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侵害国等に対する働きかけ |
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我が国は,これまで,中国,韓国,台湾といった侵害発生国等に対して,二国間協議などの場を通じて,著作権法制の整備及び権利執行の強化を働きかけてきた(参考資料3-3参照)。今後,これらの活動をさらに実効あるものにするとともに,他のアジア諸国等に対しても,海賊版対策の強化を要請していくことが必要である。また,韓国,台湾との間でも,著作権に特化した二国(地域)間協議を開催し,情報を共有しながら,実効性のある海賊版対策を進めていくことが必要である。
また,今後EPAやFTA策定への協議の場において, WCT及びWPPT等の著作権関連条約の早期批准, WCTやWPPT上の要請に基づき利用可能化権,技術的保護手段,権利管理情報等の規定を整備すること, 著作権管理団体への支援, 適切な権利執行の確保などを引き続き要請していくことが必要である。
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アジア諸国等における著作権制度及び著作権思想の普及への支援 |
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当該地域における著作権制度の一層の普及を図ることを目的として,文化庁は,「ASEAN+3(アセアン プラス スリー)著作権セミナー(東京セミナー)」や「JICA(ジャイカ)著作権制度集団研修」を継続的に実施していくとともに,WIPOへの拠出金によるAPACEプログラムの実施にあたっては,各国等の状況に応じた事業を実施することが求められている(参考資料3-3参照)。
また,海賊版の問題を根本的に解決するためには,アジア諸国等における一般の人々の著作権に関する意識を高めていくことが不可欠である。このため,我が国が主体となって,著作権の意義,保護の必要性などについて分かりやすく説明した著作権教材などを作成・配付するとともに,同教材を用いた著作権教育のセミナーを開催するなど,一般の人々の意識啓発事業に対する支援を行うことが重要である(参考資料3-3参照)。その際に,アジア諸国等で親しまれている我が国の漫画やアニメなどを活用するなどして,さらに幅広い人々への普及に努めることが望ましい。
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(3) |
我が国の権利者による積極的な権利行使の支援について |
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海外における著作権侵害については,基本的には,それぞれの権利者が主体的に侵害実態の把握や訴訟の提起などを行うことが必要であるが,政府としても,アジア諸国等における権利行使に関する情報を提供するマニュアルを作成するとともに,そのマニュアルを活用して,国内外で我が国の権利者を対象としたセミナーを開催するなど,権利者の権利執行を支援することが重要である(参考資料3-3参照)。
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(4) |
官民の連携の一層の強化 |
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実効性ある海賊版対策を実施していくためには,官民の連携が不可欠である。今後文化庁は,国際知的財産保護フォーラム(IIPPF),コンテンツ海外流通促進機構(CODA),コンピュータソフトウェア著作権協会(ACCS)などの民間団体,さらに日本貿易振興機構(JETRO)などと連携しながら,官民合同対中ミッションに参加したり(参考資料3-3参照),官民合同でのシンポジウムやセミナーを開催したりするなど,官民が一体となった取組みをさらに強めていくことが重要である。
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欧米などとの連携の強化 |
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アジア諸国等における海賊版問題に関心を持つ米国,EU及び国際的な権利者団体と海賊版対策に係る経験やノウハウを共有し連携して対策を講じることが必要である。
現在,米国は官民の密接な連携の下,中国等の東アジア諸国等における海賊版対策を強化し,一定の効果を上げている。2003年には,日米規制改革イニシアティブにおいて日米が協力して,アジア地域における海賊版対策に取組むことが合意されており,また最近では政府横断的な組織で知的財産保護対策を推進するために開始された「STOP!イニシアティブ」においても日本の協力を求められるなど,世界各国とも連携した活動を目指している。米国が日韓とともに共同提案し,モデルガイドラインが合意されたAPEC(エイペック)の模倣品・海賊版対策イニシアティブについては,我が国としても,引き続き米国に協力を求めることとしている。
EUとは,2004年の日EU定期首脳協議で日EU連携して,アジア諸国等の海賊版対策に取り組むことが合意されており,2004年10月に中国において,「中国における知的財産権保護に関する日・EU・中国共同セミナー」を開催したところであり,今後,EUとの間でアジア諸国等での海賊版対策に関する協議を行っていくことが必要である。
その他,WIPO,ユネスコ等の国際機関における著作権関係の議論においても,我が国が積極的に関与していくことが望ましい。 |