○ |
:93条をなくすと、放送事業者が録音録画番組を製作する場合、録音録画の許諾を実演家からもらうことになり、そうなると、実演家の権利がワンチャンス主義により消滅することになる。二次利用を行う場合に実演家の許諾を求める必要がなくなるということで、実演家の権利の実質的切り下げになるのではないか。契約秩序の問題が整い、それが円滑に行われるようになってから、考えた方がいいと思う。
44条をなくした場合、録音録画権と放送権の双方の交渉することになるが、著作権法の単純化というよりも、現場の作業段階における混乱を招くのではないか。例えば、アメリカのレコード原盤については放送許諾を得ていたとしても、アメリカではシンクロナイズド権が別途あるので、放送の許諾さえ得ればいいという問題ではない。一方、ヨーロッパでは、放送の許諾を得る際、録音用、あるいは生放送であっても、技術的に1回事前に仕込みの録音録画をしていることについて、放送許諾する以上、その過程において必要な技術的措置なので、同時的に許諾が得られているという慣行が認められているらしい。音楽、レコードについて放送用録音録画権という考え方が各国にはないので、44条がないと大変困難な状況が危惧される。
|
○ |
:61条2項に関し、27条に規定する権利(翻案など)と、同一性保持権の関係がかなりオーバーラップするようなところもあるのではないか。27条と28条は一括して考えるのではなく、分けて検討する必要があると考える。15条の法人著作に関しては、基本的に個人に権利は帰属するというとを前提として、就業規則、契約等でできるのであれば、その方が明確になると思われる。
|
○ |
:特許法第35条でも議論されている話だが、仮に15条の法人著作の規定を削除した場合、企業等の法人は従業員等と個々に契約することになるが、そのときに、公序良俗違反でその契約が無効というような、将来訴訟で判断される懸念が残るのではないか。企業等の法人としては大変重大な問題であって、仮に削除するとしても、そこへの対策が絶対に必要と考える。また、特許法第35条と同様に契約の際の相当な対価の請求権も問題が生じる可能性もあり、混乱が生じるのではないか。
|
○ |
:61条2項においては、著作権法を読み込んでおかないとわからないような規定なので、著作権を単純化する意味で廃止すべき。
|
○ |
:61条2項は、二次的著作物に関する経済的権利に及ぶ話なので、慎重に考える必要がある。93条の問題は、実演家にとって非常に重要な問題なので、前向きに慎重に進めていきたいと思っている。
|
○ |
:15条を廃止することによって、会社と従業員は個々に著作権の帰属に関する契約をすることになり、個々の従業員に有利になるように見えるが、実際は、会社における雇用関係は、従業員がどうしても立場が弱く、契約をするにしても、会社に有利な契約になることが十分予想されるものである。会社の雇用関係において、会社と従業員双方が納得できる契約のルール等をきちんとしないといけない。
|
○ |
:映像等の著作物の創作はほとんど、チームワークで創作されるものであり、法人等のチームが権利者になるのが一般なので、一概に15条を廃止する方向性は間違っているのではないか。
|
○ |
:15条を廃止し、あとは個々の就業規則その他の規定で拘束すればいいという考え方も理解できないではないが、あらゆる法人内で創作される著作物を全て個々の契約で拘束することは非常に難しいのではないか。慎重に対応すべき。また、15条を廃止する理由として「雇用者に人格権を付与した法制化にはもともと無理がある」という趣旨でいいのか確認したい。
|
△ |
:人格権を会社等に付与することがもともと無理があるのではないかという問題意識であり、昨年の審議経過報告にも記載されている。
|
○ |
:廃止することで、就業規則に任せた方がよいという論理なら、人格権も就業規則に任せた方がよいというように読めるが。
|
△ |
:人格権は一身専属性のため、移転することができない。人格権は個人に帰属するため、就業規則では財産権のみを移転することになり、人格権と財産権は別々になることになる。
|
○ |
:人格権が移転することができないとなると、会社等の企業としては、特に同一性保持権の問題が非常に大きい。コンピュータプログラムなどについて言えば、必ず何らかの修生、同一性を保持できない事態になるのであって、その際、個人が同意できしないと主張すると、会社等の企業が成り立たなくなるのではないか。
|
○ |
:テレビ番組の場合、例えば個々のディレクターに人格権が残るとなると、以後番組の改編等にもディレクターの同意が必要という問題も起こり得る。人格権不行使の契約の有効性もいろいろと争いがあると思うので、廃止することには慎重になる。
|
○ |
:著作権法の単純化ということは分かるが、15条を廃止することは、実務上の作業が極めて複雑になり、トラブルが生じることが予想される。社会的にはかえってマイナスになるのではないか。15条の規定が極めて悪法であるという声がないのに、単に単純化という視点だけでこの条項を大きくクローズアップさせることはどうかと思う。広く社会状況を勘案して検討すべき事項だろう。
|
○ |
:15条の廃止は、一般的に雇用契約の力学からいっても、慎重に考えるべき。44条の一時的固定に関する規定の廃止は、15条の廃止に比べると実態に即したものではないかと思う。放送段階で放送番組の再利用を見据え、録音、録画権をクリアする必要があるのではないかと考える。ただ、この場合も契約当事者の力関係の問題が残るが。93条も同様である。61条2項は著作者に一考を促す意味においても、機械的にこの規定を廃止して、契約に任せることが最善なのかよくわからない。 |
○ |
