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文化審議会

2003年11月27日 議事録
文化審議会著作権分科会司法救済制度小委員会(第9回)議事要旨

第9回文化審議会著作権分科会司法救済制度小委員会議事要旨

日  時     平成15年11月27日(木)   10:30〜13:00
場  所   文部科学省分館201・202特別会議室

出席者   (委員) 
蘆立、大渕、久保田、後藤、潮見、高杉、橋元、前田、松田、光主、三村、山口、山本、吉田の各委員
(文化庁)
素川文化庁次長、森口長官官房審議官、吉川著作権課長、川瀬著作物流通推進室長、俵著作権調査官ほか関係者

議題
   1. 文化審議会著作権分科会司法救済制度小委員会報告書(案)  

配付資料
資料1     文化審議会著作権分科会司法救済制度小委員会(第8回)議事要旨(案)  
資料2   文化審議会著作権分科会司法救済制度小委員会報告書(案)  

   今般の案で新たに書き加えたところは、11ページの裁判外紛争解決(ADR)の在り方について、それから、12ページの間接侵害規定、13ページの差止請求制度の見直し等である。まずここから議論していただきたい。
   では、11ページの裁判外紛争解決の在り方について。
   ADR中は時効期間の停止する制度を導入することについても検討する意義がある、という意見があったし、私も同じようなことを言った。一言書き加えて欲しい。
   12ページの間接侵害規定の導入に関する記述については、どうか。
   「一定の客観的・主観的要件のもと累計的に限定した形で導入すべきであるとの意見」の「導入すべき」の目的語が欠けているような印象を受ける。「特許法のように、累計的に限定した形の間接侵害規定を導入すべきである」というような表現ではどうか。
   12ページの侵害とみなす行為の見直し、13ページの差止請求制度の見直しについての記述についてはどうか。前回の意見を踏まえ、事務局で修正したものであるが、どうか。
   よい。

