4 各省庁の著作権法改正要望
文化庁からの要請に応じ,これまでに各省庁から提出された著作権法改正要望は,次のとおりであり,殆んどの事項については,現在,関係する小委員会で検討が進められていることが確認され,小委員会において検討されていない「生番組の著作物性を明定」や「障害者・高齢者の著作物の利用に関する権利制限規定の新設」について検討を行った。
(1)生番組の著作物性を明定 (総務省からの要望事項)
○要望の内容
固定されたテレビ番組は「映画の著作物」とみなされるが,テレビの生番組は「固定されていない」ことから,映画ではなく,著作物でもないとの解釈が存在する。生番組は「思想又は感情を創作的に表現したもの」であり,著作物であることの要件を満たしているため,生番組も著作物であることを明確化してほしいという要望がある。
○検討結果
生番組についても「創作性」が認められ,著作物であることの要件を満たしているものがあるため,その明確化を図るべきではないかとの意見があった。他方,生番組に著作物性があれば著作物の定義により著作物として保護されるのであるから著作物性を明定する必然性はないのではないかとの意見や,物に固定されていない他の著作物との関係でどのように明定するのかという指摘があった。
(2) |
障害者・高齢者の著作物の利用に関する権利制限規定(経済産業省からの要望事項) |
○要望の内容
障害者・高齢者は健常者と比べ,著作物の享受にハンディがあることから,障害者・高齢者がIT機器を介して著作物を利用する行為に対して,一般的な権利制限規定を創設してほしいという要望がある。
○検討結果
経済産業省からの要望である障害者・高齢者というだけで,あらゆる著作物を無断で利用することができるといった一般的な権利制限規定については,障害者・高齢者の定義付けが難しく対象を特定できないこと,非常に範囲が広く曖昧な権利制限規定は権利者の経済的利益を著しく害する可能性があることから,創設すべきではないと考えられるが,障害者・高齢者が健常者と同様に著作物を享受する機会が十分に確保されるように配慮することは非常に重要であり,障害者・高齢者に対するある特定の分野についての個々の権利制限規定については今後引き続き検討を行っていく必要がある。
関係省庁からの著作権法改正要望
省庁 |
要望の内容 |
13年度 |
14年度 |
15年度 |
対応状況 |
警察庁 |
懲役刑と罰金刑の併科 |
― |
― |
○ |
司法救済制度小委員会で審議 |
総務省 |
放送事業者・有線放送事業者への送信可能化権の付与 |
○ |
― |
― |
法改正済 |
放送事業者・有線放送事業者への固定された放送に係る送信可能化権譲渡権・貸与権の付与 |
○ |
○ |
○ |
国際小委員会で審議 |
暗号化された放送の解読に関する権利の新設 |
― |
― |
○ |
国際小委員会で審議 |
放送前信号の保護 |
― |
― |
○ |
国際小委員会で審議 |
「生番組」の著作物性を明定 |
― |
― |
○ |
― |
ライセンス契約の第三者対抗力付与 |
― |
― |
○ |
契約・流通小委員会で審議 |
文部科学省 |
教育目的の利用に係る権利制限の見直し |
○ |
― |
― |
法改正済 |
図書館における利用に係る権利制限の見直し |
○ |
― |
○ |
法制問題小委員会で審議 |
「拡大教科書の作成」に係る権利制限の見直し |
― |
○ |
― |
法改正済 |
経済産業省 |
映画の著作物の保護期間の延長 |
― |
○ |
― |
法改正済 |
著作権法における登録制度の見直し |
― |
― |
○ |
契約・流通小委員会で審議 |
ライセンス契約の第三者対抗力付与(再掲) |
○ |
○ |
○ |
契約・流通小委員会で審議 |
懲役刑と罰金刑の併科(再掲) |
― |
― |
○ |
司法救済制度小委員会で審議 |
映画の著作物の非営利無料上映の制限 |
― |
― |
○ |
法制問題小委員会で審議 |
書籍・雑誌等の貸与に係る暫定措置の廃止 |
― |
― |
○ |
法制問題小委員会で審議 |
法定賠償制度の導入による権利者の立証負担の軽減 |
― |
○ |
○ |
司法救済制度小委員会で審議 |
障害者・高齢者の著作物の利用に関する権利制限規定の新設 |
― |
― |
○ |
― |
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