ここからサイトの主なメニューです


4   権利侵害行為の見直しについて

(1) 間接侵害規定の導入

問題の所在

   権利侵害を行う者に対して当該行為の場所や手段を提供する者に対する損害賠償請求や差止請求を行うことができるかどうかについては,著作権法上明確な規定がないが,損害賠償請求については,カラオケ機器のリース業者について,「間接的に関与する者」として共同不法行為責任を認め,賠償を命じた最高裁判例がある(最高裁判所平成13年3月2日ビデオメイツ事件判決)のに対し,差止請求については,地方裁判所の判決において,一定の要件の下では,「幇助者」として,「著作権を侵害する者又は侵害するおそれのある者」に当たるとして,差止請求を認容した例(大阪地方裁判所平成15年2月13日ヒットワン事件判決)があるにとどまっている。
   このため,差止請求については,演奏会場提供者,音源提供事業者,カラオケ機器のリース業者,CDのプレス事業者など,侵害に「間接的に」関与する者を,権利の実効性を確保するとともに,侵害の予防のための強い協力要請を可能とするという観点から,侵害者とみなす規定を設けるべきであるという意見がある。

検討結果

   演奏会場提供者,音源提供事業者,カラオケ機器のリース業者,CDのプレス事業者といった例示に挙げられている者全てに対する一般的な間接侵害規定の導入は,我が国の法制にはないものであり困難であるが,教唆者・幇助者に対する差止請求権を明文の規定で認めるべきであるとの意見や,特許法のように,一定の客観的・主観的要件のもと類型的に限定した形の間接侵害規定を導入すべきであるとの意見もあったが,一方で,現行制度においても運用によって適切な対応が可能であること,差止請求の場合のみに間接侵害者も含むことを明文化することにより,他の条文では間接侵害者は対象にならないという反対解釈を導く可能性があることから,導入するにあたっては,配慮を要するとの指摘もあった。
   CDのプレス事業者や書籍の印刷業者など,業務にあたり著作物の内容まで把握しない事業者まで著作権侵害者と認めることは適切ではなく,また,表現手段の提供を予め制限することとなれば,「表現の自由」や「検閲の禁止」など憲法上の権利との関係も問題となるとの指摘がなされた。
   著作権の侵害に間接的に関与する者に対する差止請求権を認めることが適当な場合があることについては意見が一致しているところであり,間接侵害規定の導入については,司法の場における判例の蓄積を踏まえつつ,必要な方策について引き続き検討していく必要がある。

(2) 侵害とみなす行為の見直し

問題の所在

   違法複製物の輸入・頒布及び所持に関して,「みなし侵害」を定める著作権法第113条第1項に規定する「頒布の目的をもつて」「情を知つて」の主観要件については,実質的根拠がないのではないかという意見がある。

検討結果

   第113条第1項の主観要件が削除された場合には,特許や商標のように「登録」を必要とせず,創作の時点で自動的に発生する著作権について,商品購入の際にその適法性を常に確認しなければならず,取引の安全を害することになることから,現段階での主観要件の削除は見送るべきであるとの意見が多く示された。
   なお,「主観要件」についての裁判所の認定が厳しいこと,主観要件を外せば,違法複製物であるか否かの管理に注意を払うこととなり,違法複製物の流通は困難となることから,主観要件を削除すべきであるとの意見があった。

 

ページの先頭へ