途排他的に行使することができる権利を行使することを、許諾を付与する者を含む他のすべての者を排除して、許諾を得た者に許可する許諾であって、著作権者により又はその者のために署名された書面によるものをいう。 |
(2) | 排他的許諾に基づいて許諾を得た者は、許諾を与える者に対して有すると同一の権利を、許諾により拘束される権利承継人に対しても有する。 |
(1) | 排他的許諾を得た者は、著作権者に対する場合を除き、許諾の付与の後に生じる事項について、許諾が譲渡であったものとして、同一の権利及び救済を有する。 |
(2) | その者の権利及び救済は、著作権者の権利及び救済と併存する。また、この部の関係規定における著作権者への言及は、それに従って解釈される。 |
(3) | 排他的許諾を得た者がこの条に基づいて提起する訴訟において、被告は、訴訟が著作権者により提起されたならば利用することができたいずれの抗弁をも利用することができる。 |
1 | 著作者は、著作物を個別的利用方法又はすべての利用方法にて利用する権利(利用権)を他者に許諾することができる。 |
2 | 略 |
3 | 排他的利用権は、他のすべての人々を排して、その保有者に対して、著作物を許諾された方法により利用する権限及び利用権を許与する権限を与える。著作者による利用は留保されていると約定することもできる、第35条は、これにより影響を受けない。 |
4,5 | 略 |
(5)著作権法第61条第2項の存置の必要性について
現行制度
著作権を譲渡する契約において、第27条又は第28条に規定する権利が譲渡の目的として特掲されていないときは、これらの権利は、譲渡した者に留保されたものと推定するとしている(第61条第2項)。そして、特掲の要件を満たすためには、単に「全ての著作権を譲渡する」という表現では足りないと解されている。
また、本項による推定は、売買、贈与、交換、信託等のあらゆる譲渡契約に及び、かつ現行著作権法施行前になされた契約にも適用される。
問題の所在
このような規定の存在は、譲渡契約の解釈について事後的に当事者間のトラブルを招く原因になりかねないという意見があり、著作権法の単純化の観点から廃止することの是非が検討されてきた。特にプログラムの著作物の著作権の譲渡については、その利用の実態から当該規定を適用すべきでないという著作権法改正要望も出されているところである。
更に、第27条及び第28条に規定する権利のみが譲渡にあたり特掲することを求められていることは、その他の著作権法に具体的に規定されている個別的な利用態様別の権利と扱いを異にし、制度上もアンバランスなものとなっているとの指摘もある。
立法趣旨
著作権制度審議会は、「著作権の譲渡に関しては、形式的には譲渡される権利の範囲の限定が無い場合にあっても、具体的状況に応じてその範囲が限定されるものであるとする趣旨の解釈規定を設けることが適当」であると答申している(昭和41年4月)。このような答申が出されたのは、出版社等による懸賞小説募集のような約款による著作権譲渡への対応が必要であるとの認識があったとされる(95)。
答申を受けて作成された文部省文化局試案(昭和41年10月)では、著作権譲渡に関し、「契約上予想されない方法により著作物を利用する権利」を譲渡人に留保する推定規定を置いていたが、その後の検討を経て、現行第61条第2項と同様の条文案が作成された。
なお、条文案検討の過程で、留保が推定される権利を限定し明確化した理由としては、第1に、「予想されない方法」という語が、あたかも「契約時に存在しなかった未知の利用方法」を含むものであるという印象を与え、本来の立法趣旨を超えて、そのような問題(解釈問題)にまで当該条項が適用されるおそれがあること、第2に、現実の契約において、具体的にどのような権利が譲渡されたのか若しくは留保されたのかが不明確となり、実務に支障を来すおそれがあること、があったと思われる。
また、留保が推定される権利を第27条及び第28条に規定する権利に限定したのは、著作権制度審議会答申が念頭に置いていた「懸賞小説への投稿」のような譲渡契約については、第1に、著作権の譲渡は、著作物を原作のままの形態で利用する権利の譲渡を内容とはしていても、それに付随して例えば小説を映画化したり翻訳したりするといった、二次的著作物を作成したり利用したりすることについての権利までが移転することは、一般に予定していないという判断と、第2に、具体的な二次的著作物の作成・利用が予定されていないにもかかわらず、二次的著作物を作成・利用する権利が著作者から移転することは、著作者保護に欠けるという判断があったものと思われる。
