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文化審議会

2002/06/17 議事録
文化審議会著作権分科会法制問題小委員会(第1回)議事要旨

文化審議会著作権分科会法制問題小委員会(第1回)議事要旨


日時 平成14年6月17日(月)10時30分〜13時
     
場所 三田共用会議所大会議室
     
出席者 (委員)
石井、上原、岡村、金原、北川、児玉、齋藤、清水、、菅原、瀬尾、生野、福田、増山、三田、山際、山口、山地の各委員
(文化庁)
丸山長官官房審議官,岡本著作権課長、村田国際課長,尾崎著作権等管理事業室長、堀野著作権課課長補佐ほか関係者
     
配付資料  
     
 
資料1 著作権分科会・法制問題小委員会委員名簿
資料2 小委員会の設置について
(平成14年5月7日  文化審議会著作権分科会決定)
資料3−1 著作権をめぐる最近の動向について
−2 知的財産戦略会議の開催について
(平成14年2月25日  内閣総理大臣決裁)
−3 知的財産戦略専門調査会の設置等について
(平成14年1月30日  総合科学技術会議)
−4 司法制度改革推進計画(抄)(平成14年3月19日  閣議決定)
−5 文化審議会答申「文化を大切にする社会の構築について」(抄)
(平成14年4月)
資料4 これまでの主な著作権法の改正について
資料5 関係者間で合意形成が進められつつある事項等
資料6 関係省庁からの著作権法改正要望(平成13年度)について
資料7 審議事項例
資料8 法制問題小委員会審議スケジュール(案)
   
概要
   
 

(1)

主査の選任について
主査に齋藤委員が選任され,また,主査代理として,中山委員が指名された。
   

(2)

法制問題小委員会の概要について
事務局から、本小委員会の設置の趣旨や所掌事務、会議の公開の取扱い等について説明が行われた。
   

(3)

著作権に関わる動向について
事務局から資料に基づき説明があった後、以下のような意見交換が行われた。
    (以下委員○,事務局△)

○: 保護期間の延長については、「映画の著作物」「団体名義の著作物」を考える時、「著作者」本体の保護期間である死後50年の部分も含めて検討すべきではないか。
   
△: 保護期間の延長については、「映画の著作物」「団体名義の著作物」について、「知的財産戦略会議」に要望が出されているので、ここから審議を始めてもらいたいと考えているが、この二つの議論をする中で、「著作者」本体の保護期間も議論いただければと思っている。
   
○: 「私的録音録画補償金制度」について、補償金制度の定義と枠組み、そして流通の在り方を議論していただきたい。
   
△: 「私的録音録画補償金」全般について、広くご議論いただければと思っている。
   
○: 資料7の「具体的な要望・提案に基づく課題」の中の「権利制限の見直し」は、現行の権利制限規定の見直しを指しているようだが、一方、「基本的な課題」の中の「権利制限規定全体の在り方」は、現行の権利制限規定の在り方そのものをどうするかという問題意識だと思う。両者が、理論的な枠組みにおいて、うまくつじつまがあうように議論を進めなければならないように思う。
   
△: 基本的な課題としての「著作権法の書き方」の問題と、「権利制限の拡大・縮小」の問題は、分けて議論すべきものと考えている
   
○: 「基本的な課題」の中の「アクセス権」の「創設」又は「実質的保護」に関してだが、現在、WIPOにおいて「放送事業者の権利」に関する条約議論が行われているが、その中で非常に新しい問題として議論されているのが、「ウェブサイト上の送信」を含めた「アクセス権」の問題である。有料放送のように見せないようにしているものを、勝手に見せてしまう者を放置しておくことは、現状からまずかろうという議論が国際的に進んでいる。これに対して、「デコーディングライト(暗号を解除されない権利)」を創設するのか、あるいは現行の「技術的保護手段」の規定を拡大して、「複製」だけでなく勝手に「見せてしまう」ことに保護を及ぼすのか。そうした議論がかなり強く出ている。また、伝統的な「地上波放送」「無線放送」、近代的な「有線系の送信」に、新たに「ウェブサイト上の送信」が加わってきているので、これらをどうとらえるのかという議論も生まれてきている。これらの問題を、世界に先んじるぐらいの形で討議していただきたい。
   
△: 「アクセス権」については、「WPPT」(WIPO実演・レコード条約)「WCT」(著作権に関する世界知的所有権機関条約)を作成する段階で、「技術的保護手段」の対象範囲との関係で議論されている。条約作成時には、「無断でアクセスされない権利」がないのに暗号解読だけを違法にするのはおかしいということから、条約の対象とすることが見送られた経緯がある。「アクセス権」を創設すれば「技術的保護手段」に係る改正は不要であり、この話は1年では結論がでないかもしれないが、ご議論いただく必要はあると考えている。
   
○: 文芸著作物の著作権は、欧米先進国は作者の死後70年となっているところが多い。日本の50年というのは短いのではないか。書籍の中古品について、何らかの形で著作権法で解釈(して著作者を保護することが)できればと思う。また「引用」についても、利用者において単なる「転載」と思われるものまで「引用」と主張して無断で使用する例があり、「引用」と「転載」の区別を厳密に考えて対応していく必要がある。また著作物をインターネット等で流通させる際に暗号化し、その暗号を解読するための「カギ」を有料で配布するシステムも可能となってくるが、この暗号の「カギ」を解読されると著作者に経済的な損失が発生することとなるので、「カギ」を解読することに対して「アクセス権」などにより法律的な対応をする必要があると考えている。
   
