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資料3−2

平成15年11月14日

委員   生野   秀年


契約による還流防止対策について


.ライセンス契約の内容
日本のレコード会社(ライセンサー)が、ライセンス商品の日本国内への還流を防止するため、ライセンス契約に定めている事項、条文例及び実際の運用は次のとおりである。
 
(1) 現地発売日の調整
 
1 条文例
  「ライセンサーはライセンシーに対し、新たに録音された原盤商品の発売を一定期間留保し、又は日本発売と同時に、若しくはライセンサーが指示する時期に発売することを要請することができる。」
2 実際の運用
  現地発売日を2週間〜1ヶ月後に設定している。

(2) 商品の差別化
 
1 条文例
  「ライセンシーは、ライセンサーの指示するところにより、当該レコードを、日本商品とは異なる曲目リスト又は日本商品と異なるバージョンに変更した曲目で発売するものとする。曲目リストの最終版は全て、ライセンサーによる事前の書面同意を要する。」
2 実際の運用
  オリジナルを求める現地ユーザー及びアーティストの意向を踏まえつつ、日本商品との差別化のため可能な限り商品上に現地語の表記を行っている。
(ア) CDの外装フィルムに現地語のアーティスト名、タイトル名等のシールを貼付(但し、還流の際外されるケースが多い)。
(イ) CDのオビ(キャップ)に現地語のアーティスト名、タイトル等を記載(但し、還流の際外されるケースが多い)。
(ウ) CDのジャケット(裏カード)やディスク本体への表示。
(エ) アーティスト名、タイトル名、曲名等の現地語への置き換え。

(3) 許諾地域外への輸出禁止及び輸出業者等への販売禁止並びに許諾地域外流通商品に関する調査義務
 
1 条文例
「ライセンシーは、当該原盤を用いたレコードを許諾地域外へ輸出し、若しくは、相手方が当該レコードを輸出することを知り又は知り得べき場合には、当該輸出業者、商社その他の者に販売してはならない。万一、許諾地域外で当該商品が発見された場合、ライセンシーは、責任をもって、新たな商品の供給を中止し、当該全商品の完全な回収を行うため迅速な調査及び措置を執るものとする。」
2 実際の運用
(ア) ライセンシーは輸出専門卸店との取引を一切行っていない。
(イ) ライセンシーが日本向け輸出業者等へ商品を販売していた卸店への商品供給を停止した(シンガポールでの事例)。
(ウ) ライセンシーは、卸店、小売店からの異常な量のオーダーをチェックし現地需要に応じた数量に制限している。

(4) 商品上への指定許諾地域外での販売禁止表示
 
1 条文例
      「ライセンシーは、全てのレコードのラベル、オビ、カバー並びに本契約に基づき発売されるレコードの宣伝において使用される物品には以下の表示を付すものとする。
   1)    ライセンサーの表示   
2)    この商品は指定許諾地域での販売を条件に許諾されていること。従って、この商品の日本での販売は固く禁じられていること
ライセンシーは、前記の要件が本契約の重要な要素であることを確認する」
2 実際の運用
    商品発売前に、ライセンサーが指定表示の有無及び文言等をチェックしている。


.日本への還流について
 
(1) 日本で還流商品が販売されている場合、日本のレコード会社はライセンシーに対し調査を要請し、ライセンシーが流通ルートを調査する流れになるが、レコードの流通ルートが多岐にわたるため、還流商品の流通ルートを解明することは極めて困難である。
(2) 例えば、日本への還流が多い台湾におけるレコードの流通は、1レコード会社(ライセンシー) ⇒ 卸 ⇒ 小売店、または2レコード会社(ライセンシー) ⇒ 卸 ⇒ 地方卸 ⇒ 小売店の二つのルートがあるが、「卸」は一次卸だけでなく二次卸も存在している。従って、ライセンシーが商品供給契約の当事者及びプレス工場等まで管理を徹底しても、二次卸や小売段階からの流出を制限することは困難である。
(3) ライセンシー自体は契約によって許諾地域外への輸出及び輸出業者等への販売を禁止されており、当協会会員会社へのヒアリングでもライセンンシーが日本への還流に関与した事例は存在しなかった。
 
以上より、日本への還流は二次卸または小売の段階から生じているものと考えられる。


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