第61条第2項の規定については、平成13年の総括小委員会、平成14年の契約・流通小委員会、平成15年の法制問題小委員会において、「著作権法の単純化」という観点で、その存続の是非が検討されたが、賛否両論があり、法改正につながる結論には至らなかった。
検討内容
・適用範囲の妥当性
ア.企業間の譲渡
著作権制度審議会の答申の前提にあった問題意識からすれば、企業間で行われる、約款によらず交渉により契約を作成する著作権譲渡について、本項適用の必要性は低いと思われる。
イ.プログラムの著作物の著作権の譲渡
プログラムの著作物は、著作権制度審議会の検討当時には意識されていなかった著作物であり、かつ、答申が念頭に置いていた著作権譲渡契約の場合と異なり、譲受人が改変や翻案して利用することが一般的である。また、個人著作者が企業に著作権を譲渡することも想定しがたい。従って、プログラム著作物の著作権の譲渡について、本項適用の必要性は低いと思われる(96)。
ウ.留保が推定される権利の範囲
著作権制度審議会答申に従うならば、譲渡人に留保される権利を第27条及び第28条に規定する権利に限定する理由は乏しいように思われる。
なお、第27条及び第28条に規定する権利を留保することについては、「創作活動を奨励するという意味でもそれなりの合理性を認めることができる。」とする見解(97もある。
約款の作成者は、譲渡される権利に第27条及び第28条に規定する権利が含まれていることを特記すれば、本規定の推定の適用を免れることができる。そして、特記することは約款作成者が本項を知っていれば、何ら難しいことではない。その場合、本項は、譲渡される権利に第27条及び第28条に規定する権利が含まれていることを、著作権法に精通していない譲渡人に自覚させる以上の効果はない。
著作権譲渡契約において、常に、譲渡人が譲受人に対して「弱者」であるとすることは困難である。従って、譲渡契約一般について、譲渡人を「弱者」として保護することは適当ではない。
しかしながら、著作権制度審議会が答申に当たり念頭に置いていた、「懸賞小説への投稿」の類型について、個人が譲渡人で出版社等が譲受人である譲渡契約であって、出版社等が作成した約款が適用されるような場合には、出版社等と個人との間で情報の質及び量、そして交渉力の格差が存在する個人と企業の約款契約であり、個人を「弱者」として保護すべきであるとするとの考え方をとるならば、立法による何らかの手当が引き続き必要である。
あらゆる著作権の譲渡契約について本推定規定が適用されるのは、適用範囲が広くなり過ぎるため適当ではないが、一方で、著作権制度審議会が念頭に置いていた「懸賞小説への投稿」のように、個人から出版社等に対し、出版社等が作成した約款によって著作権が譲渡されるような場合については、引き続き何らかの立法による手当が必要と思われる。
しかしながら、あらかじめ約款作成者が第27条及び第28条に規定する権利を約款において特掲していれば意味がなく、著作権者に譲渡する著作権の範囲について認識させる程度の効果しかない。また、著作権者が著作権法の本推定規定を知らなければ救済にはならないとの指摘もある。
また、第27条及び第28条に規定する権利のみ、かかる特別な推定規定にかからしめる必然性は乏しい。
以上のことから、第61条第2項は廃止の方向で検討すべきであるが、本規定はあくまで推定規定であること、及び廃止する場合には著作権制度審議会が念頭に置いていた出版社等による懸賞小説募集のような約款による著作権譲渡といった一定の譲渡契約について何らかの手当を行う必要があると考えられるところから、現状においては、本規定のみを直ちに廃止するための法改正を行うことは適当ではない。
|
2 | 略 |
3 | 視聴覚翻案権を対象とする譲渡は、印刷著作物の本来の出版に関する契約とは別個の文書による契約書の対象としなければならない。 |
4 | 略 |
1〜4略 | |
5 | 利用権を許与するに際して、利用方法が明確にひとつひとつ表示されていない場合には、両当事者が基礎とした契約目的にしたがい、利用権がいかなる利用方法に及ぶかが決定される。利用権が許与されたか否か、通常利用権か排他的利用権か、利用権及び禁止権はいかなる範囲に及ぶか、並びに利用権はいかなる制限に服するかについても、同様とする。 |
