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.私的録音録画補償金の見直しについて
ハードディスク内蔵型録音機器等の追加指定に関して、実態を踏まえて検討する
現在対象となっていない、パソコン内蔵・外付けのハードディスクドライブ、データ用CD‐R/RW等のいわゆる汎用機器・記録媒体の取扱いに関して、実態を踏まえて検討する。
現行の対象機器・記録媒体の政令による個別指定という方式に関して、法技術的観点等から見直しが可能かどうか検討する。 |
(1)現行の補償金制度導入の経緯・趣旨
1.現行制度
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補償金制度の導入にあたっては、昭和52年から56年にかけての著作権審議会第5小委員会における検討、昭和57年から62年までの「著作権問題に関する懇談会」における関係者間の協議を経て、昭和62年より平成3年までの第10小委員会における詳細な検討がおこなわれた。 |
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第10小委員会は平成3年12月に、私的録音録画に関して一定の制度の導入が提言され、それをうけて現在の補償金制度が導入されたところであるが、同小委員会の告ではこの制度導入の趣旨を以下のように述べている。 |
著作権法第30条が、私的録音・録画を自由かつ無償であると規定したのは、立法当時(昭和45年)私的録音・録画は著作物の利用としては零細なものと予想されたためであるが、補償金制度導入(平成4年)前には、私的録音・録画は広範かつ大量に行われており、かつ、デジタル技術の発達普及によって質的にも市販のCDやビデオと同質の高品質の複製物が作成されうる状況にあった。
こうした状況は、著作権者等の利益を害している状態であり、デジタル化の進展によっては「通常の利用」に影響を与えうるような状況も予想される。
先進諸国では私的録音・録画について何らかの補償措置をとることが大きな流れとなってきており、これはベルヌ条約との関係でもなんらかの対応策が必要であることを示している( 13)。
わが国においても制度的措置をとることが必要である。 |
( 13) |
平成3年(1991年)当時の各国の補償金制度の導入状況
制度を導入している国 |
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13カ国 |
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機器・記録媒体ともに指定 |
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4カ国 |
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記録媒体のみ指定 |
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9カ国 |
税制で対応している国 |
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2カ国 |
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機器・記録媒体ともに指定 |
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1カ国 |
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記録媒体のみ指定 |
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1カ国 |
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(2)現行制度
○制度の概要
・ |
著作権者等は、デジタル方式の録音・録画機器及び記録媒体を用いて行われる私的な録音・録画に関し、補償金を受ける権利を有する。 |
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補償金を受ける権利は、文化庁長官が指定する団体(指定管理団体)があるときは、指定管理団体によってのみ行使することができる。 |
<指定管理団体> |
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録音:社団法人 私的録音補償金管理協会(sarah) |
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録画:社団法人 私的録画補償金管理協会(SARVH) |
○私的録音録画補償金の徴収及び分配の流れ
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補償金は、機器・記録媒体のメーカー等の協力により、その購入時に販売価格に上乗せした形で徴収され、指定管理団体に支払われている。 |
・ |
補償金の支払いの対象となる特定機器・特定記録媒体は、政令で指定された機器・記録媒体であって、主として録音・録画の用に供するものである。 |
○私的録音録画補償金の対象となる機器・記録媒体
録音 |
機器 |
DAT(デジタル・オーディオ・テープ)レコーダー |
DCC(デジタル・コンパクト・カセット)レコーダー |
MD(ミニ・ディスク)レコーダー |
CD‐R(コンパクト・ディスク・レコーダブル)方式CDレコーダー |
CD‐RW(コンパクト・ディスク・リライタブル)方式CDレコーダー |
記録媒体 |
上記の機器に用いられるテープ、ディスク |
録画 |
機器 |
DVCR(デジタル・ビデオ・カセット・レコーダー) |
D‐VHS(データ・ビデオ・ホーム・システム) |
MVDISC(マルチメディア・ビデオ・ディスク)レコーダー |
DVD‐RW(デジタル・バーサタイル・ディスク・リライダブル)方式DVDレコーダー |
DVD‐RAM(デジタル・バーサタイル・ディスク・ランダム・アクセス・メモリー)方式DVDレコーダー |
記録媒体 |
上記の機器に用いられるテープ、ディスク |
○補償金の額
・ 指定管理団体が請求する補償金の額は、指定管理団体が定め、文化庁長官が認可することとされている。具体的な額は以下の通りであり、録音・録画機器については1台あたり概ね400円から500円程度、記録媒体については概ね数円程度となっている。 |
私的録音録画補償金の額
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特定機器 |
特定記録媒体 |
録音 |
基準価格( 14)の2 |
基準価格の3 |
上限:シングルデッキ 1000円
シングルデッキ 1500円 |
録画 |
基準価格の1 |
基準価格の1 |
上限:1000円 |
( 14)「基準価格」について
・「特定機器」
最初に流通に供した価格またはカタログに表示された標準価格の一定割合(65 )
・「特定記録媒体」
最初に流通に供した価格またはカタログに表示された標準価格の一定割合(50 )
○補償金の分配
ア.分配割合
・ 指定管理団体に支払われた補償金は、関係団体を通じて、以下の割合で分配されている。
【録音】 |
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社団法人 |
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日本音楽著作権協会・・・36 |
社団法人 |
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日本芸能実演家団体協議会・・・32 |
社団法人 |
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日本レコード協会・・・32 |
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【録画】 |
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私的録画著作権者協議会(会員11団体)・・・68
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36 |
社団法人 日本民間放送連盟 日本放送協会 |
日本放送協会 |
社団法人 全日本テレビ番組製作社連盟 |
社団法人 日本映画製作者連盟 |
有限責任中間法人日本動画協会 |
社団法人 日本映像ソフト協会 |
協同組合 日本映画製作者協会 |
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社団法人 日本音楽著作権協会・・・16
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16 |
協同組合 日本脚本家連盟 |
協同組合 日本シナリオ作家協会 |
社団法人 日本文藝家協会 |
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社団法人 日本芸能実演家団体協議会・・・29
社団法人 日本レコード協会・・・3 |
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イ.私的録音録画補償金の徴収額の推移
単位:百万円(消費税抜き)
年度 |
5 |
6 |
7 |
8 |
9 |
10 |
11 |
12 |
13 |
14 |
15 |
16 |
111 |
177 |
978 |
1,762 |
2,429 |
2,912 |
3,709 |
3,844 |
3,146 |
2,690 |
2,228 |
1,922 |
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59 |
122 |
272 |
798 |
1,412 |
1,857 |
*年度表示は出荷年度 |
○共通目的事業
・ |
指定管理団体が受け取った補償金は、著作権者等に分配されるが、補償金の20 に相当する額については、著作権者等全体の利益を図るため、著作権及び著作隣接権の保護に関する事業等(共通目的事業)のために支出することとされている。 |
ア. |
著作権及び著作隣接権の保護に関する事業
・新聞・雑誌等への広告掲載
・著作権教育用の小冊子・パンフレット等の作成・配布
・広報誌の作成・配布
・イベントへのブース出展
・著作権普及啓発活動(教材開発、セミナー・シンポジウムの開催等)への助成
・国際協力事業(国際セミナー、研修プログラム)への助成
・著作権等に関する調査・研究事業(私的録音等実態調査、海外における侵害実態調査等)の実施 等
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イ. |
著作物の創作の振興及び普及に資する事業
・コンサート、講演会等への助成
・新人芸術家の育成活動(作品の公募・発表等)への助成
・海外への日本音楽に関する情報の提供活動への助成
・国際文化交流事業への助成 等 |
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