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文化審議会

2002/07/22議事録
文化審議会著作権分科会司法救済制度小委員会(第2回)議事要旨

文化審議会著作権分科会司法救済制度小委員会
(第2回)議事要旨

日時 平成14年7月22日(月)10時30分〜13時
     
場所 日本芸術文化振興会第1会議室
     
出席者 (委員)
久保田、後藤、潮見、高杉、道垣内、橋元、細川、前田、松田、山口、山本の各委員
(文化庁)
丸山長官官房審議官,岡本著作権課長、尾崎著作物流通推進室室長、堀野著作権課課長補佐ほか関係者
     
配付資料  
     
  資料1 文化審議会著作権分科会司法救済制度小委員会(第1回)議事要旨
  資料2 「知的財産戦略大綱」(2002年7月3日  知的財産戦略会議)(著作権関係部分の抜粋)
  資料3 「知的財産戦略について」〔総合科学技術会議知的財産戦略専門調査会の中間まとめ〕(平成14年6月13日  総合科学技術会議知的財産戦略専門調査会)(著作権関係部分の抜粋)
  資料4 「司法救済制度小委員会」平成14年度審議事項(案)
  資料5 「司法救済制度小委員会」平成14年度審議スケジュール(案)
  資料6−1 「プロバイダ責任法の問題点」
  −2 「プロバイダ責任制限法の機能と問題点」(コピライト2002年7月号より抜粋)
  資料7−1 著作権法と他の知的財産権法及び民事訴訟法における損害賠償規定の対比
  −2 参照条文
  −3 不正競争防止法における課題(産構審知的財産政策部会第1回知的財産政策小委員会配付資料)
  資料8 新たな損害額算定ルールの導入について
  資料9 積極否認の特則の導入について
     
概要  
  (1) 「知的財産戦略大綱」等について
事務局から先日公表された政府の「知的財産戦略大綱」等について、報告が行われた。
   
  (2) 著作権分科会(第5回)の概要について
松田主査から7月19日(金)に開かれた著作権分科会(第5回)の概要について、報告が行われた。
   
  (3) 「司法救済制度小委員会」審議事項案及びスケジュール案について
事務局から「司法救済制度小委員会」審議事項案及びスケジュール案について、説明が行われた。
   
  (4) プロバイダに対する差止請求制度の必要性等について
山本委員から「プロバイダに対する差止請求制度の必要性等」について説明が行われた。その後、以下のような意見交換が行われた。
(以下委員○,事務局△)

○:   損害賠償請求はプロバイダに対しては出来ない。また、発信者があるプロバイダに載せたものを別の所に載せるということはいくらでも起こることで、発信者に対して差止めを行い、損害賠償を請求するというプロセスは重要である。

○:   公衆送信しているのはプロバイダであるとはいえないか。プロバイダがサーバーを管理してそこから著作物をネット上に流しているわけで、流している人が侵害者ということにはならないか。

○:   プロバイダを公衆送信権侵害の行為者と言えるかどうかというのがポイントになる。適法な物も違法な物もアップロードできるが違法な物を選んでいるのはユーザーしかあり得ない。プロバイダはその対象物を選択していないので侵害行為の主体としてプロバイダをとらえるのは適当でない。違法物が送信されていると知った場合にそれを削除しないでそのままにしておくところに初めて対象の選択というのが認められ、公衆送信権の侵害につながると考えている。

○:   差止請求権を明確に定めるかどうかについては、確認的な意味で設けることには意味があるが、その定めた要件に該当しない限り差止請求権が無いと解釈されるようではいけない。現行法でも差止請求権が認められる範囲がかなりあるのではないかという前提で議論を進める必要がある。

○:   侵害行為であるかどうか明白なケースはほとんどないという指摘があるが明白なケースも結構あるのではないか。

○:   裁判実務では、一見明白な侵害はあまりない。ジョンレノンなどの著名人のレコードを日本の小さなレコード会社が海賊版を作って、1000円位で売っていたケースで、権利の立証が不十分だということで請求を認めていない事件もある。

