3 個別の権利の在り方に関する事項
保護期間について
○問題の所在
我が国の著作権法では,昭和45年の現行法制定以来,著作権に関する基本的な条約であるベルヌ条約の規定に則り,著作権の保護期間は,原則として「創作の時」から「著作者の死後50年を経過するまでの間」と定められている。
「映画の著作物」については,昨年度の文化審議会著作権分科会審議経過報告を踏まえて行われた著作権法の改正により,「公表後50年を経過するまでの間」から「公表後70年を経過するまでの間」に延長されたが,同審議経過報告においては,無名・変名・団体名義の著作物の保護期間の在り方や,保護期間そのものに関する考え方等についても,今後検討を行うことが適当であるとされた。
<保護期間の国際比較>
<著作者の権利>
|
日本 |
イギリス |
フランス |
ドイツ |
イタリア |
ロシア |
アメリカ |
一般の著作物 |
死後50年 |
死後70年 |
死後70年 |
死後70年 |
死後70年 |
死後50年 |
死後70年 |
無名・変名の
著作物 |
公表後50年 |
公衆への利用可能化後18
50年 |
発行後70年 |
発行後70年 |
発行後70年 |
発行後50年 |
発行後95年 |
団体名義の
著作物 |
公表後50年 |
死後70年 |
発行後70年 |
― |
― |
死後50年 |
発行後95年 |
映画の著作物 |
公表後70年 |
死後70年 |
死後70年 |
死後70年 |
死後70年 |
死後50年 |
発行後95年 |
<著作隣接権>
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日本 |
イギリス |
フランス |
ドイツ |
イタリア |
ロシア |
アメリカ |
レコード |
発行後50年 |
― |
固定後50年 |
発行後50年 |
固定後50年 |
発行後50年 |
― |
実演 |
実演後50年 |
実演後50年 |
実演後50年 |
実演後50年 |
実演後50年 |
実演後50年 |
― |
放送 |
放送後50年 |
― |
放送後50年 |
放送後50年 |
放送後50年 |
放送後50年 |
― |
有線放送 |
有線放送後50年 |
― |
― |
― |
― |
― |
― |
* |
上記各国の保護期間は標記以外の例外の場合もある。 |
* |
イギリスはレコード,放送,有線放送は著作物として保護されている。 |
* |
アメリカはレコード,実演,放送,有線放送は著作物として保護されている。 |
○検討結果
インターネット環境の充実により,瞬時に世界中に著作物が流通することを踏まえると,国際的に保護期間を平準化することが必要であり,欧米並みの「死後70年」に保護期間を延長すべきとの意見があった。
他方,国際的な平準化を目指すなら,保護期間を一番長く保護している国に合わせる必要があり,延々と保護期間が延長される恐れがあること,平準化するといっても,EU各国が「死後70年」にしたのは,個々の国は「死後70年」に反対であっても,EUの中で一番長い国にあわせざるを得ない事情があったことなど,欧米諸国が保護期間を延長した理由を仔細に検討すべきであり,数字だけを根拠に平準化すべきでないことから,平準化を理由とする保護期間の延長に慎重な意見があった。
保護期間の延長については,国際的動向に留意するとともに,著作物の創作活動に対するインセンティブや文化活動,経済活動に与える影響など,保護期間延長の意義を具体的に分析しつつ,引き続き検討する必要がある。
なお,著作権とともに著作隣接権についても同様に保護期間を延長すべきとの意見や,映画の著作物の保護期間の起算点について「公表後」から「死後」に改めるべきとの意見もあった。
18 「公衆への利用可能化」には,文芸,演芸又は音楽の著作物の場合は,公の実演,放送又は有線サービスへの挿入,美術の著作物の場合には,公の展示,放送又は有線放送番組への挿入を含む。
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