○: 重要な課題が数多くあるが、先ほどのスケジュールの説明も併せて考えると、この小委員会だけで議論するのは難しいのではないか。ワーキンググループを作るとか、検討対象をどうするかなど事務局で何かお考えをお持ちか。
   
△: 資料7の「審議事項例」は、事務局が想定し得るものを全て書いたものであって、全部について来年はじめに結論が出るとは思っていない。次回、「知財戦略大綱」を踏まえ、どういう順番でどうするのか議論していただきたいと考えている。その際に、「ワーキンググループ」についても提案を行っていただければと考えている。
   
○: 「著作権法の単純化」と「基本的な課題」についても、理論的な枠組みにおいて、うまくつじつまがあうように議論を進めなければならないと思う。「著作権法の単純化」は、非常に大切なことであり、細かいことを全て取り入れて条文を書くのは困難と思うが、外国の例も参考としつつ、積極的に検討を行う必要がある。
   
○: 「私的録音録画補償金制度」は、実際に「録音録画」を行う者が「補償金」を支払うこととされている。現在は特例的な方法(録音録画機器・媒体のメーカーが販売価格に上乗せして補償金を徴収すること)で行っているが、電子商取引が進めば、原則どおり、「録音録画」を行う者が、契約により個々に補助金を支払うこともできるようになるのではないか。こう考えると、まず、契約でどこまで処理できるかを検討し、その上で必要に応じて法制を検討するのがよいのではないか。
   
○: 「著作権法の単純化」の中の「例外的取扱いの廃止」に「映画の著作物」が例示されているが、何か具体的な改正を想定しているのか。
   
△: 特に想定していない。映画に関する例外的な規定の在り方も検討対象とするということである。
   
○: 審議事項例に書いてある「権利制限の全体の在り方」は、現行の権利制限規定に加えて「フェアユース」により権利制限を拡大するという理解でよいか。
   
△: そのようなことは全く考えていない。「権利制限全体の在り方」とは、「フェアユース」という方式も含め、あくまでも「権利制限規定の書き方」の問題であり、拡大・縮小とは無関係である。
   
○: 「ライセンス契約の対抗力の付与」については、是非検討していただきたい。
   
△: ご指摘の点については、特許ではすでに行う方向と聞いている。特許の部分は特許自体が登録主義なので、登録された契約のライセンシーを保護する動きと理解している。一方、著作権は無方式主義なので、その点との関係をどう考えるのか。また、著作権法で対応するのか、それとも他の法律で行うのか等も含め、経済産業省と一緒に勉強していこうと考えている。
   
○: 実演家の権利に関して、今後も引き続き検討しなければならない課題だと考えるが、映像懇(映像分野の著作権等に係る諸問題に関する懇談会)との関係はどうなるのか。
   
△: 映像懇は、当事者の対立が激しかったことから、審議会で検討を行っても建設的な議論にならないと思われたために設けられたものである。「実演家」の「人格権」については、関係者間の合意がなされたため、審議会の議論をへて法改正をしたが、まだ、「映像の実演の財産権」「映画監督の権利」というテーマが残っている。映像懇での合意が形成されれば、審議会で検討をお願いすることになる。
   
○: 去年、国際小委員会で「実演家人格権」を検討したときには、条約が作成されている「音の実演」のみに認めるものと理解していたが、平成14年度の法改正で、条約が作成されていない「視聴覚的実演」についても認めたということは、条約に先んじる形で日本では権利を付与するということなのか。
   
△: 2000年12月にWIPOにおいて、「実演家」に「映像の実演」に関する権利(人格権・財産権)を与えることが暫定合意されている。国内法については、「実演家人格権」について、「音」だけでなく「映像」についても関係者間で合意がなされたので、条約に先んじて法改正を行ったということである。この部分は、昨年この審議会で御議論いただき、昨年の「審議経過の概要」では、関係者間の合意ができれば権利付与の方向に進むこととされていた。
   
○: 「著作権法の単純化」と「権利制限規定の全体の在り方」についての検討は、是非やっていただきたい。その際には、現行の権利制限規定の中にも幾つかあるが、補償金の支払いによって比較的広い利用を認めることも検討したらと思う。また、発展途上国等における我が国の知的財産権の保護に取り組むのであれば、国全体として基本的な方針をきちんと立ててやらないと、当事者だけが苦労するという形になってしまう。
   
△: 海賊版については、最近いろいろ状況も変わってきており、在外公館等を巻き込んで官民協力して対策を行っていく方向で知的財産戦略会議でも議論されているところである。
   
○: 自分が所属する団体が持っている著作権法の改正要望をこの場で出していくことは構わないのか。
   
△: 委員の方々は、学識経験者としてお集まりいただいているので、専門家としてご議論いただきたい。審議会は、審議会委員の間での議論を行う場であり、この場での発言は政府に要望したことにはならない。ただ、各団体としてこういう立場をとっているということは、情報として発言していただきたいと考えている。


6. 閉会
事務局より、次回は7月30日に開催することが説明され、閉会した。


(文化庁著作権課)

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