△:   プロバイダ責任法に関して、著作権侵害の場合に関する独自のガイドラインを作成したのは、いわゆる「Aタイプ」と「Bタイプ」の境界を法的に確定するためではなく、できる限り多くのケースを「Aタイプ」とするような関係者間合意を達成し、米国法のような「とりあえず削除」という状況を作り出すためである。関係者が「Aタイプ」と位置付けても、裁判でやはり「Bタイプだった」とされる可能性は当然あるが、そのような裁判は削除後に行われるため、「発信者」対「プロバイダ」のものとなる。
インタラクティブ送信に係る差し止め請求については、「公衆送信」と「送信可能化」の双方について権利を持つ著作者と、「送信可能化」のみについて権利を持つ著作隣接権者を分けて考える必要があるかもしれない。著作隣接権者の場合は、既に「送信可能化」が行われてしまった後には、侵害行為は既に終了してしまっているため、現在は「削除せよ」という請求はできないと思われる。

△:   プロバイダ責任法は、関係団体も、満足ではないが一歩前進と評価し、既に施行されている。さらに新たな法整備を行うためには、この法律では不十分であるということを立証する必要があるので、関係団体等においてもどんどん訴訟を起こしていただいて、うまくいく部分といかない部分を実務的に特定していくことが必要である。この小委員会の報告書では、危惧される点を整理して、実務を踏まえた検討を続けるべきといった記述をすることになろう。
   
  (5) 新たな損害額算定ルールの導入及び積極否認の特則の導入について
事務局から「新たな損害額算定ルールの導入及び積極否認の特則の導入」につ いて説明が行われたその後、以下のような意見交換が行われた。
(以下委員○,事務局△)

○:   特許法と著作権法が異なる対応をしている積極的理由はあまり見いだせないが、著作権法上固有の問題は考えておく必要がある。

○:   4月の東京地裁で、特許法102条1項に該当する著作権法の規定がないために損害賠償額が低くなった判決が出ており、特許法と同様の条文の必要性を示しているが、著作権法の場合は特許法に比べて114条2項の利用価値がもっと高いと思っている。海賊版業者に許諾をすると考えた場合、自分の商品と同じ価格で許諾を出すだろう。そうすれば、海賊版を売っているようなケースでは、114条2項の活用がかなり期待できるのではないか。特許法102条1項と同様の規定を著作権法に設けた場合114条2項の柔軟な解釈を妨げることがないかという懸念がある。

○:   特許法の規定は、譲渡数量に権利者側の単位当たりの利益額を掛けることができるということで、侵害者側の単位当たりの利益額を掛けるのに比べて高い額を請求できるため、権利者にとっては本当に救済になる。例えば、侵害者がネットワークを利用して無料で著作物を違法に配信する場合などを考えれば、特許法と同様の規定を設ける意味が大きくなってくる。

○:   ご指摘のようなネットワークでの利用を考えると、譲渡数量に、権利者側の単位利益を掛けるということで十分か検討しなければならない。送信数量とか、送信時間当たりとか、支分権ごとに何か単位を作って、権利者の単位当たりの利益額を掛けるという立法をすることも考えられる。そこまで踏み込んで規定することは、立法技術的には大変難しいと思う。

○:   法技術的にすべての権利に規定を設けることができるかという問題がある。また、特許法においても、譲渡だけでなく、他の実施行為もあるが、譲渡というものに限定して規定を設けていることとのバランスをどう考えるのか。また、不正競争防止法とのバランスも考えなければいけない。著作権法だけ譲渡に限定して、不正競争防止法では、譲渡以外の他の利用形態も対象にするということになると、これもバランスを崩すことになる。したがって、不正競争防止法の検討状況もみながら議論を進めていきたい。

閉会
  事務局から今後の日程について説明があった後、閉会になった。


(文化庁長官官房著作権課)

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