:権利者の立場から、今の金原委員の報告に追加して意見を述べさせていただきたい。附則第4の2は、1984年にレンタルレコード店ができたときに貸与権が確立され、書籍に関してはそういうチェーン店のようなものがないというので実害がないということで設けられたものである。しかし、状況は大きく変わったので、経過措置とされている附則を削除してほしい。ただ、単に著作権使用料を求めているわけでもない。何よりも利用者の立場を考えなければならないというふうに考えている。そういう一部の読者の負担によって著作者のインセンティブが保証されているという事態がはなはだ不公平である。できるだけ多くの読者が負担を公平に分担することによって、文芸文化の普及ということも進むのであるということを、ぜひとも読者に理解してほしい。
新古書店の仕入れの価格というのは、ほとんどただに近く、そういうものをお金を取って読者に貸しているわけである。例えば、これを定価で買っていただくだけでも仕入れ値は上がる。これに著作権使用料を足すと、ある程度レンタル店にはご負担をしていただかなければならないということになるので、本のレンタル料も幾分かは上がることが予想される。長い目で見れば、読者は公平に著作権使用料を負担するんだということであれば、販売用の本の価格もこれ以上には上がらず現行のままで抑えられるということで、読者にとってもメリットの多い状況になるであろうというふうに予想している。
|
○ |
:現状から言えば、まさに日本はコミック文化が成熟しており、その成熟している中で、そこに作家に何ら救済されないものがあるというのは、非常に逆の意味から言って、不合理があるのではないかというのを印象的に感じた。
|
○ |
:著作物が所有から利用という形でどんどん変わってきているという中で、書籍だけが置き去りにされているという理由がまったくないわけである。また、実態的なところでよくわからないのは、旧来型の貸本業者との切り分けがきちんとできるのかという点。
|
○ |
:旧来の貸本業者と新規の貸本業者との切り分けは非常に難しいと思う。しかし、明確に違うのは店舗面積や蔵書数で切り分けをするしかない。旧来の貸本業者は日本の出版文化というものを担ってきたということも非常に大きく評価できるので、そこについてはこれまでの業務が継続してできるような配慮をしたいと考えている。
|
○ |
:映像ソフト協会としては、基本的に書籍・雑誌等の貸与権の創設に賛成である。昨今、いわゆるビデオレンタルといわれる店が現在6000店あるが、その内、約4000店はコンパクトディスクも扱う複合店となっている。ビデオレンタルやコンパクトディスクといった単体では事業が成り立たない状況になってきており、今後複合形態が拡大する(例えばコミックのレンタルなど)ことが予想される。約4000店の内、大手チェーン店としてTSUTAYA、ゲオの2店が大体2000店ぐらいのシェアがあり、貸与権連絡協議会がその両店と交渉し、基本的に貸与権の創設について認めているのならば、当事者間の協議は既に終わっているのではないかと思う。
また、コミックはビデオと同様にかなりマニアが多いと思われるので、レンタルと購買の両方が期待できる消費者の購買行動があるため、早急に新しいレンタルのビジネススキームを確立することが賢明なのではないか。
|
○ |
:貸与権の創設に反対するわけでないが、レンタルが権利者、消費者双方が潤うような前提のニュアンスの意見には多少の抵抗を感じる。
|
○ |
:昭和59年当時と現在は大きく環境が変化しており、当時書籍のレンタルを考慮する必要がなかっただけであって、現況は書籍などの危機であると思う。許諾システムや事業者等の合意も進捗しているというのであれば、早急に附則第4条の2は廃止すべき。
|
○ |
:合意形成に関することで質問が2点。まず第1点目は、旧来の貸本業者には「権利行使を行わない」という内容で合意形成を求めているという理解でいいのかということ、第2点目は、漫画喫茶の問題は今回の貸与権の創設に関してどう捉えているのかということである。
|
○ |
:旧来の貸本業者の条件には、蔵書数1万冊以下のものが対象となり、「権利行使を行わない」ことは当分の間は継続するが、将来的に貸与権が定着し、旧来の貸本業者の理解が出てくれば、公平性を維持する観点より、一定の使用料を徴収することも必要になると考えている。漫画喫茶の問題は今回取り上げることが考えていない。貸与権と展示権は別であり、今後の課題として別途検討を重ねることとしたい。
|
○ |
:擬似レンタル(一応古本として売っておきながら、古本として買い戻す等)の問題はどのように考えているのか。 |
○ |
:擬似レンタルの実態がどの程度あるのか、どのように対応するかは次回までに調査したい。 |
○ |
:書籍等に貸与権を付与するとなると、図書館における貸与をどのように考えることになるか。 |
○ |
:いわゆる「公貸権」の問題は、昨年度の著作権分科会において、権利者・図書館側双方の協議に委ねられることになり、今回の貸与権の創設の問題とは別の問題として捉えており、この場で議論することは考えていない。
|
○ |
:附則第4条の2の廃止というのは、著作権法の単純化の1つに入ると思われる。 |
○ |
:当事者間の交渉において、おそらく一番影響を受けるのはレンタル料が上がるユーザーだと思うが、ユーザーの意見を取り上げる場というのはあるのか。
|
○ |
:確かに実際にレンタルをするユーザーの意見は反映すべきと思う。レンタル業者を通じてそのような意見は吸収し調整していきたい。
|
○ |
:現在、コミックをレンタルする場合、一冊いくらで貸しているのか。 |
○ |
:レンタル1回100円未満程度だと思われる。 |
○ |
:協議の相手先に複合レンタル店の団体という意味で、コンパクトディスク・ビデオ・レンタル商業組合を入れた方がいい。
|
○ |
:附則第4条の2を措置したのは、貸本業というものが、江戸期以来、むしろ売買よりも主流であり、そのような伝統的な事業には適用しないという配慮があったと思う。昨今の新しいタイプのレンタル事業とは利用形態を分けて考える必要があるのではないか。また、「当分の間、適用しない」ということを、相当の間と理解されているが、何年、何十年経っても当分の間であって、時間が経ったから変えるという話ではないと思う。 |