   では、最初に戻って損害賠償規定の見直しについてご議論をいただきたい。
   4ページの法定賠償のところで、「訴訟費用」という言葉があるが、民事訴訟法上の「訴訟費用」ということになって、かなり狭い意味に限定されてしまうので、「裁判費用」の方が適切ではないかと思う。
   私も同じ意見である。
   3倍賠償については、各委員から意見をもらったが、それをまとめると、現段階では、3倍賠償を導入するということはないという結論になった。そこで、5ページの上のような記述にはなっているわけであるがよいか。
   「検討結果」としては、こういう書き方になってしまうのは確かであるが、政治の場など、審議会以外の場所で、3倍賠償の必要性について判断があった場合には、さらなる検討を行うとするなど、議論の余地を残すようにできないものか。
   そもそもこの問題は、体系とか理念の問題から消極論が出たと思う。したがって、本来の損害賠償制度の枠外での検討の余地もあるというのをここへ書くのは難しいかと思う。
   5ページの(2)の部分だが、「使用者」というのは2カ所使っているが、これは「利用者」であるべきである。
   5ページの(3)のところは、現行制度の枠内で推定規定を設けられるかということで議論したが、この点などはどうか。
   もし差し支えなければ、懲罰的損害賠償制度の最後の部分あたりにその記述を入れてはどうか。また、やはり実損主義を取っ払った場合には懲罰的な損害賠償ということ自体をもう一度検討してみようかとか、あるいは法定賠償制度というもの自体ももう少し違った観点から組み立てていくべきではないか等という議論が出てくるきっかけになるかもしれない。
   次は罰則強化の点であるが、併科も含め8ページまでのところで意見はないか。
   8ページの(1)の検討結果のうち、「刑罰の適用には故意が要件であり問題がなく」という文言があるが、刑罰の故意というのは、悪質性といった高いレベルのものを要求されているわけではないはずである。ここは、故意の要件は厳しいものだということをここで書いてしまうよりは、むしろ刑罰の適用の運用の方が厳格に行われているということにしておいた方がいいのではないか。故意の要件がかなり悪質でないといけないとしてしまうと、今度は、刑事罰の適用が難しい状況にあるということになってしまう。
   私は別の意味で、「故意」という言い方はちょっと誤解を招きかねないと思った。刑罰の場合の「故意」というのは、事実認識の故意の話なので、違法性の認識について錯誤があっても、故意を否定されない。例えば翻案の場合などは、これが翻案にあたるかどうか、などのような思い違いは刑罰を適用する扱いにならない。したがって、「故意が要件であり問題がない」という言い方は、故意概念を誤解して書いているように誤解されかねず、この審議会の水準を疑われるような気がするので、もうちょっと書き方に工夫があった方がいいと思う。
   この記述は、前回の議論で出た意見をそのまま書いただけであるが。
   この部分についての前回の議論は、本来著作物というのはできるだけ文化の発展のために自由に使うべきだから、重くするのであれば、明らかな著作権侵害について改正すべきという意見だったと思う。
   要するに、ボーダーラインにあるような微妙な場合ではなく、デッドコピーのように、これは著作権の侵害だということがはっきりわかった場合には刑事罰を科すということで、悪質かどうかとはまた別の問題である。もう少し詳しく書いた方がいいのではないか。
   私も、ここは故意というより、刑罰の運用が厳格だという方がいいと思う。なぜなら、問題になるのは事実の認識が誤っている時ではなく、法の解釈が誤っている時であるが、法の解釈がどっちなのかというのは微妙で、裁判所でも一審と二審で変わるような問題もあるし、そういうものについて刑事罰が適用されるべきとは思わない。しかし、その場合であっても故意はあるから、故意が要件だから萎縮効果はないというのではなく、そういう微妙な問題については刑事罰を適用しないという運用をされているというところが、萎縮効果との関係では重要だと思う。
   問題がなければそのような形で記述させていただきたい。
   先ほどの8ページの取りまとめについて、むしろ故意について何らか文言を残しておいた方がいいということになるのか。
   「故意」に実質的な意味はあまりないというのであれば、残すのもおかしいが、突き詰めていくと、結局実は厳格な運用の話ではないかということになりそうなので、ちょっと難しい。
   最高裁判決の「最判」とか、「大阪地判」という略語が使われていることについて、かなり普遍的な略語ではあると思うが、これは略語として公文書で使っていいものなのか。必ずしも法律家だけが読む文書ではないと思うので、使ってよいのか疑問である。
   一般にわかりやすいという書き方にすべきだといういことであれば、書き直したほうが良いか。
   ほかに全般見ていただいて、お気づきの点があればご指示願いたい。
   確認だが、著作隣接権侵害も含めて、全て著作権侵害ということで表現されているが、「著作隣接権」も含んだ表現として「著作権」という言葉を使っているという理解で良いか。
   隣接権の団体の方が別にこれでよいということであれば、よいかと思う。
   そもそも文化審議会著作権分科会というふうに、大きく広義で「著作権」という枠組みで書いてあり、この場合の「著作権」というのは、一番広い意味での著作権法の全般ということで受け取るべきだろうと思っているので、必要な部分以外は特に隣接権というものを書かなくてもいいのかとも思うが、ちょっと判断できない。
   事務局の方で、著作権については隣接権を含めるという意味で使わせていただいて、「等」となっているところは見直しをして、統一をすることにうにしたい。
   本日発言があり、先ほど私が修正を指摘した部分については、できるだけ早く案をつくり、それぞれご検討を願えるようにする。その後の扱いについては、できれば、修正を私と事務局に一任いただき、今日の報告書案の取りまとめとしたいが、それでよいか。
(異議なし)
   本小委員会の報告書案は、後日、私の方から著作権分科会に報告させていただくという運びになる。
   実質的には、これでこの報告書は取りまとまったということになるが、昨年度から司法救済の部会においては、私が主査をしているが、正直言って、著作権法の改正の問題以外にも、もっと深い議論をすべきものがある。特に損害賠償論についてはそうだと思う。その点、議論が十分にこの時間の範囲内でできているとは思わない。むしろ、ほかの場でも議論をした上のものをこういうところでさらに議論をしていくべきだというふうにも考えている。3倍賠償の扱いについても、場合によっては状況の変化がまだあるかもしれない。
   しかしながら、私としては、きょうの取りまとめで、委員の意見の集約はできているというふうに考えているので、基本的にはこのまま出させていただきたい。
   ほかの審議会においても、当小委員会においても、著作権の審議が大変難しくなっているなという様子がある。それは、権利者団体と利用者側の利益をどう代弁するかという調整の問題が鮮烈になっているということと、それから著作権法だけの枠でなくて、全体の法制の中で著作権をどう考えるかという問題が提起されているということがある。
   今後も司法救済については、重ねて審議をしていかなければならないが、とにかく9回にわたり、皆さん方のご協力を得て報告書ができ上がりつつあるということについて感謝申し上げたい。
   主査からのお話、重く受けとめたい。
   今後は、12月8日の日に分科会が開かれるので、主査に報告書の報告をお願いすることになる。その後、17日に最終的に分科会でその全報告書を了承するということになっており、それで公表するということになる。
   また、本小委員会の報告書の中で、当然、来年度以降の法制に直接影響するものもあり、できるだけ速やかに事務的な作業を進め、文化庁としてそれを実現するように最大努力をしていきたい。
   司法救済という問題は、著作権の中でも重要であるが、確かにご指摘のとおり、横断的な問題でもあり、したがって著作権だけでその議論は閉じない面がある。タイミングをよく考えながら、そしていろいろ今回もアイディアをご提案いただき、ご検討いただいたが、そういったアイディア全体、もっと広い視野でとらえた上でタイミングを見て、また深いご検討をお願いするようなことも今後、考えてまいりたい。
  長らく御議論に心から御礼申し上げたい。



(文化庁長官官房著作権課)

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