1 | 契約は、契約時に効力をもつ法律によって規定される契約の範囲および期間について、著作者が出版に関して著作者に属する利用権の全部または一部を内容とすることができる。 |
2 | 反対の約定がないかぎり、移転された権利は排他的権利であると推定される。 |
3 | 将来の法律によって与えられる権利およびより広い範囲またはより長い期間の著作権保護を規定する将来の権利は、移転には含まれないものとする。 |
4 | 明示の約定がないかぎり、移転は、映画に翻案し、放送し、および機械的機器に録音することを含む、後に著作物になされる変更や改変の利用権には及ばないものとする。 |
5 | 反対の約定がないかぎり、利用権の1つまたは2つ以上の権利の移転は、第1編の規定にもとづき、その権利が同一種類の排他的権利に含まれる場合であっても、移転された権利には必ずしも従属しない他の権利の移転を含むものではない。 |
著作権者が著作物を第三者に利用させる方法としては、契約による著作権の譲渡と利用許諾(以下6.において「利用契約」とする)がある。ただし、利用契約の解釈に関する規定としては、第61条第2項と第63条第4項を置くのみである。
当事者が利用契約の締結時に予見しえなかった著作物の利用方法(以下「未知の利用方法」という)が、利用契約の対象に含まれているか否かについて、当事者間で問題となる場合がある。
まず問題となるのは、著作物の利用契約の解釈において、一般に「著作権者は弱者である」という理由から保護されるべきであると考え、利用契約により与えられる利用権の範囲を限定的に解釈するとの原則を採るべきかどうかという点である。
諸外国の例を参考にすると、著作物を創作した著作者は、著作物から引き出されたあらゆる経済上の利益に関与させられるべきであり、著作者に十分に報いることなく著作物の利用から利益を獲得することは正義に反するという見地から、利用契約において個別的に表示された利用目的以外は含まれず、未知の利用方法を目的とする利用契約は無効であるとの規定を設けることや、利用契約の解釈に当たっては、「疑わしきは著作者に有利に解釈する」という原則を採用すべきであるとの考え方がありうる。
しかし、一律に「著作権者は弱者である」との前提を採ることは、必ずしも適切ではないと考えられる。一方で、未だ無名の若い個人の著作者が利用契約の一方当事者である場合には、契約締結において経済力または情報力の格差から十分な交渉力を有さず、たとえ自己にとって不利な内容の利用契約であっても実際には契約締結を余儀なくされるという事態は十分にあり得るところであるが、他方で、大企業が著作権者として利用契約の一方当事者である場合も少なくなく、利用契約の実態は千差万別である。そうすると、全ての利用契約について、「著作権者は構造的な弱者である」との前提で法律上特別な扱いをすることは、現状にも合致しないであろう。
したがって、この点は、我が国における利用契約の実態をも踏まえたうえで、個別具体的なケースごとに検討するのが適切であると考えられる。
・利用契約の解釈の問題について
以上からすると、当事者が利用契約の締結時に予見しえなかった未知の利用方法が利用契約の対象に含まれているか否かは、個別の利用契約の解釈問題に帰着すると考えられる。 ここでの問題の実質は、新たな技術発展等によって実現した著作物の新たな利用から生ずる経済的な収益を、利用者のみが獲得すると解してよいか、それとも、著作権者にも相当の範囲で収益の分配を認めるべきであるか否かにある。
当初の利用契約を締結した時点においては、契約当事者が、問題となっている新たな利用方法については「予見しえなかった」のであるから、当事者の意思が必ずしも決め手にはなるとは言えない。しかし一般論としては、譲渡人が取得すべき将来の不確定な収益に対する権利を契約によって包括的に譲渡することも可能であるから、著作権者が当該利用方法の経済的価値を認識した上で利用契約を締結していないからといって、一般に予見しえなかった利用方法が利用契約の対象に含まれないというわけでもない。
そうすると、未知の利用方法が利用契約の対象に含まれていると解すべきかどうかの判断にあたっては、著作権者が利用契約に基づく著作物の利用について、十分な対価を得ていると評価されるか否かが重要となろう。
