1. |
ライセンス契約の対象になっている著作権がライセンサーから第三者に移転された場合には、ライセンシーは新権利者(権利の譲受人)に対してはライセンス契約の存在を主張することができない。
また、ライセンサーが破産した場合には、破産管財人はライセンス契約を双方未履行の双務契約として解除できるが(改正破産法53条)、この場合にもライセンシーはライセンス契約に基づく著作権の利用ができなくなってしまう。
一般の消費者は、エンド・ユーザーとして著作物の使用さえ継続できれば良いので、問題は比較的表面化しにくいかも知れないが、著作権のビジネス・ユースの場面においては、ライセンシーの事業継続に問題が生じるケースが発生しうる。 |
2. |
この問題は従前プログラムの著作物の利用者保護の観点から論じられてきたが、プログラム以外の著作物においても等しく重要であることは明らかである。例えば、デザイン事務所や映像制作会社から許諾を受けてキャラクター・ビジネスを行っている場合、デザイン事務所や映像制作会社の倒産や当該キャラクターに係る著作権の第三者への譲渡にともない、ライセンシーのビジネスの継続が難しくなる事態は容易に想像し得る。 |
3. |
この点に関し、平成15年度の破産法改正においては、賃借権その他の使用および収益を目的とする権利を設定する契約(ライセンス契約もこれに含まれる)については、相手方が当該権利について登記、登録その他の第三者に対抗することができる要件を備えているときは、旧破産法第59条(改正破産法53条)は適用しないものとされるよう改正された(改正破産法56条)。
しかし、著作権のライセンス契約については、登録などの第三者対抗要件制度がなく、このような破産法の改正によっても、著作権のライセンス契約のライセンシーの保護にはならない。したがって、著作権のライセンス契約のライセンシーの保護を図るにはライセンス契約の登録などの第三者対抗要件制度を設けること、またはその他のアプローチによってライセンシーが安心して事業を継続できる仕組みを講じることが必要である。 |
4. |
そこで、著作権法第63条を前提とした利用権を、当該著作物に係る著作権の譲受人等の第三者に対抗する力を付与する制度を創設して、著作物の利用許諾を受けたライセンシーを保護すること、並びに、かかる第三者対抗要件の具備をもって破産時の破産管財人による解除(改正破産法53条)を制限する仕組みを導入することが必要である。 |
5. |
また、登録制度の不都合性がライセンシーの保護に障害を生じる場合には、必要性に応じて、登録制度以外のライセンシーの立場を保護する制度、例えばライセンシーに対する権利行使の制限制度についても、検討の余地があると考える。 |
6. |
本事項については、平成13年度以降、当省から改正要望として意見提出を行っており、これまで著作権分科会(契約・流通小委員会)において精力的に検討されてきたところであるが、立法に向けた一層の検討を行う必要があると考える。 |