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資料1−3

平成17年4月28日

学校教育関係の権利制限について

清水 康敬

1.eラーニングを実施する際の公衆送信について
  (1) 現行制度
 
   遠隔教育に関しては、著作権法第35条第2項により、授業を直接受ける者に対して提供・提示されている著作物を、別の場所でその授業を同時に受ける者に対して公衆送信できることとされている。しかし、公衆送信できるのは、授業を直接受けている者があり、かつ、それを別な場所に同時中継する場合に限定されているため、サーバ内にコースをあらかじめ蓄積しておき、任意の場所、時間帯で学習できるeラーニングには適用できない。

 

(2) 問題点及び要望事項

 
   現在、多くの大学や高等専門学校がeラーニングのコース開発を始めている(文部科学省高等教育局では、現代GPによるeラーニングの開発支援を始めており、15大学に対して平成16年度から3年間の助成をしており、平成17年度も公募を行っている。)。また、初等中等教育では、教員のIT活用指導力向上のためのeラーニングコースの開発を行っている。
 これらのeラーニングでは、ネットワーク技術を活用し、いつでも、どこでも学習できることが特長となっているが、第35条第2項で認められている公衆送信は極めて限定されており、eラーニングには適用できず、このことがeラーニングのコース開発の大きな障害となっている。
 そのため、eラーニングが推進できるように、学校その他の教育機関(営利を目的として設置されているものを除く。以下「教育機関」という。)の授業の過程で使用する目的の場合には、必要と認められる限度で、授業を受ける者に対して著作物を自動公衆送信(送信可能化を含む)することを認めていただきたい。

  (3) 著作権法の改正以外による当該問題の解決策
 
   解決策としては、著作権者と利用許諾契約を締結することが考えられる。しかし、eラーニングにおいて利用する著作物は多岐にわたり、これらの著作物を集中的に管理している団体もないため、原則として個別に許諾を求めることとなるが、著作権者の連絡先が不明な場合や許諾を求めても回答がない場合も多く、かなりの時間と労力をかけない限り、既存の著作物を利用することは困難となっている。
 また、著作権者から得られる回答の多くは無償での利用を認めるものであることからすれば、自由利用マーク等の事前の意思表示システムにより解決することも考えられるが、官公庁のホームページを含め、あまり普及しておらず、この問題の解決策にはならないものと思われる。

  (4) その他
 
   権利者保護の観点から、著作権者の利益を不当に害する場合のほか、禁止する旨の表示がある著作物は対象外とし(有償の著作物も対象外とすることもあり得る)、利用期間も限定(例えば6ヶ月)することとしたい。
 また、eラーニングの実施に当たっては、ID・パスワードなどにより利用者をその授業の履修者に限定するとともに、他者に利用させてはならないことを明記することとしたい。


2.授業で使用した著作物の教育機関内での共用について
  (1) 現行制度
 
   著作権法第35条第1項では、その授業の過程における使用に供することを目的とする場合には著作物を複製することができる(第47条の3により複製物の譲渡もできる)こととされている。しかし、複製物の使用は、「その授業」に限られ、他の目的に使用することは、原則として認められていない。

 

(2) 問題点及び要望事項

 
   あるクラスにおいて授業の過程で使用した著作物を、他のクラスの授業や授業時間外(休憩時間や放課後等)の生徒の自主的な学習に利用することは、教育的に非常に有効であり、特に、授業で使用した著作物を教育機関内のサーバに蓄積しておき、教育機関内において生徒が自由に利用できるようになれば、非常に高い教育的な効果を挙げることが期待できる。
 しかし、「その授業」で使用するために複製された著作物を、他の授業や生徒の自主的な学習に使用することは、目的外使用として、原則として認められておらず、また、授業以外でも使用できるようにサーバへの蓄積(複製)することは、第35条第1項で認められた範囲を超えため、事前に著作権者の了解を得ない限り、できないものと考えられる。
 そのため、第35条第1項の規定により複製された著作物については、「当該教育機関の教育の過程」においても使用できるようにする(目的外使用ではないこととする)とともに、教育機関内のサーバに蓄積することを認めていただきたい。

  (3) 著作権法の改正以外による当該問題の解決策
 
   著作権者との利用許諾契約の締結や事前の意思表示システムにより解決することが考えられるが、上記1(3)同様、現実には困難である。

  (4) その他
 
   サーバへの蓄積に関しては、権利者保護の観点から、教育機関内での利用に限定することとしたい(同一構内での送信のみできることとして、公衆送信権は制限しないこととしたい)。


3.無線による構内LANの公衆送信からの除外について
  (1) 現行制度
 
   著作権法では、「同一構内」の「有線送信」は原則として「公衆送信」に該当しないこととされている(第2条第1項第7号の2)。そのため、構内LANについては、有線であれば著作物を許諾なしに送信できるが、無線の場合は許諾なしには送信できないこととなる。

 

(2) 問題点及び要望事項

 
   「公衆送信」の定義規定が設けられた平成9年当時は、有線LANがほとんどであったが、その後の技術発展により、無線LANの設置も容易になり、現在では無線LANは有線LANの約半額で設置できるようになっている。しかし、著作権法上の取り扱いが異なることから、無線LANに適した状況であっても、著作物の利用を考えると有線LANにせざるを得ないということも生じてくる。
 有線LANも無線LANも電送方式が異なるだけ、著作物の利用のされ方は実質的には同じであり、著作権法において有線LANと無線LANとで取り扱いを変えるべき理由はないものと考えられる。
 そのため、同一構内における無線LANについても、有線LAN同様、原則として公衆送信にはあたらないこととしていただきたい。

  (3) 著作権法の改正以外による当該問題の解決策
 
   安価であり、かつ、構内における移動も容易という無線LANの利点を享受できるようにするためには、著作権法の改正以外の解決策は考えられない。


4.その他
   教育現場等からは、授業で使用した著作物を教科研究会等でも使用したいなど、上記以外の事項についての希望も出されているが、引用との関係等について更に検討した上で、必要ということになれば、改めて要望させていただきたい。


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