この点では、利用の対価の決定方法として、利用者が取得する収益に比例した方法が採られている場合には、新たな方法を利用契約に含めて解してもそれほど問題は生じないと思われる。問題となるのは、一括かつ定額の対価によって、包括的に利用権が付与された場合であるが、この場合については、将来の不確定な利用方法から得られる収益の可能性を、当事者が十分に評価した上で、対価を決定したとみることができるかどうかが重要な考慮要素となるであろう。
ア.利用契約に「個別の利用目的が掲記されていた場合」
利用契約において「個別の利用目的が掲記されていた場合」には、未知の利用方法がそれに含まれるかどうかという形で問題が現れる。典型例としては、従来はアナログ形式で利用していた著作物をデジタル化して利用する場合に、これが当初の利用契約の対象に含まれるか否かが問題となる場合などがある。
この場合に、例えば、「当初の利用契約に掲記された利用目的または利用方法と経済的に同視しうるものは、特段の事情がない限り、当初の利用契約の内容に含まれる」といった解釈規定を設けることが考えられる。しかし、上記の考え方に立てば、「経済的に同視しうるか」の判断は、具体的なケースに即した諸事情が総合的に考慮されるべきであるから、このような解釈準則を設けることにそれほどの有用性は認められないといえる。
イ.利用契約に「包括的な文言が使われている場合」
利用契約の文言上は、典型例としては、「すべての複製権を譲渡する」のように、包括的な形で利用契約の対象が示されている場合がある。この場合には、利用契約の文言を形式的にとらえれば、未知の利用方法についても契約内容に含まれると解釈すべきことになるが、上記の考え方からすれば、利用契約の範囲を限定して解釈することも十分に可能である。
その場合に裁判所が用いることができる法的手法としては、利用契約を合理的ないし限定的解釈によるほか、公序良俗(民法第90条)により利用契約の効力を一部否定することなどが考えられる(将来譲渡人に生ずべき収益の包括的な処分の有効性については、将来債権の一括譲渡に関する判例(最3小判平成11年1月29日民集53巻1号151頁)が参考になる)。
以上からすれば、未知の利用方法に関する利用契約の解釈問題については、個別具体的な事案に即して、民法の一般原則を用いて裁判所が合理的な解釈を行うことに委ね、判例の集積を通じて法形成がなされるのが適切であり、少なくとも現時点においては、著作権法に特別な規定を設ける必要はないと考える。
なお、上記のような裁判所による利用契約の解釈等による対応には限界があることが判明した場合には、諸外国の法制で採用されている法的手法を参考にしながら、我が国における利用契約の実態等の把握を踏まえつつ、適切な立法対応の可能性について検討を行うこととなろう。
・米国(101)
第203条 著作者の権利付与による移転および使用許諾の終了
(a)終了の条件
職務著作物以外の著作物の場合、1978年1月1日以後に著作者が遺言以外の方法によって行った、著作権またはこれに基づく権利の移転または独占的もしくは非独占的な使用許諾の付与は、以下の条件において終了する。
(1) | ・(2)略 | |
(3) | 権利付与の終了は、権利付与の実施の日から35年後に始まる5年間にいつでも行うことができる。また、権利付与が著作物を発行する権利にかかる場合、上記期間は、権利付与に基づく著作物の発行の日から35年後または許可の実施の日から40年後のうち、いずれか早く終了する期間の最終日から起算する。 | |
(4) | 略 | |
(5) | 権利付与の終了は、いかなる反対の合意(遺言を作成しまたは将来の権利付与を行う合意を含む)にかかわらず行うことができる。 |
・フランス>(102)
第122の7条 上演・演奏権及び複製権は、無償又は有償で譲渡することができる。
2 | 上演・演奏権の譲渡は、複製権の譲渡を伴わない。 |
3 | 複製権の譲渡は、上演・演奏権の譲渡を伴わない。 |
4 | 契約が、この条にいう二の権利の一方の全部譲渡を伴う場合には、その有効範囲は、契約に定める利用方法に限定される。 |
2 | その他のいずれの場合にも、民法典第1341条から第1348条までの規定が、適用される。 |
2 | 略 |
3 | 視聴覚翻案権を対象とする譲渡は、印刷著作物の本来の出版に関する契約とは別個の文書による契約書の対象としなければならない。 |
4 | 譲受人は、この契約によって、譲渡された権利を利用するように職業上の慣行に従って努力することを約束し、及び翻案の場合には、受け取った収入に比例する報酬を著作者に支払うことを約束する。 |
