侵害行為の立証の容易化のための方策について
議論の背景
知的財産戦略大綱において、「知的財産関連訴訟における侵害行為の立証の容易化を図るために、2005年度までに、知的財産関連訴訟の特性を踏まえた証拠収集手続の更なる機能強化について、証拠に関する憲法上の裁判公開原則の下での営業秘密の保護を含め、総合的な観点から検討を行い、所要の措置を講ずる。」とされたことを受け、現在、司法制度改革推進本部知的財産訴訟検討会において、特許権等侵害訴訟における証拠収集手続の更なる機能強化について検討が行われている。 これまでに、経済界からのヒアリングにより、
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論点1及び2:文書提出命令及びインカメラ審理の改善について
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(参考条文)
○民事訴訟法第 | 二百二十条 次に掲げる場合には、文書の所持者は、その提出を拒むことができない。 | ||||||||||||||||||||
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第 | 二百二十三条 裁判所は、文書提出命令の申立てを理由があると認めるときは、決定で、文書の所持者に対し、その提出を命ずる。この場合において、文書に取り調べる必要がないと認める部分又は提出の義務があると認めることができない部分があるときは、その部分を除いて、提出を命ずることができる。 |
2 | 裁判所は、第三者に対して文書の提出を命じようとする場合には、その第三者を審尋しなければならない。 |
3〜5 (略) | |
6 | 裁判所は、文書提出命令の申立てに係る文書が第二百二十条第四号イからニまでに掲げる文書のいずれかに該当するかどうかの判断をするため必要があると認めるときは、文書の所持者にその提示をさせることができる。この場合においては、何人も、その提示された文書の開示を求めることができない。 |
7 | (略) |
第 | 百九十七条 次に掲げる場合には、証人は、証言を拒むことができる。 | ||||||
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2 | 前項の規定は、証人が黙秘の義務を免除された場合には、適用しない。 |
第 | 百九十一条 公務員又は公務員であった者を証人として職務上の秘密について尋問する場合には、裁判所は、当該監督官庁(衆議院若しくは参議院の議員又はその職にあった者についてはその院、内閣総理大臣その他の国務大臣又はその職にあった者については内閣)の承認を得なければならない。 |
第 | 百五条 裁判所は、特許権又は専用実施権の侵害に係る訴訟においては、当事者の申立てにより、当事者に対し、当該侵害行為について立証するため、又は当該侵害の行為による損害の計算をするため必要な書類の提出を命ずることができる。ただし、その書類の所持者においてその提出を拒むことについて正当な理由があるときは、この限りでない。 |
2 | 裁判所は、前項ただし書に規定する正当な理由があるかどうかの判断をするため必要があると認めるときは、書類の所持者にその提示をさせることができる。この場合においては、何人も、その提示された書類の開示を求めることができない。 |
3 | (略) |
第 | 百十四条の三 裁判所は、著作権、出版権又は著作隣接権の侵害に係る訴訟においては、当事者の申立てにより、当事者に対し、当該侵害の行為について立証するため、又は当該侵害の行為による損害の計算をするため必要な書類の提出を命ずることができる。ただし、その書類の所持者においてその提出を拒むことについて正当な理由があるときは、この限りでない。 |
2 | 裁判所は、前項ただし書に規定する正当な理由があるかどうかの判断をするため必要があると認めるときは、書類の所持者にその提示をさせることができる。この場合においては、何人も、その提示された書類の開示を求めることができない。 |
3 | (略) |
論点3:営業秘密が問題となる事件の非公開審理
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(参考条文)
○日本国憲法第 | 八十二条 裁判の対審及び判決は、公開法廷でこれを行ふ。 |