2 | ただし、次の各号に掲げる場合には、著作者の報酬は、一括払い金として算定することができる。 | |
(1) | 比例配分の算定基礎を決定することが実際上できない場合 | |
(2) | その配分の適用を管理する手段を欠く場合 | |
(3) | その算定及び管理の実施のための経費が、到達すべき結果と釣合いがとれない場合 | |
(4) | 著作者の寄与が著作物の知的創作の不可欠の要素の一を構成しないため、又は著作物の使用が利用される目的物と比較して付随的なものにすぎないために、利用の性質又は条件が、比例報酬の規則の適用を不可能とする場合 | |
(5) | ソフトウェアを対象とする権利の譲渡の場合 | |
(6) | その他この法典に規定する場合 | |
3 | 有効な契約から生ずる使用料を、著作者の求めに応じて、両当事者間において、両当事者間で定める期間について一括年払い金に変更することも、同様に適法とする。 |
第131の5条 利用権の譲渡の場合において、著作者が過剰損害又は不十分な予測に基づいて著作物から生ずる収益の12分の7以上の損害を受けたときは、著作者は、契約の価格条件の修正を要求することができる。
2 | この要求は、著作物が一括払いの報酬と引き換えに譲渡された場合に限り、行うことができる。 |
3 | 過剰損害は、そのような契約による損害を受けたと主張する著作者の著作物の譲受人による利用の全体を考慮して、評価される。 |
第131の6条 契約の日に予想することができなかった、又は予想されなかった形式で著作物を利用する権利を付与するための譲渡条項は、明示規定とし、かつ、利用から生ずる利益の相関的な配分を定めなければならない。
第131の8条 この法典第112の2条に定める著作物の譲渡、利用又は使用に際して著作者、作曲家及び芸術家に対して最後の3年間に支払われるべき使用料及び報酬の支払いに関して、これらの著作者、作曲家及び芸術家は、民法典第2101条第4号及び第2104条に規定する特典を享有する。
・ドイツ(103)
第31条 利用権の許与
1〜3略 | |
4 | 未知の利用方法に対する利用権の許与及びこれに対する義務づけは、無効とする。 |
5 | 利用権を許与するに際して、利用方法が明確にひとつひとつ表示されていない場合には、両当事者が基礎とした契約目的にしたがい、利用権がいかなる利用方法に及ぶかが決定される。利用権が許与されたか否か、通常利用権か排他的利用権か、利用権及び禁止権はいかなる範囲に及ぶか、並びに利用権はいかなる制限に服するかについても、同様とする。 |
1 | 著作者は、利用権の許与及び著作物利用の許諾と引き換えに、約定された報酬を求める請求権を取得する。報酬の額の定めがない場合には、相当な報酬が約定されたものとみなす。約定された報酬が相当なものではない場合には、著作者は、契約の相手方に対して、著作者に相当な報酬を認める契約の改定に同意するよう求めることができる。 |
2 | 略 |
3 | 契約の相手方は、第1項及び第2項に反し、著作者の不利になる約定を援用することはできない。第1文に掲げる規定は、別の方法により回避される場合にも適用される。但し、著作者は、何人に対しても、無償にて、通常利用権を許与することができる。 |
4 | 略 |
1 | 著作者が、相手方に対して、利用権を許与したが、その条件が、約定された反対給付が著作者の相手方に対する全関係に鑑みて著作物利用から生ずる収益及び利益に対して明らかに不均衡をもたらすものであった場合には、この相手方は、著作者の求めに応じて、契約の改定に同意する義務を負う。この契約の改定により、著作者には、状況次第で、さらに相当な利益分配が認められる。契約当事者が、得られた収益又は利益の額を予期していたか否か、又は予期することができたか否かは、重要ではない。 |
2 | 相手方が、利用権を譲渡し又はさらに利用権を許与した場合であって、第三者の収益又は利益から明らかな不均衡が生じているときは、この第三者は、ライセンスの連鎖における契約関係を顧慮して、第1項にしたがい、著作者に対して、直接、責任を負う。相手方は、責任を負わない。 |
3 | 第1項及び第2項に基づく請求権は、あらかじめ放棄することができない。この請求権に対する期待権は、強制執行を受けない。この期待権の処分は無効とする。 |
4 | 略 |
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