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裁判所が、裁判官の全員一致で、公の秩序又は善良の風俗を害する虞があると決した場合には、対審は、公開しないでこれを行ふことができる。但し、政治犯罪、出版に関する犯罪又はこの憲法第三章で保障する国民の権利が問題となつてゐる事件の対審は、常にこれを公開しなければならない。 |
第 | 七十条(公開停止の手続) 裁判所は、日本国憲法第八十二条第二項の規定により対審を公開しないで行うには、公衆を退廷させる前に、その旨を理由とともに言い渡さなければならない。判決を言い渡すときは、再び公衆を入廷させなければならない。 |
第 | 二十二条 人事訴訟における当事者本人若しくは法定代理人(以下この項及び次項において「当事者等」という。)又は証人が当該人事訴訟の目的である身分関係の形成又は存否の確認の基礎となる事項であって自己の私生活上の重大な秘密に係るものについて尋問を受ける場合においては、裁判所は、裁判官の全員一致により、その当事者等又は証人が公開の法廷で当該事項について陳述をすることにより社会生活を営むのに著しい支障を生ずることが明らかであることから当該事項について十分な陳述をすることができず、かつ、当該陳述を欠くことにより他の証拠のみによっては当該身分関係の形成又は存否の確認のための適正な裁判をすることができないと認めるときは、決定で、当該事項の尋問を公開しないで行うことができる。 |
2 | 裁判所は、前項の決定をするに当たっては、あらかじめ、当事者等及び証人の意見を聴かなければならない。 |
3 | 裁判所は、第一項の規定により当該事項の尋問を公開しないで行うときは、公衆を退廷させる前に、その旨を理由とともに言い渡さなければならない。当該事項の尋問が終了したときは、再び公衆を入廷させなければならない。 |
司法制度改革推進本部知的財産訴訟検討会における検討状況
文書提出命令及びインカメラ審理の改善について
文書提出義務の範囲の拡大 | インカメラ審理参加者の拡大 | 営業秘密の保護の確保 | |
A案 | 「正当な理由」に営業秘密を含まないことを明文化する。 | −
(営業秘密を含む文書はインカメラ審理の対象とならない。) |
裁判所は命令によって、秘密保持義務(目的外の使用及び第三者への開示を禁止)を課すとともに、義務違反には罰則を科すこととする。 |
B−1 案 |
「正当な理由」の判断要素となる事情を明文化する。又は秘密保護手続の拡充により、実質的に文書提出義務の範囲を拡大する。 | 申立人又は訴訟代理人 | 裁判所は命令によって、秘密保持義務(目的外の使用及び第三者への開示を禁止)を課すとともに、義務違反には罰則を科すこととする。 (インカメラ審理参加者のみ※) |
B−2 案 |
同上 | 訴訟代理人 | 同上 |
B−3 案 |
同上 | 第三者の専門家 | 同上 |
・ | いかなる営業秘密であっても「正当な理由」に該当することがなく、営業秘密の保護に欠ける。 |
・ | 裁判所の裁量に委ねられるとしても申立人側が営業秘密の特性や技術の難易度・重要度等を考えて、提示される者の範囲について意見が言え、自由度が高いのでよい。 |
・ | 申立てには本人や訴訟代理人のほか専門家も選択できるようにすべきである。 |
・ | 産業界より、代理人から自信がないといわれることもあり、任せきれないという意見があった。 |
・ | 弁護士会より、適切な者がいないのではないかという意見があった。 |
・ | 「正当な理由」の判断要素として、![]() ![]() ![]() ![]() |
営業秘密が問題となる事件の非公開審理
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○ | どのような類型の営業秘密について、非公開審理が要求されるのか。 |
○ | 口頭弁論一般にみとめるのか、証人尋問等に限るのか、どのような訴訟の手続について、非公開審理が要求されるのか。 |
○ | 弁論準備手続などの活用により、非公開審理がないことによる不都合はまれである旨の意見についてどう考えるか。 |
○ | 裁判所が非公開審理の決定をする際の手続(当事者・証人の意見を聞く必要はないか、![]() |
○ | 憲法第82条の観点からすると、非公開審理の要件はどうあるべきか。 |